2019年10月24日木曜日

トランプのシリア撤退は勝利のない中東紛争から米国人の命を救う―【私の論評】国防に真剣に取り組まなけば、日本は特ア三国・露の理不尽な要求に屈服し修羅場を見る(゚д゚)!

トランプのシリア撤退は勝利のない中東紛争から米国人の命を救う

トニー・シェーファー中佐

<引用元:サン・センチネル 2019.10.22>トニー・シェーファー中佐による寄稿

米国の軍隊の男性と女性たちに対するトランプ大統領の気遣いを、大統領を中傷する人たちが完全に理解することはない。というのも、政治エリートの栄光の展望が戦争の厳しい現実に取って代わられる時に責任を負うのは大統領だけだからだ。その上――保有領域に足止めされることで兵士が標的となり、機敏さを保ち主導権を維持することができなくなることを大統領は理解している。

トランプ大統領がトルコによる軍事攻撃前にシリア北部から米国兵士を移動する決断を発表した時、民主党とワシントンの外交エスタブリッシュメントは激しい怒りの声を上げた(オバマ政権下での何年も無為と懸念の後のことであり、その無為のせいで50万人の罪のない人々が殺害される結果となったことに注目して欲しい)。

その人たちは単に、トランプが、米国の国益が直接危機にさらされていない、世界の反対側の地政学的な紛争を細かく管理するために米国人の命を危機にさらそうとしない理由を理解できなかった。これまでのそうしたアプローチは、タカ派が数十年かけて入念に米国の事実上の外交政策の立場として設定したものあり、今では民主党の戦争賛成派の進歩主義勢力がそれを採用している。

トランプ大統領には別の考えがある。ミネアポリスでのトランプ集会で最近、「米国よ、勝利を勝ち取れ。兵士たちを家に帰せ」と語ったように。

我々の目の前では「トランプ・ドクトリン」が始まっている。以下の4点から成る方針だ。
  • 米国民に対する具体的な脅威、軍事力の使用を正当化するための利益を確認すること。
  • 既定の期間内に割り当てられた軍事目的達成のための軍に対する明確で簡潔な助言。
  • 軍事作戦で同盟国と地域パートナーの主導を認めて彼らを活用すること。
  • 勝つための自由と政治的な意志――軍が勝利を獲得できるようにするための指針を出す。
こうした単純だが明確な方針がレーガン時代以降、米国の戦略的思考に不在だった・・・だが今それは戻ってきた。

大統領は、米国を終わりがなく、勝利のない外国での戦争に陥らせないと約束した。米国はすでに、中東での政権交代をもたらそうとする不幸な取り組みで血を流しすぎており、多くの財産を浪費しすぎている。トランプ大統領が頻繁に指摘しているように、その地域での行動は何千名もの命と何兆ドルもの税金を掛けたにもかかわらず、米国を少しも安全にしていない。

ISISを抑え続ける試みは継続する――縮小することはないだろうが――が、この取り組みを継続するために、我々は彼らを打倒するための「地上軍」を隣の村に駐留させる必要はない。

また別の長期化する中東の紛争から軍隊を解放するチャンスを提示された時、大統領は賢明にも米国兵士を損害の道から移動させた。明らかに政治エスタブリッシュメントの好む別の手段を取れば、国のない反政府武装集団にその目論見を追及させるために、NATO同盟国に戦争を仕掛けると脅迫することになっていたいだろう。

ISISに対する我々の作戦でクルド人に共通の利益があったのは事実だが、ジハード主義者のカリフの国はもう戦いに敗れ、米国の国益は、現在トルコ、シリア、イラクが所有する領域で独立国家を樹立しようというクルド人の野望に収束しない。マルクス・レーニン主義者の政治的ルーツを持つPKKについていえば、トルコを不安定にしようというその取り組みを支援するのは米国の利益にならない。

最高司令官、トランプ大統領は、外交政策決定による人的損失が非常に実質的なものだと考えている。結局、戦死した米国人の家族に手紙を送り、息子や娘が最終的に国旗で覆われたひつぎに入って帰宅する時に、悲しみに沈む父母に慰めの言葉をかけなければならないのは大統領だ。文民政治家、専門家、ジャーナリストが戦争をあおる――彼らには死傷者報告書を中傷的なデータ点として見るだけの余裕がある――一方で、トランプ大統領は米国軍人の命に責任を持っているのであり、主戦論者はけっしてそれを理解しようとしない。

ありがたいことに、大統領はその責任を真剣に受け止めている。大統領は最近の記者会見で自身のシリア戦略を弁護し、亡くなった兵士の家族への手紙に署名することは「やるべき事の中で最も困難な事」だと記者団に述べた。

大統領は最近のミネアポリスでのキープ・アメリカ・グレート集会で再びそれを話題にし、軍人の家族が愛する故人のひつぎを受け取るのを見守るゾッとするような場面を詳細に説明した。

今年1月米国で身寄りのない孤独な退役軍人ジョセフ・ウォーカー氏の葬儀に数千人が参列した

「(飛行機の)扉が開き国旗で覆われたひつぎが見えた。扉が開いて、この美しい兵士たち、5,6人が両側にいて、ひつぎを持ち上げて滑走路を歩いてくる・・・すると両親は声を上げ・・・今まで聞いたことのないような叫び声と泣き声だ」と大統領は感情を隠すことなく回想した。

そのような瞬間は明らかに大統領の心に重くのしかかっており、米国の軍事力を思慮深く使用するという決断を満たしている。親に息子や娘がこの国のための尊い犠牲となったと知らせる時、トランプはその犠牲が単に価値あるものだというだけでなく必要だったと伝えることができることを望んでいる。

家族や友人が地図の上で見つけることもできないような場所で、あまりにも多くの米国人兵士が死んだ。彼らをそこに送った政治家たちは、その理由を決して的確に声に出していうことができないだろう。1カ月で終わるはずの作戦は10年続く戦争となった。それでもトランプが、その地域での命を懸けた窮地に兵士たちを関わらせるのを拒否した時、ワシントンの政治エスタブリッシュメントは無責任な行動だとして非難した。

戦うなら、勝つために戦う。

勝とうとするなら、米国人の命と利益を守るためであるべきだ。

曖昧な、あるいは存在しない軍事目的で終わりのない戦争をすることは利益にならない。

だがタカ派は、親がなぜ自分の子供に生きて再び会えなくなるのか説明する手紙を書く必要がない。そうした親が泣きすがる棺桶に付き添う必要はない。それはトランプ大統領の責務であり、大統領はそれを平然と果たす。大統領を批判する人たちは、意味のない死を終わらせ兵士たちを損害を受ける道から逃れさせようという大統領の取り組みを非難する前に、そのことを考えてみるべきだ。

トニー・シェーファー中佐は元情報将校であり、London Center for Policy Researchの所長である。

【私の論評】国防に真剣に取り組まなけば、日本は特ア三国・露の理不尽な要求に屈服し修羅場を見る(゚д゚)!

冒頭の「トランプ・ドクトリン」からすると、日本の防衛は米国にとってどうなのかという疑問がわいてきます。

トランプ大統領は、以前「日米安保は不公平。米国は日本を守るのに日本は米国を守らない。こんな条約は破棄してもいい」と語りました。この報道は日本国内で大きな波紋を呼びました。

「対米従属から脱出する好機」という勇まし意見から、米国に捨てられたと思って落胆する者まで、日本での反応はさまざまでした。



しかし、左翼から右翼まで入り乱れて収拾のつかないことになる前に、以下の事実を冷静に心得ておくべきです。

まず第一に。まだ安保条約破棄を検討するような事態には全く至っていません。日米安保は米国にとっても実は大変有意義なのです。日本の基地があるから、米軍の艦隊は西太平洋からペルシャ湾までの広い海域で活動できるのです。

横須賀基地を使えなければ、米国の空母は点検・修理のために遠路、米国西海岸の基地まで帰らなければならなくなります。しかも日本は年間約2000億円もの「思いやり予算」で米軍の駐留を助けています。米軍が日本以外に点検・修理の拠点をつくるということになれば、莫大な投資が必要になります。だからこそ、トランプ自身も、破棄は考えていないと付言しています。

日本にとっても、日米安保は非常に有意義です。いくつかの基地を提供し、思いやり予算を付けることで、世界最強の米軍を後ろ盾(抑止力)として保持できるのです。これにより、日本のタンカーを攻撃することは、即米国に攻撃を与えたものとみなされるので、そのようなことを敢えてすることなどあり得ないです。だから、石油の輸送路も安泰です。

もう1つ、日本は経済で米国市場への依存性が強いため、対米貿易黒字の約620億ドルがないと、日本は約360億ドルの貿易赤字になってしまいます(2017年)。安保面での日本の選択肢も限られることになります。つまり日本が「自分は中立だから」と言って、米国による中国等への制裁に加わらないと、自分自身が制裁を食らって米国市場を閉じられたり、ドル決済ができないようにされ、経済的存立の道を閉ざされてしまうことになりかねません。

トランプ氏の車列に中指立てて解雇された米女性、地方選立候補で再チャレンジ

では日本はどうすべきなのでしょうか。トランプの言動の多く、特に過激な言動は、大統領選挙で再選されることを目的としています。つまり日本を脅しつけて「何か」日本から獲得したことを、選挙民に示したいのです。それも、大統領選挙が本格化する前、年内くらいには欲しいところでしょう。

そうであれば、あまり正面から考え込まず「何か目立つ」成果を日本の役にも立つ形で作れば良いのです。安保面では「日本を守るために作戦中の米軍を自衛隊は守る」こと、つまり集団的自衛権を日本が行使することをアメリカにもっと明確に伝えるのです。

14年の閣議決定でこの点は可能になったのですが、さまざまな但し書きが付いているため、米国はどういうときに自衛隊に守ってもらえるのか理解できないでしょう。

次にホルムズ海峡がこれからずっと危険になることはないとは思いますが、自衛隊の護衛艦は既にアフリカのジブチを根拠地としてアデン湾で海賊対策をしているのですから、ホルムズ海峡にまでその活動範囲を広げれば良いです。中国やインドにも呼び掛けて、ホルムズ海峡を守る国際構想を日本が示せば、それは米国での日本のイメージを一変させることになります。

