2025年7月19日土曜日

トランプが挑む「報道しない自由」──黙殺されたエプスタイン事件が、司法の場で再び動き出す

まとめ
  • トランプ元大統領がWSJとマードック氏を名誉毀損で提訴し、記事にあった“エプスタイン宛ての裸婦カード”報道を完全否定。訴額は100億ドルに上る。
  • 訴訟の背後にはエプスタイン事件の全容解明があり、トランプは司法省に大陪審資料の全面開示を要求している。
  • エプスタインは政財界・王室・学術界など上級層との関係を持ち、性的虐待ネットワークとその隠蔽疑惑が未解決のまま。主流メディアは報道を回避している。
  • 訴訟は単なる名誉回復ではなく、“虚報メディアへの制裁”としての政治的意味を持ち、保守派の反撃の象徴となっている。
  • 日本の主要メディアはこの訴訟をほぼ無視しており、“報道しない自由”による黙殺がかえって事件の重大性を浮き彫りにしている。

トランプ、メディアとの全面戦争に打って出る

2025年7月、ドナルド・トランプ元大統領が、とその親会社ニューズ・コーポレーション、そしてメディア王ルパート・マードックを名誉毀損で提訴した。訴訟額は実に100億ドル(約1兆4千億円)にのぼる。


事の発端は、WSJが報じた一本の記事だった。そこでは、2003年にトランプ氏が故ジェフリー・エプスタイン宛てに、裸婦のイラストを添えたバースデーカードを送ったとされていた。メッセージには「秘密を共有しよう」と書かれていたという。だがトランプ氏はこれを全面否定し、「自分は絵など一度も描いたことがない」と明言。報道そのものが捏造であり、悪意に満ちた中傷だとして訴えに踏み切った。

同時にトランプ氏は、報道の根拠となった大陪審資料の全面公開を司法省に求めた。名誉回復という次元を超え、腐敗したメディア構造そのものにメスを入れようという、彼らしい強硬な姿勢が際立っている。
 
エプスタイン事件──なぜアメリカ最大のスキャンダルは黙殺されるのか

ジェフリー・エプスタイン

この訴訟の背景には、現代アメリカの深層に潜む「闇」がある。それがジェフリー・エプスタイン事件だ。

エプスタインは、ウォール街の金融業者であり、未成年者を標的とした性的虐待ネットワークを構築していた張本人である。2019年、性的人身売買容疑で逮捕された直後、ニューヨークの留置所で“自殺”したとされるが、その死にはあまりにも多くの不審点が残る。監視カメラの故障、監視員の不在、そして首の骨折。もはや偶然とは思えない。

エプスタインが保有していた「ブラックブック」には、ビル・クリントン元大統領、英国王室のアンドルー王子、ハーバード大学の要人、ハリウッドの大物など、名だたるエリートの名が並ぶ。彼らが訪れたとされるエプスタイン所有の“島”──リトル・セント・ジェームズ島では、未成年との性的行為が秘密裏に撮影されていたとの証言もある。それが「脅しの材料」として使われていた疑いは根強い。

にもかかわらず、アメリカの主流メディアは、この巨大スキャンダルをまともに追及しようとしない。理由は明白だ。関係者の多くが、リベラル・グローバリズムの中心に位置する人物たちだからである。メディア自身が、彼らの“仲間”だからである。

だからこそ、トランプは動いた。米国に真実を取り戻すために。今回の訴訟は、“隠蔽された国家的犯罪”の扉をこじ開けようとする一撃なのだ。 

報道の自由か、報道責任か──保守派の反撃が始まった

大陪審資料の開示は容易ではない。原則非公開とされており、例外的に裁判所の許可が必要だ。さらに公開されても、多くは黒塗りされる。しかし今回、トランプ陣営のパム・ボンディ元フロリダ州司法長官が正式に開示請求を行っており、法の壁を超える試みが現実のものになりつつある。


この訴訟が象徴しているのは、「報道の自由」と「報道の責任」のせめぎ合いだ。WSJを含め、アメリカの主流メディアは、ここ数年トランプに対して執拗なネガティブキャンペーンを繰り返してきた。公平性の仮面をかぶりながら、一方で民主党寄りの姿勢を隠そうともしない。その一線を、トランプはついに越えたのである。

すでに保守系団体による同様の名誉毀損訴訟は複数の州で相次いでいる。報道責任を軽視するメディアに対する“トランプ・ドクトリン”とも言うべき訴訟戦略が、全米に広がりつつあるのだ。

そして肝心の日本のメディアは、今回の訴訟をほとんど報じていない。沈黙は語る──彼らが「報道しない自由」を振りかざし、真実を見ようとしない姿勢が、かえってこの訴訟の意義を証明している。

誰も真実を語らぬなら、自らが語るしかない。トランプは今、米国の“報道”に鉄槌を下そうとしている。これは単なる個人の名誉訴訟ではない。アメリカの情報空間に、保守派が再び風穴を開けるための戦いなのだ。

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