2024年9月16日月曜日

「トランプが負けたら米国は血の海になる」!?…大統領選「テレビ討論会」はデタラメだらけ!ハリスとABCが深めた「米国の分断」―【私の論評】行き過ぎたアイデンティティ政治が招きかねないファシズムの脅威

「トランプが負けたら米国は血の海になる」!?…大統領選「テレビ討論会」はデタラメだらけ!ハリスとABCが深めた「米国の分断」

まとめ
  • テレビ討論会での司会者の偏った対応が、トランプとハリスの発言に対するファクトチェックに影響を与えた。特に中絶に関する議論では、ミネソタ州の法律が誤解され、トランプの指摘が否定された。
  • ハリスはトランプ政権下での体外受精治療(IVF)の禁止を主張したが、トランプはその方針を打ち出しておらず、ハリスの発言は事実誤認であった。
  • FBIの犯罪データについて、トランプの主張が正しい可能性があるにもかかわらず、司会者はそのデータを根拠にトランプを批判した。
  • シャーロッツビル事件に関するトランプの発言が誤解され、ハリスはその文脈を無視して批判を行ったが、司会者はその誤りを指摘しなかった。
  • 政府とメディアが一体となって真実を歪め、政敵を攻撃する傾向が見られ、これはファシズム的な現象として警戒すべき状況である

アメリカ大統領選挙のテレビ討論会

アメリカ大統領選挙のテレビ討論会において、司会者の偏った対応や事実誤認が見られた。トランプの発言に対して不適切なファクトチェックが行われ、ハリスの誤った発言は修正されなかった。中絶に関する議論では、ミネソタ州の法律や実態が正確に伝えられず、体外受精治療に関するトランプの方針も無視された。犯罪統計についても、FBIのデータの不備が考慮されなかった。シャーロッツビル事件や移民問題に関するトランプの発言も、文脈を無視して批判された。

中絶に関して、ミネソタ州知事ワルツの発言をトランプが指摘した際、司会者は不適切なファクトチェックを行った。実際には、ミネソタ州の中絶指針では妊娠期間による制限がなく、生存乳児保護規定も削除されている。これは生後の赤ちゃんを殺すのを認めたと表現しても、間違いとはいえない。

ハリスの体外受精治療に関する発言も事実誤認であり、トランプ政権がIVFを禁止したのが仮に事実として正しいとしても、自分たちの政権でIVFを復活させればよいだけである。そしてそもそもトランプ政権がIVFを禁止したという事実はない。トランプが最近発表したIVF支援方針は無視された。

犯罪統計に関しては、FBIのデータ収集システムの問題(システム交換によるものとされる)により、多くの都市のデータが反映されていない状況が指摘された。そのため、FBIの統計と司法統計局の調査結果に大きな矛盾が生じている。トランプの犯罪増加の主張に対する司会者の反論は、この状況を考慮していなかった。

シャーロッツビル事件に関するトランプの発言は、文脈を無視して批判された。トランプがネオナチや白人至上主義者を「とてもよい人」と呼んだという解釈は、左派系のファクトチェック機関も否定している。しかし、ハリスはこの誤った解釈を繰り返し、司会者も修正しなかった。

移民問題に関して、トランプのスプリングフィールドでの発言が取り上げられた。ハイチからの移民が増加したことによる地域の変化や住民の不満が背景にあるが、これらの複雑な状況は無視され、トランプの「ハイチからの移民がペットを食べている」という一部の発言のみが切り取られ批判された。

これらの事例は、政府とメディアが一体となって真実を歪め、政敵を攻撃するファシズム的な傾向を示している。この状況下で、かつての民主党支持者やイーロン・マスク、ザッカーバーグなどの著名人がトランプ支持に回る現象が起きている。これは現在の民主党のあり方にファシズムの兆候を感じ取り、民主主義の危機を懸念しているためだと考えられる。

朝香 豊(経済評論家)

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】行き過ぎたアイデンティティ政治が招きかねないファシズムの脅威

まとめ
  • 著名人(ケネディ、イーロン・マスク、ザッカーバーグ)は、民主党の権威主義や検閲が民主主義に対する脅威であると認識しているようだ。
  • 民主党がポリティカル・コレクトネス、アイデンティティ政治、キャンセル・カルチャーを受け入れていることが、言論の自由を脅かす。
  • アメリカ社会では、アイデンティティ政治やキャンセル・カルチャーの進行が表現の自由や学問の自由に対する懸念を呼んでいる。
  • 調査結果によると、多くのアメリカ人がポリティカル・コレクトネスやキャンセル・カルチャーを自由や社会の分断に対する脅威と見なしている。
  • トランプ氏の今後の討論会欠席の意向を表明したが、これはハリス・メディアに付け入る隙を与えないようにすることと、米国社会のさらなる分断をさけるためと、さらにトランプの選挙戦略の一環とみられる。

ロバート・ケネディ・ジュニア、イーロン・マスク、ザッカーバーグのような著名人は、警告のサインに気づいているようです。彼らは、民主党の権威主義と検閲へのシフトが民主主義への脅威であることを理解しています。


イーロン・マスク(左)とザッカーバーグ
これらの人物は、自由と米国建国時の理念を守ろうとしているようです。彼らは、現状の民主党が米国の憲法上の権利に重大な危険をもたらしていることを認識しています。 また、民主党がポリティカル・コレクトネス、アイデンティティ政治、キャンセル・カルチャーを受け入れていることも、ファシズム的傾向を示していると言えるでしょう。彼らは、米国人をグループに分け、対立を煽り、検閲や反対意見の封殺を推進していると批判されています。これは、民主主義社会の根幹である言論と表現の自由を侵食する危険な動きです。