思いやり予算も増額が必要でしょう。2000億円は一見多額に見えるますが、米国防費6391億ドル(約71兆円、18年度)に比べるとインパクトは弱いです。ただ日本は思いやり予算増額の見返りを米国に要求するべきです。日本が米国から戦闘機などの兵器を購入する際、技術情報を米側がもっと開示し、日本が事故防止や部品生産ができるようにしてもらうべきです。そうして北朝鮮などの核ミサイルを抑止する手段をもっと整備してもらうべきです。

「日本を守る米軍を自衛隊は守らない」という不公平や、安保における対米依存は、米国に押し付けられたものではありません。日本が集団的自衛権の行使を自らに禁じていたため生じた結果であり、自縄自縛(じじょうじばく)なのです。

日本は現行の「日本国憲法」のもとで、「国防」は米国に委ねて、自衛隊は米軍を補助して「防衛」に当たることになっています。米国が日本の国防の主役であって、日本は傍役にしか過ぎないのです。

日本国民は非常の場合には、どんな場合でも協力な米国が守ってくれると思い込んでいるようですから、国防意識が低いです。

緊張が高まっているのは、日本がある東アジアだけではないです。ヨーロッパでは、いつロシア軍がバルト三国や、北欧を奇襲するか、緊迫した状況が続いています。中東も予断を許さないです。もし、イランがペルシャ湾の出入り口を封鎖すれば、米軍が出動するでしょう。

そうして当の米国は、はもはや同時に二正面で大規模な作戦を実行する能力を持っていません。もし、不測の事態が生じて、米軍の主力がアジア太平洋からヨーロッパか、中東に移動せざるをえなくなった場合、日本の周辺は手薄になります。それこそ、「トランプ・ドクトリン」に従って、日本の防衛は二の次ということになるかもしれません。

その機に乗じて、中国やロシア、北朝鮮が本格的に日本に侵略してくるか、そこまでもいかなくても、揺さぶりをかけてくるのは必定です。揺さぶりならあの韓国も当然かけくるでしょう。そのようなときに、日本はこれらの要求に屈服せざるを得なくなる立場になるでしょう。

今まで米国に守られて平和だった日本は、平和ボケでそのような経験はなく、日本は、恥辱に塗れることになるかも知れません。そのようなことは、日本人にとっては、久しくなかったことなので、多くの日本人が強い強い憤りを覚えることになるかもしれません。


そうなってしまってからでは、手遅れです。日本が平和を享受し続けるためには、国防に真剣に取り組まねばならないのです。

憲法を改正して、自衛隊を他の先進国と同じような軍として扱えるようにすること、世界中のほとんどの国では当たり前の、自国は自国の軍隊で守れるようにすることを急がなければならないです。

トランプ大統領の圧力を良い機会として日米安保を破棄するのではなく、もっと公明正大なものとし、それによって対米依存度を減らし、日本人としての自尊心も回復すべきです。

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2019年10月23日水曜日

石平手記「天皇陛下は無私だからこそ無敵」―【私の論評】知っておくべき、これからも私達が天皇とともに歩み、「世界史の奇跡」を更新し続けるワケ(゚д゚)!

石平手記「天皇陛下は無私だからこそ無敵」

石平(評論家)

 私は初めて日本の「御代替わり」の光景をこの目で見たのは、来日1年後の1989年、平成元年のことである。

 昭和天皇が崩御され、当時の小渕恵三官房長官が「平成」の新元号を発表した。その後「大喪の礼」や「即位の礼」など、御代替わりにまつわる一連の儀式が続々と執り行われた。伝統に則ったそれらの厳かな儀式をテレビや新聞で拝見したとき、当時中国人だった私は大きなカルチャーショックを受け、心が強く揺さぶられた。

 来日前から、日本に「天皇」という存在があることは一般的な知識として知っていたが、「即位礼正殿の儀」は特にすばらしかった。多くの外国元首が見守る中、伝統の黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)を召された天皇陛下(上皇)が高御座に昇られ、即位を内外に宣言された場面を目の当たりにし、一外国人の私は日本の天皇の高貴さと尊厳さ、そして日本という国の奥深さに感銘を受けた。

 そもそも、中国は日本よりもずっと長い歴史と伝統があるはずだが、今となってはその悠長な歴史は単なる「過去」でしかない。ましてや過去の王朝が今も国民に尊敬され、万世一系の伝統を保つことなど、到底ありえない。中国の歴史上、数多くの王朝が存在していたが、それらはすべて消滅して跡形もない。こうした光景を中国で見ることはもはや永遠にできないのだ。

 これに対し、日本の天皇と皇室は、神武天皇以来、126代、2600年以上続いている。このような万世一系の日本の皇室と天皇は、長くても数百年で滅んでしまう中国の王朝といったいどこが違うのか。来日の翌年に日本の御代替りを拝見してから、留学生だった私はずっと、この大いなる問題意識を持っていた。

 留学生活が長くなり、日本の歴史や文化に対する知識と理解が深まっていくにつれ、徐々に、この大いなる疑問を解いてきた気がするが、「日本の天皇の秘密」を自分なりに「分かった!」と思ったのは、来日の5年後に、一般公開された京都御所を訪れ、かつての皇居である施設を拝観したときだった。

 京都御所の中を拝観して、まず驚いたのはその気品の高い質素さである。雄大さや豪華絢爛さにかけては、京都御所は当然、かつての中国皇帝の住まいである紫禁城の比ではない。中国人の目から見れば、京都御所は日本最高位の天皇の住まいにしては質素というよりもむしろ貧相というべきものだ。

 もう一つ驚いたのは、京都御所の無防備さである。深い外堀と高い城壁に囲まれている中国の紫禁城がまさに難攻不落の要塞であるのに比べて、軍事的襲撃を防ぐ機能はほとんどない。軍事的襲撃を防ぐどころか、普通のコソ泥でもあの低い塀を乗り越えてこの「禁裡」(きんり)に簡単に入れるのであろう。小規模の軍勢でも攻めてきたら、御所はまさに裸同然の状態だ。

 しかし、よく考えて見れば、日本の天皇はかつて500年以上にわたってこの京都御所に住んでいたはずだが、別にどこかの軍勢に襲撃されたわけではない。あの大乱世の戦国時代でさえ、どこかの軍事勢力が攻めてきたことは一度もない。

 つまり、日本の天皇と御所は、軍事的に無防備であっても誰かに襲撃される心配はまずない、ということだ。すなわち、少なくとも日本国内においては天皇と皇室に「敵」はいない、だから襲われる心配もない、ということである。

皇居・正殿前の中庭で、古装束姿の宮内庁職員が並び行われた「即位礼正殿の儀」(1990年11月)

 「即位礼正殿の儀」中庭の様子=2019年10月22日、皇居・宮殿(鳥越瑞絵撮影)
 源頼朝であろうと足利尊氏であろうと、織田信長であろうと豊臣秀吉であろうと、圧倒的な軍事力を持っている時の権力者たちに、天皇と皇室を攻めようと考えた人は誰もいない。だからいつの時代でも、天皇と皇室は無防備でありながら常に安全なのだ。

 それでは、どうして日本の天皇と皇室に「敵」はいないのか。実はそれは、中国の皇帝のあり方と比較してみればよく分かる。

 中国の皇帝には常に敵がいる。だからこそ、皇帝の住まいである紫禁城は軍事的要塞であり、紫禁城のある首都・北京自体も高くて分厚い城壁に囲まれている。そして皇帝は親衛隊だけでなく国の軍隊そのものを直轄下において自らの権力基盤にしている。しかし、それでも中国の皇帝は「万世一系」にはならない。一つの王朝が立つと長くて数百年、短くて十数年、必ずやどこかの地方勢力や民衆の反乱が起きて王朝と皇室が潰されてきた。

 それはすなわち中国史上有名な「易姓革命」だが、皇帝の支配下で地方勢力や民衆の反乱が必ず起きる理由は、皇帝と皇室による天下国家の私物化であり、皇帝一族による民衆への抑圧と搾取である。

 皇帝と皇室が天下国家を私物化してうまい汁を吸っていると、「次は俺たちの番だ」と取って代わろうとする勢力が必ず生まれ、天下の万民を長く抑圧して搾取していれば、我慢の限界を超え、民衆の反乱が必ず起きてくるのであろう。

 だから、中国の皇帝と皇室はいくら防備を固めていてもいずれ反乱によって滅ぼされてしまい、皇帝の一族はたいていの場合、皆殺しにされるのだ。

 結局、天下国家を私物化して民衆を抑圧・搾取の対象にしているからこそ、中国の歴代王朝と皇室は常に国内の敵によって滅ぼされる運命にあるが、これこそ、日本の天皇と中国皇帝との大いなる違いの一つだろう。

 中国の皇帝とは違い、日本の天皇と皇室は天下国家を私物化していないし、民衆を抑圧と搾取の対象にしているわけでもない。搾取していないからこそ、皇室は常に財政難を抱え、天皇はあれほど質素な御所をお住まいにしていたのだろう。

 ゆえに、日本の天皇には敵対勢力もいなければ民衆の反乱の標的になることもない。それどころか、最高祭司として常に日本国民全員の幸福をお祈りされ、国民全員にとって守り神であり、感謝と尊敬を捧げる至高の存在なのだ。

 こうしてみると、日本の天皇と皇室は、まさに「無私」だからこそ「無敵」となっているが、「無敵」であるがゆえに、現在に至るまでの「万世一系」を保つことができるのであろう。

「即位礼当日賢所大前の儀」に臨まれる天皇陛下=2019年10月22日、皇居・賢所

 重要なことは、まさにこのような無私の天皇と皇室が頂点に立っているからこそ、日本国民が多くの苦難を乗り越えて一つのまとまりとして存続を保ってきたということだ。そして万世一系の天皇と皇室がコアになっているからこそ、日本の伝統と文化が脈々と受け継がれてきているのであろう。

 そういう意味では、日本国民にとって、天皇と皇室は最も大事にして有り難い存在であることがよく分かるが、再び御代替わりを迎えた今、われわれはもう一度、天皇と皇室の歴史とその有り難さに思いを寄せて、皇室の永続と弥栄(いやさか)を心からお祈りしたい。 

【私の論評】知っておくべき、これからも私達が天皇とともに歩み、「世界史の奇跡」を更新し続けるワケ(゚д゚)!

