2020年12月22日火曜日

中国、チベット弾圧を苛烈化、婦人を拷問し虐殺…ダライ・ラマ、化身認定制度継続を検討―【私の論評】中共が他国の宗教を破壊してまで支配しようとすれば、新たな「精神世界」が必要となり中共は中共でなくなる(゚д゚)!

 中国、チベット弾圧を苛烈化、婦人を拷問し虐殺…ダライ・ラマ、化身認定制度継続を検討

取材・文=相馬勝/ジャーナリスト



 「中国共産党の習近平指導部のチベットへの弾圧は苛烈を極めています。チベットも情勢についても、中国チベット自治区の情報を海外に漏らしたとして、つい最近もチベット自治区で牧畜業を営むチベット婦人がインドの親戚に送金しただけで2カ月間も留置所に拘束され、連日の激しい拷問の末、殺されてしまったのです」

 こう語るのは10月下旬にダライ・ラマ法王日本代表部の新代表として着任したばかりのアリヤ・ツェワン・ギャルポ氏(55)だ。アリヤ氏は10月24日、代表を引き継ぎ、28日には安倍晋三前首相を表敬訪問するなど、着任早々活発な活動を展開している。日本には2010年から15年まで、同代表部の事務局長を務めており、インドのデリー大学で日本語を学び、成田山新勝寺にも留学僧として1年以上滞在するなど日本通だ。

 アリヤ氏はインド北東部のヒマチャルプラデシュ州ダラムサラに本部を置くチベット中央政権(CTA)では情報国際省次官補や情報局長を務めるなど、中国大陸のチベット情勢にも精通している。冒頭のチベット人婦人の不当な拘束による不幸な事件の情報も、独自のルートで得たものだ。とはいえ、アリヤ氏が語るように、情報統制やチベット文化の破壊などの面で、習近平政権が発足後、中国での締め付けは年々厳しくなるばかりだ。

 アリヤ氏は「習近平政権の弾圧はチベットの仏像や寺院などを根こそぎ破壊し、チベット仏教の僧侶ら多数のチベット人を死に追いやった文化大革命(1966~76年)時代より激しいといわれるほどです」と指摘する。

 チベット自治区などチベット人居住区では魔除けや祈りに用いる「ルンタ」と呼ばれる色とりどりの旗よりも、中国の国旗や共産党の宣伝用の旗や看板のほうが多いくらいだという。また、チベット仏教寺院はすべて共産党幹部が管理しており、仏教僧はお経を唱えるのも党幹部の許可を得なければならないほどだ。子供も寺院に連れていくことは禁止されているなど、信教の自由は制限されている。

 さらに、チベット文字やチベット語の使用も禁止されるなど、「チベット文化のジェノサイド(虐殺)」と言っても過言ではないという。

ダライ・ラマ法王「私が先に逝くか。共産党が先に逝くか」

 しかし、アリヤ氏はこう指摘する。

 「このような弾圧はいつまでも続くはずはない。(チベット仏教の最高指導者)ダライ・ラマ法王(14世)は『私が先に逝くか。あるいは、共産党が先に逝くか。どちらが先に逝くのか、わからないよ』とおっしゃっている。この言葉通り、中国の民衆が習近平の圧政にいつまで耐えられるのか。いずれ民衆の積もり積もった不満が爆発する時が来るのは間違いない。早晩、それが現実のものになるに違いない。このようななかで、いま中国が虎視眈々と狙っているのは、ダライ・ラマ14世の後継者である15世を中国政府の手によって指名しようということだ」

 アリヤ氏によれば、これについてもダライ・ラマ法王は次のように明確に否定しているという。

 「彼らは私(ダライ・ラマ14世)の死を待ち望み、彼らの思い通りにダライ・ラマ15世を認定しようしています。最近の法律や関係省令の公布からも、チベット人やチベット仏教徒をはじめとする国際社会を欺くための詳細な戦略が彼らにあることは明らかです。そこで、私には仏法と衆生を守る責任があり、このような悪しき政策が現実化してしまう前に未然に防ぐことが急務なのです。

 私は、私が90歳くらいになったら、チベット仏教の大ラマ、民間のチベット人、その他チベット仏教に関わる人たちと相談して、ダライ・ラマの化身認定制度を継続する必要があるかどうか再度検討したいと考えています。それをもとに、継続の有無を決めるのです」

