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2020年5月7日木曜日

西村担当相vs吉村大阪知事、コロナで対立も解消「絆深まった」―【私の論評】今後、様々な政治家や、都道府県知事の本質・地金がコロナであぶり出されることになる(゚д゚)!


新型コロナ緊急事態宣言

記者会見する西村経済再生相=6日午後、内閣府

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための政府の緊急事態宣言をめぐり、西村康稔経済再生担当相と大阪府の吉村洋文知事が一時対立したが、解消した。

 吉村氏は5日、外出自粛や休業要請を解除する独自の基準「大阪モデル」を公表し、「本来ならば国に示してほしかった」と批判した。西村氏は6日の記者会見で「勘違いしているのではないか。強い違和感を覚える。解除は知事の権限だ」と述べていた。

 緊急事態宣言の根拠となる改正新型インフルエンザ等対策特別措置法では、都道府県知事が外出自粛要請や店舗を含む施設の使用制限の要請、指示、公表ができる。解除の判断も知事の裁量だ。

 西村氏は7日の記者会見で、6日に吉村氏と電話で協議したことを明らかにした上で「お互いのちょっとした言葉のあやというか誤解があったので、解いた」と説明した。「府知事として指標を考えるのは、説明責任を果たすということで非常によいことだ」と述べた。

 一方で、緊急事態宣言の解除の基準に関しては「国全体として対象地域をどう考えるかというのは国の責任なので、私が説明責任を負う。しっかり示したい」と語った。吉村氏との「わだかまり」の有無を問われると「むしろこれで絆が深まったと思う。連携して収束に向けて全力で取り組んでいきたい」と強調した。

【私の論評】今後、様々な政治家や、都道府県知事の本質・地金がコロナであぶり出されることになる(゚д゚)!

大阪府の吉村知事が、5日外出自粛や休業要請を解除する独自の基準「大阪モデル」を発表しましたが、これは一体どういうものなのでしょうか。以下に大阪モデルの概要を掲載します。


大阪モデルは、「客観的なモニタリング指標の設定」「指標の見える化により府民の行動変容を促す」「基準に基づく自粛要請・解除などの対策を段階的に実施」「陽性者数等を踏まえた必要な感染拡大防止策の実施」を柱にするもので、自粛を解除する指針をが具体的に示したものです。


感染拡大状況を判断するため、府独自に指標を設定し、日々モニタリング・見える化した事が最大の特徴。各指標について、「感染爆発の兆候」と「感染の収束状況」を判断するための警戒基準を設定した。今月、中旬に国で検討される判断基準を踏まえて最終決定する。

モニタリングの分析事項は、「市中での感染拡大状況」「新規陽性患者の発生状況、検査体制のひっ迫状況」「病床のひっ迫状況」の3つ。

新規陽性者におけるリンク不明者数が10人未満、確定診断検査における陽性率が7%未満、患者受入重症病床使用率60%未満を7日間連続達成すれば、自粛を段階的に解除するとしている。


特に、基準が示されていということは、良いことです。これだと、誰もがこの基準に照らして、現状を把握して、これは基準に合致している、合致していないということが確かめられます。

これによって、「自粛要請が遅すぎる」とか「自粛要請がはやすぎる」などの無駄な論議を避けることができます。

大阪府が前もってこのような基準を発表しておけば、これに反対の人はその根拠を示してそれに反対すればよいわけです。それが妥当なものであれば、大阪府は基準を変える可能性もあります。

基準が一度定まってしまえば、それに向けて各方面が努力すれば良いので、無駄な議論もさけることができます。

このようなことは、コロナ感染対策でなくても、あらゆる組織のマネジメントにいえることです。特に優先順位をつけるという事が重要です。

経営学の大家であるドラッカー氏は、優先順位と劣後順位について以下のようなものを述べています。

「いかに単純化し組織化しても、なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。機会は実現のための手段よりも多い。したがって優先順位を決定しなければ何事も行えない」(『創造する経営者』)

誰にとっても優先順位の決定は難しくないです。難しいのは劣後順位の決定です。つまり、なすべきでないことの決定です。一度延期したものを復活させることは、いかにそれが望ましく見えても失敗というべきでなのです。このことが劣後順位の決定をためらわせるのです。

優先順位の分析については多くのことがいえます。しかしドラッカーは、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気だといいます。彼は優先順位の決定についていくつかの原則を挙げています。そしてそのいずれもが、分析ではなく勇気にかかわる原則です。

 第一が、「過去ではなく未来を選ぶこと」である。 

 第二が、「問題ではなく機会に焦点を合わせること」である。

 第三が、「横並びでなく独自性を持つこと」である。

 第四が、「無難なものではなく変革をもたらすものに照準を当てること」である。

「容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果はあげられない。膨大な注釈の集まりは生み出せるだろうが、自らの名を冠した法則や思想を生み出すことはできない。大きな業績をあげる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見る」(『経営者の条件』)

大阪モデルでも、警戒基準からみて、優先順位はやはり(1)市中の感染拡大を少なくする、(2)新規陽性患者の発生を少なくすること、(3)病状の逼迫状況を少なくすること、なのでしょう。

これは、非常に納得しやすい、事項です。他にもPCR検査がどうのとか、ガウン、マスクがどうのこうのという細かなこともありますが、これは目的を達成するための手段であり、PCR検査をすること自体や、医療器具・機器など自体を増やす事自体が大問題であるわけではありません。

無論、検査体制や機器がなければ、基準を達成することはできないですが、これは基準を満たすための制約要因であって、それ自体が目標ではないわけです。このようなことは、言われればわかることですが、優先順位をつけたり、基準を設けなければ、混乱してしまうことが多いものです。

ドラッカー氏は、大阪府や政府、省庁などの公的機関には、6つの規律が重要だとしています。

「あらゆる公的機関が、六つの規律を自らに課す必要がある。事業の定義、目標の設定、活動の優先順位、成果の尺度、成果の評価、活動の廃棄である」(ドラッカー名著集(13)『マネジメント──課題、責任、実践』[上])

今ようやく日本でも、公的機関の見直しが急ピッチで進められています。しかしドラッカーは、すでに3分の1世紀前に、公的機関に成果を上げさせるための規律を明らかにしています。
第一に、自らの事業を定義することである。「事業は何か」「何であるべきか」を定義する。ありうる定義をすべて公にし、それらを徹底的に検討する。 
第二に、その定義に従い、明確な目標を設定することである。成果を上げるには、活動に直結する目標が必要である。目標がなければ活動のしようがない。 
第三に、活動に優先順位をつけることである。同時に、期限を明らかにし、担当する部署を決めることである。 
第四に、成果の尺度を明らかにすることである。尺度がなくては、せっかくの事業の定義や目標も、絵空事に終わる。 
第五に、その尺度を使って成果のフィードバックを行なうことである。全組織が成果による自己目標管理を行なわなければならない。 
第六に、事業の定義に合わなくなった目標、無効になった優先順位、意味の失われた尺度を廃棄することである。不十分な成果に資金とエネルギーを投入し続けることのないよう、非生産的なものすべてを廃棄するシステムを持つ。
これらのステップのうち最も重要なものは、事業の定義だと誰もが思います。ところがドラッカーは、最も重要なものは、第六のステップだといいます。企業には、非生産的な活動を廃棄しなければ倒産するというメカニズムが組み込まれている。ところが、公的機関にはそのようなメカニズムがありません。

公的機関が必要としているのは、人の入れ替えの類いではないというてのです。わずか六つの規律を守ることだというのです。

「公的機関に必要なことは、企業のまねではない。成果をあげることである。病院は病院として、大学は大学として、行政機関は行政機関として成果をあげることである。つまり、自らに特有の目的、ミッション、機能を徹底的に検討して、求められる成果をあげることである」(『マネジメント』)

大阪府は、現在当面している最も重要な問題である、自粛や休業要請の解除に関して、明確な基準を打ち出しました。これは、大阪府が上の6つの規律のうちのいくつかを確実に実行していることを示しています。

対して政府は、基準や目標を定めずに、自粛の延長を決めてしまったわけで、これは明らかにドラッカーの示す、6つの規律に反していると思います。

本来であれば、国もこのような基準を示し、各都道府県はその基準を参考にしつつも、さらに各都道府県の特性にあわせて独自の細かい基準を策定するというのが筋だと思います。

