- 生成AIの普及により、データセンターの電力消費が急増。AIサーバーは従来よりも6〜10倍の電力を消費する。
- 米国ビッグテック企業のグーグル、マイクロソフト、アマゾンが、安定的な電力供給を目的に原子力への投資を進めており、特に小型モジュール式原子炉(SMR)の導入や、原発再稼働が注目されている。
- 日本では電力供給が減少傾向にあり、原発の再稼働も進んでいない。再生可能エネルギーの主力化が進むが、安定的な電力供給が課題となっている。
- グーグルはSMRを、マイクロソフトはスリーマイル島の原発を再稼働させる計画を発表し、AI技術の成長を支えるためのエネルギー供給を模索している。
- 日本もAIや経済成長に対応するため、安定的でクリーンなエネルギーの確保を目指し、エネルギー政策の議論を進める必要がある。
データセンターのエネルギー消費量予測(世界) 出所:TDK |
2023年から2030年の間に、データセンターの電力需要は年平均15%の成長率で増加し、2030年までには現在の3倍以上の消費量に達する見込みだ。これを背景に、グーグル、マイクロソフト、アマゾンといった米国のビッグテック企業は、AIの成長を支えるため、安定した電力供給を確保する手段として「原子力」に注目している。
マイクロソフトは、過去に原子力事故が発生したスリーマイル島の原子力発電所を再稼働させる計画を発表し、注目を集めた。また、グーグルは小型モジュール式原子炉(SMR)の導入を推進し、2030年までに最初の原子炉を稼働させる計画を進めている。SMRは従来の原子炉よりも小型で、より安全かつ効率的なエネルギー供給を実現する技術として期待されている。一方、アマゾンも原子力エネルギーの活用を進めており、既存の原子力施設の隣にデータセンターを設置するだけでなく、SMRへの追加投資も発表している。
日本では、電力供給量が過去10年にわたって減少傾向にあり、データセンターや生成AIの普及による電力需要の急増に対応するためのエネルギー確保が課題となっている。政府は再生可能エネルギーの主力化を進めているが、安定した低コストの電力供給が難しく、原子力発電の再稼働も進んでいない。東日本大震災後、原発再稼働の動きは鈍く、現在稼働しているのは36基中12基にとどまっている。エネルギーの安定供給が実現できない場合、日本はAI技術や経済成長の競争で他国に後れを取る危険性がある。
マイクロソフトは、過去に原子力事故が発生したスリーマイル島の原子力発電所を再稼働させる計画を発表し、注目を集めた。また、グーグルは小型モジュール式原子炉(SMR)の導入を推進し、2030年までに最初の原子炉を稼働させる計画を進めている。SMRは従来の原子炉よりも小型で、より安全かつ効率的なエネルギー供給を実現する技術として期待されている。一方、アマゾンも原子力エネルギーの活用を進めており、既存の原子力施設の隣にデータセンターを設置するだけでなく、SMRへの追加投資も発表している。
日本では、電力供給量が過去10年にわたって減少傾向にあり、データセンターや生成AIの普及による電力需要の急増に対応するためのエネルギー確保が課題となっている。政府は再生可能エネルギーの主力化を進めているが、安定した低コストの電力供給が難しく、原子力発電の再稼働も進んでいない。東日本大震災後、原発再稼働の動きは鈍く、現在稼働しているのは36基中12基にとどまっている。エネルギーの安定供給が実現できない場合、日本はAI技術や経済成長の競争で他国に後れを取る危険性がある。
まとめ
スリーマイル島原子力発電所の1号機が2028年までに再稼働し、Microsoftに電力を供給することが明らかに |
アップルやメタは、環境に優しいとされる再生可能エネルギーに大きく賭けている。しかし、この選択は多くのリスクを伴う。まず、再生可能エネルギーは自然条件に左右されるため、その供給は不安定である。加えて、再生可能エネルギーを支えるためのインフラ整備、例えばエネルギー貯蔵技術や送電網の強化がまだ十分ではないことが、供給の安定性を損なう要因となっている。これが、データセンターやAI技術といった大量の電力を必要とする産業において、競争力の低下を引き起こすリスクを高めている。
太陽光パネルが敷きつめられたアップル本社の屋上 |
対照的に、マイクロソフトやグーグル、アマゾンが進める原子力投資は、長期的なエネルギーの安定供給を確保する現実的な手段である。特に小型モジュール式原子炉(SMR)などの技術は、従来の大型原子炉に比べて安全性や柔軟性に優れており、AIやデータセンターのような大量の電力を必要とするインフラを支えるには最適な選択肢である。これにより、電力供給の不安定さやコスト変動に対する耐性が強化され、企業の競争力を高めることが期待される。
そして、ドイツの失敗は我々にとって重要な教訓である。ドイツは原子力を放棄し、再生可能エネルギーに過度に依存するエネルギー政策を急進的に進めた結果、電力供給が不安定になり、エネルギー価格が急上昇した。これにより、エネルギーを多く消費する産業の競争力が低下し、経済全体が低成長に陥った。特に、化石燃料への依存度が高まり、結果としてエネルギー転換は成功とは言い難い結果に終わっている。このドイツの状況は、エネルギー政策において現実的な判断がいかに重要であるかを示している。
