2024年9月3日火曜日

習近平の中国で「消費崩壊」の驚くべき実態…!上海、北京ですら、外食産業利益9割減の衝撃!―【私の論評】中国経済のデフレ圧力と国際金融のトリレンマ:崩壊の危機に直面する理由

習近平の中国で「消費崩壊」の驚くべき実態…!上海、北京ですら、外食産業利益9割減の衝撃!

まとめ
  • 上海と北京で消費が深刻に低迷しており、特に上海では6月の小売総額が前年同期比で9.4%減少した。
  • 上海の宿泊・外食関連売上は6.5%減、日用品は13.5%減少し、市民の生活が「縮衣節食」に変わっている。
  • 北京でも上半期の小売総額が0.8%減少し、外食産業の一定規模以上の飲食店の利益が88.8%減少した。
  • 消費低迷は政府関係者や富裕層を含む市民全体の金銭的余裕の欠如を示しており、未曾有の大不況が進行している。
  • 上海と北京の消費崩壊は、中国全体の経済に深刻な影響を与える可能性があり、今後の経済政策に注目が必要。
上海の目抜き通り

上海と北京という中国の主要な経済都市で、深刻な消費低迷が発生している。これらの都市はかつて「中国の繁栄」の象徴とされていましたが、現在は「消費崩壊」とも言える状況に直面している。

上海では、2024年6月の小売総額が前年同期比で9.4%減少した。特に、宿泊や外食関連の売上は6.5%減、食料品は1.7%減、衣料品は5.0%減、日用品に至っては13.5%も減少している。このような数字は、上海の市民が外食を控え、日常生活においても節約志向が強まっていることを示している。市民は「縮衣節食」の生活に入り、消費活動が大幅に縮小している。

一方、北京でも同様の傾向が見られます。2024年上半期の北京市の小売総額は前年同期比で0.8%減少したが、外食産業に関するデータは特に衝撃的だ。一定規模以上の飲食店の利益が前年同期比で88.8%も減少し、これは業界全体にとって深刻な問題を示している。外食産業全体の売上は637.1億元で前年同期比3.5%減に留まっているが、利益の大幅減少は、激しい価格競争に巻き込まれていることを意味している。飲食店は、最低限の売上を維持するために価格を抑え、利益を削るしかない状況に追い込まれている。

このような消費の低迷は、政府関係者や企業の経営者、富裕層を含む市民全体が金銭的な余裕を失っていることを示している。特に、北京は中央官庁や大企業の本社が集まる場所であり、ここでの消費低迷は驚くべき現象だ。飲食を重視する文化を持つ北京っ子が、外食を控えるほどの節約を強いられていることは、未曾有の大不況が進行している証拠だ。

上海と北京での消費崩壊は、これらの都市の経済に大きな打撃を与えるだけでなく、中国全体の経済にも深刻な影響を及ぼすだろう。これらの都市でさえ消費が低迷しているとなれば、全国の消費市場がどれほどの不況に陥っているかは明白だ。さらに、不動産開発という中国経済の支柱産業が崩壊している中で、消費の低迷が続く場合、中国経済はさらに厳しい状況に直面することが予想される。

このように、上海と北京の消費低迷は単なる一時的な現象ではなく、深刻な経済問題を反映しています。これらの都市での消費の縮小は、中国全体の経済に対する警鐘であり、今後の経済政策や市場の動向に注目が必要です。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国経済のデフレ圧力と国際金融のトリレンマ:崩壊の危機に直面する理由