そうして、こうした国の基準をクリアした都道府県から最初に、自粛を段階的に解除していくという方式が望ましかったと思います。

“大阪モデル”の発表に際して吉村知事は「大事なのはまず数値で示すということなので、まず数値で出口戦略をする」「本来は国で示して頂きたかったが、それが示されないということになったので、府としてのモデルを決定したいと思う」と説明していました。

大阪府の吉村洋文知事

この件に関する受け止めを聞かれた西村大臣は「報道で承知している」とした上で、「何か勘違いをされているのではないかと、強い違和感を覚える。各都道府県の裁量で休業要請なり解除なりを行っていただくわけなので、その説明責任を果たすのは当然。都道府県の知事の権限・裁量を増やしてほしいと要請や主張をされながら、『休業要請を解除する要件の基準は国が示してくれないから』というのは大きな矛盾だと思う」と反論していました。

それを踏まえ、国の考えとして「緊急事態宣言の対象区域、解除の基準をどう考えていくか。先般少し指標についてお示ししたように、今後の出口について責任をもって数値・基準をお示したいと考えている」と述べました。

西村大臣の言っていることは形式的には間違いでないようにもみえますが、霞ヶ関の官僚がいうような縄張り争いのようであり、政治家の発言としては器の小さなものだと思います。それを批判されたので、

吉村大阪府知事は、大阪府下の経済状況を把握した上で、どのように被害を最小限に留めるべきなのか、考察をし続けているのでしょう。

実は新型コロナウイルス感染拡大で発生する死者よりも、その影響による経済的な死者の方がはるかに上回るのではないかと、私は考えています。その根拠として、このブログでも年間自殺者数が、平成時代(この機関はほぼデフレ)には3万人台を超えていました。昨年は2万人を切ったことを掲載したことがあります。

西村経済再生相と吉村大阪府知事を単純比較はできないですが、明らかに当事者の立場に近いのは吉村大阪府知事です。

緊急事態宣言が延長されて経済活動が止まり続ければ、自殺者が多く出ることは誰でも理解できる状況です。

経済活動を止め続けることで死者が出ることに対し、政治家は真摯に責任を持たなければならないはずです。

これ以上の経済危機による死者、生活困窮者がでないように、政府は真摯に地方経済を把握している首長の発言、提案くらい最初から真摯に耳を傾ける度量くらい持つべきでしょう。

以前このブログで、コロナ感染拡大の危急存亡のときには、人や組織の本質や地金がみえてくると主張しましたが、今回もそれがはっきりしたと思います。

西村経済再生相は、政治家としては器が小さいです。吉村大阪府知事は、真摯に府政に向き合っているようです。

これは、大阪モデル発表と同時期に記者会見を行った東京都の小池知事にいえます。小池知事の会見は、吉村知事とは対照的であり、自粛解除の基準も示さず、それを示さなかった政府に対して苦言を呈するでもなく、終始精神論ばかりを語っていました。

今後、様々な政治家や、都道府県知事の本質・地金がでてくるでしょう。本質・地金を見るにつけても、感情論に流されたり、非論理的な見方をすれば、正しい見方はできないと思います。

そのようなときにこそ、ドラッカー氏のいう優先順位、劣後順位に関する主張や、公的機関の守るべき6つの規律などを参照するべきものと思います。

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2019年7月21日日曜日

イラン革命防衛隊、英タンカー拿捕の映像公開―【私の論評】イランと英国の対立も制限なきチキンレースになることはなく、いずれ収束する(゚д゚)!

イラン革命防衛隊、英タンカー拿捕の映像公開

イラン革命防衛隊がへりコプターから英タンカーに降下し、拿捕する様子

イラン革命防衛隊は、中東・ホルムズ海峡で、イギリスのタンカーを拿捕した際に撮影したとする映像を公開しました。

ヘリコプターからおろされたロープを伝い、タンカーの甲板に次々と人が下りていきます。ヘリコプター内部から撮影された映像には、覆面姿の兵士が複数映りこみ、腕にはイランの国旗が確認できます。この映像は、イラン革命防衛隊が20日、国営テレビを通じて公開したもので、イギリスのタンカー「ステナ・インペロ」を拿捕した際に撮影されたものとみられます。

国営イラン通信によりますと、イラン側は「イギリスのタンカーはイランの漁船と衝突したうえ、救難信号に応えなかった」と主張。ただ、実際に衝突事故があったのかどうかは明らかになっていません。

また、ロイター通信によりますと、イランの港湾関係者は「タンカーの乗組員23人はイラン側が調査をする間、船内に残ることになる」と説明しているということです。

「ザリフ外相との会話やイランの声明からは、今回の件を、ジブラルタルでのタンカー拿捕の報復とみていることが明白にわかる」(イギリス ハント外相)

こうしたなか、イギリスのハント外相は20日午後、イランのザリフ外相と電話会談をし、「先週は事態を鎮静化させたいと言っていたのに、イランがその真逆の行動に出たのは非常に残念だ」と伝えたということです。ハント外相は、ジブラルタル沖でイランの原油を積んだタンカー「グレース1」を拿捕したのはEUの制裁に違反している疑いがあったからだと改めて強調した上で、“『ステナ・インペロ』はオマーン領海にいたところを強制的にイランに連れていかれた、これは国際法に明らかに違反している”と主張して、タンカーの解放を求めました。

イギリスのテレグラフ紙は、イギリス政府が資産凍結などの対抗措置を検討していると報じています。ハント外相は「イラン核合意は引き続き順守する」としていますが、これまでアメリカとは一線を画した対応してきたイギリス・ドイツ・フランスの核合意当事国が今回の拿捕をきっかけに方針を変化させるかどうかも1つの焦点です。(21日08:51)
【私の論評】イランと英国の対立も制限なきチキンレースになることはなく、いずれ収束する(゚д゚)!


イランがホルムズ海峡で英船籍タンカーを拿捕(だほ)した問題を受け、欧州連合(EU)とドイツ、フランスは20日、それぞれ声明を出し、一斉にイランを非難しました。タンカーと乗組員の速やかな解放を要求し、独仏は英国との連帯姿勢を鮮明にしました。

EUの報道官は声明で、拿捕に「深い懸念」を示し、「緊迫した状況をさらに悪化させる恐れがあり、解決の道を探ろうとする取り組みを台無しにしてしまう」と批判。「船と乗組員の即時解放を要求し、自制を求める」と訴えました。

独外務省はイランを「最大限に非難する」とした上で、「民間海運への正当化できない攻撃だ」と指摘。状況悪化への懸念を示し、「英国と協力し合う」と強調しました。仏外務省も「地域の緊張緩和を妨害する行為を断固として非難する」とし、英国との「完全な連帯」を表明しました。

イランと英国の対立の深まりは、欧州が存続を目指すイラン核合意をめぐる問題にも影響を与える可能性があります。

今日のイラン危機は、ペルシャ湾岸国だけではなく全世界に教訓を示しています。

イラン危機の現状をみて、ロシアや中国といった国は、西側がハイブリッド戦争(軍事力と政治的効果を狙った市民活動など各種手法を組み合わせた戦争)に対する答えを持っていないという自分たちの考えが正しかったと確信するでしょう。

イラン海軍の軍事力は非常に弱く、軍事作戦が展開されれば、バーレーンを拠点とする米海軍第5艦隊に粉砕されることでしょう。

そのためイランは代わりに、ハードパワーがあまり問われないハイブリッド戦争を展開しています。これにより、西側がいかにハイブリッド戦争に対する準備をしていないかが浮き彫りになっています。

ハイブリッド戦争は、在来型・非在来型軍事手段と偽情報、名誉毀損(きそん)、経済、ソーシャルメディアの操作、宗教やその他政府が関連する活動の利用などの手段を組み合わせ、「伝統的」戦争を行うことなく敵を弱体化させることを目的としています。