歴史上、世界各国の多くの皇室(帝室)や王室は悲惨な終わり方をしています。国民や外敵に追放されたり、処刑されたりしました。それは、冒頭の石平氏の記事にもあるとおり、中国も例外ではありません。世界の王朝が頻繁に変わるなかで、日本の皇室だけが万世一系を維持し、天皇は今日、世界に唯一残る「皇帝(emperor)」となっています。その存在は「世界史の奇跡」です。

清王朝の末期、隣国の中国は日本と同じように、皇室を残し、立憲君主制の下、近代化を進めようとしました。しかし、それは失敗しました。いち早く近代化に成功した日本では、皇室が大きな役割を果たしましたが、中国では、皇室が近代化の障害になると見なされました。この違いは、いったい何でしょうか。

石平氏は、これを天皇の「無私」ということにあるのだとしています。私はそうした側面は間違いなくあると思います。ただ、「無私」以外にどのようなことがあるのか、以下に私なりに分析してみようと思います。無論、石平氏は以下のような分析の果に、天皇の「無私」にたどり着いたということだと思いますが、多少教科書的ながら、以下の分析も役立つものと信じたいです。

19世紀末から20世紀初頭、中国では近代化の方法を巡り、立憲派(皇室を残す)と革命派(皇室を残さない)が争いました。


立憲派の代表は康有為や梁啓超ら清王朝の官僚たちで、彼らは当時の中国で、共和制や民主主義を行えば大混乱に陥り、列強の餌食となってしまうので、皇帝制を維持しながら改革を進めていくことを主張しました。彼らは日本やヨーロッパのように、中国にも立憲君主制を根付かせようとしたのです。

一方、革命派の代表は孫文と黄興です。彼らは、清王朝の体制のなかから近代化を行うことは不可能と考え、清を打倒しなければならないと考えました。孫文ら革命派は民族資本家と呼ばれるブルジョワ階級を主な勢力基盤としていました。

孫文と黄興


20世紀に入ると中国でも工業化が進み、ブルジョワ階級が育ちます。孫文は国内の民族資本家や華僑(外国で成功していた民族資本家)の勢力を結集し、革命運動の原動力とします。

民族資本家たちは、清王朝から特権を保証されていた封建諸侯と、利害関係において激しく対立しました。封建諸侯は領土を独占し、民族資本家の商工業にも不当に介入し、税などを巻き上げていました。封建諸侯によって支えられていたのが清王朝であったので、孫文ら革命派・民族資本の勢力にとって、清を倒すことは商工業の自由を獲得するために欠かせないことでした。

清は末期症状のなか、極端な財政難に耐えられず、1911年、幹線鉄道を国有化し、鉄道を保有する民族資本家からこれを没収して財政不足に充てるという強硬手段に出ます。民族資本家は清に怒りを爆発させ、四川で暴動、武昌で蜂起し、辛亥革命となります。彼らは南部地域一帯で、清からの独立を宣言し、南京で孫文を臨時大総統に選出して、中華民国を建国しました。

しかし、清王朝は袁世凱を内閣総理大臣に任命し、革命の鎮圧を命じます。中国北部で軍事力を有していた地方豪族の軍閥という勢力があり、袁世凱はこの軍閥の領袖でした。彼は大軍を率いて、南京にやってきます。

袁世凱は清の体制内部の要人でありながら、清の命運は長く持たないと考え、新しい中華民国の総統になるほうが得策と判断し、革命派と取引します。袁世凱は「私が清の皇帝を退位させることを条件に、私を中華民国の大総統にせよ」と要請しました。

孫文ら革命派は袁世凱の強大な軍を前に、この要請を受け入れざるをえませんでした。しかし、皇帝を退位させ、清王朝を名実ともに終わらせることができるのは大きな前進と捉えました。

大総統になった袁世凱は宣統帝溥儀を退位させ、1912年、清は滅亡しました。こうして、彼ら中国人は秦の始皇帝から約2100年続いた皇帝制と訣別したのです。

ちなみに、中国史上に登場した皇帝は600人以上にのぼります。中国において、皇帝制を葬るために戦ったのが孫文ら民族主義勢力で、皇帝制を葬ったのは袁世凱ら清王朝内部で特権を享受していた軍閥勢力でした。つまり、清王朝は外から仕掛けられて、中から壊れたと言えます。

宣統帝の退位により、皇帝制は終わりましたが、皇帝制とともにあった封建政治は温存されました。袁世凱が政権を握り、軍閥や封建諸侯の特権を保証しながら、孫文ら民族資本家勢力を弾圧しました。孫文らは強大な軍事力を誇る彼らの敵ではありませんでした。

袁世凱は野心をあらわにします。1915年、皇帝に即位し、国号を中華民国から中華帝国に改めます。年号を洪憲と定め、洪憲皇帝を名乗ります。

何の血統の正統性もない者が突如、皇帝になったことに当時の日本をはじめ、世界各国は驚きましたが、中国では易姓革命の伝統があり、血筋に関係なく実力者が皇帝になってきたので、袁世凱自身、自分が皇帝になるのは当たり前だと考えていました。しかし、袁世凱に対する中国国内から反発は強く、彼はわずか3カ月で退位しました。そして、間もなく、失意のうちに病死します。

袁世凱が病死した後も、軍閥勢力と孫文ら革命派との対立は続き、近代革命は進展しません。第1次世界大戦後、北京の学生が中心となり、五・四運動という反帝国主義運動を展開します。

民衆の政治への関心の高まりを感じた孫文は以後、民衆を取り込み、革命勢力を形成する方針をとります。孫文はそれまで、エリート主義的なブルジョワ革命を目指してきました。しかし、この考え方を変え、民衆全体を取り込み、革命を推進していこうとしたのです。

以後、中国では共産党勢力が急速に拡大し、猛威を振るうようになります。1925年、孫文は「革命いまだ成らず」という有名な言葉を残して、病死します。後継者の蒋介石は孫文と異なり、共産党を危険視し、弾圧します。蒋介石は毛沢東と激しく対立しますが、もはや、共産党の拡大は誰にも止められない状態でした。共産主義者が唱える平等社会が平民たちに広く受け入れられていきます。

中国では、ヨーロッパと異なりブルジョワ市民階級が未成熟でした。皇帝制を打倒した後に、その受け皿となるべき民族資本家たちが国家を強力に牽引していく存在にはなれませんでした。

1912年、辛亥革命で清が倒れたとき、牽引者不在のなかで中国は方向性を失います。秩序がもろくも崩壊し、共産主義が圧倒的多数の貧民の支持を得て勢力を拡大します。つまり、皇帝制崩壊により、中国では共産主義国家の誕生が避けられない事態となっていたのです。

毛沢東(1919年)

日本も中国と同様に、ヨーロッパのようなブルジョワ階級は未成熟でした。代わりに、従来の特権階級であった藩主や武士が近代革命を担いました。

17世紀のイギリス市民革命でも、18世紀のフランス革命でも、国王をはじめ多くの特権階級が処刑されています。フランス革命では、日々の大量処刑を迅速に執行するために、ギロチンが考案されました。ヨーロッパの近代革命は血生臭い暴力が付いて回り、それは中国の易姓革命と同質のものでした。

日本の近代化である明治維新では、そのような血生臭い暴力は最小限に抑えられました。革命への穏健な姿勢が終始貫かれ、日本独自の絶妙なバランス感覚で体制の旧弊を漸次改変しながら、近代化が進められていきました。日本の近代革命は「アンシャン・レジーム(旧体制)」を急進的に打破していく、ヨーロッパ型の近代革命とは根本的に異なっています。

日本の近代化が穏健に進められた背景として、天皇の存在が大きかったと思われます。最後の将軍徳川慶喜は自らの体面を失うことなく、政権から退きました。それは、将軍よりも格上の天皇に、それまで預かっていた政権を返上するという大政奉還の建て前を通すことができたからです。

約270年間続いた江戸の将軍が、薩摩・長州という辺境の家臣に屈服したという恥辱にまみれるならば、幕府勢力は死力を尽くして、革命軍と戦い、血で血を洗う陰惨な内戦に発展した可能性があります。幕府はあくまで大政奉還により、天皇に恭順したのです。超越的な天皇の存在が日本の危機を救いました。

ヨーロッパの民主革命の闘士から見れば、天皇を頂点とする明治の新生国家は、王政復古への逆行と映ったかもしれません。このとき、新生国家を共和制とせず、立憲君主制にしたのは、維新の革命者たちの深遠な知恵でした。

首班や内閣は天皇に対して、責任を負います。そして、彼らは天皇によって大権を与えられます。この大権の実効性を強固なものにするため、多少、天皇を神格化しすぎたというところもあります。しかし、そのような天皇の存在が、困難な改革を実現させるのに大きな役割を果たしたのです。

大政奉還と同様に、廃藩置県は藩の小君主(藩主)たちの実権を天皇に返還させるものでした。封建諸侯である彼らが、自らの特権を手放したのは、彼らよりもずっと身分の低い足軽上がりの革命者(西郷隆盛や大久保利通など)が命じたからではなく、天皇の大命を仰いだからでした。

聖徳記念絵画館壁画「廃藩置県」

武士の忠義からして、天皇の大命には逆らえず、封建時代の実質的な実力者であった彼らのほとんどは潔く身を引いたのです。その潔い精神というものは、他国の特権階級には見られません。彼らの多くは処刑台の前に引きずり出されるまで、悪態をつき、暴言を吐きながら抵抗しました。

日本には、鎌倉幕府から江戸幕府に至るまで、将軍という世俗の権力者の上に、天皇という超越的な存在がありました。この二重権力構造が続き、朝廷が維持されたことが近代日本に幸いしました。日本が過激に社会秩序を崩壊させることなく、緩やかな変革を実現することができた最大の理由がここにあります。

中国は王朝がコロコロ変わる易姓革命を繰り返したため、天皇のような国家の中核存在を持つことができませんでした。維新の革命者が孫文のように共和主義を掲げ、朝廷を廃止していたならば、日本も中国と同じように、無秩序と混乱に陥っていたことでしょう。

われわれの父祖たちは、つねに天皇と共に歴史を歩んできました。これからも、私達は天皇とともに歩み「世界史の奇跡」を更新し続けることになるのです。

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2019年10月22日火曜日

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「即位礼正殿の儀」で、即位を宣明される天皇陛下=22日午後、宮殿・松の間

「即位の礼」の中心儀式「即位礼正殿の儀」が22日、国事行為として皇居・宮殿で執り行われ、天皇陛下は「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」と宣明された。