 ダライ・ラマ14世は現在、85歳。5年後の2025年7月の誕生日以降、後継問題について、決着をつけることになる。14世自身は「私は113歳まで生きる」と最近、明言したという。「113歳」といえば、いまから28年後の2048年となる。

 前述の通り、14世は最近、「私が先に逝くか。あるいは、共産党が先に逝くか。どちらが先に逝くか、わからないよ」と語ったというが、ダライ・ラマ14世と中国共産党との闘いは、14世自身の寿命との闘いといってもよいかもしれない。

(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】中共が他国の宗教を破壊してまで支配しようとすれば、新たな「精神世界」が必要となり中共は中共でなくなる(゚д゚)!

最近は、このブログではチベットの状況に関しては、以前ほどは掲載しなくなりました。しかし、中共によるチベット弾圧はますますひどくなるばかりです。そのようなこともあって、本日はチベット情勢を掲載することにしました。

中共による、チベット弾圧に対して米国は、本格的に対抗しようとしています。

チベット亡命政府は21日、ロブサン・センゲ首相が米国の招待でホワイトハウスを訪問したと明らかにしました。亡命政府首相のホワイトハウス訪問は初めてです。

センゲ氏は20日、ホワイトハウスで米国側の関係者と面会したもようです。亡命政府は訪問を「歴史的な偉業」としており、「米国は亡命政府を認めていないが、(今回の訪問は亡命政府の)民主的なシステムと政治的責任者の両方を承認したことに匹敵する」と強調しました。

チベット亡命政府は、1959年のチベット動乱をきっかけにインドへ亡命したダライ・ラマ14世が樹立し、インド北部ダラムサラに拠点を置いています。センゲ氏は2011年から首相を務めています。

米上下両院は21日、中国チベット自治区での人権弾圧を批判し人権や信教の自由を擁護する法案を賛成多数で可決しました。今後ホワイトハウスに送付され、大統領が署名すれば成立します。

チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の後継者選出に中国当局者が介入した場合、制裁を検討するとの規定があります。

与野党が20日に合意した新型コロナウイルス関連の追加経済対策法案などとともに一括でまとめられた法案に盛り込まれました。

法案はチベット自治区の区都ラサに米領事館設置を中国が認めない限り、新たな在米中国領事館の設置を米政府が許可しないことも規定しています。

下院は1月にいったん法案を可決しましたが、上院の審議が遅れていました。下院可決時、中国側は「チベットに関する問題は人権問題ではない」と主張し、法案を批判しました。

チベット、ウイグル、モンゴルで中共がしつこく宗教を弾圧しています。

現在は中共に弾圧されていますが、かつてモンゴルは世界最大の帝国でした。しかしあまりにも被支配民に対して寛容でありすぎたのか、モンゴル帝国は降伏した相手を宗教や言語も元のままで支配下においていました。それが結局帝国の版図を拡大する原動力となったのでしょうが、維持することはできず仇となったようです。

ローマ帝国も当初は被支配民に対して、宗教も含めて寛容だったのですが、帝国内にキリスト教が普及した頃から寛容さを失い、それが後に崩壊に結びつきました。

人は一時的には強大な支配者に従う事はありますが、その影響力が弱まれば虐げられていた記憶とともに人は強い反発心を抱くようになります。こうならない為に、普通は強大な帝国は支配した国を「自民族」へと洗脳しようとします。

たとえば現在、中国はモンゴルや香港といった地区に住む人々を「中国人」として取りまとめようとする制度を推し進めています。ご存知のように、「一国二制度」を廃止してまで、香港を支配下に治めました。なぜそうするかといえば、自治権を与えたが最後、固有の文化を持つ者共はいつか必ず離れていくからです。

現在の中共はかつてのモンゴルのようにならないように、宗教を徹底的に弾圧するのです。

ただ、日本では宗教を弾圧することの意味が良く理解されていないようです。

日本の場合は、宗教が広く普及する以前に他の国では消え去ったアニミズムや、シャーマニズムを昇華させ神道による霊性の支配の次元にまで高めてしまったため、あらゆる意味で宗教が強く支配するということはありません。ここでいう、霊性とは万物に霊が宿るという考え方です。