現在進行しているイラン危機は、ロシアや中国が被害を被ることなく、いかに西側のハードパワーに対抗するかということをみる試金石だともいえそうです。

ハイブリッド戦争の提案者らは西側と「戦わない」ことを選びましたが、これは賢明な判断であり、堅実な軍事戦略です。

イラン、ロシア、そして最近では中国も、伝統的軍事力と深く結びついた自由民主主義が築き上げた構造を破壊することに非常にたけています。英議員ボブ・シーリー氏は「これらの国は以前に比べ、慣習にとらわれない考え方をするようになっている」と警告しています。
ボブ・シーリー氏

英国はイランへの経済制裁について、政治的には欧州連合(EU)を支持する一方、軍事的には米国と緊密な関係を保とうとしている。「英国は戦略的に苦境に陥っている」とシーリー氏は話す。

イランは自分たちの苦境にできる限り外交的関心を集めたいと考えており、それを実現するためには中東の安定性を損なうこともするだろう。米国もしくは英国が軍事行動を起こせば、イランはそれを可能な限り迅速に国際問題化する可能性がある。

イランの政治は唯一の階層的構造があるわけではなく、対抗する勢力が複数存在している。「代理戦争や非対称戦争についてやり取りする時、必ずしもイラン議会と交渉するとは限らない。むしろ政権とは距離を置くイラン革命防衛隊を相手にすることになる」とシーリー氏は説明する。

英国防参謀総長を務めたことがあるデビッド・リチャーズ氏は、これらはすべて、ブレグジット後の大規模戦略を策定する必要があることを示していると指摘する。「英国は種々の危険や危機に見舞われ揺れており、自らが取るべき世界的な戦略や目的を誰も実際には理解していない」

リチャーズ氏はペルシャ湾もしくはそれ以外の地域における問題で「意図されたものかどうかにかかわらず、新首相は今後半年間、試されることになるだろう」と語った。
「大部分(の政治家)が、そのような試練に対する準備をまったくしていないことを懸念している」
イランは結局のところ、米国ではない英国などにテロを仕掛けて様子を見ているるというのが正しい見方だと思います。

米国とイランの対立は果てしないチキンゲームになることはありません。それは、両者とも理解していることでしょう。それについては、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
際限なきチキンゲームに、イラン、相次ぐ核合意破り―【私の論評】チキンゲームの最終段階は米イラン双方とも最初から見えている(゚д゚)!
ウラン濃縮度引き上げを発表 するイラン政府高官
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
このままイランが制裁破りをすれば、米国は武力行使の以前の段階で、種々の金融制裁を実施し、さらに最終的には米国の「ドル使用禁止」という切り札により、イランが崩壊して終わることになります。
これは、中国、北朝鮮とて同じことです。ドル決済ができなければ、お手上げになります。古代ですら、イランは海外との取引をしていたはずです。そのイランが、現代では海外と取引がほとんどできなくなれば、古代以前の石器時代に戻るしかなくなります。勝負は最初から決まっています。

古代からのイランの輸出品「ペルシャ絨毯」
ただし、米国が一足飛びにイランに対して本格的な金融制裁をしてしまえば、イラン側も必死になり、それこそ破れかぶれで、テロ攻撃、イスラエル攻撃などを実施することも考えられます。だから、米国としてはそれをする前の様子見をしているというところでしょう。イランはイランで、どこまで制裁破りをすれば、米国がどのような挙動に出るのか見極めるために、いろいろ実施しているというところでしょう。 
現状の制裁でも、時間が経てば、イランはかなり疲弊します。そこで、最後の手段として本格的金融制裁をするかしないかを決定するでしょう。これは、中国に対しても全く同じです。チキンゲームの最終段階は米イラン双方とも最初から見えているのです。
「ドル使用禁止」という制裁は、米国ドルが基軸通貨である現在、世間で一般に思われている以上に厳しい制裁です。これが、日本のような国であれば、「ドル使用禁止」になったにしても、GDPの殆どが内需で占められ、貿易依存度が低い国では、確かに相当苦しいですが、何とかはできます。ちなみに日本の貿易依存度は27%です。

しかし、イランのような国ではそのようなわけにはいきません。イランは貿易依存度が41%です。 このような国では、「ドル使用禁止」されると、その制裁の効果は破滅的なものになります。

そのため、イランも対立が長引けば、いずれ「ドル使用禁止」をされて、破滅することは最初から理解していることでしょう。この破滅的な政策にあっては、いくらイランがハイブリット戦争を仕掛けたにしても、太刀打ちできないです。

ただし、そうはいってもどこまで米国がハイブリット戦争や、テロなどを仕掛けられれば、「ドル使用禁止」などで対抗してくるかを探っているとみるべきでしょう。

これは、米国だけではなく、米国の同盟国である英国も同じことです。場合によっては、我が国に仕掛けてくるということも十分に考えられます。

そうして、イランは米国や英国に対しても、ハイブリッド戦争やテロを仕掛けて自らに有利なのはどの程度なのかということを探り、その範囲内でいろいろ仕掛けてみずらにとっても有利なところはどこなのか探りを入れているのでしょう。

これは、かつての中国もそうでした。南シナ海で海洋進出してみたり、その他世界でいろいろなことを仕掛けてみました。その結果オバマはさしたる反撃もしなかったため、調子に乗ってやりすぎたところをトランプに貿易戦争を挑まれました。

米国としては、どこまでイランや中国、そしてロシアのような国々にハイブリット戦争や、テロを挑まれた場合許容できる点と、そうではない点をある程度明確にしているでしょう。

ある地点を超えた場合、何のためらいもなく「ドル使用禁止」「資産の凍結」などを実行することでしょぅ。そうして、その場合は、軍事的報復なども計算に入れているでしょう。

だから、英国も同盟国の米国の戦略まで含めてみれば、英国がハイブリット戦争に対して全く準備していないということはないのです。

シティ・オブ・ロンドン

英国のポンドは基軸通貨ではなくなったものの、ロンドンの金融街であるシティは未だに数々の特権を認められた自治都市を形成しています。これは米国のウォール街がニューヨーク市のいち区画に過ぎないのとは異なります。

英国の中央銀行である、イングランド銀行を筆頭に、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備銀行)の株式の大多数をシティーの金融街が握っており、英国(シティー)が今でも米国対して大きな影響力を持っているのです。

シティーが米国に作ったのがCFR(外交問題評議会)です。金融ばかりでなく米国の政治、経済、軍事も対してもシティが大きな影響力を行使することができるのです。その権力の中央に位置するのがイングランド銀行なのです。

イランがこの実体を知らないまま、英国に対してハイブリット戦争をなどを仕掛け続ければ、米国から痛い目に合わせられる日がくるのは必定です。ただ、米国とてすぐに厳しい措置をとれば、イラン側がどのような行動をするか、確かめながら実行しなけば、かえって被害を被る可能性も否定しきれません。

そのため、イランと英国の対立も制限なきチキンゲームになることはなく、いずれどこかの点で収束することでしょう。

ホルムズ海峡「有志連合」結成へ 問われる日本の決断―【私の論評】イランでも米国でも政治には宗教が大きく影響していることを忘れるべきではない(゚д゚)!



2018年9月9日日曜日

南シナ海でイギリス海軍揚陸艦「アルビオン」航行…米国主導の「中国包囲網」に英参戦か―【私の論評】日米英同盟と、中国の対立はシーパワーとランドパワーとの必然的なせめぎ合い(゚д゚)!