まとめ
  • 中国政府が公表する公式のGDP統計は信頼できないが、消費動向や物価指数から中国経済がデフレ圧力に直面していることが明らかである。
  • 消費の低迷や不動産市場の低迷が進行しており、デフレ圧力が拡大しているため、政府は内需刺激策を検討しているが、人民元安への懸念から大規模な金融緩和には踏み切れない。
  • 中国経済は国際金融のトリレンマに直面しており、独立した金融政策、為替相場の安定、自由な資本移動の3つを同時に達成することができない状況にある。
  • 中国共産党は統治の正当性を維持するため、経済成長や社会の安定を重視しており、変動相場制や資本自由化の根本的な制度改革を躊躇している。
  • トリレンマから脱出できない場合、経済成長の鈍化や不動産市場の崩壊、金融システムの機能不全が進行し、最終的には経済崩壊に至る可能性がある。
中国の経済状況について、中国政府が公表する公式のGDP統計は信頼できないと、このブログでは何度か述べてきました。しかし、これだけでなく、消費動向などの実態からも中国経済の状況を把握することができます。消費の低迷は、中国経済がデフレ傾向にあることを示唆しています。例えば、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+0.2%とほぼゼロに近い水準であり、コアCPIも+0.6%と低い水準が続いています。


また、景気減速を背景に消費が低迷しており、特に上海や北京などの主要都市でも消費の落ち込みが顕著です。さらに、消費者の低価格志向が強まり、小売業では値下げ競争が激化しています。このような状況では、需要が低迷する一方で生産が続いているため、需給ギャップが拡大し、デフレ圧力を招いていると判断できます。

加えて、不動産市場の低迷も影響を与えています。不動産価格の下落は資産デフレを引き起こし、さらなるデフレ圧力となっています。これらの要因から、中国経済はディスインフレ段階を経て、デフレ圧力に直面しているといえます。

政府もこの事態に危機感を強めており、内需刺激策を検討していますが、人民元安への懸念から大規模な金融緩和には踏み切れない状況です。したがって、公式のGDP統計の信頼性に疑問があるとしても、消費動向や物価指数などの実態的な指標から、中国経済がデフレ圧力に直面していることは明らかだと考えられます。

中国経済がデフレ圧力に直面していることは明白ですが、金融緩和に踏み切れない主な理由は以下のとおりです。

第一に、人民元安への懸念があります。中国当局は人民元の為替レートを非常に重視しており、過度な人民元安を避けたいと考えています。金融緩和を行えば、金利差から資金流出が加速し、人民元安が進行する可能性が高まります。昨年は人民元安により米ドル建てGDPが29年ぶりに減少し、世界経済における中国の存在感低下につながりました。このような事態の再発を当局は恐れています。

第二に、国際金融市場の動向があります。米国ではインフレの粘り強さが意識され、FRBの金融政策に対する見方が変化しています。これにより米ドル高圧力が生じており、中国が金融緩和に動けば、金融政策の方向性の違いから更なる資金流出と人民元安を招く恐れがあります。

第三に、不動産市場や家計債務への懸念があります。金融緩和は不動産市場の過熱や家計債務の拡大につながる可能性があり、これらのリスクを当局は警戒しています。

これらの要因により、中国当局は金融緩和に慎重にならざるを得ず、景気下支えのための対応は「小出し」に留まる可能性が高いと考えられます。デフレ圧力に直面しながらも、人民元安や金融リスクを恐れて大規模な金融緩和に踏み切れない状況が続いているのです。

以上は、現象面を指摘してきましたが、このような現象を招いているのには根本的な要因があります。

中国経済は随分前から、国際金融のトリレンマ(三すくみ)に直面しています。このトリレンマとは、一国が「独立した金融政策」「為替相場の安定」「自由な資本移動」の3つを同時に達成することができず、2つしか選択できないという理論です。この理論は、経験則的にも数学的にも証明されているものです。


中国の場合、独立した金融政策を維持したいという意向がある一方で、人民元の急激な変動を避けるために為替相場の安定も重視しています。そのため、資本移動を部分的に制限しています。

しかし、近年の段階的な資本自由化により、人民元相場と内外金利差の相互影響が強まっており、中国はトリレンマの制約を強く受けるようになっています。金融緩和を行おうとすると、資本流出と人民元安の圧力が生じ、人民元安を防ぐためには外貨準備の取り崩しが必要になります。