儀式は午後1時過ぎ、約2千人の参列者が見守る中、宮殿「松の間」で始まった。鉦(しょう)の合図で参列者が起立すると、陛下の側近である侍従らにより玉座「高御座(たかみくら)」と隣の「御帳台(みちょうだい)」の帳が開かれた。陛下は古式装束「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」に身を包まれ、皇后さまは十二単(ひとえ)のお姿。参列者が鼓(こ)を合図に敬礼した後、陛下が即位を宣明された。

陛下はこの中で、上皇さまの在位中のご活動にも触れながら「国民の叡智(えいち)とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします」と述べられた。

儀式では、三種の神器のうち剣と璽(じ)=勾玉(まがたま)、国の印章「国璽(こくじ)」、天皇の印「御璽(ぎょじ)」が、高御座の「案(あん)」と呼ばれる台に安置された。宮殿内には賓客が両陛下のお姿を見られるようモニター30台が設置された。

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まずは、以下に「即位礼正殿の儀」のノーカット版の動画を掲載させていただきます。


次に、「即位礼正殿の儀」天皇陛下のお言葉を以下に掲載させていただきます。
 さきに、日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。 
 上皇陛下が三十年以上にわたる御在位の間、常に国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その御(み)心を御自身のお姿でお示しになってきたことに、改めて深く思いを致し、ここに、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います。 
 国民の叡智(えいち)とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。
さて、本日は天皇家がいかに長い歴史を持っているか、そうして、その長い歴史にふさわしく、「即位礼正殿の儀」に参加させる代表に各国がどのような人たちを派遣しているのかを掲載します。

『日本書紀』にも掲載されている神武天皇から数えると、日本の天皇家は男系継承で126代、2600年以上も続いてきた計算になります。この数字は、現在続く王室の中で、世界で最長です。

歴史学者の中には、神武天皇が存在したのか否かについて、疑義を抱く人もいるようです。ただし、私自身としては、我が国の天皇は、いつかも定かではないそれくらい古くから存在していたということ自体に畏敬の念を抱かずにはおられません。

神話の世界で語られる神武天皇

では、現在の歴史からいって何代からであれば実在したと疑いなく考えられるのでしょうか。

実はこの点にも議論があって、第10代の崇神(すじん)天皇、第15代の応神(おうじん)天皇、第26代の継体(けいたい)天皇と考える人たちに分かれているとされています。

いずれにせよ第26代の継体天皇が存在したという考えは、考古学的にも確実視されています。ただ、これらの天皇が存在しなかったとか、神武天皇が存在しなかったなどのことも、歴史的に証明されているわけではありません。ただ、文献などで実在が確かめられていないということです。

継体天皇が在位していた時期は6世紀の前半になるとされています。そうなると21世紀前半の現在において天皇家はそのときより15世紀、1,500年間も男系継承されてきたと言えるのです。

継体天皇から見て1,500年という数字であっても、日本の皇室の歴史の長さは世界の王室の中でも世界一なのです。

現憲法の第一条では、

<天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく>(宮内庁のホームページより引用)

とあります。その前の大日本帝国憲法の第一章第三条にも、

<天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス>(大日本帝国憲法より引用)

などと書かれていました。それぞれの憲法は成立の背景も狙いも全く異なりますが、いずれの憲法においても、憲法の一番最初に天皇のことが語らているのです。このことをもってしても、日本国、日本国民と天皇とは不可分といっても良いのです。

「即位礼正殿の儀」に合わせて来日した各国の要人と安倍総理大臣との会談がスタートしました。21日だけでも20ヵ国以上の要人との会談が予定され、25日までに中国の王岐山国家副主席ら50ヵ国の要人との会談に臨みます。

今回の、祝賀外交では、オランダやベルギー、スペイン等、王制、立憲君主制、つまり王様のいる国は高いレベルの人を送ってきています。

イギリスもチャールズ皇太子、サウジアラビアもムハンマド皇太子です。一方、日本と非常に関係の良い米国は、あまり大物とはいえないチャオ運輸長官を派遣しています。とはいいながら、閣僚であることには変わらず、米国側の配慮が感じられます。

チャオ米運輸長官

中国は国家副主席の王岐山氏を、ロシアは、ウマハノフ氏という連邦院の上院の副議長を派遣しました。この人はタタールスタンというトルコ系人の共和国があって、そこの副首相をやっていました。その副首相ですが、日本で言うと副知事くらいです。日本のイメージだと、副知事くらいの人が参議院議員になったようなものです。

平成の即位のときには旧ソ連のルキャノフ氏という連邦院の上院の副議長が来ています。後にこの人がゴルバチョフを追い落とすクーデターを実行し失敗しました。ルキヤノフはゴルバチョフとは大学時代からの親友なので、この人が来てくれると日ソ関係を進め、北方領土交渉を進めるにもいい環境整備になるのではないかと当時は考えられていました。

それと比べると、少し格下の人が送られて来ているということを見ると、いまの日露関係を反映しているということが言えるかもしれません。今回の祝賀外交での日露間はなかなか話が進まないかもしれません。ただし、誰も人が来ないということではないですから、ロシア側の一定の配慮が感じられます。

今回は、24日に韓国のイ・ナギョン首相と安倍総理が会談する予定です。安倍首相との会談で何が出てくるかというところが注目です。会談をした結果、日韓関係がなお厳しいことになる可能性も考えられないことではありません。

「饗宴の儀」は4日間にわたって、22、25、29、31日と行われますが、平成のときには4日間で計7回行われましたが今回は1日1回ということで、招待客も平成のころよりは絞って行われるようです。そういう方向性を現在の皇室は示したいようですし、それを内閣が承認しているということなのでしょう。

いずれにしても、各国とも世界最長の歴史を誇る日本の皇室の「即位礼正殿の儀」に対して、日本と当該国の間が現状がどのような関係にあろうとも、失礼のない程度にある程度以上の格の人物を派遣しているということです。

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2019年10月21日月曜日

NBAの中国擁護が米国団体にとって今に始まったことではない理由―【私の論評】いずれ中国は、世界市場から完璧に弾き出るよりしかたなくなる(゚д゚)!


    レブロン・ジェームズの中国への渡航は、大部分は商品を販売することだが、
    利益のために道徳を犠牲にすることの最新事例に過ぎない

<引用元:ニューヨーク・ポスト 2019.10.19>スティーブン・W・モッシャー氏(人口研究所(Population Research Institute)所長で、「Bully of Asia: Why China’s ‘Dream’ is the New Threat to World Order」の著者。)による寄稿

レブロン・ジェームズは、中国での「状況について教育を受ける」必要性について他人に説教してもいいが、世間知らずの人間だ。その共産主義大国に約20回――おそらくその合計で何千万ドルも稼いだことだろう――訪れているにもかかわらず、自分のギャラを支払ったのがどのような怪物なのか全然わかっていないようだ。

レブロン・ジェームス

香港の人々――レブロンはその人たちが自由を求めて必死に戦っていることを無視したいようだが――は、もっとよくわかっている。中国共産党が国境の向こうで支配しているのは単なる警察国家ではなく、13億の国民を常に監視することを文字通り目標とする世界最先端の刑務所だと理解している。

香港の人々は、共産党が世界最大の強制収容所ネットワークを管理しており、何百万もの政治犯と少数民族がそこで安価な輸出用製品の製造を強いられていると知っている。

少しでも国を分断させようとするなら「体は打ち砕かれ骨は粉々に」なるだろう、と中国の習近平主席が警告したことを彼らは知っている。最後に、米国が自分たちの苦境に対して無関心を示せば、習が悪質な脅しを行動に移す可能性がよりいっそう高くなると知っている。

いうまでもなく、中国にへつらうのはレブロン・ジェームズとNBAだけではない。米国の個人と団体――それが最も裕福で高名であっても――は、米中関係のまさに初期から中国に頭を下げてきた。

富を追及して、米国企業は1980年代から北京の政権と協力してきた。何百もの米国企業は、中国が奴隷のような条件で進んで提供する安価な労働力を巧みに利用するために工場を作り、その過程で米国の労働者を裏切った。

現在でも米国のハイテク企業は、中国が自由を損ねるほどに監視国家を築くのを手伝い続けている。グーグルが人工知能開発で中国との協力を継続しているのは1つの例に過ぎない。

これまでの一連の政権は、蔓延する人権侵害をほとんど無視して、米国人に中国での投資を奨励してきた。例えば1989年に北京の街で1万人の学生が意図的に虐殺されても、当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領が親中政策を断念するよう説得するには不十分だった。

米国の数十年にわたる中国融和政策の邪魔をする人は誰でも――香港を支持するツイートをしたヒューストン・ロケッツのダリル・モーリー・ゼネラルマネージャーがそうしたように――犠牲にならなければならなかった。

私に尋ねてくれ。知っているからだ。裏切られたのは私が最初だった。そして実にスタンフォード大学ほどの一流の機関によって、だ。私は人類学で博士号の最後の仕上げをしようとしていた。1949年以来中国で研究する初めての米国人社会科学者に選ばれたためだ。私は到着した時にぎりぎりで、中国が新たに発表した一人っ子政策の恐怖の目撃者となった。

私の「犯罪」は、中国が若く妊娠した母親たちを逮捕し、刑務所に入れ、堕胎させたことを本で非難した事だった。

中国はこれを「中国国民に対する攻撃」と解釈し、大学に私に対する「厳しい処罰」を要求した。そしてスタンフォード――世界の一流大学の1つ――は屈服し、私が獲得した博士号を否定し、私を解雇した。

スタンフォードを屈服させた脅しは何だったのだろうか?

スタンフォードは、私の情報提供者が危険にさらされたことを懸念したと主張したが、これは人類学的な倫理に違反しており、私は排除された本当の理由を知っていた。つまり中国は、スタンフォードの学者を全員無期限に中国から追放すると脅していたのだ。

私の件に関する臆病さはカーター政権のトップにまでずっと拡大した。カーター政権国家安全保障会議ですらスタンフォードに中国の要求に従うよう強く促した。

中国は米中学術交換プログラム全体を中止すると脅していたことが判明した。

NBAを追放すると脅したのと全く同じだ。

このパターンがわかるだろうか?

「アジアのいじめっ子」の初期動作――嫌いなものを見る時の――は脅迫することだ。

幸運なことに、我々の今の大統領には屈服する習慣はない。ピーター・ナバロ通商顧問とロバート・ライトハイザー米国通商代表の協力を得て、トランプ政権ホワイトハウスは融和政策の終了を提唱しており、議員と企業役員の両方に中国に対抗するよう――また米国の典型的な自由の価値観と表現の自由を支持するように強く促している。

それがとても良いことだと思わないのであれば、香港の抗議者たちに尋ねてみることだ。

【私の論評】いずれ中国は、世界市場から完璧に弾き出るよりしかたなくなる(゚д゚)!

