2024年9月21日土曜日

3位転落 小泉進次郎の「誤算」、自民党総裁選の終盤情勢は?「高市総理」誕生なるか―【私の論評】高市早苗氏の支持急増と派閥政治への影響:保守主義と急進改革の対立

3位転落 小泉進次郎の「誤算」、自民党総裁選の終盤情勢は?「高市総理」誕生なるか

まとめ
  • 自民党総裁選は2024年9月27日に投開票予定で、候補者は9人。小泉進次郎氏の支持が伸び悩む中、高市早苗氏が勢いを増している。
  • 各種世論調査では、石破茂氏、高市氏、小泉氏が上位3位にランクインしており、高市氏の支持が特に強い。
  • 国会議員票の行方が重要で、小泉氏は約50票を確保しているが、目標には届いていない。
  • 決選投票では高市氏と石破氏が進む可能性が高く、政策を明確に打ち出す候補が有利になる傾向がある。
  • 各メディアの調査結果では、候補者間での支持率に差が見られ、総裁選の行方は依然として不透明である。

小泉進次郎氏

自民党総裁選は2024年9月27日に投開票が予定されており、9人の候補者による論戦が繰り広げられている。当初、有力視されていた小泉進次郎氏の支持が伸び悩む一方で、高市早苗氏が勢いを増しており、石破茂氏も有力候補として注目されている。小泉氏は改革派として、国政選挙において「改革といえば自民」というイメージを掲げ、迅速な変革を進めることを主張している。

世論調査の結果では、石破氏、高市氏、小泉氏が上位3位を占めることが多く、自民党支持層では高市氏の支持が強い傾向がある。地方党員票では石破氏と高市氏が優位に立ち、国会議員票の行方が重要な要素となっている。小泉氏は約50票を確保しているが、目標には届いていない状況だ。多くの議員がまだ態度を決めかねているため、選挙戦は流動的だ。

今後の展開として、高市氏と石破氏が決選投票に進む可能性が高いとの見方があります。決選投票では国会議員の動向が鍵を握り、政策を明確に打ち出す候補が票を伸ばす傾向にあるため、高市氏に有利な局面も考えられます。

各種調査結果の現状は以下の通り:

●共同通信(9月15~16日)
1位 高市早苗氏 27.7%
2位 石破茂氏  23.7%
3位 小泉進次郎氏 19.9%

●朝日新聞(9月14~15日)
1位 石破茂氏 32%
2位 小泉進次郎氏 24%
3位 高市早苗氏 17%

●読売新聞(9月14~15日)
1位 石破茂氏 26%
2位 高市早苗氏 25%
3位 小泉進次郎氏 24.1%

●産経新聞(9月14~15日)
1位 小泉進次郎氏 29.4%
2位 石破茂氏 24.1%
3位 高市早苗氏 16.3%

●日経新聞(9月13~15日)
1位 石破茂氏 25%
2位 高市早苗氏 22%
3位 小泉進次郎氏 21%

総裁選の行方は依然として不透明であり、上位3候補による激戦が続いている状況だ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】高市早苗氏の支持急増と派閥政治への影響:保守主義と急進改革の対立

まとめ
  • 高市早苗氏の支持率上昇は、自民党内の主要派閥に危機感を与え、従来の派閥政治の構図を揺るがす可能性がある。
  • 高市氏の支持が急増している理由は、経済安全保障政策の実績や保守的な国家観、経済成長を重視する政策によるもの。
  • 高市氏の政策は、戦略的な財政出動や既存の制度を基盤とした着実な改革を強調し、企業からの支持も集めている。
  • ドラッカーの保守主義を例に、高市氏の漸進的な改革が予測可能で実現可能なアプローチと評価できる一方、小泉進次郎氏の急進的な改革はリスクを伴う可能性が大きい。
  • 小泉氏の急進的な改革路線は、自民党の保守的支持層には危険と映る可能性があり、それに対して高市氏の保守的な政策が支持を集めている。

高市早苗氏

高市早苗氏の支持率上昇と勢いの増加は、自民党内に大きな波紋を広げています。当初は泡沫候補に近い扱いを受けていた高市氏ですが、最近では急速に支持を集めており、この状況は一部の派閥にパニックを引き起こしています。

特に旧岸田派、麻生派、旧二階派などの主要派閥は、高市氏の台頭に危機感を抱いているとされています。これらの派閥は従来の派閥政治の枠組みの中で影響力を維持してきましたが、高市氏の支持拡大により、その構図が崩れる可能性が出てきたためです。

高市氏の支持が急増している理由として、経済安全保障担当大臣としての実績や、明確な国家観と経済政策の主張が挙げられます。彼女は経済や国防に関して保守的な立場を示しており、一部の支持層から強い支持を得ています。

また、高市氏は「子育て支援金制度」について、「社会保険料で財源を生み出すことになると、実質的に増税と同じだ」と述べています。さらに、「特に子育て世代の生活を圧迫することになり、やるべきではない」と明確に否定的な立場を示しています。

