2024年1月19日金曜日

イランから周辺国へ攻撃続発 パキスタン報復、広がる緊張―【私の論評】中東情勢緊迫化、日本はどう動くべきか

イランから周辺国へ攻撃続発 パキスタン報復、広がる緊張

まとめ
  • 15~16日、イランはイスラエルやISを標的として、イラク北部、シリア、パキスタンを攻撃。
  • 18日、パキスタンがイラン領内に報復攻撃。9人死亡。
  • 中東の大国と核保有国の攻撃の応酬は異例。
  • パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘で地域の緊張拡大。
  • 米軍、イエメンのフーシのミサイル14発を攻撃。 イランによる近隣国へのミサイル攻撃が相次ぎ、中東情勢が不安定化している。

パキスタンのアルヴィ大統領はイランとの外交努力の必要性を強調

 15~16日には、イラクはイスラエルの関連拠点や過激派組織「イスラム国」(IS)が標的だとして、イラク北部のクルド人自治区やシリア、パキスタンの領内を攻撃した。これに対し、パキスタンは18日、イラン領内をミサイル攻撃し、9人が死亡しました。

 この事態は、中東の大国イランと、核保有国のパキスタンが攻撃の応酬になる異例の事態だ。また、パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くなか、地域をまたがって緊張が拡大する懸念が高まっている。

 一方、米軍はイエメンの反政府武装組織フーシが発射に向けて装塡していたミサイル14発を攻撃した。これは、フーシによる紅海での商船攻撃を未然に防ぐ取り組みの一環だとしている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中東情勢緊迫化、日本はどう動くべきか

まとめ
  • イランの攻撃は、イスラエルやISに対する牽制、米国への対抗、国内政治の安定という複数の要因が重なった結果と考えられる。
  • パキスタンの報復は、自国領土への攻撃への対抗、国民の世論に応えるという意図があった。
  • 両国の攻撃は、情報の誤りや誤解、複雑な武装勢力の関与などにより、意図しないエスカレーションを招く可能性がある。
  • 今後の展望としては、両国のさらなる攻防、デエスカレーション措置、国際的な仲介のいずれも可能性があり、状況の推移を注視する必要がある。
  • 日本は、米国の対応の限界を踏まえ、自国の軍事力強化、安全保障パートナーシップの多様化、積極的外交の強化などを通じて、地域情勢の不安定化に対応する必要がある。

イランとパキスタンの複雑な攻撃の応酬には、以下のような背景があるとみられます。

イランの動き

イランの首都テヘラン

イランのイラク、シリア、パキスタンにあるイスラエルの基地やISを標的にするという公式の正当化には疑問を抱かざるを得ないです。その精度は低そうであり、より広範なメッセージ、つまり地域の敵対勢力に対する牽制の強化の一環であるとみられます。この行動は、いくつかの要因が重なった結果である可能性が高いです。

現在のイスラエルのガザにおけるハマスとの紛争は、イランがイスラエルの同盟国を標的にすることを強めたかもしれないです。

イランの核開発計画や地域の「抵抗の枢軸」(イラン、シリア、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスなど、中東におけるならず者国家とテロリスト集団の反欧米同盟)に対する米国の圧力が高まり、イランが協力者と認識した相手に対し、積極的な動きを見せている可能性があります。

また、イラン政権内部の強硬派は、権力を強固にし、内部の苦境から目をそらすために、外部からの攻撃を利用している可能性もあります。

パキスタンの報復

イラン領内への攻撃は、9人の命を奪う悲劇的なものでありましたが、イランによるパキスタン領内への先制攻撃に対する迅速かつ明確な対応でした。

パキスタンの狙いは、これ以上の攻撃は許さないという明確なメッセージを送ることであり、パキスタンは、イランに対抗して自国を防衛する能力を持っています。また、パキスタン政府を毅然とした対応に向かわせる上で、国民の怒りが重要な役割を果たしたと考えられます。