これについては、ここで詳細を述べると長くなってしまいますので、説明はしませんが、詳細を知りたい方は以下の記事をごらんになってください。
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」…仏作家は「21世紀は霊性の時代。日本は神話が生きる唯一の国」と予言した―【私の論評】日本は特異な国だが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変る。いや、変わらざるをえない(゚д゚)!
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未来への道しるべだ=平成25年10月2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から二人のフランス人による霊性の世界に関する言葉を引用します。
フランスの作家で、ドゴール政権の文化相を長く務めたアンドレ・マルローは自著各編で、こんな趣旨のことを書いています。
アンドレ・マルロー
「21世紀は霊性の時代となろう。霊性の根源には神話があり、それは歴史の一面を物語っている。世界の神話が現代なお生きているのが日本であり、日本とは、それ自体、そのものの国で、他国の影響を吸収し切って、連綿たる一個の超越性である。霊性の根源に万世一系の天皇がある。これは歴代天皇の連続性であるのみならず、日本文化の継続性の保証でもあるのに、戦後日本はそのことを忘却してしまった。しかし、霊性の時代が、今や忘却の渕から日本の真髄を取り戻すことを要請している。また文化は水平的に見るのではなく、垂直的に見るべきだ」

確かに、中国や朝鮮文化の影響を過大に語る一部日本の文化人には大きな誤解があるように思えます。知る限り、英仏独の文化人、史家には、後生大事にギリシャ・ローマを奉る人など皆無であり、米国の識者がイギリスをむやみにもてはやす事例を耳目にしたこともありません。日本文化・文明と日本人は、中華文明や長年にわたりその属国であり続けた朝鮮文明とは全く異質であり、むしろアジアの中でも、もっとも遠い存在であるといえます。日本人の氏神、天照大御神に思いを致すのは今でしょう。

キリスト教中心の西洋文明の終末

スイスの心理学者グスタフ・ユングも「キリスト教中心の西洋文明の終末は20世紀末から21世紀初頭にかけて到来する。そして次の文明は、一神教や独裁専制ではなく、霊性の支配する時代となるであろう」と期せずしてマルローと同じ予言をしております。
霊性の世界は、天皇を頂点とした日本固有の文化として日本人の心にしっかりと刻みこまれているため、普段ほとんど意識することもないほどになっています。日本人として生まれた直後から様々な形で潜在意識の中に埋め込まれているのです。しかし、それは日本人の価値観、文化、善悪感に大きな影響を及ぼしています。

このような日本人ですから、宗教をあまり重要なものと考えず、心の問題などとしてしまう向きも多いようです。日本人は、宗教心がないから、世界を理解できないとするむきもありますが、そのようなことを言う人は、日本の「霊性の世界」を軽くみていると言わざるを得ません。

天皇陛下と上皇陛下

日本は世界の中で例外中の例外なのです。そういう意識を持って、他国、そうしてチベット、ウイグル、モンゴルをみるとまた違った見方ができると思います。

私が考えるに、中共がチベット、ウィグル、モンゴルなどの宗教を破壊もしくは中国に恭順させることができれば、これらを支配できると考えるのは間違いです。もし、それを成功させることができるとすれば、宗教のかわりに日本のように宗教以前の「霊性の世界」に匹敵するような「精神世界」を導入する必要があると思います。

それができなければ、混乱するばかりで、中国の名の下に支配することは相当困難です。一時支配できたようにみえても、必ず離反します。そもそも、支配することなど不可能です。それに新たな「精神世界」を導入して、定着させるためには、少なくとも1000年はかかります。日本が「霊性の世界」を定着し現在の形の昇華させるにも、1000年以上の時が必要でした。それに本当に支配することができたとすれば、その瞬間から中共は中共でなくなります。仮に支配できたとすれば、それは「支配」とは程遠い体制になるでしょう。

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2020年12月21日月曜日

「コロナ研究」に国債を発行できない財務省の「間抜けっぷり」を示した、ある文章―【私の論評】鈍感財務省こそ日本の危機を生み出し、若者の未来を破壊する最悪の組織(゚д゚)!

