2024年9月8日日曜日

自民党総裁選、高市氏の「勝機」は キングメーカー争いの裏に可能性あり 高橋洋一―【私の論評】自民党総裁選で高市早苗氏が勝利を目指すための戦略と差別化ポイント


まとめ
  • 高市早苗経済安保相は自民党総裁選に出馬表明を予定しており、世論調査では小泉進次郎氏、石破茂氏に次ぐ3位となっている。
  • 党員票が重要な鍵を握る中、討論会などでの支持の変動が期待され、高市氏は新鮮味と経験を兼ね備えている。
  • 総裁選は菅義偉前首相と麻生太郎党副総裁の影響力争いであり、小泉氏と石破氏が上位に立つといずれが勝利しても菅氏の勝利となる。それを阻止するため麻生氏が高市氏を支持にまわる可能性がある。

 高市早苗経済安保相は、9月9日に自民党総裁選への出馬を表明する方針だ。現在の世論調査では、小泉進次郎氏や石破茂氏に次いで3位となっている。総裁選では、12日の告示日には6~8人程度が立候補する見込みで、国会議員票は367票だが、候補者には各々推薦人20人が必要なので、国会議員票は分散化し、第1回の投票では国会議員票で大きな差が付きにくい。となると、党員票がカギを分ける。

 世論調査によれば、自民党支持層では小泉氏が1位、石破氏が2位、高市氏が3位となっており、現状では高市氏が決選投票に進めない可能性もある。しかし、総裁選はまだ始まっておらず、討論会などで各候補者の支持が変動する可能性がある。小泉氏には勢いがあるが、石破氏はやや停滞しており、高市氏は新鮮味と経験を兼ね備えている。

 また、今回の総裁選は、二人のキングメーカー菅義偉前首相と麻生太郎党副総裁の影響力争いとも見られている。小泉氏と石破氏が上位2人になると、菅氏の勝利となり、麻生氏は高市氏を支持する可能性もある。決選投票では、小泉氏が過半数を取る可能性もあるが、高市氏が支持を伸ばせば情勢が変わるかもしれません。小泉氏の経験不足が弱点となる一方で、高市氏は新鮮味と経験を兼ね備えており、そこに勝機がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】自民党総裁選で高市早苗氏が勝利を目指すための戦略と差別化ポイント

まとめ
  • 自民党の総裁選では、議員や党員が次の衆院選での勝利や自身の当選可能性を最優先に考えて候補者を選ぶ傾向が従来より強い傾向にある。
  • 国会議員票の比重が高く、一般党員票も決選投票に勝ち残る鍵となるため、双方の票の獲得が重要。
  • 主要派閥の解消により、議員たちは従来の派閥論理ではなく個人的な判断で候補者を選ぶ傾向が強まっている。
  • 高市氏は次の衆院選での勝利をもたらすリーダーとしての資質をアピールし、国会議員票と一般党員票の両方の獲得を目指すべき。
  • 高市氏は経験、新鮮さ、政策の具体性、経済安全保障の専門性、保守層へのアピールなどで他の候補者との差別化を図ることが重要。

自民党総裁選ポスター

自民党の総裁選において、議員や党員が次の衆院選での勝利を最優先に考えている傾向が顕著に見られます。今回の総裁選では現在のところ7〜10名程度が立候補する見通しで、これは多くの議員が自身の当選可能性を高めるリーダーを探っていることを示唆しています。

また、国会議員票の分散が予想されるため、一般党員票が決選投票に勝ち残るための重要な鍵となると指摘されています。これは、党員が自民党の選挙での勝利を見据えて投票する可能性が高いことを示しています。

総裁選後、10月上旬に臨時国会が召集され、首班指名が行われた後、早い段階で衆議院が解散される可能性が指摘されています。この状況下で、議員や党員は次の衆院選での勝利を見据えた候補者選びをより重視せざるを得ません。

麻生派を除き主要派閥が解消に向かったことで、議員たちは従来の派閥の論理ではなく、より個人的な判断で次の選挙での当選可能性を高める候補者を選ぶ傾向が強まっていると考えられます。ただし、派閥の影響力が完全に消失したわけではなく、特に決選投票では国会議員票の比重が大きくなるため、組織力が重要となる可能性も残されています。