南シナ海でイギリス海軍揚陸艦「アルビオン」航行…米国主導の「中国包囲網」に英参戦か

8月3日晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 南シナ海での軍事的覇権を強める中国に対し、国際的圧力が強まっている。中国が一方的に領有権を主張する南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で、英海軍が最近、揚陸艦「アルビオン」を航行させたのだ。ドナルド・トランプ米政権は南シナ海で「航行の自由」作戦を展開し、「中国包囲網」を強化している。英国の動きは対中包囲網に参戦するサインなのか。

 アルビオンの行動は6日、ロイター通信が関係筋2人の話として報じた。同艦は、地上部隊を洋上から上陸用舟艇やヘリコプターを使って展開させる揚陸艦。国連安保理決議に基づき、北朝鮮の密貿易「瀬取り」を阻止するため、5月から極東展開していた。

 記事によると、アルビオンは日本周辺での活動を終え、ベトナムのホーチミンに向かう途中、パラセル諸島近くを航行し、3日にホーチミンに到着した。関係筋は、中国が警告のため、フリゲート艦1隻とヘリコプター2機を派遣したと明らかにした。

 英海軍報道官は「アルビオンは国際法・規範に完全にのっとり、『航行の自由』について権利を行使した」と説明したが、中国は反発を強めている。

 中国外務省の華春瑩報道官は6日の記者会見で、「中国の主権を侵害する行為であり、断固として反対する」と述べた。

中国外務省の華春瑩報道官

 習近平国家主席は2015年10月、英国を公式訪問した。この際の高圧的な態度に、英国内で中国への批判が高まったとされる。

 英国の狙いについて、国際政治学者の藤井厳喜氏は「現在のメイ英政権は、中国にべったりだった前のキャメロン政権に比べると、少し距離を取るようになっている。英国は世界中に小さな領土があるため、『航行の自由』という問題については米国寄りのスタンスを取り、中国に『国際法を守れ』という圧力をかけているのではないか」と解説する。

 昨年から、日英防衛協力は確実に進んでいる。2020年までには、英空母「クイーン・エリザベス」の太平洋展開も予定されている。米国主導の「中国包囲網」に英国も加わるのか。

【私の論評】日米英同盟と、中国の対立はシーパワーとランドパワーとの必然的なせめぎ合い(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、藤井厳喜氏が「英国は世界中に小さな領土がある」と述べていましたが、実際どの程度あるのか以下に地図を掲載します。


上の地図で赤い部分が、イギリスの海外領土、緑はイギリス本国、青はイギリスの王室属領です。全部が島嶼です。太平洋にはイギリス領はありません。

太平洋にはイギリスの領土がないにも関わらず、イギリスは、わざわざ揚陸艦を航行させたわけですから、やはり『航行の自由』を守れという無言の圧力を中国にかけるためであったと判断するのが妥当だと思います。

以前このブログでも述べたように、日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒していますし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのす。

また、日英はともに米国の重要な戦略的パートナーです。日英はそれぞれ米国と深い同盟関係で結ばれ、情報や軍事、外交などあらゆる分野で深い協力関係にあります。つまり、日英が今、同盟関係に進もうとするのは歴史の偶然ではなく、地政学的な必然です。

日本と英国は事実上すでに同盟関係にあります。その同盟関係にあるイギリスが今回南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で、揚陸艦「アルビオン」を航行させたことには、大きな意義があります。

日米はともに英国と同盟関係にあります。これは事実上日米英の同盟が出来上がってると言っても良いです。

現在の世界情勢は第二次世界大戦直前の様相を呈しています。つまり英を軸としたシーパワー同盟側に味方するのか、それともドイツを中心とするランドパワー側につくかという状況に似てきたということです。

国の構成は違いながら、シーパワーかランドパワーに別れているということでは、非常に似ています。

現在のシーパワー側は、まずは日米英が同盟を結んでいます。ランドパワーは中国です。ロシアは、日米が味方に引きずり込もうとしています。米露首脳会談で、すでにロシアはシーパワー側についたという見方もあります。

ドイツは、元々はランドパワーの国であったためか、つい最近までは、中国に接近していましたが、今後どうなるかはわからない状況です。ただし、ドイツがシーパワー側に完璧に離反し、中国と軍事同盟を結ぶことはないと考えられます。

英国はEU離脱で、ドイツ欧州大陸側にはつかず日本と米国を選びました。昨年、英国首相が、日本国にやってきて、安倍総理と会談し、実質的に日英は実質的に同盟関係に入りました。南シナ海に英国空母の派遣は、この同盟関係に基づくものです。

さて、大東亜戦争直前の日本は、シーパワーの国出会ったにも関わらず、ランドパワー側のドイツについて、結局敗北しました。

今回は、シーパワーである日米英同盟の結束をさらに深め、さらにロシア・フランスなどのランドパワーの国々も味方につけ、ランドパワーからシーパワーの国になろうとする中国を完全に封じ込め弱体化させていくべきでしょう。

ただし、シーパワーとランドパワーは地理的条件で決まってしまうかといえば、そうではありません。そもそも、シーパワーはランドパワーの上位互換です。

アメリカは本来陸軍国でしたし、日本もそうでした。ランドパワー国家が資本を蓄積して海軍を充実させ得た状態がシーパワーなのです。

かつてのソ連、現在のロシアは、結局現在の中国の航空母艦「遼寧」の原型である空母しかつくれなかったことが象徴するように、ランドパワーの国からシーパワーの国になることはできませんでした。

現在は中国がそれを目指して努力を続けています。シーパワー国家は海軍より先に、他国に比し突出した資本が存在しています。中国はそうなれるかどうかは、現在は定かではありません。

もし、中国がシーパワーの国になったとすれば、これは中国が主張していたように、世界の半分を支配する覇権国家になるかもしれません。

そうなれば、日本の北海道の釧路は、中国の一帯一路の拠点港とされることになるかもしれません。釧路からどこへ向かうかと言えば、北極海を通過して、欧州大陸へ向かい、ランドパワーとしての中国と、ランドパワーの欧州大陸を結びつけ世界の半分を支配することになるのです。

現在のシーパワーの国々である、日米英はとてもそのようなことは、許容できるものではありません。中国が新たなシーパワー国になることを阻止し、ロシアのように、ランドパワーの国から一歩も出られないようにするため、日米英が同盟関係になり、中国を囲い込もうとするのは、当然といえば当然です。

日米英同盟と、中国の対立はシーパワー国と将来シーパワー国になろうとするランドパワー国である中国との必然的なせめぎ合いなのです。このあたりを理解しておかないと、世界情勢は理解できないでしょう。

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2015年5月23日土曜日

アメリカとの対立も辞さない習近平 「米中冷戦時代」の到来か―【私の論評】今度はアジアに残った冷戦構造が鮮明になり、やがて崩壊する(゚д゚)!

2015年05月22日(Fri)  石 平 (中国問題・日中問題評論家)

中国の野望はどうなるのか? 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
先月末から今月中旬までの日米中露の4カ国による一連の外交上の動きは、アジア太平洋地域における「新しい冷戦時代」の幕開けを予感させるものとなった。

まず注目すべきなのは、先月26日からの安倍晋三首相の米国訪問である。この訪問において、自衛隊と米軍との軍事連携の全面強化を意味するガイドラインの歴史的再改定が実現され、日米主導のアジア太平洋経済圏構築を目指すTPPの早期締結の合意がなされた。政治・経済・軍事の多方面における日米一体化はこれで一段と進むこととなろう。

オバマ大統領の安倍首相に対する歓待も、日米の親密ぶりを強く印象付けた。そして5月1日掲載の拙稿で指摘しているように、アメリカとの歴史的和解と未来志向を強く訴えた安倍首相の米国議会演説は、アメリカの議員たちの心を強く打った。この一連の外交日程を通じて、まさに安倍演説の訴えた通り、両国関係は未来に向けた「希望の同盟関係」の佳境に入った。

もちろんその際、日米同盟の強化に尽力した両国首脳の視線の先にあるのは、太平洋の向こうの中国という国である。

「アメリカとの対立も辞さない」
という中国のメッセージ

米中冷戦勃発か?