10月上旬は特に、米国の団体・企業などが中国から締め出しを受けたり、怒りを買ったケースが多発しました。
・10月2日に中国で放送されたアメリカの人気アニメ「サウスパーク」の内容が、中国の政治犯に対する弾圧を批判。習近平国家主席をくまのプーさんになぞらえるなど、当局を刺激するものだった。7日に中国での放送中止が決まった。 
・10月7日、「ティファニー」の広告画像で、モデルの女性の右目を手で覆い隠すポーズが反発を受けた。8月にあった香港デモに参加の女性が、警官の撃ったゴム弾を右目に受けて負傷したことで、一時デモ参加者たちが右目に眼帯をしたり、右目を右手で覆って負傷女性への連帯と香港警察への抗議を示した。広告にはその意図は無かったが、ティファニーは広告画像を削除した。 
・10月8日、中国共産党機関紙「人民日報」(電子版)が、iPhone用の香港の地図アプリ「HKmap Live 」を香港デモを支援するアプリだと批判。10日にはAppStoreに表示されなくなってしまった。 
・10月11日、アメリカの人気DJであるZEDD(ゼッド)がTwitterで「(前出のアニメ)サウスパークのツイートを『いいね』したら、中国から永久に入国禁止を受けた」と明かした。
こうしたなかでひときわ大きな話題となったのがNBAでした。10月4日、NBAヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGMが香港デモへの支持をTwitter上で示すと、中国で瞬く間に反発が拡大。中国バスケットボール協会はロケッツとの提携関係の見直しを発表し、中国での配信権を持つIT大手のテンセント(騰訊)は一時、NBAの試合の配信を中止しました(14日から再び配信を行っています)。

さらに中国で予定されていたNBA関連イベントや、国営放送でのプレシーズンマッチの放送が中止になるなど、影響が続きました。

NBAは約30年前から中国と関わり始めました。ロケッツで活躍し、現在は中国バスケ協会の会長でもある姚明(ヤオ・ミン)氏がNBA入りした約20年前から、中国市場への投資が本格化しています。ロケッツ同様、他のNBA各チームも中国でのビジネスに力を入れています。

今回の事態を受け、NBAの公式スポンサーになっていた中国企業25社中12社がスポンサーの取りやめ、または一時停止を発表。現地メディアの中新網は「ロケッツは年間4億元(現在のレートで約60億円)を損失し、NBAに至ってはさらに多いだろう」と指摘しました。

ロケッツのダリルGMは、中国からの反発を受け、当該ツイートを削除。10月7日には「自分のツイートが中国のロケッツファンや友人たちを不快にさせるつもりはなかった」と投稿しましたが、反発はまだ収まっていません。

ロケッツのダリル・モーリーGM
ちょうどその時期、ロケッツとトロント・ラプターズが、16年ぶりの日本でのNBAプレシーズンマッチ開催のため来日していました。NBAのトップであるアダム・シルバーコミッショナーも来日、10月8日の試合前に臨んだ記者会見では、海外メディアから厳しい質問が飛び交いました。

「NBAには、表現の自由をしっかりと擁護してきた長きに渡る伝統がある。彼(ダリルGM)にはそれを行使する権利がある」と毅然と発言したことに、さらに中国側は反発しました。会見翌日、上海に渡り、「この件について怒っている」と言われるヤオ・ミン氏(中国バスケットボール協会会長)との会談を行ったようですが、現時点まで詳しい内容は明かされていません。

テンセントはNBAの試合を10月14日から配信再開したましたが、同日の中国外交部の定例会見で、テンセントの動きを支持するかと問われた耿爽(グン・シュアン)報道官は、「我々は各企業の具体的なビジネスに対して評論する立場にはない」と強調、「スポーツ交流は中国とアメリカの友好関係が増す。しかし、交流していく上では相互尊重が重要」と釘を刺しています。

一方、せっかくシルバー氏が中国側の激しい反発を受けつつも、「言論の自由の保証」について表明したにも関わらず、10月10日に台無しにすることがありました。

さいたまアリーナでのNBAプレシーズンマッチ終了後の会見で、アメリカCNNの記者が一連の問題について、ロケッツの選手2人に質問しようとしたときのことです。チーム広報担当が「バスケと関係ない質問をするな」と遮ったのです。結果、言論の不自由さが際立つ結果になってしまいました。

このやり取りはすぐに報道されてTwitterでも拡散し、NBAに批判が殺到。NBAはすぐさま、CNN記者に謝罪することとなりました。

この問題、日本での関心はそれほど高くないですが、実は日本の企業や著名人もこれまでに巻き込まれています。日産自動車の中国での合弁会社である東風日産は10月9日、NBAへのこの問題、日本での関心はそれほど高くないですが、実は日本の企業や著名人もこれまでに巻き込まれている。日産自動車の中国での合弁会社である東風日産は10月9日、NBAへのスポンサード中止を発表しています。

また、アイドルグループAKBの姉妹グループで、上海を拠点にする「AKB48 Team SH」は、10月8日に上海で行われたNBAのプレシーズンマッチに出演予定だったのですが直前に出演を取りやめています。共に公式声明文の中で中国への支持を表明しています。



中国でも大人気のバスケ漫画・アニメ「スラムダンク」も“被害”を受けました。

作者・井上雄彦さんが4カ月前に、Twitter上で河野太郎外相(当時)など香港デモを支持するツイートに対して「いいね」を押していたことが、なぜか10月8日になって中国のSNS上で広がり、大規模ではないものの反発が発生しました。

「がっかりした。泣きたい」

「これからは正規版では無く、違法コピー版を読む!」

「好きな漫画は、テニスの王子様に変える」

との声が出ていました。

中国では一度敵視されると、徹底的にたたかれ、市場から排除されます。それでも巨大な市場で利益を享受したいと考える海外の企業は多いです。

中国とどう折り合いを付けていくのでしょうか。中国を刺激しないように、中国の顔色をうかがいながら、忖度していく。こういった企業がますます増えていきそうです。

ただ一ついえるのは、外国の企業や団体を中国市場から排除するようなことを続けていけば、そのような国ではどの企業も事業継続は不可能とかんがえるようになり、いずれ中国が世界市場から叩き出されることになります。

現在の中国は、TPPにも、EPAにも参加できません。参加するためには、中国国内の構造改革が必要になります。特に、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は必須です。

これができなければ、いずれ中国が世界市場から完璧に弾き出るよりしかたなくなります。自国と、札びらで頬を叩いて無理やり仲間にした、自分のことを良く聞く金にしか芽がない発展途上国と中国で、経済圏を作り出し、その中で生きていくしかなくなります。そのような経済圏は発展する見込みがありません。

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2019年10月20日日曜日

EXCLUSIVE-緩和必要なら短中期金利を「確実に」引き下げ=黒田日銀総裁―【私の論評】いま日銀が取り組むべきは、マイナス金利の深堀、構造不況業種の銀行などに配慮するな(゚д゚)!

EXCLUSIVE-緩和必要なら短中期金利を「確実に」引き下げ=黒田日銀総裁

黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は19日、ロイターのインタビューに応じ、追加の金融緩和が必要になれば短期・中期の金利を「確実に」(certainly) 引き下げると語り、高まる海外経済のリスクに対し、マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示した。

また、市場が大きく動けば現状の枠組みでも上場投資信託(ETF)の買い入れを増やすことは可能と述べ、景気に悪影響を与えかねない株価下落に対応する準備があることを示唆した。

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出席のため、米ワシントンを訪れている黒田総裁はロイターに対し、「世界経済の見通しは、総じてより活発さに欠けている。成長が回復する時期は幾分後ずれしている」と語った。

その上で「もし追加の金融緩和が必要なら、確実に短期・中期の金利を引き下げる。超長期金利の低下は望まない」と述べた。

黒田総裁のこうした発言は、米中貿易摩擦と世界的な需要の落ち込みに対する日銀の懸念を裏付ける。市場関係者の間では、こうした海外経済の減速を受け、日銀が10月の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの観測が出ている。

さらに黒田総裁の発言は、緩和に踏み切る場合、短期金利を一段と引き下げ、マイナス金利を深堀りする可能性が最も高いことも強く示している。

黒田総裁は、短期・中期金利の引き下げは経済にプラスに作用する可能性がある一方、超長期ゾーンを過度に引き下げると、年金や生命保険の運用に悪影響を与え、消費者心理を冷やしかねないと語った。

日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みの下、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導している。国債とともに、ETFなどのリスク資産も購入している。

日銀が前回の会合で、海外リスクの高まりを警告し、政策対応に踏み切る可能性を示唆したことで、市場では日銀が10月30、31日の金融政策決定会合で追加緩和するのではとの観測が強まっている。

10月会合で緩和が必要なほど海外のリスクは高まっているか、との問いに黒田総裁は「確定的に言うのは少々難しい」と答えた。

黒田総裁は、米中協議に多少の進展が見られる一方、対立は続く可能性があり、英国の欧州連合(EU)離脱の先行きもまだ不確実だ、と指摘。「世界経済の下振れリスクが非常に高まったとか、非常に縮小したとか言うことはできない。リスクの高い状況が続くと思う」と語った。

そのような海外リスクと国際通貨基金(IMF)による世界経済見通しの下方修正は、日銀の日本経済の見通しに影響を与えるとも付け加えた。

黒田総裁は、2%の物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる場合、日銀はちゅうちょせず金融緩和するという従来の見解を繰り返したが、いつ行動するかについて前もってアイデアがあるわけではないと述べた。

「あらかじめ政策を決めていることはない。すべて経済データ次第だ」とし、今月の政策決定は既定路線ではないと示唆した。

日銀は追加緩和する場合の政策オプションとして、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速の4つがあるとしてきた。

黒田総裁はマイナス金利の深掘りが主要なオプションの1つだと発言してきたが、アナリストらはマイナス金利のさらなる低下は地方銀行の資金繰りを悪化させ、消費者マインドを傷めると警告している。

マイナス金利深掘り以外ではどんな政策ツールがあるかとの質問に黒田総裁は「いくつかのオプションの組み合わせや応用がある」と指摘したが、詳細は語らなかった。

「資産買い入れプログラムを拡大することもできる。われわれの資産買い入れプログラムは長期国債だけでなくETFなども含む」と述べ、「金融緩和によって経済に影響を与える様々なツールがある」とした。

日銀は現在の資産買い入れプログラムの下で、保有残高が年間6兆円のペースで増えるよう、ETF買い入れを行っており、市場の状況に応じてそのペースは変動するとしている。

黒田総裁は「われわれのETF買い入れは非常に柔軟だ。現在の制度の下でも、必要ならETFの買い入れを大幅に増やすこともできる」と発言。年間6兆円のペースで買い入れを増やすという現在のコミットメントの下で、ペースを拡大することも可能との考えを示した。

インタビューは英語で行われました。

【私の論評】いま日銀が取り組むべきは、マイナス金利の深堀、構造不況業種の銀行などに配慮するな(゚д゚)!