情報の誤りや誤った解釈は、意図しないエスカレーションを助長し、真の姿をより不透明なものにする可能性があります。さらに、複雑な提携・依存関係を持つさまざまな武装集団の関与は、攻撃の応酬の動機と結果の網の目をさらに複雑なものにしています。

今後の展望

状況は依然として流動的であり、包括的な理解には継続的な観察と分析が必要です。両国はさらなる一触即発の攻防を繰り広げるのか、それともデエスカレーション措置がとられるのでしょうか。

 米国や国連のような地域的・国際的アクターは、中東のこの不安定な状況をどのようにナビゲートし、さらなる衝突を防ごうとするのでしょうか。

この応酬は、地域の安定とパワー・ダイナミクスに長期的にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。

昨日も述べたように、現在の米国は大規模な三正面作戦や、二正面作戦を実行する能力はありません。日本としては、最悪の状況も想定しておかなけばなりません。

現在の世界情勢は、ウクライナ戦争、台湾危機、中東危機の激化が重なる可能性が十分にあり、そうなると米国は中東危機にリソースをさかれ、ウクライナ戦争や、台湾危機などには十分に対処できない可能性があります。

これに対して日本は、どうすべきかということは、昨日のブログにも掲載しました。それをいに再掲載します。
  • まずは、自国の軍事力をさらに高めることです。 これには、防衛費の増加、より高度な兵器の開発、海上・航空部隊の強化が含まれます。
  • さらに、安全保障パートナーシップの多様化をすべきです。米国との同盟を基軸としつつ、オーストラリアやインドなど他の地域大国との緊密な協力関係を強化すべきです。
  • さらに積極的外交を強化すべきです。 この地域、特に中国や北朝鮮との緊張緩和を目的とした対話や紛争解決に取り組むべきです。
大局的な観点から、この三点を日本は継続し続けるべきでしょう。ただ、それにしても、どのような観点から実施するのかということが重要になってきます。

結局のところ"力による平和 "です。残念ながら、中国・ロシア・イランと「抵抗の枢軸」は、"力による平和"しか理解しません。他の方法では、隙をつかれることになるだけです。

日本は、台湾危機において中国を打ち負かし、ロシアの野心を抑止する力を持たなければならなです。これは、不可能と思われるむきもありますが、日本は中露と陸続きではありません。海洋を介して接しています。これが、陸上国家中露に対して海洋国国家日本を著しく有利にしています。これをさらに意図して意識して拡大していくべきです。

外交面では、特に米国、インド、オーストラリア、欧州諸国との同盟関係を強化すべきです。国際的な舞台で自由と民主主義を擁護すべきです。

経済的には、国内では内需を伸ばし切る政策をしつつ、他のアジア諸国や欧米諸国との貿易や投資を多様化することで、中国への依存を減らすべきです。製造業を中国から日本や他の同盟国に移すよう、台湾や欧米企業を誘致すべきです。

空母に改修される予定の「かが」の甲板

地政学的には、日本はアジアとそれ以外における中国の「一帯一路」構想に対抗すべきです。戦略的な深みと影響力を得るために、インド太平洋、中東、アフリカの国々に投資し、安全保障上の支援を提供すべきです。

世界の民主化勢力を支援すべきです。米国が手薄になっている今、日本はもっと多くのことをしなければならないです。しかし、日本はこれを重荷ではなく、世界第3位の経済大国としての地位にふさわしいリーダーシップを主張する機会と捉えるべきです。

より強く、外交手段にも長けた日本が、同盟国と一緒に力を合わせて行動すれば、事態の流れを変え、敵に脅威を与え、自由と繁栄に満ちた「インド太平洋地域の世紀」を切り開くことができます。

 今起きている問題は、冷戦時代と似たところがあります。しかし、明確なビジョンと強い決意があれば、自由主義勢力は、米国のレーガン政権の時のように、権威主義の野望に再び打ち勝つことができます。日本はこの世代をかけた闘争において、重要な役割を担っています。行動を起こすのは今です。

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