2024年1月11日木曜日

〝麻生vs中国〟バトル再燃!台湾総統選直前 麻生氏「軍事的統一は国際秩序に混乱招く」 中国「内政干渉、自国に災難招く」―【私の論評】麻生氏の発言で浮かび上がる日本の対潜水艦戦力:台湾海峡の安全確保への新たな一歩

〝麻生vs中国〟バトル再燃!台湾総統選直前 麻生氏「軍事的統一は国際秩序に混乱招く」 中国「内政干渉、自国に災難招く」

まとめ
  • 自民党麻生副総裁は、米国訪問中、台湾への軍事的圧力を強める中国に対し、軍事的統一は国際秩序を乱すとして厳しく牽制した。
  • 台湾有事に日本が直接介入する可能性を示唆し、日米同盟の強化やAUKUSへの参加を主張した。
  • 中国は麻生氏の発言を強く批判し、日本は中国の内政に干渉すべきではないと主張した。
  • 麻生氏は、訪米前の地元福岡での国政報告会で「潜水艦などを使って台湾海峡で戦う」可能性について語り、「台湾に戦っておいてもらわなければ、邦人を無事に救出することは難しい」とも述べている。
  • この発言は、中国の反発を招くとともに、中国の軍事的圧力に強く牽制する姿勢は、抑止力として働く可能性がある。
昨年8月08日、麻生太郎氏は台湾を自民党議員団とともに訪台した際の写真

 自民党の麻生太郎副総裁が米ワシントン訪問中、中国の台湾に対する軍事的圧力に対して強硬な姿勢を示した。彼は、「軍事的統一は国際秩序を混乱させるだけで許されない」と述べ、中国の行動を牽制した。麻生氏は過去にも度々台湾有事に言及し、中国側の反発を招いていまる。特に、台湾総統選が迫っている中、麻生氏と中国との対立が緊迫している。

 麻生氏は米シンクタンク「米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)」の主催会合で講演し、「対話継続を諦めてはいけない」と述べ、日米両国が協力して中国に自制を促す必要性を強調した。また、彼はロシア、中国、北朝鮮の軍事動向を「権威主義国家の脅威」と断じ、日米同盟の重要性を訴えた。地域の安定と平和を確保するために、日本も米英豪との安全保障枠組み「AUKUS」に参加すべきだとの立場を示した。

 中国大使館は麻生氏の発言に対し、「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、「日本の政治家が再び台湾問題で勝手なことを言い、中国の内政に干渉した」と非難した。中国は、「(日本が)中国内政と日本の安全を結び付ける考えに固執すれば、自国や地域に災難を招くだろう」と強調した。

 麻生氏はワシントン訪問に先立ち、福岡県での国政報告会で、「潜水艦などを使って台湾海峡で戦う」可能性について語り、「台湾に戦っておいてもらわなければ、邦人を無事に救出することは難しい」とも述べている。これらの発言は、特に台湾総統選前のタイミングで、中国に対する反対姿勢を示すものであり、国内外で大きな注目を集めている。

【私の論評】麻生氏の発言で浮かび上がる日本の対潜水艦戦力:台湾海峡の安全確保への新たな一歩

まとめ
  • 麻生氏のワシントン訪問前の福岡県での国政報告会で、「潜水艦などを使って台湾海峡で戦う」可能性について語ったことが注目されている。
  • 「潜水艦など」の発言は、日本のASW(対潜水艦戦)の可能性を指摘しており、現代海戦においてはASWの強さが勝敗を決定する。
  • 日本と米国はASWにおいて他国を圧倒しており、中国のASWは日米に比べて遅れているため、日本や米国の海軍が優位性を持っている。
  • ASWにはハードだけでなくソフト面も重要であり、長年の経験とノウハウが必要であり、中国がASWで日米に追いつくには数十年かかる。
  • 麻生氏の発言は、台湾海峡の緊張激化、麻生自身の中国に対するタカ派的な立場、国内政治への配慮などが背景にあり、日本政府の姿勢の変化を示していると考えられる。
私は、麻生氏はワシントン訪問に先立ち、福岡県での国政報告会で、「潜水艦などを使って台湾海峡で戦う」可能性について語ったことに注目しました。

私は、「潜水艦など」の発言は、日本のASW(対戦水艦戦争)のことを意味するのではないかと解釈しました。現代海戦においては、空母などの水上艦艇はミサイルの標的にすぎませんが、潜水艦は違います。日米ともに、対潜哨戒能力に優れ、他国を圧倒しています。日本は静寂性に優れた潜水艦を持ち、米国は破格の攻撃力を持つ攻撃型原潜を持っています。

よって両国ともASWに関しては、他国を圧倒しています。現代海戦においては、ASWが強い軍隊が勝利を収めます。ASWが弱い海軍は、これに強い海軍に勝つことはできません。中国のASWは日米に比較すると相当遅れているので、日本や米国の海軍に勝つことはできません。

このことは、このブログにおいて、何度か指摘してきました。これと同じようなことを元海将伊藤俊幸氏が語っているのですが、伊東氏によれば、「私はこのようなことを語るから、テレビに出してもらえない」と語っておられました。 確かに、テレビなどでは、これはタブーのようです。

ただ、このタブーは、テレビ局だけではなく、新聞などのマスメディア全体はもとより、政治家、官僚などにとってもタプーだったようで、台湾有事や尖閣有事などに関する対処方法としては、過去には潜水艦やASWについてはあまり触れられることはありませんでした。