現状、安倍政権は経済成長を最優先させることに力点を置いていないとみられ、それが引き起こすであろう経済情勢の変化が政権の地盤を揺るがしかねないですす。このリスクは、すでに金融市場の価格形成に反映されています。

日本株の日々の値動きは、米国株市場にほぼ連動して動いています。ただ、2018年から米国と比べて日本株はアンダーパフォームし、2018年初をピークに日本株(TOPIX、東証株価指数)が緩やかな下落基調にあります。日本の経済政策がうまく作用せず、経済が冴えない状況が続いていることが最大の背景です。

株価指数ヒストリカルグラフ -TOPIX (東証株価指数)- 週足チャート

経済最優先を掲げていた安倍政権の政策が2018年からはっきり転換したことの象徴としては、今年10月の消費増税を決断し、財政政策が明確に緊縮方向に転じたことです。


2%インフレという経済正常化を実現する前に財政政策を逆噴射させるのは、2014年の消費増税と同様で、成長率を押し下げてデフレ圧力を高める政策対応以外の何ものでもありません。

もちろん、消費増税への対応政策として補正予算策定などが検討されています。3兆~5兆円規模の補正予算などの手当てが想定されますが、可処分所得の伸びが極めて低い中で、2兆円を上回る家計に対するネットの増税負担への手当てとして十分な対応はほとんど見当たりません。

このため、2020年にかけて個人消費を中心に成長率は大きく減速することになるでしょう。

また、安倍首相は新設する検討会議において、「全世代社会保障改革」に全力で取り組む、としています。新たな検討会議での議論は、社会保障制度や税制の将来の姿につながるという意味では重要でしょうが、長期的な政策枠組みの話がメインとなり、予想される景気減速への対応には直結していません。

他国に目を転じると、米国や欧州などほとんどの国で、経済成長の下振れリスクが高まりインフレが停滞する中、経済成長率を押し上げる拡張的な経済政策を行っています。

米国では、ドナルド・トランプ大統領が議会と財政合意にこぎ着け、2020年までの歳出の上限を引き上げました。フランスは4月に減税などを行い、EU離脱を控えた英国ではボリス・ジョンソン首相が政府債務を拡大させる大規模な財政政策を表明しています。そしてドイツでも、景気低迷を受けて、減税などの財政政策についての議論が活発になっています。

ジョンソン英首相(左)とトランプ米大統領(右)

マクロ安定化政策が各国の経済成長率を左右し、それが株式市場のパフォーマンスにも影響します。デフレ脱却の途上にあり、各国と比べても成長率を押し上げる経済政策が必要である日本だけが緊縮的な経済政策を行っていることへの、投資家の不信感はかなり大きいと思われます。今後景気が減速する中で、この不信感は強まるとみています。

緊縮的な経済政策は、財政政策だけではなく、日本銀行の金融政策についても同様です。

現状、米連邦準備制度理事会(FRB)が2019年7月から利下げに転じる中で、新興国を含めたほとんどの中央銀行が金融緩和を強めています。こうした状況下、インフレ目標の実現が先送りされる中で日銀が金融政策の現状維持を続けていることは、円高を引き起こし、金融引き締め的に作用しています。

2%インフレ目標の達成可能性が低下する中で日銀が同じ政策を続けているのは、安倍政権と足並みをそろえ、経済軽視の政策を行っているからかもしれません。いわゆる「金融緩和の副作用」なるものが、少し前まで声高に叫ばれていましたが、具体的なものはありませんでした、さらに最近はこの副作用という声が小さくなってきたようです。

マイナス金利政策はこれを続けることで政府による国債発行を増やして、財政政策を拡張することをサポートしているともいえますが、その必要性を政府に強く訴えることはできるでしょう。そして金融政策についても、円高リスクを低下させるために、マイナス金利の深掘りが有力な金融緩和のオプションが必要になるでしょう。

マイナス金利に関しては、銀行関係者は銀行の利益がなくなるとしして、反対していますが、日銀はこのような銀行関係者の声に耳を傾けている時なのでしょうか。

そもそも、銀行はすでに構造不況牛酒です。銀行の9割が消え、銀行員は99%リストラされるという近未来像は、暴論でもなければ、絵空事でもありません。そのようなこと、私自身は肌身で感じます。なぜなら、最近では従来のように、金融機関に足を運ぶことがほとんどなくなったからです。

銀行の不振を伝えるテレビ報道。銀行はもはや構造不況業種なのだ。

銀行業界が抱えるさまざまな問題をすべて解決するための方法は、1つしかありません。
それは、銀行業務から人を排除することです。

これで銀行が抱えているあらゆる問題は解決し、弱点がすべて強みになるかもしれないのです。

バブル崩壊やリーマンショックなど、銀行業界はこれまで数々の金融危機を乗り越えてきましたが、それらとは質が異なり、より深刻な危機が襲いかかっています。

地銀の大半は赤字続き、メガバンクもこぞって数千人・万単位の人員削減や、支店・ATM網の統廃合に乗り出しています。

それだけではありません。銀行の存在意義そのものが根底から揺らいでいます。AIやフィンテックといった金融技術の進化によって、銀行業務の独占が崩れ始めているのです。

銀行業務そのものが「消える」可能性が高いです。

特に資金決済など、伝統的に銀行が担ってきた業務は、急速に新たな仕組みに置き換わりつつあります。

ブロックチェーンと呼ばれるシステム上の帳簿技術や、それを使ったビットコインなど仮想通貨が広まれば、ますます伝統的な銀行業務は消えていきます。

これからほんの数年で、金融業界が一変する可能性を秘めているのです。そのような大変化のさだ中にある日本の金融業界に対して、低金利の深堀をしなければ、旧態依然とした銀行の体質を温存するだけとなります。

日銀が、マイナス金利の深堀をしないで、旧態依然とした金融機関を守ったつもりであっても、金融機関の革新を遅らせ、結局どこかの金融機関に天下りできるだろうという日銀官僚の目論見はことごとく外れて、銀行のほとんどは消滅しているかもしれません。

あるいは、首尾よく天下りできたとしても、直後に消滅などといこともありえます。

そのような不確かな未来にかけるよりも、現在日銀は、有利な金融緩和のオプションとして、大多数の日本国民のために、マイナス金利の深堀を実施すべきです。さらに、量的金融緩和にも果敢に取り組むべきです。

マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示すという悠長なことを言わずに、明日からでも実行していただきたいです。

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2019年10月19日土曜日

ソ連に操られていた…アメリカが隠していた「不都合な真実」―【私の論評】ヴェノナを知れば、あなたの歴史観は根底から覆る(゚д゚)!

ソ連に操られていた…アメリカが隠していた「不都合な真実」

第二次世界大戦から朝鮮戦争、そして冷戦。現在へと続く戦後の歴史は「アメリカ覇権の歴史」でもある。

そのアメリカが今、「ある文書」によって自国の戦中・戦後史の見直しを強いられていることをご存じだろうか。そして、この歴史の見直しは日本にも暗い影を落とすものかもしれない。

■ソ連の暗号解読が引き当てたとんでもない事実

『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』(扶桑社刊)は、アメリカが1995年に公開するまでひた隠しにしてきた「ヴェノナ文書」を軸に、戦中・戦後のアメリカの政策決定が「スパイ」によってゆがめられていた可能性を指摘する。

『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』(扶桑社刊)  表紙

話は1943年、第二次世界大戦中にさかのぼる。アメリカ陸軍情報部の「特別局」の情報官がこんな噂を聞きつけた。

「独ソが英米を出し抜いて単独和平交渉を行っている」

この和平が成立すれば、両国は結託して戦争資源を米英に集中してくる可能性がある。この噂は当時の米軍にとって極めてデリケートな情報だった。

真偽を確認するために、アメリカは在米ソビエト外交官がソ連本国と交わしている秘密通信の解読プロジェクトを立ち上げ、そのプロジェクトを「ヴェノナ作戦」と名づけた。

「論理的に解読不能」とされる複雑な暗号システムに挑む困難なプロジェクトだったが、アメリカの情報分析官たちの奮闘によって、アメリカはついに暗号を部分的にではあるが解読することに成功。通信の内容は「独ソの和平交渉」を示してはいなかった。

しかし、これでひと安心、とはいかなかった。その代わりにもっととんでもない事実が明らかになったのである。

■なぜこんなに早く? ソ連の原爆保持の謎

話がそれるが、第二次世界大戦終戦当時、核戦力を持っていたのは世界の中でアメリカだけだった。そして、そのままアメリカのみが核を持っている状態であれば、今の世界秩序は全く違ったものになっていたはずだ。終戦後長くつづいた米ソの冷戦は、両国ともに核という「最終兵器」を持っていたからこそ起こり、維持されたものだからだ。

ソ連がはじめて核実験を成功させたのはアメリカに遅れること4年、1949年のことだった。たった4年である。不自然ではないだろうか。核物質の精製技術や兵器化の技術というのは、当時のソ連の技術水準からしてそれほどの短期間にものにすることができるものだったのか。

「ヴェノナ作戦」がソ連の暗号通信を徐々に解読できるようになったのは1946年。すでに戦争は終わり、「独ソの平和交渉」の証拠をつかむという当初の目的はすでに無意味になっていた。

しかし、最初にまとまった文章として解読された通信内容が示していたのは驚くべき事実だった。ソ連はアメリカ最大の秘密計画だった原爆プロジェクトに深く浸透していたのだ。