代替案として、「所得が増えれば歳入は2倍から3倍に増える。まずはいかに所得を増やすか、GDPを大きくしていくかということで成長戦略を訴えている」と述べ、経済成長を通じた財源確保を主張しています。

さらに、高市氏は成長分野や危機管理分野への戦略的な財政出動を主張しており、これが企業からの支持を集めている可能性があります。「明確な国家観を持ち、国家経営理念をしっかり打ち出せる人」という姿勢を強調する彼女のアプローチは、従来の派閥政治とは異なる動きを生み出しています。

この状況は、自民党内の力学や総裁選の行方に大きな影響を与える可能性があり、今後の展開が注目されています。特に、岸田派や麻生派、二階派などの主要派閥が高市氏の台頭にどのように対応するかが、総裁選の結果を左右する重要な要素となるでしょう。

麻生太郎氏

麻生派が高市早苗氏を支持する可能性は十分に考えられます。まず、河野太郎氏の支持が伸び悩んでいる現状があり、麻生派としても期待通りの展開にはなっていません。また、麻生派内には石破茂氏に対して否定的な感情を持つ議員が多く、小泉進次郎氏が菅義偉元首相の後ろ盾を得ていることから、麻生派にとって小泉氏を支持することは難しい状況です。

高市氏の経済安全保障政策や保守的な姿勢は麻生派の政策方針と比較的近く、決選投票で高市氏と石破氏、または高市氏と小泉氏という構図になった場合、麻生派にとって高市氏を支持することが戦略的に有利な選択肢となる可能性があります。麻生氏が派閥内で柔軟な対応を取る余地を示唆していることも、高市氏への支持につながる要因となるでしょう。

当初、泡沫候補に近い扱いを受けていた高市氏がここまで勢いを増したことは驚くべきことです。一方で、当初は有望視されていた小泉進次郎氏が勢いを落としたことも、同様に注目すべき点です。

これは、小泉氏が改革推進派である一方、高市氏が保守派であるという立場の違いの結果かもしれません。ただし、保守主義については多くの人に誤解があるように思われます。保守主義とは、政治上の立場ではないことをこのブログでは過去に掲載しました。どちらかというと、日本語でいうところの中庸に近いものです。

経営学の大家ドラッカーは保守主義について次のように明確に述べています。

「保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会を保つための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していく原理である。これ以外の原理はすべて破綻を招く」(ドラッカー名著集(10)『産業人の未来』)。

ドラッカーが提唱する保守主義は、過去を懐かしむものではなく、未来志向のもとで現実的な問題解決を目指すものです。この考え方には、未来志向であること、現実的な問題解決を重視すること、既存の知識や方法を活用することという3つの特徴があります。

ドラッカーは「過去は復活しえない」「青写真や万能薬をあきらめ、目前の問題に対して有効な解決策を見つける」「使えるものはすでに手元にあるものだけである」と述べ、既存の制度や知識を基盤とした漸進的な改革を重視しています。

彼は、急激な変化が社会に不安定をもたらす可能性があるため、予測可能で実現可能な改革を推奨しています。また、漸進的な改革は広範な合意を得やすく、社会の分断を防ぐ効果もあります。

ドラッカー

一方で、小泉進次郎氏の改革路線は、より急進的で大胆な政策を打ち出しています。彼は「聖域なき構造改革」を掲げ、選択的夫婦別姓やライドシェアの全面解禁、解雇規制の緩和などを提案しています。こうした改革は革新的と評価される一方、急激な変革が社会に混乱をもたらすリスクも指摘されています。特に労働市場改革などの敏感な分野では、慎重なアプローチが求められるべきです。

2023年6月に成立したLGBT理解増進法は、急進的改革の一例として挙げられます。この法律は性的マイノリティへの理解を促進するものですが、その成立過程や内容は、ドラッカーの保守主義的アプローチとは異なり、急進的な側面が目立ちました。拙速な成立には疑問が呈されており、急進的な改革には予期せぬ結果が生じる可能性もあることを認識する必要があります。

こうした背景から、小泉進次郎氏の急進的な改革路線が、保守的な自民党の支持層には危険と映った可能性があります。小泉氏が総理となり、改革を実行すれば、自民党の保守岩盤支持層がさらに離れるという危機感を抱いているのかもしれません。

これは必ずしも上で述べた理路整然としたドラッカーの保守主義の認識に基づくものではなく、肌で感じ取った危機感や地頭での判断かもしれません。しかし、従来の派閥の論理からは離れた動きとして注目すべきと思います。

一方で、高市氏は急激な変革よりも既存の制度や価値観を基盤とした政策を重視しており、それが支持を集める要因となっていると考えられます。彼女の政策や行動を過激と見なす人もいますが、歴史的および国際的な視点から見ると、高市氏の政策等は保守本道を着実に進めているに過ぎないと言えるでしょう。

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