2012年11月の発足以来、習政権は鄧小平時代以来の「韬光養晦戦略」(能在る鷹は爪隠す)を放棄して、アジアにおける中国の覇権樹立を目指して本格的に動き出した。13年11月の防空識別圏設定はその第一歩であったが、それ以来、南シナ海の島々での埋め立てや軍事基地の建設を着々と進めるなど、中国はアジアの平和と秩序を根底から脅かすような冒険的行動を次から次へと起こしてきた。

その一方、習主席はアメリカに対して、「太平洋は広いから米中両国を十分に収容できる」という趣旨のセリフを盛んに繰り返している。上述の「アジア新安全観」と照らし合わせてみると、中国の戦略的考えは明々白々である。要するに、太平洋を東側と西側にわけてその東側をアメリカの勢力範囲として容認する一方、太平洋の西側、すなわちアジア地域の南シナ海や東シナ海からアメリカの軍事力を閉め出し、中国の支配地域にする考えだ。

つまり、「太平洋における両国の覇権の棲み分けによって中国はアメリカと共存共栄できる用意がある」というのが、習主席がアメリカに持ちかけた「太平洋は広いから」という言葉の真意であるが、逆に、もしアメリカがアジア地域における中国の覇権を容認してくれなければ、中国はアメリカとの対立も辞さない、というのがこのセリフに隠されているもう一つのメッセージである。習近平は明確に、アジア太平洋地域における覇権を中国に明け渡すよう迫ったわけである。

アジア太平洋地域におけるアメリカのヘゲモニーは、世界大国としてのアメリカの国際的地位の最後の砦であり、死守しなければならない最後の一線である。近代以降の歴史において、まさにそれを守るがために、太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争という3つの対外戦争を戦い、夥しい若者たちの血が流れた。そうやって確保してきたアジア覇権を、今さら中国に易々と明け渡すわけにはいかない。


実際、オバマ政権になってからアメリカが「アジアへの回帰」を唱え始めたのも、2020年までに米海軍と空軍力の60%をアジア地域に配備する計画を立てたのも、まさに中国に対抗してこの地域におけるアメリカのヘゲモニーを守るためである。

経済面でもアジア支配の確立を目指す

さらに、習政権は経済面での「アメリカ追い出し作戦」に取りかかっている。2015年の春から、アメリカにとって重要な国であるイギリスを含めた57カ国を巻き込んでアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立の構想を一気に展開し始めた。これは明らかに、日米主導のアジア経済秩序を打ち壊して中国によるアジアの経済支配を確立するための戦略であるが、アメリカの経済的ヘゲモニーにまで触手を伸ばすことによって、習政権は米国との対立をいっそう深めたと言える。

ここまで追い詰められ、流石にオバマ政権は反転攻勢に出た。そうしなければ、アジア太平洋地域におけるアメリカのヘゲモニーは完全に崩壊してしまうからだ

そして、4月下旬の日米首脳会談を受け、日本が先頭に立って中国のAIIB構想に対する対抗の措置を次から次へと打ち出した。

日本は、迷うことはない


その数日後、米軍は南シナ海での中国の軍事的拡張に対し、海軍の航空機と艦船を使っての具体的な対抗措置を検討し始めたことが判明した。アメリカはようやく本気になってきたようである。このままでは、南シナ海での米中軍事対立は目の前の現実となる公算である。

こうした中で、ケリー米国務長官は今月16日から訪中し、南シナ海での盲動を中止するよう中国指導部に強く求めた。それに対し、中国の王毅外相は「中国の決意は強固で揺らぎないものだ」ときっぱりと拒否した。中国はもはやアメリカとの対立を隠そうともしない。

そして21日、米国防総省のウォーレン報道部長は記者会見の中で、中国が岩礁埋め立てを進める南シナ海で航行の自由を確保するため、中国が人工島の「領海」と主張する12カイリ(約22キロ)内に米軍の航空機や艦船を進入させるのが「次の段階」となると明言した。

今月20日、アメリカのCNNテレビが、南シナ海で人工島の建設を進める中国に対して偵察飛行を行うアメリカ軍機に中国海軍が8回も警告を発したという生々しい映像を放映したが、それはまさに、来るべき「米中冷戦」を象徴するような場面であると言えよう。

ベルリンの壁の崩壊をもってかつての冷戦時代が終焉してから26年、世界は再び、新しい冷戦時代に入ろうとしている。以前の冷戦構造の一方の主役はすでに消滅した旧ソ連であったが、今やそれに取って代わって、中国がその主役を買って出たのだ。

米中の対立構造がより鮮明になれば、日本にとってはむしろ分かりやすい状況である。戦後の日本はまさに冷戦構造の中で長い平和と繁栄を享受してきた歴史からすれば、「新しい冷戦」の始まりは別に悪いことでもない。その中で日本は、政治・経済・軍事などの多方面において、同じ価値観を持つ同盟国のアメリカと徹頭徹尾に連携して、アジア太平洋地域の既成秩序を守り抜けばそれで良い。ここまできたら、迷うことはもはや何もないのである。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】今度はアジアに残った冷戦構造が鮮明になり、やがて崩壊する(゚д゚)!

石平氏は、戦後の冷戦体制は、ソ連が崩壊した後には消滅したという考えたのようです。しかし、私はそうは思ってはいませんでした。確かに、ソ連が崩壊した後、東欧諸国は民主化や、非共産化をすすめ、冷戦体制は消滅し今日に至っています。

最近は、ウクライナ問題などか持ち上がり、冷戦体制に戻ると指摘する評論家もいましたが、それは実現しないことでしょう。なぜなら、今やロシアは小国に過ぎないからです。今のロシアは、最盛期のソ連と比較すると比べ物にならないほど国力が衰退してしまいました。ただし、旧ソ連から引き継いだ核兵器が脅威であることは今も変わりはありません。

今や、GDPは日本の1\5程度で、人口も日本より2000万人ほど多い、1億4000万に過ぎません。軍事力も、旧ソ連の核兵器を受け継いでいるという強み以外は何もありません。軍事的には、アメリカなどの足元にも及ばない脆弱なものになってしまいました。おそらく、今のロシアはまともに戦争をしたらEUにも勝つことはできないでしょう。

だから、冷戦体制は消滅したというのは、ある面では正しいです。ただし、アジアに限っては冷戦構造は崩れませんでした。それについては、このブログでも以前紹介したことがあるので、そのURLを以下に紹介します。
中国が北朝鮮を「我が国の省」として扱う可能性を示唆―米紙―【私の論評】そう簡単に事は済むのか?!
銃殺刑に処せられた張成沢(チャン・ソンテク)氏

この記事は2011年11月のものであり、まだ張成沢(チャン・ソンテク)氏が銃殺刑に処せられる前のものです。

この記事では、当時の北朝鮮の将来がどうなるかを掲載するとともに、冷戦構造がアジアでは、継続されていることを掲載しました。

私の当時の北朝鮮の将来のみたては、しばらく実質集団指導体制が続き、その後本格的な権力抗争が発生するというものでした。

張成沢氏が、2013年12月12日に処刑され、最近では今年4月30日、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長(国防相)が処刑されたということで、私の見立てはあたっていたと思います。

4月末に突然、処刑された玄永哲氏
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事より、アジアにおいては冷戦構造が終了していなかったという部分のみを以下にコピペさせていただきます。

わたしは、しばらく実質集団指導体制が続き、その後本格的な権力抗争が発生すると思います。おそらく、今から5年後くらいから、権力抗争が激しくなると思います。なぜ、そんなことがいえるかといえば、今のところ、どれも傑出した存在がないからです。 
いずれにせよ、東欧では終わった冷戦構造が、アジアではそのまま継続しています。なぜ、残ったかといえば、当事者であるはずの日本が、これに対して何もしてこなかったことにも要因があったと思います。 
もうそろそろ、日本も、こうした世界の流れに翻弄されだけではなく、自ら進むべき道を選べるようにすべき時期に来ているのではないでしょうか?そうでなけば、拉致問題はいつまでたっても解消できないでしょうし、これからも、世界の流れに翻弄されるだけの存在となることでしよう。 
世界特にアジアの国々は、過去のこの地域における日本の貢献を忘れてはならないと思います。日本が日露戦争に勝利したからこそ、朝鮮半島はロシアの傘下に収まることもありませんでした。その後も日本が中国にとどまったことにより、ロシアの浸食はありませんでした。 
もし、日本が、極東の一小国であり続けていたなら、朝鮮半島ならび、中国の満州いや、もっと広い中国の版図の一部もロシア領になっていた可能性があります。 
いやそれどころか、今頃日本などは存在せず、当時のソ連の傘下に収まっており、私たちは、公用語としてロシア語を日々語っていたかもしれません。いや、最悪は、関東以北がロシア領、以南が日本というように、今の朝鮮半島のように二分されていたかもしれません。そんなことになっていれば、今頃、このような、冷戦構造がなかったか、あるいはもっと酷い状況になっていたかもしれません。
ソ連の消滅によって、東欧諸国では確かに冷戦構造は消滅したのですが、アジアは何も変わりませんでした。中国と北朝鮮の体制は本質的に何も変わりませんでした。そうして、それは、日本がアジアにおいて何もしてこなかったことにも原因があります。

