- 英中銀とECB、一段と積極的な緩和の道筋が予想されている
- 他国・地域の利下げペース加速時の日銀利上げは一段と困難との見方
日銀は、金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決定 |
イングランド銀行や欧州中央銀行は利下げを示唆し、カナダとスウェーデンでも弱い経済データにより追加緩和の見通しが高まっている。エバコアISIのアナリストは、日本が利上げを行うのは他国の利下げ加速により困難になると指摘する。
米国では大幅な利下げが進んでおり、特に米雇用統計の低調さが金融政策に影響を与えている。日本政府・日銀は、米経済の軟着陸を確認するまでは一層の緩和縮小はないとの立場を示している。石破茂新首相も追加利上げは必要ないと発言し、日銀への政策指示とも取れる発言を行った。
- 林芳正官房長官は、石破茂首相の発言が金融市場に影響を与えたことに関連し、日銀の金融政策の独立性を強調し、具体的な手法は日銀に委ねるべきとの立場を表明した。
- 日銀は「物価の安定」を主要な目標としており、雇用はその副次的効果とされているが、世界標準では雇用の最大化も重要な目標とされている。
- 過去の日銀の失敗として、1980年代後半に日銀が資産価格の高騰を理由に金融引き締めに転じた結果、実際の物価上昇を無視して企業の資金調達コストを上昇させ、経済成長を鈍化させてバブル崩壊を招いた事例がある。
- 政府は日銀に直接命令を出せないが、協調のための対話は可能であり、過去の事例として「アベノミクス」やコロナ対策における政府・日銀の連携が挙げられる。
- 石破政権は短期的には日銀との協調を図り、長期的には日銀法の改正を目指すべきである。
林官官房長官 |
世界標準における中央銀行の独立性には、通常、金融政策の目標として「物価の安定」に加え、「雇用の最大化」も含まれます。特に米国の連邦準備制度(FRB)のような例では、「デュアルマンデート(二重の使命)」として、物価安定と雇用最大化の両方を目標に掲げています。
具体的には、政府がこれらの目標を設定し、中央銀行は専門的な立場から、インフレや雇用のバランスを取るために政策手段を自由に選択します。例えば、インフレが高騰しすぎれば利上げを行って物価を抑制し、逆に景気が低迷し失業率が高まれば、金融緩和を行い雇用を促進するという判断が行われます。だからこそ、上の記事にあるように、米雇用統計の低調さが金融政策に影響を与えているのです。
日本銀行(日銀)の総裁が雇用に関して言及したことは、過去に何度かありますが、日銀が直接的に雇用を目標とすることは少なく、その役割は通常、物価の安定や経済成長を通じて間接的に雇用に影響を与えるという形で述べられています。
金融緩和について説明する黒田氏 |
ただし、日銀の法律上の使命は「物価の安定」を中心としており、米国のFRBのように「雇用の最大化」を明確に目標にしているわけではありません。日銀が雇用に関する発言をする際も、物価の安定を達成することで、間接的に経済の成長や雇用改善につながるというスタンスが一般的です。
日銀総裁が雇用に言及することはあるものの、日銀の主要な使命は「物価の安定」にあり、雇用はその結果として改善を期待される分野という位置づけが主流です。
しかし、現行の日本銀行法では、「物価の安定」だけが日銀の主要な目標として位置づけられています。このため、日銀はこの目標を達成するために独立して金融政策を実施します。政府、特に財務省は、経済全体の政策の枠組みを決定し、日銀との協調のもとで全体的な経済政策を運営しますが、具体的な金融政策の目標を設定するのは日銀自身です。日銀は政府の経済政策を尊重しつつも、実際の金融政策の運営に関しては独立性を持っています。
日銀の独立性は、物価の安定を図るために金融政策を自由に実施できることを意味します。つまり、日銀が設定する具体的な金融目標(例:2%のインフレ目標)は、政府が決定した経済政策の一部として位置づけられますが、実際の目標設定と手段と運営は日銀が独自に行います。このように、政府が全体的な経済政策の枠組みを設定し、日銀がその中で「物価の安定」を主な目標としてそれを定め金融政策を実施するという構造になっています。
政府は日銀に直接命令を出すことはできませんが、協調のための話し合いは可能です。実際、政府と日銀の間での対話は、経済政策の整合性を保つために重要です。安倍晋三元首相の在任中には、特に「アベノミクス」において、日銀の金融緩和政策を後押しし、政府と日銀の連携が強調されました。
コロナ対策においても、日銀と政府は連携して(安倍首相の言葉を借りると政府と日銀の連合軍)、政府が大量の国際を発行し、日銀がそれを引き受ける形で、資金調達し、安倍・菅政権であわせて100兆円の対策を打つことができました。これと、雇用調整助成金制度を活用し、他国では一時失業率がかなり上がったにもかかわらず、日本ではそのようなことはありませんでした。
上のグラフをみると、イタリアはコロナによる打撃きが大きく、死者も多く、医療分野の財政支出が多いです。日本の場合は政府関係機関による支援が多いです。これは世界最大です。これによって、日本経済はほとんど毀損されず、雇用も守られました。このような大偉業をマスコミは全く無視しました。
それどころか、安倍・菅政権のコロナ政策は失敗であると喧伝しました。これを評価したのは、主に海外のメディアや識者でした。
日銀と政府の金融政策に関する協議は、政府の財政政策と日銀の金融政策を効果的に結びつけ、持続可能な経済成長を促進するために不可欠です。今後も、物価や雇用に関する目標について意見交換を行うことが重要です。石破政権もこのような意見交換は継続すべきです。
さらに、日銀の独立性に関しても、日銀法を改正して、世界標準にすることと「雇用の最大化」も政府の金融政策の目標、日銀の政策の中に含めるべきです。
岸田政権は、短期では日銀との協調をすべきですし、長期では日銀法の改正を目指すべきです。
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