2023年10月17日火曜日

<独自>中国企業、帰化元社員に情報要求か 山村硝子の独自技術流出―【私の論評】中国国家情報法を背景に考える日本のスパイ防止と営業秘密保護(゚д゚)!

<独自>中国企業、帰化元社員に情報要求か 山村硝子の独自技術流出

まとめ
  • 日本山村硝子元社員夫婦が、同社の独自技術を不正に中国企業に提供した事件が発生。
  • 山村硝子と中国企業の契約終了後に技術情報が流出したことが明らかになり、夫婦は中国籍から帰化したことも判明。
  • 元社員はガラス瓶の軽量化技術に関する情報を不正に持ち出し、中国企業に提供した容疑がかけられて逮捕。
  • 事件の中心人物である元社員は中国で技術契約に関する業務に従事し、中国語に堪能であった。
  • 日本国内での営業秘密の流出事件が増加しており、政府は経済安全保障対策を強化しており、外国との情報戦に対処している。


 兵庫県尼崎市に拠点を置くガラス瓶製造大手企業「日本山村硝子」の元社員ら夫婦が、同社の独自技術を中国企業に不正に提供した事件があります。この事件に関する調査で、山村硝子と中国企業の契約が終了後に技術情報が流出していたことが分かりました。さらに、この夫婦は元々中国籍で、後に日本に帰化していたことも判明しています。中国企業が元社員に情報漏洩を持ちかけた疑いも浮上し、兵庫県警察が調査を進行中です。

 事件の関連で、山村硝子の元社員である小鷹瑞貴容疑者と、彼の妻でガラス製造技術コンサルタント会社「アズインターナショナル」の社長である青佳容疑者が不正競争防止法違反容疑で逮捕されました。容疑は、2016年に山村硝子のサーバーにアクセスし、ガラス瓶軽量化の技術に関するプログラムを私用メールアドレスに転送したとされています。

 瑞貴容疑者は元社員で、中国での技術契約に関する業務に従事しており、中国語を堪能としていました。山村硝子と中国企業との技術契約が終了した後、彼らはガラス瓶の超軽量化に関する特殊な計算式などの情報を持ち出し、山村硝子の独自技術を漏洩させたとされています。

 青佳容疑者もかつて中国籍で、コンサルタント会社を経営しており、中国企業とのライセンス契約を締結していました。この会社を通じて、営業秘密が中国側に提供されたとみられています。

 この事件は、日本企業の営業秘密が海外に持ち出される問題の一例であり、政府は経済安全保障対策を強化しています。警察庁によれば、日本国内での営業秘密侵害事件は増加傾向にあり、中国など外国との情報戦が懸念されています。

【私の論評】中国国家情報法を背景に考える日本のスパイ防止と営業秘密保護(゚д゚)!

まとめ
  • 中国には国家情報法があり、国民に国家の情報収集に協力することを義務付けている。
  • 日本山村硝子事件は、元従業員に接触した中国企業が中国政府のために行動していた可能性がある。
  • 私たちは企業秘密やその他の機密情報を守るための予防措置を講じなければならない。
  • 政府はスパイ防止法やセキュリティー・クリアランスの導入など、対策を講じるべきである。
  • スパイ活動を完全に防ぐことはできないが、対策を講じることで、外国のスパイが活動することをより困難にすることができる。

中国には、国民に国家の情報収集に協力することをもとめる国家情報法などがあります。今回のこのような事件は、この法律に基づき中国共産党の主導によって行われた可能性もあると思います。


中国には、国家情報活動に協力することを義務付ける「国家情報法」があります。この法律は、国家安全機関、公安機関の情報部門、軍の情報部門が行う国家情報活動に対して、関係する機関・組織・国民が必要な支持・援助・協力を行うことを義務付けています。

国家情報法の第7条では、いかなる組織及び個人も、法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活動に関する秘密を守る義務を有すると定められています。また、国は、情報活動に協力した組織及び個人を保護するとしています。

国家情報法の第8条では、国の情報活動は、法に基づいて行い、人権を尊重及び保障し、個人及び組織の合法的権利利益を守らなければならないと定められています。

中国の国家情報法は、国内外の個人や民間企業に対し、国家情報活動に協力を求めており、中国以外の国の中国人や中国企業にも適用される可能性があります。中国以外の似たような情報関連の法律において同様の範囲で外国の自国民や自国企業に協力を要請している例はありません。

中国には、国家情報法のほかに、個人情報保護法、サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法の3つの法律(データ3法)があります。データ3法は、中国においてビジネスを展開する外国企業に対して新たなコンプライアンス義務を課すとしています。

中国にはこのような法律があるため、中国人はスパイか、スパイになり得るものとの前提で対処しなければならないです。

中国人 AI生成画像

今回の事件においては、中国人は帰化していますが、たとえ帰化したとしても、中国にはその親戚縁者が存在しており、それらから当人たちへの働きかけはできます。親戚縁者から依頼があって、もしそれを当人たちが拒めば、中共は法律によって、親戚縁者を処罰できます。