何もしなかったというより、何もできなかったということが正しいかもしれません。世界の動きに合わせて、日本が何もできなかったがために、そうして、特にオバマが大統領になってからは、中国に対して厳しい対処をとらなかったため、中国の野望を許してしまい、今日のブログ冒頭の記事のような事態を招いてしまったという事になると思います。

東欧では、確かに冷戦構造は終焉したのですが、アジアは何も変わらず温存されてしまったにもかかわらず、これに対して過去の政権は何もしてきませんでした。

まともに取り組もうとしたのは、安部総理のみです。

しかし、日本の野党などこのことに全く無頓着です。特に、安全保障法制をめぐる野党の質問は酷いものばかりです。これは、危機管理に関わることであるにもかかわらず、延々と平時の手続き論ばかりしているという有り様です。

東日本大震災における民主党の危機管理は最悪でした。しかし、彼らは未だ何も反省してないようです。現在、南シナ海で何が起こってるのかまるで、見えてないようです。他の野党も似たり寄ったりです。年をとって、白内障にでもなってしまったのでしょうか。

実際に、何をはじめるのか、到底理解できない中国の海洋進出に周辺国は困惑しています。しかし、放置すればいずれ日本もとんでもない事態に巻き込まれるでしょう。中国の海軍を押さえ込むために、何をすべきか?

そのリスクとリターンを議論すべき国会で、クイズばかりやってる馬鹿野党。あまりにレベル低過ぎて全く話にも何にもなりません。野党は、どうやって中国海軍の海洋進出を抑えこもうとしているのでしょうか。

まさか、憲法9条を尊重して、「話し合い」による解決を目指しているというのでしょうか。であれば、野党議員団で特別攻撃隊を結成し、今すぐ南シナ海に赴いて、南シナ海での中国の盲動の現場に立って、「話し合い」攻撃を仕掛ければ良いのではないでしょうか。

もしそんなことをすれば、張成沢氏のように機関砲で銃撃されて、全員玉砕することになると思いますが、それで日本の世論もかたまり、アジアの冷戦構造終焉のための、具体的な行動にすみやかに打って出ることができるようになるかもしれません。今の野党が、安全保障で役立つことができるとすれば、これくらいしかないかもしれません。まあ、そんなことは絶対にしないでしょうが・・・・・・・。

いずれにしても、日米同盟がより強固で緊密なものになり、アメリカにも安部総理のような大統領が出てくれば、アジアの冷戦構造も東欧のように瓦解することは間違いないものと思います。冷戦構造が瓦解したあかつきには、無論ソ連が崩壊したように、中国の現体制も崩れることになると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年11月25日火曜日

米国防長官が辞任 シリア政策で大統領と対立―【私の論評】レームダック化したオバマの振る舞いは危険ではあるが、アメリカ議会が超党派で動き出しているし、日本にとってはアジアでの存在感を高め「戦後体制から脱却」を推進する良いきっかけになると心得よ(゚д゚)!

米国防長官が辞任 シリア政策で大統領と対立

オバマ大統領とヘーゲル国防長官
【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は24日、ヘーゲル米国防長官の辞任を発表した。イラク情勢やシリア政策を巡るオバマ氏側との意見の対立が背景にある。オバマ政権で国防長官の辞任は3人目となる異例の事態だ。政権に打撃を及ぼすのは必至で、日米の同盟関係や北朝鮮情勢への対応など米国内外の外交・安全保障政策への影響も避けられない。

4日の米中間選挙で大敗した後の閣僚辞任は初めて。ヘーゲル氏は後任決まるまで職務を続ける。人事には米上院の承認が必要で政策の停滞を招く恐れもある。

ヘーゲル氏は共和党出身で昨年2月、2期目の目玉閣僚として迎えられた。ブッシュ政権下の共和に所属しながらイラク戦争に反対したヘーゲル氏をテコに超党派の政策を進める狙いだった。

オバマ氏は昨年、ヘーゲル氏が進言したシリアへの軍事介入を土壇場で見送る一方で、今年に入りライス大統領補佐官(国家安全保障担当)らの求めに応じてシリア領の過激派「イスラム国」への空爆を決断した。こうした経緯にヘーゲル氏は不満を強め、ホワイトハウスとの不協和音が伝えられていた。

エボラ出血熱への対応や「イスラム国」との戦いなど課題が山積するなか、司令塔となる重要閣僚の辞任は世界の安保体制にも波紋を広げる。

この記事は、要約です。詳細はこちらから!

【私の論評】レームダック化したオバマの振る舞いは危険ではあるが、アメリカ議会が超党派で動き出しているし、日本にとってはアジアでの存在感を高め「戦後体制から脱却」を推進する良いきっかけになると心得よ(゚д゚)!

シリア、ウクライナ、対中国等、オバマ大統領の外交には、かなりの疑問符がつきます。オバマの煮え切らない態度が、問題をかえって大きくしてしまっています。このようなことが、今回のヘーゲル国防長官の辞任劇に結びついているのは間違いないと思います。

日本では、マスコミなどがほとんど報道しないものの、尖閣の問題をこじらせたのは、オバマの責任でもあります。もし、オバマが早い段階で、「尖閣諸島は、日本固有の領土であり、日中間に領土問題はない」とはっきり声明を発表していれば、こじらすことはありませんでした。

さらに、中国がこのような声明を出しても、尖閣付近での領海・領空侵犯をやめなければ、尖閣付近で、日米両国による協同大軍事演習を実行するなどの実力行使にでるべきでした。無論、キーンソードなどの軍事演習は実行していますが、尖閣付近で実行するということに大きな意味と意義があります。それは、未だに実行していません。

このようなオバマの及び腰が、日中関係を複雑化させています。中国としては、このブログにも以前から何回か掲載してるように、尖閣問題や反日デモは憤怒のマグマが煮えたぎっている中国の人民の目を中国共産党政府から、日本にそらすため、意図して、意識して実行されたものです。

しかし、反日デモに関しては、それを許容していると、反日デモが政府追求デモに変わってしまうため、最近は官製主導のデモはやらなくなっただけです。

そうして、中国側には、その他の意図もあります。それは、日本にちょっかいを出してみて、アメリカがどう出るかを見ているというところもあります。早い時点で、アメリカが本気で怒りだしたら、尖閣問題はあそこまで、長期化しませんでした。

これについては、以前のこのブログでも掲載しました。そのブログのURLを以下に掲載します。
オバマ大統領が尖閣は安保条約の対象と明言、中国にも配慮―【私の論評】お花畑オバマは、尖閣衝突を誘発するだけ!!ブッシュなら中国に配慮するリバランスなど表明しなかっただろう(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の締めくくりの部分のみを以下に掲載させていただきます。
オバマ、最近外交はまるで駄目です。シリアでも、ウクラナイでも大失敗です。今回の尖閣問題に関しての発言は、時期を逸したということと、中国に配慮したリバランスしたということで全く意味のないものになったどころか、中国尖閣挑発の格好の裏付けを与えたようなものです。 
これは、オバマのシリア問題での大失敗、ウクラナイ問題での大失敗によっても十分証明されたと思います。 
このままだと、尖閣も第二のシリア、第二のウクラナイになってしまうおそれも十分あります。日本としては、中国が尖閣で挑発するなら、毅然たる態度で臨むべきでしょう。尖閣には、一兵たりとも上陸させない。上陸すれば、全員殲滅。寸土の土地も譲らないという態度でのぞむべきです。 
しかし、これほど米国大統領の来日が一般国民に軽視されることは過去69年間の戦後の日米関係の歴史でなかったことです。 
オバマ以前の大統領であれば、もっと歓迎されていました。 
たとえば、あのブッシュでさえ、もっと歓迎されていたと思います。
アメリカは超大国的な動きができなくなった?
オバマとブッシュの差異は、はっきりしています。たとえば、中国問題一つとっても、ブッシュまでは少なくとも年に一回くらいは大統領自らが、中国は、民主化されていないこと、政治と経済が分離されていないこと、法治国家化もされていないことなどに対して、苦言を呈していました。 
オバマも発言はするのですが、シリア、ウクラナイなどの例を見てもわかるように、すっかりタイミングを逸してから発言するなどの不手際が目立ちすぎです。最近の、プーチンのウクライナ対策などをみていると、オバマは超大国の大統領としての動きがとれていません。 
ロシアは、今や経済的にも軍事的にもとるに足りない国になりましたが、それでもロシアのプーチンは、超大国なみの動きをしていて、小国ロシアの国益のために努力しています。 
米国は、今や世界で唯一の超大国なのですが、オバマはとても超大国の大統領とは思えないような行動ばかりしています。 
このオバマの外交オンチ、いかんともしがたいです。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
オバマの外交オンチは、ごく最近のAPECでも露わにされました。それについては、以下の動画をご覧いただくと良くご理解いただけるものと思います。