 「コロナ研究」に国債を発行できない財務省の「間抜けっぷり」を示した、ある文章

根本的な考え方をわかっていない

財務省

早ければ2月下旬にワクチン摂取


新型コロナの感染が世界的な広がりを見せている。日本でも、欧米に比べると段違いに少ないが、とうとう国内に累積感染者数が20万人を超えた。

その一方、ワクチン開発は進んでいる。既に、臨床試験に入っているワクチンは50種類を超えているが、欧米では一部のもので既に接種が始まっている。

現時点で、当局から承認・申請されたものは、米2社、ロシア1社。最終段階の臨床第3相(P3)試験に入っているものは、英1社、米2社、中国4社、インド1社、カナダ1社。日本は、1社が臨床第2相(P2)段階だ。

ただし、日本は、米2社、英1社とワクチン供給契約を結んでおり、早ければ2月下旬から接種できるようになる。

できれば日本国産ワクチンが望まれるが、ワクチン開発では日本は遅れざるを得ない。というのは、ワクチン開発は軍事と密接に関係しているからだ。兵器には通常兵器以外に、ABCがある。

A=Atomic B=Biological C=Chemicalだ。このうちウイルスはB兵器にもなる。当然のことながら、防御も研究するので、どのようなワクチンタイプであれば、早く開発できるかの研究もこれまで行われてきた。

今回のコロナ対応ワクチンは、従来からの不活性化方法に加えて、mRNA、DNA、組換えタンパクなど様々なタイプがある。これらの多くは、軍事からの基礎研究によって研究されてきたものだ。

ほとんどの国債を買い上げる日銀


というわけで、軍事大国のほうが基礎研究が盛んなので、こうした「有事」のときには、開発競争で有利になるので、日本は出遅れてしまう。

日本としては、平和的に基礎研究を進めていかなければならない。そこで、ものを言うのは、ズバリ研究予算だ。

12月8日に決定された経済対策では、今が将来投資を行うには絶好のチャンスなので、政府による研究開発基金、環境関連グリーン基金、デジタル関連基金などの将来投資が盛り込まれた。

本コラムの読者であれば、筆者が、研究開発を税財源で行うのではなく、国債で賄うという考えをもっていることをご承知だろう。

2016年10月10日付け「日本がノーベル賞常連国であり続けるには、この秘策を使うしかない! ポチ学者も淘汰できて一石二鳥」では、研究開発・教育は、将来の所得を増やすという実証分析結果が数多いことに触れ、国債発行で研究開発・教育を賄うことの重要性を訴えている。

さらに、今回のコロナ禍では、需要が蒸発したので、インフレ率は上がるどころか下がっている。日銀のインフレ目標も当分の間達成出来ない。であれば、政府が発行した国債を日銀が買い受けることもできる。

実際、今年の補正予算での国債発行額は80兆円程度あるが、それはほとんど日銀が買い受ける。それでもインフレ率は2%にまで達しないだろう。つまり、発行された国債は日銀が保有する限り、実質的に利払負担や償還負担がないので、将来世代のつけにもならない。

「国債発行」の有効性は財務省もわかっている


そして、この考え方が財務省にも一応残っていることもわかっている。上記の本コラムで、紹介したのは、たまたま手元にあった小村武・元大蔵事務次官の「予算と財政法」(三訂版)の101ページであったが、実は、同書は2016年8月に改訂され、五訂版の99ページでも同じ記述になっている。

そこでは、

すなわち、出資金が投融資の原資や有形固定資産の取得に充てられる場合にはその資産性が明白であり、他方、研究開発費に充てられるような場合においても、技術の進歩等を通じて後世代がその利益を享受でき、その意味で無形の資産と観念し得るものについては、後世代に相応の負担を求めるという観点から公債対象経費とすることについて妥当性があるものと考えられる

と書かれており、投資の対象が、通常のインフラストラクチャーのような有形固定資産であれば当然のこととし、研究開発費を例示して、基礎研究や教育のような無形固定資産の場合も、建設国債の対象経費としうるとしているのだ。

基礎研究や教育を投資と考え、国債発行で賄うというやり方は、財務省としても反論できないほど、まともであることを示している。

ちなみに、形式的には、「予算と財政法」(五訂版)は個人の著作物であるが、もともと主計局法規課にあった行政文書であり、財政法コンメンタールとして財務省の意見そのものといっても差し支えない。そこで、基礎研究などを投資と考えているというは今の財務省見解といってもいい。

