- ウクライナ戦争は「終わりに向かっている」という演出だけが先行し、領土問題という核心は何ひとつ解決されていない。ダボスでの首脳会談は和平の儀式にはなったが、戦争の根は手つかずのままだ。理念と外交ショーが、現実の戦争を覆い隠している。この構図は、やがて必ず次の危機を生む。
- この「虚構の平和」は、日本と無関係ではない。台湾海峡、北朝鮮、中国、 北方領土。日本はすでに同じ構造の危機の中にいる。戦争を起きてから止める国で居続けるのか、それとも起こさせず、起きた問題すら解決する国に転じるのか。ウクライナは、日本の未来を映す鏡である。
- そして、その分水嶺が「今度の選挙」であり、高市政権の行方である。内閣支持率は高いのに、自民党支持率は低い。この乖離は、「高市路線は支持するが、自民党のリベラル・左派は支持しない」という有権者の意思を示している。今回の選挙は、政権を選ぶ選挙ではない。日本が解決国家に転じるかどうかを決める選挙でもある。
この一言が、今回の会談のすべてを物語っている。
これは単なる外交ニュースではない。現在の国際秩序が抱える根本的な欠陥を、これほど端的に示した出来事は、そう多くない。理念と演出で覆われた平和外交の空洞が、ここではっきりと露呈したのである。
1️⃣平和外交の限界──ダボスで何が起きなかったのか
| ダボス会議でのトランプ・ゼレンスキー会談 |
トランプ政権は発足以来、ウクライナ戦争を終わらせる平和構想を掲げ、ガザ問題も含めた包括的枠組みを国際社会に提示してきた。ダボスという舞台は、その演出に最適の場所だった。
だが、現実は冷酷である。
クリミアと東部ドンバスという戦争の核心は、依然として未解決のままだ。戦争終結につながる具体的工程表は存在しない。三者協議も、ようやく準備段階に入ったに過ぎない。それにもかかわらず、国際社会では「和平は前進した」という物語だけが独り歩きする。
私はこれまで、ダボス会議が理念と演出を過剰に重ね、現実の力関係と安全保障を軽視してきたことが、かえって世界の不安定化を招いてきたと書いてきた。今回の会談は、その評価を改めて裏づけるものだった。
だが同時に、トランプの動きを単なる外交ショーと切り捨てるのも正確ではない。
トランプ外交の本質は、ショーと実務を意図的に分離する点にある。表では派手な演出を行い、裏では制裁と軍事圧力と経済圧力を積み上げ、最終的に相手に選択肢のない取引を迫る。この手法は、北朝鮮でも、中国でも、中東でも一貫して用いられてきた。
今回の会談も、領土問題をあえて棚上げし、まず停戦枠組みを作るという、きわめて現実主義的な発想に基づいている。それは理想主義ではない。戦争を終わらせるための冷酷な技術である。
問題は、その技術が、ウクライナ戦争の核心に本当に到達できるかどうかだ。
2️⃣国家は現実をどう扱うか──日本に突きつけられた問い
| 日本周辺で中露が行う不穏な動きを示したちず クリックすると拡大します |
戦争終結も、国際秩序の再構築も、理念では決まらない。結局は、領土という現実の問題をどう扱うかに尽きる。
今回の会談が示したのは、外交的演出は成立しても、核心は未解決のままであり、多国間フォーラムは実効的な調停の場にはなり得ず、平和構想や保証の約束は軍事現実を抜きにしては意味を持たない、という単純な事実である。
これは日本にとって他人事ではない。
日本は今、台湾海峡、北朝鮮、中国、エネルギー安全保障という複数の戦略課題に同時に直面している。これらはいずれも、理念や演出では解決できない問題だ。現実の力関係と抑止に根ざした戦略判断が不可欠である。
ウクライナ戦争の領土問題は、その象徴だ。どれほど和平演出を重ねても、現実を抜きにした平和構想は、紙に書いた絵に過ぎない。世界は今、表面的な合意を積み重ねながら、核心を先送りし続けている。そして日本もまた、理念の空中戦では勝てない現実に直面している。
3️⃣解決国家への転換──選挙と権力構造の問題
だが、ここで終わってはならない。