この動画では、独立総合研究所の青山繁晴氏は、中国の習近平国家主席が言っている「新型の大国関係」とは、ハワイまでアメリカから奪い取る意味だと指摘しました。青山繁治氏は、それに同意しているオバマ大統領の外交姿勢をぶれぶれで困ったものだと批判しています。

ただし、上の動画で、日米関係がどうの言っているバカがいますが、この発言は明らかな間違いです。この発言は無視してください。

それにしても、オバマはハワイより西を中国にやるつもりなのでしょうか。とんでもないです。

そうして、上の動画では、習近平と安倍総理の会談がわずか、25分に過ぎなかったのですが、オバマとの会談ではかなり長時間を費やしかなりの厚遇をしたことも伝えています。

これは、何をあらわしているかといえば、中国の故事そのままです。

その故事とは、一言で言ってしまえば、「無能な敵将は厚遇し有能な敵将は冷遇する」というものです。

これは、著名な兵法書『六韜』が出典です。

第十五 文伐篇武力を使わず征伐(文伐)する方法を文王が呂尚(太公望)に尋ねる場面です。以下にそれを引用します。

呂尚図
文王が呂尚にたずねた。 
文王「武力を使わないで目的を達するには、どうすればよいか」 
呂尚「それには次の12の方法が考えられます。 
第一は、相手の欲するままに要求を聞き入れてやれば、やがて驕りの心が生じ、必ずや墓穴を掘るようなことをしでかします。 
第二は、敵国の寵臣を手なずけて、君主と権力を二分させるのです。 
第三は、側近の者に賄賂を贈って、しっかりとかれらの心をとらえるのです。 
第四は、相手国の君主に珠玉を贈り美人を献じ、女に溺れて政治を忘れるように仕向けたうえ、下手に出て、相手の言いなりになって調子を合わせるのです。 
第五は、相手国の忠臣を厚遇し、君主への贈物は減らして、相手の結束に楔を打ち込むのです。 
第六は、相手国の内臣を懐柔し、外臣を離間するのです。 
第七は、相手国の野心を封じこめるために、厚く賄賂を贈って寵臣を買収し、利益で釣って職責を怠るように仕向けるのです。 
第八は、相手国の君主に重宝を贈って、わが方を信頼するようにさせ、わが方に協力させるように仕向けるのです 
第九は、相手国の君主を褒め上げていい気持ちにさせ、手も足も出ないふりをして安心させ、政治を怠るように仕向けます。 
第十は、謙虚な態度で相手国の君主に仕えて心をつかみ、頼りになる味方だと思わせるのです。 
第十一は、相手国の有能な臣下に、内密に高い地位を約束し、重宝を贈って手なずけ、わが方に肩入れする人間を増やすのです。 
第十二は、相手国の乱臣を手なずけて君主の心を惑わし、美女や歌舞団を送って関心をそちらに向けさせるのです。 
以上の12の策をすべて試みてから武力を行使するのです。つまり、天の時、地の利を考え、これなら勝てると見極めてから、はじめて軍事行動を起すのです」
さて、オバマはこの策の九、十によって、半分籠絡され、習近平の言うことに生返事をしてしまったということです。安倍総理は、この手には全くのらなかったし、習近平の大負けであったということです。

習近平が大負けであったことを、象徴的に示す、ツイートを以下に掲載しておきます。
やはり、これから、日本をそうして、世界をリードしていこうという気概のある安倍総理と、もう中間選挙でも敗れて、レームダック化しているオバマとの違いは明らかです。

しかし、このようなオバマの体たらくですが、アメリカ議会は、こうしたオバマのレームダック化に業を煮やして超党派で、動きはじめています。

それに関しては、このブログでも掲載したばかりですので、その記事を以下に掲載します。
「米国の抑止力、とりわけ日本に対するそれを低下させる」中国軍の戦力増強に危機感-米委員会が年次報告書―【私の論評】国内の増税見送り、解散総選挙で見逃され勝ちな世界の動き、アメリカ議会の動きを見逃すな!アメリカは、日本の改憲を望んでいることを忘れるな(゚д゚)!
海岸防衛から大洋海軍を目指す中国海軍

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
米連邦議会の超党派の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」は20日、中国の軍事力増強に強く警鐘を鳴らす年次報告書を発表した。 
報告書は、米国に「新型大国関係」の構築を呼びかける中国が、現実には東シナ海上空に防空識別圏を設定し、南シナ海で軍事用滑走路を建設するなど、着々と覇権を拡大している事実を直視。「習近平国家主席には、高いレベルの緊張を引き起こす意思があることは明らかだ」と非難した。 
さらに、中国の行動パターンは「対中関係を和らげるために東アジアの同盟国を見捨てるのか、あるいは中国の侵略から同盟国を守って中国との潜在的な対立に直面するのか」を米国に迫ることが特徴だとし、強い警戒感を示している。
報告書は、こうした中国の脅威に対処するため、米国の地域におけるリバランス(再均衡)戦略を維持し、その進(しん)捗(ちょく)状況を検証することや、日本の集団的自衛権行使を後押しすることなどを提言している。 
オバマに関しては、もうレームダック化しており、特に外交においては、能力がどうのこうのという次元ではなく、もうやる気そのものがないようです。しかし、このようなオバマの投げやりな態度をそのまま、許容するわけにもいかず、アメリカ議会が超党派で動き出しているわけです。

そうして、このブログ記事では、このようにアメリカ議会は、日本の集団的自衛権行使を後押しすることなどを提言しています。そうして、ここで、多くの日本人が知っておかなければならないのは、このブログにも掲載したように、もう数年前から、「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派になっているということです。

オバマのレームダック化は、ある一面では、脅威でもありますし、実際にオバマの優柔不断で、日本も被害を受け、尖閣問題が複雑化しています。

しかし、これはまた別の側面から見れば、日本にとってのチャンスになるかもしれません。アメリカは従来のように超大国でありつづけることは難しいかもしれません。しかしそれでも、ここ当面は世界唯一の超大国でありつづけるでしょう。

反面中国は、超大国とはなり得ず、直近では経済も落ち込み、もう富裕層からも見離されています。おそらく、現体制が長続きすることはありません。

そうなると、安倍総理が進めようとしている、「戦後体制からの脱却」が進めやすい環境が整いつつあるともいえます。

オバマの時代はもうすぐ、終わります、その次の大統領は、アジア、特に中国に対してどのような対応をするのか、いまのところ見えていませんが、オバマのようなやる気のない外交ということはあり得ないと思います。

年次記者ホワイトハウス晩餐会、レームダックを露呈したオバマ

オバマのやる気のなさは、中国を配慮したリバランスなどという矛盾を生み出し、中国近隣の諸国に混乱をもたらしました。しかし、こうした混乱があったらこそ、中国の海洋進出などの意図がはっきりして、それに対する脅威や、警戒感を生み出しました。

アメリカ議会もそれをはっきり理解して、今日では日本はアジアの平和に貢献して欲しいと考えるようになりました。日本国内でも、オバマのレームダック化ぶりは、安全保障を見直す、良いきっかけになると考えられます。

安倍総理は、このブログでも何回か掲載している「安全保障のダイヤモンド」をさらに推進して、アジアにおける日本の存在感をさらに高め、ゆくゆくは「戦後体制から脱却」を目指していただきたいものです。オバマのおかげで、そのような条件が、整いつつあるように思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年5月2日金曜日

成功は対立の中にある。自分と違う意見の人を見つけて、あえて議論をする価値―【私の論評】ドラッカーも昔から主張する意思決定のための意見の不一致!増税決定の意思決定のように、皆が賛成する意思決定にはろくなものがない(゚д゚)!