その改訂作業も、著者が一人でやったのではなく、現役官僚が作業したのだろう。五訂版のはしがきでは、「国家運営の基本をなす財政法の基本理念や考え方を理解する一助になれば幸甚である」と書かれているので、大いに参考にしたいものだ。

研究開発は投資なので、それを行った段階で有効需要を増し、直ちにGDP増加になる。そして、それが将来のGDPも増加させる。GDPが増加するとますます投資を誘発するといった具合に、研究開発とGDPは相互に関連している。研究開発とGDPの因果関係は一方ではなく双方向である。

また、リフレ政策の元祖である高橋是清も、かつて

我邦の如き日清日露の事件に因りまして、不生産的な公債を償還いたしますることが必要であります・・・生産的公債でありますれば、その事業経営によりまして自然に元利を償還することとなりますので、此種の公債の増加は国の信用に関係することが極めて少ないと考えます

と述べている。研究開発は外部性のある無形資産への投資といえる。

10兆円の研究ファンド


このように、筆者は、4年前から、国債による研究開発支出を練っていた。多くの政治家に話を聞いてもらい賛同してもらった。特に、下村政調会長には、自民党の各種会合での話の機会を与えてもらった。

そこで、今年になって具体的な動きが出てきた。今年の骨太「経済財政運営と改革の基本方針2020」は、2020年7月17日閣議決定されたが、その中で、

「世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学等の共用施設やデータ連携基盤の整備、若手人材育成等を推進するため、大学改革の加速、既存の取組との整理、民間との連携等についての検討を踏まえ、世界に伍する規模のファンドを大学等の間で連携して創設し、その運用益を活用するなどにより、世界レベルの研究基盤を構築するための仕組みを実現する」

と書かれた。このときは、数字はまだであったが、

今回12月8日に閣議決定された経済対策では、研究ファンドは10兆円とされ、

特に、10 兆円規模の大学ファンドを創設36し、その運用益を活用することにより、世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学の共用施設やデータ連携基盤の整備、博士課程学生などの若手人材育成等を推進することで、我が国のイノベーション・エコシステムを構築する

となった。

出資ではなく「融資」に変わっている


ここまではいいが、問題は次の箇所だ。

本ファンドへの参画に当たっては、自律した経営、責任あるガバナンス、外部資金の獲得増等の大学改革へのコミットやファンドへの資金拠出を求めるとともに、関連する既存事業の見直しを図る。

本ファンドの原資は、当面、財政融資資金を含む国の資金を活用しつつ、参画大学や民間の資金を順次拡大し、将来的には参画大学が自らの資金で基金の運用を行うことを目指す。

財政融資資金については、ファンドの自立を促すための時限的な活用とし、市場への影響を勘案しながら順次償還を行う。安全かつ効率的に運用し、償還確実性を確保するための仕組みを設ける


と書かれ、その注には、

適時開示の趣旨を踏まえ、運用状況を適切な頻度で検証する態勢を整備し、運用状況が一定の間、一定程度を下回る場合には、運用の停止や繰上償還等を含め、運用の見直し等を行う旨を法律に規定するなど、所要の措置を講ずる

とされている。

財務省の財政法コンメンタール「予算と財政法」では、建設国債を原資とする「出資」となっているのに、財務省は実際の経済対策では、建設国債ではなく財投債として「融資」に変えたのだ。財務省内で、俗にいう「財投送り」だ。

財務省の「間抜け」が示されてしまった


研究開発はリスクが伴う。

研究の一般論としていえば、基礎研究が「当たる」確率は、いわゆる「千に三つ」である。「三つ」を当てるためには「千」のトライが必要である。

「三つ」の社会的な便益は極めて大きく、997の失敗のデメリットを補って余りあるので、基礎研究は、きわめて「打率の低い投資」であるが社会的にはやらなければいけないものだ。

こうしたリスクに対して適切なのは「出資」であって、「融資」ではない。財投による「融資」では、「償還確実性」を求められるので、研究開発ファンドに不適切な「注」が書かれている。

この「注」は財務省によるものであるが、はっきりいって財務省の「間抜け」を表している。財政法コンメンタール「予算と財政法」のように、素直に「建設国債」としておけばいいものを、間抜けな変更をした。

財務省はマスコミなどへは一般会計国債(建設・赤字)だけの発行額を言っているので、その数字が膨らむのを懸念したのだろう。しかし、それに合理性はないばかりか、リスクに耐えにくい「融資」にしたことで、研究開発に縛りがかかるおそれがある。研究なんぞしたことのない、東大法学部卒の文系役人の限界でもある。

国債の発行方法も知らないのかと、今の財務省も地に落ちたモノで呆れた。

【私の論評】鈍感財務省こそ日本の危機を生み出し、若者の未来を破壊する最悪の組織(゚д゚)!