ソ連は主にアメリカ共産党員をエージェントとしてリクルートし、国内に大規模なスパイネットワークを作り上げていた。それはアメリカの国家中枢にまでおよび、軍事と外交に関わるほとんどすべての主要官公庁の内部に多数のスパイを獲得していた。アメリカの原爆開発プロジェクト「マンハッタン計画」の内部でも、クラウス・フックスとセオドア・ホールの二人の物理学者、そして技術者のデイヴィッド・グリーングラスらが、ソ連に多くの技術情報を渡していたとされる。

ソ連がわずかな期間できわめて安価に核開発を成功させることができたのは、米国のスパイからもたらされる情報によるところが大きかった。このスパイネットワークを通じて、アメリカの原爆プロジェクトはソ連に筒抜けだったのである。

話は原爆だけにとどまらない。後の捜査でわかったことだが、スパイの中にはイギリスのウィンストン・チャーチルやルーズベルトと個人的に会うことができるほど高位にあった者もいれば、軍の高官もいた。外交官もいた。

そして厄介なことに、「ヴェノナ作戦」によるソ連通信の解読文に出てきた、ソ連に協力するアメリカ人の数は349名。しかし大部分はコードネームを使って活動しており、本名を特定できたのは半数以下だったという。残りの半数以上は摘発されることなくスパイ行為を続け、国家の中枢でアメリカの利益を損ねる行動を繰り返しているのかもしれなかった。

当時のアメリカは、身内に裏切り者がいるのは確かだが、それが誰かわからない状態でソ連と外交交渉をしなければならないという、非常に困難な状況に追い込まれていたのだ。

『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』はソ連のスパイネットワークがどのように形成され、スパイたちはどのように活動し、それがどうアメリカの政策決定に影響していたか、そしてアメリカはなぜ「ヴェノナ文書」をひた隠しにしてきたのかを、当時の歴史背景を交えながら解説していく。

「スパイ」「ソ連」と聞くとなにやら陰謀論めいた話に聞こえるが、「ヴェノナ文書」の存在も、それが長く封印されていたことも事実である。原爆の製造情報をソ連に渡した容疑で逮捕され、のちに死刑となったジュリアスとエセルのローゼンバーグ夫妻には40年以上も冤罪疑惑がつきまとっていたが、この文書の公開によって実際にスパイであったことが証明されている。

学校で教わったり本で読んだ戦後史の裏側にあるもう一つの物語。本書は、誰にとってもスリリングな読書経験となるはずだ。
(新刊JP編集部)

【私の論評】ヴェノナを知れば、あなたの歴史観は根底から覆る(゚д゚)!

今回が発刊された『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』に関連する、倉山満氏、江崎道郎氏、上念司氏の鼎談の動画を以下に掲載します。


本作品は2010年にPHP研究所より発刊された『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』が絶版となっていたのですが、再発刊されたものです。今回はkindle版も発行されるそうです。 

米ソ同盟の裏で行われたコミンテルン(ソ連のスパイ)の諜報活動を暴く「禁断の書」書籍として、再発刊が待望されていました。 

米国の軍事機密がソ連に筒抜けだった事実は、日本にとって何を意味するのでしょうか。ソ連はアメリカの原爆プロジェクト「マンハッタン計画」を事前に把握しつつ、1945年8月6日の広島への原爆投下を見届け、同月8日に対日戦線布告を行ったということです。

ブログ冒頭の記事には、日本のことは出ていませんが、戦時中の近衛内閣はかなりコミンテルン(ソ連のスパイ)が浸透していたことや、コミンテルンによるアジア浸透戦略がヴェノナ文書で裏付けられています。それについては以前このブログでも紹介させて頂いています。その記事のリンクを以下に掲載します。
アメリカを巻き込んだコミンテルンの東アジア戦略―【私の論評】他の陰謀論など吹き飛ぶ! これこそ陰謀中の陰謀だ! 世界は、日本は、あなたはとうに滅亡したソビエトにまだ欺かれ続けるのか?
ヴェノナ文書により、ソ連の陰謀は白日の下にされされた
詳細は、この記事をご覧になってください。以下にこの記事の結論部分のみ掲載させていただきます。
今や、EUが本気になれば、ロシアを一捻りできるほどに衰退しました。プーチンは、衰退したロシアを少しでも強く見せるため奔走し、これ以上譲歩させられることを何としても防ごうとしています。 
しかし、隣には人口13億、経済的にロシアを凌駕した中国が控えており、いつ出し抜かれるかわかりません。そうして、今やロシアの世界に対する影響力はソ連当時と比較すると見る陰もありません。 
しかし、アジアでは、旧ロシアに変わって、中国がソ連コミンテルンの陰謀によって築かれた「戦後体制」保持し、ソ連に成りかわりアジアの覇者になること虎視眈々と狙っています 
史実が明らかになった今、日本を含めた世界の多くの国々が、ソ連の仕掛けた陰謀に未だにはまっているのは不合理そのものです。一日もはやく、旧ソ連の陰謀によって、できあがった、ソ連に都合の良い、そうして今では、中国にとって都合の良い、「戦後体制」なるものは、捨て去り新たな世界秩序をうちたてるべきです。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
さて、コミンテルンは今はもう なくなりましたが、  実は共産党員でもなく 共産主義者でもないのに 実は隠れ共産主義者あるいは本人は共産党員でもないし共産主義者でもないと思ってるのに 実は共産党に操られてる人たちが日本は無論のこと世界中に相当存在しているようです。

こういう人たちをデュープスと言います。(デュープス=Dupes=騙されやすい人・お馬鹿さん・間抜け)

本人は共産主義者でもないし共産党員でもないのですが、 結果的に共産党やソ連の味方をしてしまう人たちのことです。

このように、芸能人、スポーツ、学者、政治家、文化人 に共産党に所属させないで 共産党の言ってることを代弁させるような工作活動 これを「影響力工作」と言いますが、これ共産党の得意技なのです。デューブスになりそうな人たちに、自分たちに直接属させたり、直接仕向けるのではなく、デュープスにさせるのです。このようなデューブスを数多く輩出することに共産主義者は長けているのです。

米国においては、マッカーシー旋風の時に 戦中・戦後の反省をして 共産党的なことやソ連の味方を してる人を全部共産主義者 と決めつけました。しかし、それは間違いでした。米国にはいわゆるデュープスが存在していたのです。そのためこの人達は共産党員でもないし共産主義者でもないのです。

共産党無自覚なのに自分たちに味方する人たちをつくるのです。だから、私達もそういう人たちも居るって言うことを理解するべきなのです。 そのた、むやみやたらに 彼らを共産党のスパイだとか 共産主義者等と烙印を押してはいけないのです。

精神医学 つまり ブレインウォッシング (洗脳)を含めて、心理学や洗脳工作や宣伝 プロパガンダ工作という形で多くの人々に影響力を与えることができるように、共産主義者らは精神世界に関する学問を徹底的に学び、多くの仲間を作ることに成功したのです。

ドイツ には ヴィリ・ミュンツェンベルク という映画製作者がいて ハリウッドも含めた 映画を上手く使いながら 世界の人を洗脳せよと いう工作方針を出しました。彼のそういう工作方法を学んだ人間が中国の周恩来、野坂参三などの共産主義者なのです。

こういうことを学んで 洗脳工作をしたのです。洗脳するためには教育界と メディア界を支配するのが近道です。だから彼らは、今でも教育とメディアに一生懸命入浸透しようとするのです。

米国では、大統領選で トランプが劣勢だった時に トランプを絶対応援すべきだと言って全米の保守派に号令をかけた人がいました。フィリス・シュラフリーという人なのですが、日本で言うと櫻井よしこさんのような人です。

1975年インタビューを受けるフィリス・シュラフリーさん

彼女は全米の草の根保守のリーダーです。日本ではあまり知られていないようですが、米国では著名人です。1100万人の人たちを率いてると言われていた人ですが 、彼女もまたヴェノナ文書のおかげでようやく私たち保守派の言ってることの正しさが証明されたと語っていました。

彼女は、真珠湾攻撃はルーズベルトが日本に仕掛けたんだということを保守派のある程度 物を分かっている人は知っていると語っていました。

ところが、 米国 メディアは 自分たち保守派の意見を全然報じないので、日本にほとんど伝わっていないが、 我々保守派はそういう事実を認識している ということを一所懸命言っていました。

フィリス・シュラフリーさんは 2016年の大統領選挙の2ヶ月前に亡くなったのですが、葬儀には トランプ氏も出席しました。

米国保守派は、 ルーズベルトと スターリン、レーニンこそが最大の敵なのであり、 だからこそ日本よりも スターリンと ルーズベルトがもっと悪いと いうを考え方を持っている人たちです。日本の保守派もこういう人たちと協力できるようになっていくと 力強いと思います。

その意味でも、すでに読んだ方は、今一度『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』を読んで見る価値がありますし、読んでいないかたには、その価値は十分あると声を大にして言いたいです。

ヴェノナプロジェクトの内容を知ることは、日米双方の保守派にとって、協力するための一厘塚になるものと、私は確信しています。さらに、この書籍を読んだことのない方読めば、政治的信条がどうであれ、あなたの歴史観は根底から覆されることになります。

ベェノナ文書は、それだけインパクトのあるものでしたし、これからも多くの人々にインパクトを与え続けていくことでしょう。

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2019年10月18日金曜日

米 対EU関税上乗せ発動 最大25% EUも対抗の構え―【私の論評】トランプ大統領の本質を知らないEUは、「米中貿易戦争」と同じ過酷な体験を味わうことに?



アメリカ政府は、EU=ヨーロッパ連合から輸入されるワインやチーズなどに最大25%の関税を上乗せする措置を、日本時間の午後1時すぎに発動しました。これに対して、EUも対抗措置に踏み切る構えで、双方の対立が激しくなる見通しになっています。

アメリカとEUは、互いの航空機メーカーへの補助金をめぐって対立が続いていて、WTO=世界貿易機関は14日、両国とも不当だとしたうえで、まず、アメリカによるEUへの対抗措置を正式に承認しました。

これを受けてアメリカは、日本時間の18日午後1時すぎ、EUから輸入される年間で最大75億ドル、日本円で8000億円分に、高い関税を上乗せする措置を発動しました。

対象は160品目で、フランス産のワインやイギリス産のウイスキー、各国のチーズなど農産品に25%、航空機に10%の関税を上乗せするとしています。

これに対してEUも、アメリカからの輸入品に関税を上乗せする措置の発動に踏み切る構えですが、トランプ大統領は16日、「EUが報復することはありえない」と述べて、EU側をけん制しています。

さらに、トランプ大統領は、貿易赤字を削減するため、ドイツなどから輸入される自動車についても「アメリカを長年苦しめてきた」と述べ、高い関税を課すことを検討しています。

双方の対立は激しくなる見通しになっていて、世界経済の減速リスクがさらに高まるおそれが出ています。

【私の論評】トランプ大統領の本質を知らないEUは、「米中貿易戦争」と同じ過酷な体験を味わうことに?

