2024年9月24日火曜日

ロシア軍機に初のフレア警告、無線通告では不十分と判断か…防衛省「警告の意図を明確に」―【私の論評】ロシア太平洋艦隊の戦闘力不足と日本への影響:米戦争研究所の分析と日本の安保意識の高まり

ロシア軍機に初のフレア警告、無線通告では不十分と判断か…防衛省「警告の意図を明確に」

まとめ
  • 23日、ロシア軍機が礼文島付近で3回領空侵犯し、木原防衛相は厳重に監視する方針を示した。
  • 初めてフレアを使った警告が行われた。
  • 領空侵犯はロシア・中国の艦艇との連携の可能性がある。
  • 防衛省は意図を分析し、警戒監視を続けている。
ロシア軍哨戒機「IL38」

23日、北海道・礼文島付近でロシア軍哨戒機「IL38」が3回領空侵犯し、木原防衛相はこれを「軍事的挑発」とし、厳重に監視する意向を示しました。

ロシア軍機による領空侵犯は2019年の沖縄付近以来で、フレアを使用して警告するのは今回が初めてです。木原氏は、この警告が相手の動きに応じたものであると説明。防衛省も、フレアの使用を「強度の高い警告」と位置づけています。

さらに、22日と23日にはロシア軍と中国軍の艦艇9隻が宗谷海峡を東に進み、ロシア軍機の領空侵犯が艦艇との連携に関連する可能性があると防衛省は見ています。防衛省は引き続き警戒監視を強化し、ロシア側の意図について分析を進めています。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ロシア太平洋艦隊の戦闘力不足と日本への影響:米戦争研究所の分析と日本の安保意識の高まり

まとめ
  • ロシア太平洋艦隊は日本を脅かすほどの戦闘力がなく、現状での軍事的挑発は意味が薄い。
  • ロシアの軍事演習や領空侵犯は、実際の軍事的脅威というより政治的メッセージや威嚇の手段として行われている可能性が高い。
  • これらの行動は、ロシアが限られた軍事力で存在感を示し、地域での影響力を維持しようとする試みかもしれない。
  • 日本にとっては、防衛産業の活性化や国民の安全保障意識の向上など、一部プラスの影響もある。
  • しかし、これらの「プラスの影響」は平和と安定を脅かす行為を肯定するものではなく、現状対応の副産物として捉えるべきである。
ロシアが日本に対する「軍事的挑発」をしたとして、現状ではあまり意味はありません。そもそも、ロシア太平洋艦隊に日本を脅すほどの戦闘力はありません。これについては、以前このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北方領土で演習のロシア太平洋艦隊は日本を脅かせるほど強くない──米ISW―【私の論評】ロシアが北方領土で軍事演習を行っても日本に全く影響なし(゚д゚)! 2023年4月17日

詳細は、この記事もしくは元記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事の内容を要約したものを以下に掲載させていただきます。

米シンクタンク戦争研究所(ISW)の分析によると、ロシアの太平洋艦隊は他国から脅威とみなされるには戦闘力が不足している可能性が高いとされている。 
ロシアは太平洋艦隊の抜き打ち検査の一環として、ミサイル発射と魚雷のテストを実施した。ISWはこれを、近日開催されるG7サミットで日本のウクライナ支援を抑止するための威嚇と分析している。 
ロシア国防相はこの検査の目的を「海洋における敵の攻撃を撃退するための能力向上」と説明し、千島列島南部とサハリン島への敵上陸を撃退する能力も含むと付け加えた。 
ISWは、ロシアが日本の北方領土周辺で軍事態勢を強化していることを、日本のウクライナ支援増加への警告と見ているが、同時にロシア軍が現時点で日本を脅かす立場にないと評価している。太平洋艦隊の一部部隊がウクライナ東部で大きな損害を被ったことを指摘し、ISWは太平洋艦隊が戦力投射能力に必要な戦闘力を欠いており、日本への真の脅威や中国に対する軍事大国としての印象を与えることは困難だと結論づけている。
米国のシンクタンク戦争研究所(ISW)のロゴ