中国人を配偶者に持つ日本人も同じようなことがいえます。

よって、中国人はスパイか、スパイになり得るだけではなく、配偶者が中国人か中国から日本への帰化者の場合であっても、スパイか、スパイになり得ることを留意しなければなりません。中国人やその関係者の場合は、その個々人の資質や、能力、人柄に関係なく、スパイになり得るという前提でものごとを考えなければならないです。

こういうと、人種差別や中国差別のように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、中国に「国家情報法」がありその適用の範囲が他国にまで及ぶ以上、いずれの国でもそのようにみなさざるを得ません。これは、人種差別とはいえません。

中国共産党は、他国から企業秘密やその他の機密情報を盗むためにスパイ活動を利用してきた歴史があります。国民に国家情報収集への協力を求める国家情報法は、中国政府のスパイ活動能力をさらに強化しています。

日本山村硝子のケースでは、元従業員に接触した中国企業が中国政府のために行動していた可能性があります。中国政府は先端技術の獲得に強い関心を持っており、そのためには手段を選ばないです。

私たちは警戒を怠らず、企業秘密やその他の機密情報を守るための予防措置を講じなければなりません。これには、誰と情報を共有するかに注意すること、潜在的なビジネス・パートナーについてデューデリジェンスを実施することなどが含まれます。

デューデリジェンスの英語表記はDue Diligence、日本語では「適正評価手続き」。 投資家が投資をおこなう際、もしくは金融機関が引受業務をおこなう際に、投資対象のリスクリターンを適正に把握するために事前におこなう、一連の調査のことです。

以下は、日本企業が営業秘密を守るためにできる具体的なことです。
  • コンピュータ・システムやネットワークを保護するために、ファイアウォールや暗号化などの強力なセキュリティ対策を導入する。
  • サイバーセキュリティの重要性と営業秘密の保護方法について従業員を教育する。
  • 疑わしい活動を監視し、報告するシステムを導入する。
  • 潜在的なビジネスパートナーや顧客を慎重に吟味する。
  • 他者と情報を共有する際には、機密保持契約を使用して企業秘密を保護する。
  • 自社の企業秘密が盗まれた疑いがある場合は、直ちに警察と自社の法務部門に報告する。
政府として、今回のような事件をなくすためにできることは、まずは、スパイ防止法です。これは、必須です。さらに、セキュリティー・クリアランス(security clearance)も必須です。これは、秘密にすべき情報を扱う職員に対して、その適格性を確認する制度ことです。

セキュリティー・クリアランスは、政府が安全保障上の機密を扱う政府職員や民間人らに情報へのアクセス資格を付与する制度です。政府が個人の身辺や民間企業の情報管理体制などを審査し適格性を評価します。

セキュリティー・クリアランスは、企業がリスクを最小限に抑えるための重要な手段の1つです。従業員に対して権限を与える前に、その人物が信頼できるかどうかを審査することで、内部犯罪や外部からの攻撃による情報漏洩を防ぐことができます。

セキュリティー・クリアランスは、世界各国で導入されています。日本では、2024年に法制化する方向で調整を加速しています。日本では高市早苗経済安全保障相がセキュリティークリアランス制度の成立に向けて取り組んでおられます。

高市早苗経済安全保障相

政府は、スパイ防止法の制定に加え、日本山村硝子のような事件を防ぐために、以下のような法律や対策を検討すべきです。
  • 政府は、機密技術が国家安全保障上の脅威とみなされる国に移転するのを防ぐため、輸出規制を強化すべき。
  • 政府はサイバーセキュリティの研究開発に投資し、企業がサイバーセキュリティ対策を改善できるよう支援すべき。
  •  政府は、スパイ活動の危険性や機密情報の保護方法についての認識を高めるための国民教育キャンペーンを実施すべきです。
  • 政府は他国と協力し、スパイの脅威に関する情報を共有し、それに対抗するための取り組みを調整すべきです。
以下は、スパイ防止法に含めるべき具体な内容です。
  • 許可なく機密情報を収集または開示することを違法とする。
  • 外国の諜報機関に協力することを違法とする。
  • スパイ活動の疑いがある場合、当局に報告することを企業に義務付ける。
スパイ防止法は、国家の安全保障を守る必須です。日本以外の国、特に先進国にはこの法律があります。ないのは、日本だけです。なお、このような法律ができたとしても、普通に暮らしている人とっては、何の関係も変化もありません。

また、どのような法律や対策もスパイ活動を完全に防ぐことはできないということにも留意する必要があります。しかし、サイバーセキュリティを強化し、スパイの危険性に対する認識を高め、他国と協力するための措置を講じることで、外国のスパイが活動することをより困難にすることができます。

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