また、資本規制を強化すると国際化が後退するリスクもあります。これらの要因により、中国当局は大規模な金融緩和に踏み切れない状況にあります。

トリレンマの制約が強まる中で、金融政策の独立性、為替相場の安定、資本移動の自由化のバランスを取ることがますます難しくなっています。結論として、中国はデフレ圧力に直面しながらも、国際金融のトリレンマゆえに大規模な金融緩和に踏み切れない状況に陥っているのです。この問題を解決するには、長期的には変動相場制への移行など、より根本的な制度改革が必要になると考えられます。

以上のようなことは、経済理論から言って明らかといえるのですが、中国共産党が変動相場制への移行や資本自由化などの根本的な制度改革を躊躇しています。その根本原因は、党の統治の正当性に深く関わっています。

中国共産党の統治の正当性は、主に以下の要素に基づいています:
1. 経済成長の維持と国民生活の向上
2. 社会の安定性の確保
3. 国家主権と領土保全の維持
4. ナショナリズムの高揚
変動相場制への移行や資本自由化は、これらの要素を直接的に脅かす可能性があります。

まず、経済成長の維持について、変動相場制への移行は人民元の急激な変動をもたらす可能性があり、輸出主導の経済構造を持つ中国にとって、経済の不安定化を招くリスクがあります。これは党の経済運営能力への信頼を損なう可能性があります。

次に、社会の安定性に関して、資本自由化は大規模な資本流出のリスクを高めます。中国の富裕層を中心に、「自国内に全財産を置くことに政治的リスクを感じる人は少なくない」とされており、資本移動が完全に自由になれば、海外資産の保有割合を大きく増やす可能性があります。これは国内経済の不安定化につながり、社会の安定を脅かす可能性があります。

さらに、国家主権の観点から、資本自由化は外国資本の影響力を増大させ、中国共産党の経済政策の自主性を弱める可能性があります。党は「独立した金融政策」と「為替相場の安定」を重視しており、これらを犠牲にすることは党の統治能力への疑念を生む可能性があります。

中国の政治体制における「正統性」の問題は、経済社会の変容に適応しながら、いかに党の統治を正当化するかという課題と密接に関連しています。急激な制度改革は、党が長年かけて構築してきた正統性の基盤を揺るがす可能性があるため、慎重にならざるを得ないのです。

加えて、資本規制は経済的理由だけでなく、情報統制や社会管理の手段としても機能しています。資本の自由化は、これらの統制手段を弱める可能性があります。

また、近年の米中対立の激化や、COVID-19パンデミック後の世界経済の不確実性の増大により、中国政府はより慎重な姿勢を取っています。これらの国際情勢の変化も、根本的な制度改革を躊躇させる要因となっています。

一方で、中国の金融政策は必ずしも完全に閉鎖的ではなく、徐々に開放を進めている面もあります。例えば、人民元の国際化や、外国投資家向けの債券市場の開放などが挙げられます。これらの段階的な改革は、急激な変化を避けつつ、国際的な要請に応える試みと見ることができます。

北京 天安門

結論として、中国共産党は経済の安定と成長、社会の安定、国家主権の維持、ナショナリズムの高揚を通じて統治の正当性を確保しています。変動相場制への移行や資本自由化などの根本的な制度改革は、これらの要素を脅かす可能性があるため、党はこれらの改革を慎重に進めざるを得ない状況にあると言えます。同時に、国際的な要請に応えるため、段階的な開放政策も進めており、中国共産党はこの複雑なバランスの中で制限をうけながら、政策決定を行っています。

中国が国際金融のトリレンマから脱出できない場合、長期的には深刻な経済問題に直面し、最終的には経済崩壊に至る可能性があります。具体的には、経済成長の鈍化と停滞が予想されます。資本移動の制限により、海外からの投資が減少し、国内の資金調達コストが上昇することで、企業の投資意欲が低下し、経済成長が著しく鈍化する恐れがあります。

最悪の場合、経済の完全な崩壊と政治体制の崩壊につながるリスクも否定できません。中国政府は段階的な改革を進めていますが、根本的な制度改革を先送りし続ければ、長期的には経済崩壊のリスクが高まることは避けられないでしょう。

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