この不確かな世界だからこそ、我が国は起こってから対応する国家であってはならない。しかしそれは最低限の条件にすぎない。真に問われているのは、すでに起きてしまった問題すら、解決してしまう国家になれるかどうかである。
北方領土問題は、戦後から続く未解決の現実だ。拉致問題も、長年放置されてきた現実の悲劇である。これらは、記憶と訴えだけで終わらせる問題ではない。解決の方法を探り、現実に解決すべき対象である。
そして重要なのは、これが空想ではないという点だ。国際秩序は転換期に入り、大国間の力関係は流動化し、ロシアも中国も内部に不安定要因を抱え、米国も対外戦略の再構築を迫られている。領土問題や拉致問題が永遠に解決不能である必然性は、もはや存在しない。
必要なのは奇跡ではない。解決を国家目標として明示し、現実的な交渉戦略と圧力手段を組み合わせ、時間を味方につけて実行する持続的な国家意思である。台湾有事は抑止によって起こさせない。同時に、北方領土と拉致問題を、奪還という結果で終わらせる。その積み重ねによってこそ、日本は秩序に従う国から、秩序を更新する国へと転じ得る。
そのために避けて通れないのが、今回の選挙の意味である。
日本が解決国家へ転じるためには、外交・防衛・領土・拉致について明確な方向性を持つ政治体制が不可欠だ。しかし現実には、長年、安全保障を理念論に矮小化し、対中・対露・対北政策を先送りし、抑止を語らない勢力が政治の中枢に居座ってきた。その帰結として、北方領土交渉は凍結し、拉致問題は、2002年から四半世紀近く、実質的に動いていないし、憲法改正は具体化しないまま放置されている。
日本が解決国家へ転じるためには、外交・防衛・領土・拉致について明確な方向性を持つ政治体制が不可欠だ。しかし現実には、長年、安全保障を理念論に矮小化し、対中・対露・対北政策を先送りし、抑止を語らない勢力が政治の中枢に居座ってきた。その帰結として、北方領土交渉は凍結し、拉致問題は、2002年から四半世紀近く、実質的に動いていないし、憲法改正は具体化しないまま放置されている。
ここで決定的に重要な現実がある。
高市内閣はすでに誕生し、政権を運営している。そして、内閣支持率は高い水準を維持している一方で、自民党そのものの支持率は低迷している。この異例の乖離は、偶然ではない。
有権者は、高市内閣の対中姿勢、安全保障重視、拉致と領土への明確な姿勢には支持を与えている。しかし同時に、自民党内部に居座るリベラル・左派勢力には、明確な不信と忌避を示している。
内閣支持率は高いが、与党支持率は上がらない。これは、「高市路線は支持するが、自民党のリベラル・左派は支持しない」という、有権者からの明確なメッセージである。
にもかかわらず、この勢力が選挙でも党内人事でも温存され続けるなら、この乖離は必ず政権の足を引っ張る構造的危機に転化する。
今回の選挙は、単に高市内閣を支える選挙ではない。高市内閣の路線と、自民党の内部構造とを、意図的に一致させるための選挙である。
そしてこれは、有権者だけに委ねられる課題ではない。高市内閣自身が、公認、人事、ポスト配分を通じて、自民党リベラル・左派の主導的議員を、意図的に党の中枢から外していかなければならない。
国家戦略の転換とは、政策の変更ではない。人事と権力構造の変更である。
最終結語
不確かな世界に秩序をもたらす国とは、理念を語る国ではない。拍手を集める国でもない。危機を未然に防ぎ、すでに起きた危機すら解決し、現実の力で秩序を実装する国である。
ウクライナ戦争が示したのは、戦争は起きてから止めるものではなく、起きる前に止め、起きてしまった戦争すら終わらせなければならない、という冷酷な教訓だ。
日本は、被害者であり続ける国であってはならない。傍観者であってはならない。台湾有事を起こさせず、北方領土を取り返し、拉致被害者を奪還し、東アジアに新たな秩序をもたらす国。
それこそが、虚構の平和に終止符を打ち、現実の秩序をつくる国家としての我が国の使命である。
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