日本の対潜哨戒機P1

日本での、台湾有事のシミレーションでは、潜水艦といういう言葉はまずありませんでした。特に、マスコミなどはそうです。多くの識者や報道関係者によって、台湾有事においては、日本には潜水艦隊など存在しないかのように、潜水艦にふれることはありませんでした。多くの人は、未だに台湾有事というと、潜水艦をはじめとする、日本のASWを有効に使うべきという発想には至っていないのではないでしょうか。

日本のASWに関する代表的な私のブログの記事を以下にあげます。
中国「戦争恐れない」 尖閣めぐる発言に日本は断固たる措置を 高橋洋一―【私の論評】中国の脅威に直面する日本の安全保障:意思の強さと抑止力の重要性
軍事科学院の何雷・元副院長(中将)

この記事の中でASWに関わる部分のみを以下に掲載します。
私は、中国は対潜水艦戦(ASW)で日米にかなり劣っているため、現実には中国が尖閣や台湾への軍事侵攻をする可能性は低いと思っています。

ただ、こういうことを言うと、中国のASWも相当進んできているから、そうとは言えないと主張する人が必ずでてきます。

しかし、こういう人たちは大事なことを忘れていると思います。それはASWにはハード面も重要ですが、ソフト面も重要であるということです。

借りに、中国海軍が、日米なみにASWのハード面を整えたとしても、すぐにはASWが日米並にはならないということです。ASWはそれだけでは強化できず、長年の経験とノウハウの積み重ねが必要だからです。ましてや、中国海軍のASW関連のハードは、未だに日米に比較して遅れています。

これは、たとえば脳外科手術において、様々な最新のハードを導入したとしても、長年の経験やノウハウがないと、満足な手術ができないのと同じです。ハード面を整備したからといって、すぐに高度な手術ができるわけではないのです。優れた脳外科医のノウハウや経験必要不可欠なのです。
現代の脳外科手術には様々なハードが利用されるが、ハードが揃ったからといって優れた手術ができるわけではない
これと同じような、発言をする自衛隊幹部の人もいますが、このような発言をするためか、その方は、「おかげで自分は地上波テレビには出られない」と語っておられました。しかし、これが現実なのです。この現実を突きつけられるのを嫌がる人がマスコミには多いようです。
対潜哨戒も、潜水艦に対する攻撃に関しても、長年培ってきたノウハウやソフトがものをいいます。それからすると、中国が日米のASWk水準に追いつくには、今後数十年かかるでしょう。

これを考えると、ASWは中国にとっては鬼門のようなものであり、これを語られると、いくら中国が艦艇を増やしたにしても、日米等に対しては軍事的にはあまり意味がないことが暴露されることを嫌がっているようにもみえます。

「潜水艦などを使って台湾海峡で戦う」等という発言は、麻生氏も初めてですし、他の日本のリーダーもそのような発言はした前例がないという点で重要です。他の首脳が地域の安定に懸念を表明し、平和的解決を提唱することはあっても、直接の軍事的関与、特に潜水艦について明確に言及したことはありませんでした。

日本の指導者たちが、程度の差こそあれ、台湾問題を取り上げたことはあり、台湾への懸念を表明し、地域の安定を主張することは日本の指導者の間では一般的なことですが、麻生氏が潜水艦のような具体的な軍事戦術について明確に言及したことは、たとえ、福岡県での国政報告会の場であったにしてもも、政府による公的なレトリックの大きな転換を意味するのかもしれません。これには、以下の要因があると考えられます。

台湾海峡の緊張激化: 最近の中国の軍事演習や主張の強まりは、地域の不安を増幅させている。
麻生自身の中国に対するタカ派的な立場: 麻生副総理は、歴史的に他の日本の指導者と比べて中国に対して強い立場をとってきた。
国内政治への配慮: 台湾総統選挙を控えており、中国に対する国民の不安が高まっていることから、麻生氏の発言は日本の有権者の特定の層にアピールすることを目的としている可能性がある。

麻生総理の発言は、国内外でさまざまな反応を呼んでいることに注意する必要があります。必要な強さのシグナルと見る向きもあれば、中国のように緊張をさらにエスカレートさせ、事態の複雑さを見誤る可能性に懸念を示す向きもあります。

麻生総理の前例のない発言は、台湾問題とその潜在的な軍事的影響に関する日本の政治的言説の顕著な変化を示しているといえます。中国と台湾に対する同様の懸念表明は他の指導者たちによってもなされてきましたが、麻生副総理が潜水艦による「戦闘」について具体的に言及したことは、新たなレベルの直接的なものです。

麻生氏の発言は、中国の軍事的拡張を抑止し、台湾の安全を守るという日本政府の姿勢を明確に示すものといえます。

また、麻生氏の発言は、日本が台湾問題に関与する意欲を強く示したものであり、日米同盟の強化や地域の安全保障の強化にもつながるものです。

麻生氏の発言は、日本政府が過去には、中国を刺激することを避けるためか、日本の対潜水艦戦闘戦争(Anti Submarine Wafare)能力の高さを表明することはなかったようですが、台湾海峡の緊張がかなり激化した現在では、これを表明しないことが、かえって緊張を高めることになると、日本政府が判断しつつあることを示す、先駆けなのかもしれません。

もしそうなら、我が意を得たりという思いがします。今後、日本国内でも日本のASW能力がかなり高いことが、多くの人々に認識される日が来ることを願います。

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