私は、この分析は正しいと思います。現状のロシア太平洋艦隊は、日米に比して貧弱で駆逐艦以上の戦闘艦艇は7隻程度しかなく海上自衛隊の10分の1程度です。さらに、海上自衛隊は、現代海戦の要ともいえるASW(Anti Sumarine Wafare:対戦戦争)能力では、ロシアをはるかに上回っています。では、ロシアはなぜこのような「軍師的挑発」を行ったのでしょう。

ロシアの太平洋艦隊の戦闘力不足に関する分析と最近の領空侵犯事件は、一見矛盾するように見えますが、これらは異なる観点から解釈することができます。

戦力投射能力の不足は大規模な軍事作戦や持続的な脅威を与える能力の欠如を示唆していますが、単発的な挑発行為や小規模な軍事行動は依然として可能です。領空侵犯は実際の軍事的脅威というよりも、政治的メッセージや威嚇の手段として使用されることがあり、ロシアは限られた軍事力でも存在感を示そうとしている可能性があります。

この行動はロシアが地域での影響力を維持しようとする試みかもしれず、実際の軍事力が不足していても、こうした行動で緊張を高め、注目を集めることができます。また、領空侵犯はロシアの軍事戦略の一部である可能性もあり、相手国の対応を試したり、防空システムの情報を収集したりする目的があるかもしれません。

内政的な理由も考えられ、国内向けに強硬な姿勢を示すことで政権の支持を維持しようとしている可能性があります。したがって、太平洋艦隊の全体的な戦闘力不足と個別の挑発的行動は必ずしも矛盾するものではなく、ロシアは限られた能力の中で最大限の効果を得ようとしている可能性が高いと考えられます。

プーチンロシア大統領

ただ、このような軍事的挑発がロシアの思惑通りに運ぶかどうかは、全く別の話です。

これ、日本にとって必ずしもマイナスの影響だけではなく、いくつかのプラスの側面も見られます。中国やロシアの軍事的挑発は、日本にとって必ずしもマイナスの影響だけではなく、いくつかのプラスの側面も見られます。

特に注目すべきは防衛産業の活性化です。実際に、三菱重工業の株価は上昇傾向にあり、2023年5月頃から値上がりを強め、2024年2月には1万2000円を突破しました。

2024年2月時点で約12,000円だった株価は、4月に1:10の株式分割が行われ、株式分割後には理論上約1,200円となりました。アナリストたちは三菱重工業の株価がさらに上がると予想しています。2024年9月19日時点の株価から、さらに5.92%上昇すると予測されており、アナリストの平均目標株価は1,966円となっています。この上昇傾向は、防衛関連企業への注目度の高まりを反映している可能性があります。

このような状況は、直近で政治的にも影響を与える可能性があります。例えば、自民党総裁選において、高市早苗氏のような世界水準からみれば真っ当な安全保障政策を主張する候補者が注目を集める可能性があります。高市氏は「国の究極の使命は、国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと、領土領海領空、資源を守り抜くこと」と主張しており、このような状況下でその主張が注目されています。

また、軍事的挑発は日本国民の安全保障に対する意識を高める効果があり、長期的に見て国の防衛力強化に対する理解と支持につながる可能性があります。同時に、日米同盟をはじめとする国際的な安全保障協力の強化にもつながり、日本の外交的立場を強化し、国際社会での影響力を高める機会となる可能性もあります。

さらに、防衛力強化の必要性から、先端技術の研究開発が促進される可能性があり、これらの技術は民間分野にも応用され、産業全体の競争力向上につながる可能性があります。ただし、これらの「プラスの影響」は、平和と安定を脅かす行為を肯定するものではなく、あくまでも現状に対応する中で生じる可能性のある側面として捉えるべきです。ただし、現状のロシアの日本への軍事的挑発はロシアの意図を成就させるものとはならないでしょう。

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