まとめ
- 米国議会は2025年、中国共産党による影響工作を封じるため、FARA(外国代理人登録法)の対中強化法案を審議中。対象は外交官に限らず、親中ロビーやSNSインフルエンサーにも及ぶ。
- 「チャイナ・デイリー事件」では、中国共産党が米大手紙に広告を装ってプロパガンダを掲載していた事実が発覚。これは合法を装った情報戦であり、FARA強化の契機となった。
- 米保守派は同法案を高く評価しつつも、監視の恣意的運用や左派によるダブルスタンダード適用を警戒。透明性と公平な執行が課題とされる。
- 日本ではFARAに相当する制度が未整備であり、参議院議員・神谷宗幣氏がその必要性を問う質問主意書を提出。日本政府は同様の制度が存在しないことを認めている。
- 米国が情報主権確立に動き出す一方、日本は沈黙を続けており、主権と民主主義を守るためにも早急な制度整備が求められる。沈黙は最大の敗北であるとの警鐘が鳴らされている。
米国の世論はすでに戦場になっている。2025年、米国議会で「対中ファラ法」の強化法案が帯上にのぼった。微細な法案に見えるかもしれないが、これこそが米中の情報戦における「ゲームチェンジャー」となりうる。
この法案がめざすのは、中国共産党が米国内で行ってきた世論工作、政治工作、情報操作などを、法的な手段を補うような形で展開している行為を、すべて登録・監視対象として、抜本的に封じ込めることである。FARA(外国代理人登録法)は1938年、ナチス・ドイツのプロパガンダ活動を抑止するために制定された。外国政府やその関係者が米国内で政治的影響を与えようとする際、その実態を司法省に登録し、透明化することを義務付けている。
この法案がめざすのは、中国共産党が米国内で行ってきた世論工作、政治工作、情報操作などを、法的な手段を補うような形で展開している行為を、すべて登録・監視対象として、抜本的に封じ込めることである。FARA(外国代理人登録法)は1938年、ナチス・ドイツのプロパガンダ活動を抑止するために制定された。外国政府やその関係者が米国内で政治的影響を与えようとする際、その実態を司法省に登録し、透明化することを義務付けている。
広告を装った挟み込み紙「Chaina Watch」 |
今回の対中強化法案は、中国共産党に対してこのFARAを完全適用するための「特化型」改正案であり、単なる技術的改訂ではない。すでに米国は情報戦の壁内まで中国に入られており、それを明らかにしたのが「チャイナ・デイリー」による米大手新聞へのプロパガンダ紙の挟み込み事件である。広告を装ったこれらの挟み込み紙「Chaina Watch」は「一帯一路は平和の使者」「香港は安定している」といった中国寄りの主張を米国民に刷り込もうとするものだった。
この事件をきっかけに、米国議会はFARAの強化に本腰を入れ、その結晶として提案されたのが、2025年現在審議中の「対中特化型FARA」なのである。
保守派の支持と法案の持つ意義、日本への示唆
この法案は保守派から強く支持されている。中国共産党による情報工作の脅威に対して、ようやく法的な防波堤が築かれることになるからだ。一方で、過剰な監視や恣意的運用への懸念も提起されており、バランスの取れた運用が今後の鍵となる。
賛成党代表 神谷宗幣氏 |
そして、問題は日本である。日本にはFARAに相当する法制が存在せず、対抗措置が何ら講じられていない。この現状に一石を投じたのが、参議院議員・神谷宗幣氏である。令和4年10月、同氏は「日本においても、外国による不当な情報操作を防ぐため、米国の外国代理人登録法のような法制が必要ではないか」との質問主意書を提出。日本政府に対し、FARAやオーストラリアの外国影響力透明化法に相当する制度の検討履歴や、導入の必要性に関する見解を質した。
政府は、FARA相当の法律が日本に存在しないことを明言し、つまり現時点で我が国が中国の影響工作に対して完全に無防備であることが明らかになった。
米国が踏み出した第一歩──日本は沈黙を続けるのか
米国は今、自国の言論空間と主権を守るために、情報という戦場に法制度という武器を携えて挑もうとしている。これは単なる中国対策ではない。国家の生存戦略としての「情報防衛」であり、たとえ政権が代わっても揺るがぬ方針として、米国は情報主権の確立に向けて動き出している。
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日本の大手新聞にも挟み込まれた、 |
一方、我々日本人はどうか。中国共産党との「情報戦」はすでに現実の脅威となっており、大学、自治体、政界、そしてメディアの中にまで、中国の影響力が静かに浸透している。にもかかわらず、日本ではFARA相当の制度がなく、行政も立法も本格的な対応を講じていない。情緒的な“反中”ではなく、冷静かつ制度的な対抗措置が必要だ。
今必要なのは、透明性と覚悟を持った実効的な法制度の整備である。米国が踏み出したこの一歩を、日本はただ眺めているだけでよいのか──沈黙こそ最大の敗北であることを、我々は深く自覚すべきだ。
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