破壊されるドイツ西部の原発の冷却塔 |
我が国が進むべき道は、こうした現実に基づいた戦略を採ることである。我々もまた、安定的で大量の電力供給を確保する必要があり、特に経済の成長を維持し、技術開発を進めるためには、エネルギー供給の不安定さを排除しなければならない。再生可能エネルギーは現時点では技術的制約が多く、これに過度に依存することはリスクが大きい。
そのため、我が国は原子力を再評価し、特に小型モジュール炉(SMR)などの新しい技術に投資することが重要である。SMRは従来の原子力発電に比べて安全性が高く、設置場所やコスト面でも柔軟性があり、今後のエネルギー政策の柱となり得る。
ドイツは大変なことに…フォルクスワーゲンが国内工場を閉鎖する「真の原因」―【私の論評】ドイツの脱原発政策が招く危機と日本の教訓:エネルギー政策の失敗を回避するために
2024年9月9日
世界に君臨する「ガス帝国」日本、エネルギーシフトの現実路線に軸足―【私の論評】日本のLNG戦略:エネルギー安全保障と国際影響力の拡大 2024年8月30日
G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道 2024年4月14日
フィリピンの先例警戒、中国が電力支配 40%株式保有、送電止める危険 米軍基地抱える日本も〝脅威〟再エネに中国の影・第5弾―【私の論評】エネルギー武器化の脅威:ドイツのノルドストリーム問題と中国のフィリピン電力網支配 2024年3月30日
ドイツの脱原発政策の「欺瞞」 欧州のなかでは異質の存在 価格高騰し脱炭素は進まず…日本は〝反面教師〟とすべきだ―【私の論評】エネルギーコストがあがれば、独産業・独人は近隣諸国に脱出!独は現状のエネルギー政策を継続できない(゚д゚)! 2023年4月23日
そのため、我が国は原子力を再評価し、特に小型モジュール炉(SMR)などの新しい技術に投資することが重要である。SMRは従来の原子力発電に比べて安全性が高く、設置場所やコスト面でも柔軟性があり、今後のエネルギー政策の柱となり得る。
また、従来の化石燃料による電力供給も含め、安定したエネルギー供給体制を築くことができる。重要なのは、理想に基づいた過度な再生可能エネルギーへの依存ではなく、原子力やその他の現実的なエネルギーソリューションを組み合わせ、バランスの取れたエネルギー政策を構築することである。再生可能エネルギーは現在の技術水準では、いまだ実用化には不向きだが、ただしいずれイノベーションが生まれるかもしれず、これへの取り組みは実験レベルで継続する程度に留めるべきだ。
結論として、我が国が進むべき道は、再生可能エネルギーの可能性を見極めつつ、従来の化石燃料と、原子力を含む安定したエネルギー源に現実的に投資することである。ドイツの失敗を教訓に、過度な理想主義を排し、経済成長とエネルギー安定の両立を目指す現実的なアプローチが必要だ。ビッグ・テックといえども、一企業に過ぎず、エネルギー政策に失敗したとしても、国全体のレベルで考えれば悪影響はさほどではないかもしれないし、後から取り返しがつくかもしれない。しかし、政府の失敗はそうではないことが、ドイツの現状が示している。
結論として、我が国が進むべき道は、再生可能エネルギーの可能性を見極めつつ、従来の化石燃料と、原子力を含む安定したエネルギー源に現実的に投資することである。ドイツの失敗を教訓に、過度な理想主義を排し、経済成長とエネルギー安定の両立を目指す現実的なアプローチが必要だ。ビッグ・テックといえども、一企業に過ぎず、エネルギー政策に失敗したとしても、国全体のレベルで考えれば悪影響はさほどではないかもしれないし、後から取り返しがつくかもしれない。しかし、政府の失敗はそうではないことが、ドイツの現状が示している。
【関連記事】
2024年9月9日
世界に君臨する「ガス帝国」日本、エネルギーシフトの現実路線に軸足―【私の論評】日本のLNG戦略:エネルギー安全保障と国際影響力の拡大 2024年8月30日
G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道 2024年4月14日
フィリピンの先例警戒、中国が電力支配 40%株式保有、送電止める危険 米軍基地抱える日本も〝脅威〟再エネに中国の影・第5弾―【私の論評】エネルギー武器化の脅威:ドイツのノルドストリーム問題と中国のフィリピン電力網支配 2024年3月30日
ドイツの脱原発政策の「欺瞞」 欧州のなかでは異質の存在 価格高騰し脱炭素は進まず…日本は〝反面教師〟とすべきだ―【私の論評】エネルギーコストがあがれば、独産業・独人は近隣諸国に脱出!独は現状のエネルギー政策を継続できない(゚д゚)! 2023年4月23日
0 件のコメント:
コメントを投稿