具体的には、決選投票では国会議員が1人1票の382票と各都道府県連に1票ずつ割り振られた47票のあわせて429票で争われます。このとき、国会議員票が全体の約89%を占め、その影響力が極めて大きくなります。各都道府県連の1票は党員投票の結果に基づき自動的に決まるため、国会議員の判断が決選投票の結果を左右する可能性が高くなります。このため、決選投票に向けては、依然として国会議員の組織化や説得が重要な戦略となり得ます。

これらの状況から、自民党の総裁選において、議員や党員は派閥や政策論争よりも、次の衆院選での勝利や個人の当選可能性を最優先に考えて候補者を選んでいる傾向が強いと言えます。特に、早期の衆議院解散の可能性が指摘されている中で、この傾向はより顕著になっていると考えられます。

なお、選挙制度改革の影響も無視できません。小選挙区制の導入により、議員たちは個人的な選挙戦略をより重視するようになっており、これが派閥の影響力低下と相まって、総裁選における議員の行動にも影響を与えていると考えられます。

このような状況において、高市早苗氏が総裁選で勝機を高めるためには、以下のような戦略を展開すべきです。

まず、次の衆院選での勝利をもたらす総裁としての自身の資質をアピールすることが重要です。議員たちは自身の当選可能性を高めるリーダーを求めているため、高市氏は自身の政策や経験が党の選挙戦略にどのように貢献できるかを明確に示す必要があります。

次に、国会議員票の獲得に注力する必要があります。特に決選投票では国会議員票の比重が約89%と極めて大きくなるため、個々の議員への働きかけが重要となります。ただし、派閥が解消されつつある現状を踏まえ、従来の派閥の論理ではなく、個々の議員の利害に訴えかける戦略が効果的でしょう。

さらに、麻生太郎氏の支持獲得が鍵となる可能性もあります。過去の安倍晋三氏の総裁選での戦略を参考に、麻生氏に直接働きかけるだけでなく、麻生氏に影響力のある人物を通じて間接的にアプローチすることも有効かもしれません。

麻生太郎氏

また、一般党員票の獲得も重要です。党員が自民党の選挙での勝利を見据えて投票する傾向があることを踏まえ、高市氏は自身が党を勝利に導く最適な候補者であることを訴える必要があります。

加えて、早期の衆議院解散の可能性を念頭に置いた戦略も必要です。高市氏は、自身が総裁に選出された場合の具体的な選挙戦略や勝利のシナリオを提示することで、議員たちの支持を集められる可能性が高いです。

最後に、小選挙区制の導入により議員たちが個人的な選挙戦略をより重視するようになっていることを踏まえ、高市氏は各議員の選挙区事情に配慮した政策や支援策を提示することも効果的でしょう。

これらの戦略に加えて、高市氏は他の候補者との差別化を図ることが重要です。具体的には以下のような方策が考えられます。
1. 経験と新鮮さの両立:高市氏は豊富な政治経験を持ちながら、女性候補者としての新鮮さも兼ね備えています。この独自の立ち位置を強調することで、他の候補者との差別化を図れます。

2. 政策の具体性:他の候補者が抽象的な政策を掲げる中で、高市氏は具体的かつ実行可能な政策を提示することで、実務能力の高さをアピールできます。

3. 経済安全保障の専門性:高市氏の経済安全保障担当大臣としての経験を活かし、この分野での専門性を強調することで、他の候補者との差別化を図れます。

4. 保守層へのアピール:高市氏は保守派として知られており、この立場を明確にすることで、保守層からの支持を固めつつ、他の候補者との違いを際立たせることができます。

5. 国際的な視野:高市氏の国際的な人脈や経験を強調し、グローバルな課題に対する対応力をアピールすることで、他の候補者との差別化を図れます。
これらの戦略を総合的に展開し、他の候補者との差別化を図ることで、高市早苗氏は総裁選での勝機を高めることができるでしょう。

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