成功は対立の中にある。自分と違う意見の人を見つけて、あえて議論をする価値



自分のことを常に応援してくれたり、自分と性格が似ている人に囲まれながら過ごすのは気持ちの良いことです。気のいい仲間と一緒にいると自信が高まり、リラックスできます。こうして、多くの人は一緒に働きたい仲間の輪を築いていきます。それは、快適で居心地のよい環境です。互いに心地よいペースを簡単につくれますし、仕事もうまく進むでしょう。ですが一方で、そこまで心地よい環境では、事業やキャリアを成長させるのに必要な学びやイノベーションが阻害されることもあります。

自分の意見に同調してくれる仲間がいるのは素敵なことですが、健全な対立、異なる視点というのも、時には必要です。特に、集団思考(集団の中で愚かな決定をしてしまうこと)や理想の中から真実を見つけ出すためには必要です。グループのメンバー全員が同じような視点を持っていたら、仕事は確証バイアスに陥り、型にはまった考え方から抜け出せず、起こるはずではなかった失敗が起きるようになります。

あなたの人脈について、考えてみてください。その顔ぶれは何年も変わっておらず、同業界の人ばかりではないですか? 同じ話題について、あなたと似た視点を持っていますか? そうだとしたら、今こそ変化を起こし、居心地の悪い環境を作るべきです。組織のリーダーにとっては、周囲の人があなたの意見に同意せず、議論をもちかけてくるような環境をつくるのは、ハードルの高いことかもしれません。ですが、私の良き友人であり同僚でもあるAmilya Antonettiは「対立からこそ、素晴らしいアイデアがうまれる」と言います。

今回紹介するのは、あなたの視点を広げ、成功のチャンスを高めるために、周囲の人を巻き込む5つのヒントです。


1. 自分の考え方が古くなっている分野を見つける

2. 対立が存在する場所に行く

3. 友好的な議論に参加する

4. 定期的に相手の状況をチェックする

5. 議論の成果を共有し、互いに感謝する

Want Success? Surround Yourself With People Who Challenge Your Thinking|Inc.

Kevin Daum(訳:佐藤ゆき)

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【私の論評】ドラッカーも昔から主張する意思決定のための意見の不一致!増税決定の意思決定のように、皆が賛成する意思決定にはろくなものがない(゚д゚)!

意見の不一致は、会社の意思決定以外にも生じるのが
普通。しょうじないというのなら、何かがおかしい(゚д゚)!


ドラッカーは、上記のようなことをすでに数十年も前から主張しています。
 成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)
ドラッカーは、意思決定の過程では意見の不一致が必要だといいます。理由は三つあります。
 第一に、組織の囚人になることを防ぐためです。組織では、あらゆる者が、あらゆる決定から何かを得ようとします。特別のものを欲し、善意の下に、都合のよい決定を得ようとします。 
 そのようなことでは、小さな利害だけで決定が行なわれます。問題の理解抜きでのそのような決定の仕方は、きわめて危険です。
 第二に、選択肢、つまり代案を得るためです。決定には、常に間違う危険が伴います。 
 最初から間違っていることもあれば、状況の変化によって間違うこともあります。決定のプロセスにおいて他の選択肢を考えてあれば、次に頼るべきものとして、十分に考えたもの、検討ずみのもの、理解ずみのものを持つことができます。 
 逆に、全員一致で決めていたのでは、その決められたものしか案がないことになります。
 第三に、想像力を刺激するためです。理論づけられ、検討し尽くされ、かつ裏づけられている反対意見こそ、想像力にとって最も効果的な刺激剤となります。すばらしい案も生まれます。 
 明らかに間違った結論に達している者は、自分とは違う現実を見て、違う問題に気づいているに違いないと考えなければなりません。 
 もし、彼の意見が知的かつ合理的であるとするならば、彼はどのような現実を見ているのかを考えなければなりません。意見の不一致こそが宝の山です。意見の不一致が問題への理解をもたらしてくれます。 
 いかなる問題であれ、意見の不一致が皆無などということは、奇跡です。いわんや、四六時中奇跡を起こしているなどありえないと心得るべきです。それでは、社長が一人いればよいことになります。 
 後で不祥事となった行動の多くが、ろくに議論もされずに決められていることは偶然ではありません 
 「成果をあげる者は、何よりも問題の理解に関心をもつ」(『経営者の条件』)
 意見の不一致のない、意思決定は非常に危険です。それは企業内の意思決定についても同じです。無論、企業などの組織では、職位の高い人の意見が優先するのは当たり前のことです。しかし、職位の一番高い社長や会長の意見と、それ以下の人たちの意見がいつも一致するというようなことがあれば、それは全く異常なことです。何かが間違えています。

最終的に職位の最も高い人の意見に従うということにはなりますが、それでも職位の低い人も意見は述べるべきでしょう。上の事例では、意見の不一致があったときに、相手がどのような現実を見ているのかを知るべきとしています。

この場合、無論全く異なる現実を見ている場合もありますが、実は同じ現実みているにもかかわらよず、意見の不一致があるという場合もあります。

それにしても、意見の不一致、対立がほとんどなかった事例として、昨年の増税論議があります。自民党の中では、ごく少数派の人々が増税に反対していましたが、大勢は増税賛成というより、増税は当前で、やらなければならないものという意見でした。

脚の長さの違いに着目(゚д゚)! こんな不一致は意味なし!

そうして、増税をするとせっかく昨年4月から実施し始めたアベノミクスの第一矢である、異次元の包括的金融緩和の腰を折り、景気の腰折れを起こすので、追加財政措置で5.5兆円を財政出動するということまでほとんど意見が一致したようです。

このような予算に群がる寄生虫ネットワークの住人たち(政治家など)にとっては、消費税増税対策の補正予算は、甘い蜜以外のなにものでもありません。むしろこの甘い蜜をほしいために、消費税増税をすすめたり黙認しているでしょう。

特に自民党内では、増税をすすめたり黙認する人々が大勢を占め、結果として内閣参与の中のそれも一部の人たちは別として、自民党内では増税すべきという意見が、大勢を占め、安部総理や菅官房長官、その他のごく一部の人たちが増税に反対でした。石破幹事長などは、はやい時期から「自民党内は増税で固まっている」と語っていました。

まともに議論もされず、意見の不一致も認識されないまま、自民党大勢派に押し切られた形で安部総理は増税の決断をしなければなりませんでした。結局、安部総理としては、せっかくアベノミクスの第一の矢である包括的金融緩和によって、景気がよくなり、デフレから脱客できる可能性が高まったのにもかかわらず、増税してしまえば、デフレ脱却が遠のくことを懸念していたため、忸怩たる思いだったでしょう。

しかし、あの時点で、増税見送りをしてしまえば、党内のほとんどが反対派にまわり、安倍長期政権も得に描いた餅におわってしまうため、やむを得ず増税の決定をしたものです。

増税などの重要な意思決定をするには、意見の不一致があるのが当然であり、この不一致の中で検討を重ねることにより、まともな考えが醸成され、まともな意思決定ができるようになります。

晩年のアルフレッド・スローン

ドラッカーの著書にもGMの会長だったアルフレッド・スローンが、会議で反対意見が全くなかった場合は、この議論はまだまだ醸成されらおらず、よって次の機会にまた話し合うことにするとして、反対意見がでることを助長していました。

いつも会議で満場一致のようになる企業・政府などの組織、全くおかしいです。こんなことになるのは、独裁的であるか、あるいは無責任な経営者の・政治家の集まりの組織以外にあり得ません。

意思決定において、反対意見が全くないとか、反対意見を言えるような雰囲気ではないという状況は最悪です。この面からみても、自民党の増税の意思決定は大失敗だったと思います。

憲法改正などの意思決定においても、たとえば、民主党、社民党、共産党の反対意見は、重要です。彼らのお花畑的な考えで、憲法解釈などしていたら、この日本というという国がとんでもないことになってしまうことが、目に見えるように理解できるので、ますます自信を深めることができます。

とにかく、どのようなことにでも、意思決定においては、意見の不一致は重要です。意見不一致が表面化しないような意思決定はまともなものではありません。私たちは、これを前提として、重要な意思決定をすべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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