トランプ米大統領はこれまで「中国よりEUの方が強硬だ」などとたびたび発言。貿易赤字を抱えるEUへの不満を強めてきました。米政府は昨年6月、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を実施。対抗するEUは、米国が誇るブランド「ハーレー・ダビッドソン」の2輪車や、ケンタッキー州のバーボンなどを標的に報復関税を発動していました。

米欧は昨年7月に貿易協議開始で合意したのですが、交渉は停滞。米国は欧州製の自動車への高関税措置をちらつかせ譲歩を迫っています。フランスが米IT大手を念頭にデジタル課税を導入しており、米欧関係は冷却化する一方です。

そうした中、2004年に米欧が相互に世界貿易機関(WTO)に提訴し、長期化していた航空機補助金紛争で、米政府は報復関税を断行しました。鉄鋼・アルミ関税と異なり、今回はWTOの紛争解決手続きを経て承認された手段となります。

米国が関税を上乗せする約75億ドル分のEU産品は、EUからの全輸入品の2%未満です。計約3600億ドルに達する中国への制裁関税の規模に比べれば、米欧経済の打撃は限定的とみられます。

ただ、米欧が互いの名産品などを狙った報復を繰り返せば、対立が深まり和解の機運は一段と遠くなります。米国は中国と部分合意して制裁関税を先延ばししたのですが、EUとは対抗策の連鎖に陥る恐れが出てきました。

今日のような事態に至ることは前から十分予想できました。トランプ氏は既存の政治家とは全くタイプが異なります。どちらかというと、中小企業の経営者のような雰囲気です。しかし、だからといって、メディアなどがトランプ氏が既存の政治家のように振る舞わないからといって、批判するのは筋違いです。

なぜなら、米国民は既存の政治家の行動や政策に辟易として、選挙で既存の政治家でないトランプ氏を選んだという側面は否定できないからです。

このようなトランプ氏がどのような行動をするのか、それを予想するのは既存の政治家を予想するように予想していては不可能です。トランプ大統領の「次の一手」を予想するには経営者としての視点が必要です。

トランプ大統領の究極の目的は「米国ファースト」という言葉にあらわれています。オバマ政権の間の「乱脈経営」で蹂躙、破壊された米国を立て直し、競合を撃破し米国の確固たる地位を確立することこそ、トランプ氏の究極の目的です。

強大な敵である共産主義中国やロシアも大きな問題なのですが、これらに対しては、すでに対策をとり始めていますし、すでに方向性はみえてきていいます。

だとすれば、トランプ氏の次のターゲットとなるのはEU以外にないでしょう。そうしてEUはトランプ政権との交渉ですでにミスを重ねています。

EUの幹部は政治エリートの集まりで「特権階級」です。そのようなエリート「プロ政治家」と、4度の倒産を乗り越えたたたき上げの庶民派であるトランプ大統領が、意志の疎通を行うことは困難です。

そのためでしょうか、EUはトランプ氏から見れば「屁理屈」としか思えないような「エリートの論理」を、米国大統領に傲慢に投げつけて平然としていられるようです。

トランプ大統領と強い政治的パイプを持たないEUおよび加盟国の首脳は、同じくパイプが弱い習近平氏の「米中貿易戦争」と同じような過酷な体験を味わうことになるかもしれません。

フランスのマクロン大統領は、2004年、国立行政学院(ENA)を卒業。その後、財務省の中心機関であるアンスペクション・ジェネラル・デ・フィナンス(IGF)の監査官に就任しています。フランス最高峰のエリート集団であるENA卒業生の中でも別格であり、エリート中のエリートです。

実際、「パンが無ければケーキを食べればいいのに……」というマリー・アントワネットの言葉に匹敵するような、テレビでのマクロン氏の庶民感覚ゼロの失言に対するフランス民衆の怒りが、ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)抗議活動の導火線の1つになったともいえます。

もう1つのEUの中心軸であるドイツのメルケル首相は旧東ドイツ生まれで、東西ドイツが統合されるまで徹底した共産主義教育を受けています。

自由主義・資本主義を信奉するトランプ大統領とそりが合わないのは当然です。EUの両雄ともいわれる、ドイツとフランスの指導者がトランプ氏とは、意思疎通ができないのです。

前列左より、トランプ、メルケル、マクロン

そもそも、カール・マルクスが生まれたのはドイツであり、その後、共産主義は階級社会である欧州に広まりました。

米国のルーツは欧州だといわれることもありますが、より正確にはジョン・ロックの「市民政府論」に遡る英国です。

大陸欧州は、アドルフ・ヒットラーのナチス帝国、イタリア社会党の中心人物であったベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党政権など、全体主義・独裁政権が目立つし、フランスも、フランス革命でルイ16世の首をはねたにもかかわらず、その後「国民の総意」でナポレオンに皇帝の地位を与えています。

このような文化を持つ大陸欧州とトランプ大統領が融和するとは考えにくく、英国がブリグジットでEUから脱出し、日米あるいはTPP11に接近するのは賢明な戦略です。

さらに、米国とEUの間に横たわるのが、EUは対米貿易で大幅な黒字を稼いでいるということです。しかも、対中貿易は赤字、つまりEUは、対中貿易の赤字を対米貿易の黒字で穴埋めしている形になっています。

「米中貿易戦争」で激しい戦いを繰り広げている米国が、「事実上の対中赤字」である「対EU赤字」を放置しておくはずが無いです。

昨年の米国とEUの輸出

「対中貿易戦争」における米国の勝利は確実と言って良いですが、「落としどころ」はまだはっきりと見えないです。しかし、何らかの「決着」に至れば、次の矛先が欧州に向くことは確実です。

米国にとって、ロシアはもちろん脅威ではあるが、現在のところ「最大の脅威」は中国であり、その対策に注力しています。

それに対して、欧州にとって最大の脅威は間違いなくロシアです。欧州と地続きであり、現在はEU加盟国となっている旧ソ連邦の東欧の国々にかけ続けるプレッシャーや、ウクライナでの「占領」行為も許しがたいものです。

欧州にとってロシアは、地政学的に言えば日本にとっての朝鮮半島や中国大陸に近い存在で、「地理的に近いゆえ見逃せない」のです。

それに対して共産主義中国は、欧州から見れば「遠く離れたエキゾチックな東洋」です。しかも、欧州発祥の共産主義が根付いた国であり、我々が思っているのよりも好感度が高いようです。

上海のタクシーの多くがフォルクスワーゲンの車であるのも、同社が早くから中国に進出したためですが、EUと中国は地理的な距離の割には政治的・経済的結びつきが強いです。

「米中貿易戦争」で、欧州も中国経済の低迷による打撃を受けるのは当然ですが、防衛問題でも、米軍の費用分担問題もさらに強く迫られるだろうし、「ロシアから守ってほしければ、『中国対策』もきちんとやってくれ」ということになります。

「米中貿易戦争」や「米中冷戦」で苦しんでいる共産主義中国が、欧州攻略の橋頭堡にしようとしているのがイタリアです。

ファシズムというと、アドルフ・ヒットラーの名前がすぐに思い浮かびますが、ファシズムの創始者はベニート・ムッソリーニです。彼は元々、イタリア社会党の党員として大活躍し、ロシア共産主義革命の立役者ウラジミール・レーニンから「イタリア社会党に無くてはならない人物」と絶賛されています。

しかし、その後、ムッソリーニは、共産主義・社会主義に飽き足らなくなり、彼自身の手で「改良」を加えました。そして生まれたのがファシズムです。したがって、共産主義(社会主義)はファシズムの生みの親とも言えるのです。

その後、イタリアではファシスト党が政権をとって、ムッソリーニが指導者となったのですが、第2次世界大戦が始まる前は、欧州において「ババ抜きのババ」扱いで、ムッソリーニがナチス・ドイツと手を組んだ時には、「連合国に入らなくてよかった」と首脳陣が胸をなでおろしたといわれるほどの「お荷物」でした。

実際、第2次世界大戦が始まってからムッソリーニがヒットラーの意向を無視し、勝手に行った北アフリカ攻略は惨敗。ドイツはロンメル将軍などの優秀な人材を北アフリカに張り付けざるをえなくなり、ロシア戦線での敗因になったともいわれています。

さらに、大戦末期にはムッソリーニの傍若無人ぶりに耐えかねた国民が反発。最終的にイタリア国王から解任を申し渡されて首相の座を追われ拘束されました。

そのホテルで拘束されていたムッソリーニを、グラン・サッソ襲撃と呼ばれる電撃的なグライダ―による作戦で救出したのが盟友ヒットラーです。

グラン・サッソ衝撃で用いられたドイツ軍のグライダーと降下猟兵

その後、北イタリアに樹立されたドイツの傀儡国家の指導者(忠犬)となって生き伸びたムッソリーニですが、第2次世界大戦の末期にパルチザンにとらえられ、ヒットラ―自殺の2日前に処刑されました。

しかも、その死体は民衆から殴るけるの暴行を加えられた後、ミラノ・ロレート広場のガソリン・スタンドで逆さにつるされました。

イタリアは結果的に「枢軸国」として大戦に参加しながら、ムッソリーニの失脚もあり「連合国」側の戦勝国として終戦を迎えています。

この油断できないイタリアを、欧州攻略の糸口にしようしている習近平氏は、後で後悔することになるのではないでしょうか。

いずれにせよ、そりの合わない、トランプ米大統領とEUは、EUがある程度折れないことはには、今後本格的な貿易戦争に突入していく可能性が高いです。

ただし、米国の中国に対する対峙は、トランプ政権がどうのこうのという次元ではなく、議会でも超党派でコンセンサスを得ているものですから、トランプの次の大統領でも継続されますが、EUとの対立は、次の大統領になった場合は、次がどのような大統領になるか次第ですが、収束する可能性は高いです。しかし、トランプ氏が大統領である間は予断を許さない状況が続くことでしょう。

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