これらのうち日本ではあまり知られていないアイデンティティ政治(Identity Politics)とは、個人の人種、性別、宗教、性的指向、階級などの社会的な属性に基づいて、そのグループの利益や権利を重視し、政治的主張や活動を行うことです。この考え方では、歴史的に抑圧されてきたグループが自身のアイデンティティを強調し、平等な権利や社会的な公正を求めることが重視されます。しかし、これは一方で米国人としての統一性や共通の理念を破壊する動きでもあります。

ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーは、アイデンティティ政治の一環とみなすことができます。これらは、アイデンティティ政治が重視する社会的な公正や権利の拡張を目指すものの一部であり、特定の社会的グループの利益を守るために展開されています。要するに、ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーはアイデンティティー政治を展開するための道具といえます。

アイデンティティ政治は米国人としての統一性や共通の理念を破壊する動きでもある

例えば、黒人の権利運動、LGBTQ+の権利拡大、フェミニズムなどがアイデンティティ政治の一部です。支持者はこれが社会正義の推進に不可欠だと考える一方で、批判者は、米国人という統一性や共通の理念等を破壊し、社会を分断させたり、特定のグループを優遇しすぎる可能性があると懸念しています。

アメリカ社会では、ポリティカル・コレクトネス、キャンセル・カルチャー、アイデンティティ政治が行き過ぎた事例が増加しています。これらの現象は、表現の自由や学問の自由を脅かす可能性があるとして、特に保守派からの批判が高まっています。 

一例として、2020年6月にサンフランシスコのゴールデンゲートパークで発生した事件があります。抗議者が、アメリカ国歌「星条旗」の作詞者であるフランシス・スコット・キーの銅像を引き倒しました。理由はキーが奴隷所有者であったからですが、この行為は歴史的人物の功績を全否定することにつながるとして批判されました。

 また、大学キャンパスでの言論の自由の制限も問題視されています。保守派の講演者が、学生団体からの抗議により講演を中止せざるを得なくなるケースが増加しており、これが多様な意見を聞く機会を奪い、大学本来の自由な議論の場を損なっていると指摘されています。

 さらに、ソーシャルメディア企業がトランプ氏などの保守派のアカウントを停止したり、投稿を削除したりすることも、表現の自由を脅かす行為として批判されています。特定の政治的見解を持つユーザーが選択的に規制されることは、公平性に欠けるとの指摘があります。 

2021年3月に実施されたハーバードアメリカ政治研究センターとザ・ハリス・ポールによる世論調査では、キャンセル・カルチャーに対する懸念が浮き彫りになりました。調査結果によると、回答者の64%がキャンセル・カルチャーの成長を自由への脅威と見なしており、36%はそう考えていませんでした。

また、36%がこの問題を大きな懸念事項と捉え、54%がインターネット上で意見を表明する際にキャンセルされることを懸念していると答えました。この調査は、アメリカ社会におけるキャンセル・カルチャーに対する不安が広がっていることを示しています。 ポリティカル・コレクトネスやアイデンティティ政治に関する他の調査結果も存在します。

2021年のピュー研究所の調査では、アメリカ人の59%が「人々は自分の言動に過度に気をつけている」と答えており、ポリティカル・コレクトネスに対する懸念が示されています。

また、2018年のギャラップ社の調査によると、アメリカ人の57%が「アメリカは政治的に正しくなりすぎている」と考えています。

2020年のユーガブ社の調査では、55%が「キャンセル・カルチャーは民主主義社会にとって脅威である」と回答しています。

さらに、2022年のアメリカン・パースペクティブス調査では、回答者の66%が「アイデンティティ政治は人々を分断している」と感じています。

2021年のモーニング・コンサルト社の調査では、アメリカ人の64%が「ポリティカル・コレクトネスは表現の自由を制限している」と回答しています。

キャンセル・カルチャーは異論を唱える人を社会的・文化的に抹殺する

これらの調査結果は、多くのアメリカ人がポリティカル・コレクトネスやアイデンティティ政治に対して懸念を抱いていることを示しており、特に表現の自由や社会の分断に関する不安が顕著です。


 これらの事例からも、アイデンティティ政治とキャンセル・カルチャーが行き過ぎると、社会の分断を深め、民主主義の基盤である言論の自由を脅かす可能性があることがわかります。今後、多様性を尊重しつつ、米国民としての統合を図りながら、いかに建設的な対話を促進するかが、アメリカ社会の重要な課題となっています。


米国社会の分断は、直接的ではないにしろ、先日のトランプ氏暗殺未遂事件などにつながっている可能性は否定しきれません。
本日も暗殺未遂がありました。米国の社会の分断は、深刻なレベルに達しているようです。 


なお、この記事の筆者である朝香氏は、「今回の討論会を通じて、トランプ陣営はハリス陣営の戦術を十分に理解できた。これを踏まえて、次回の大統領選挙討論会ではトランプが攻勢に出ることを期待したい」と述べています。


しかし、トランプ氏は今後討論会に出ない意向を表明しています。私はこれに賛成です。なぜなら、討論会が繰り返されるたびに、ハリス陣営やメディアはあらゆる手段を用いてトランプ氏を攻撃し、彼らに付け入る隙を与えるだけになるでしょう。


その結果、米国社会の分断が一層深まる可能性があります。これを考えると、今後の討論会に参加しないというトランプ氏の考えは、正しいし合理的であり、これはトランプ氏の巧妙な戦略の一環である可能性が高いです。この点については、以前のブログでも言及していますので、ぜひそちらもご覧ください。


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