東京大学卒業の財務省の官僚が、理解できない重要なポイントは、どんな研究が何の役に立つのかは、最初は誰にもわからないということです。官僚のほとんどは、大卒であり、おそらく研究活動などはほとんど縁がないのでほとんど理解できないのでしょう。特に基礎研究は選択と集中ができない分野ということを理解できないのでしょう。

財務省太田事務次官

私は、学生時代に生物学を専攻しましたが、研究課題が社会の役に立つのは100~200年も先といわれていました。それどころか、まったく役に立たないかもしれないともいわれました。一生捧げて研究をした結果が、教科書の脚注に1行くらいで書かれて終わりかもしれないともいわれました。

とはいいながら、やらなければ千に三つも当たらないですし、社会への貢献もありません。この意味で、基礎研究は未来への投資の典型です。下手な鉄砲ではないですが、数多くやれば、確実に一定の成果はあるものです。

こうした研究開発から成果が出るまでの期間が長く、広範囲に行う必要のある投資は、民間部門に任せるのは無理があり、やはり公的部門が主導すべきです。その場合、投資資金の財源は、税金ではなく、将来に見返りがあることを考えると、国債が適切です。

今の科研費など基礎研究は税金で賄っています。ここからしても、今の文科省や財務省には教育や研究開発を投資と考える発想はありません。


50年超の超長期国債や償還期限のないコンソル国債を発行し、未来への投資を国として行い、十分な研究資金を確保すべきです。

このようなことをしないから、日本はワクチン開発でも出遅れたのです。日本がワクチン開発で出遅れた理由についてこの20年間を振り返れば、新型コロナを含め繰り返し新興・再興感染症が起きているのに警戒感は維持されなかったことです。「日本はなんとかなるだろう」と考えていたからです。しかし、今回の反省があって変わらなかったら、よほど鈍感ということになるかもしれません。

鈍感だったのは誰なのでしょうか。09年に新型インフルエンザが流行した際、麻生太郎政権は海外から大量のワクチン輸入を進めました。後に余ると、同年8月の総選挙で野党に転じていた自民党議員がこれを批判しました。

翌年6月、専門家による新型インフルエンザ対策総括会議は「ワクチン製造業者を支援し(略)生産体制を強化すべき」と結論付けました。インフルエンザワクチンの集団接種がなくなった80年代以降、接種率が低下し、国内の生産力は衰えていたからです。

縮小市場に対し、政府の資金的支援が必要だってにもかかわらず、実際に行われたことは逆でした。日本にも国立研究機関における基礎研究と民間企業の開発研究を資金的に橋渡しする厚生労働省外郭の財団はありました。しかし民主党政権の事業仕分けでやり玉に挙がってしまったのです。米国のような研究開発のサポートの仕組みはその後も不十分です。

日本のワクチン製造は大幅に出遅れたがその背後には財務省が・・・・・

この事業仕分けは、背後で財務省が民主党を操っていたといわれています。再政権交代後自民党政権になってもこの姿勢は変わらず、財務省は緊縮財政の名のもとで、ワクチンのような戦略物資への投資も緊縮してしまったのです。

財務省のこの鈍感さが、今日ワクチンという戦略物資の開発を遅らせてしまっているのです。「研究開発や教育を国債で賄うことは将来につけをまわすこと」という財務省のご説明を盲信した言いぐさをする人がいますが、国債を利用してそれが将来の若い人達の生産性をあげたり、または非生産性要因もあげれば十分すぎるほどおつりのくる「先行投資」です。それがわかってないだけで、国債=将来世代へのつけ、という幼稚な認識の罠にはまるのです。

財務省は過去と同じ感覚で、今でも閣僚や政治家やマスコミ、財界をつかって緊縮政策をいまだに工作していますが、新型コロナ危機で世論の潮目が変わっていることにも鈍感です。

そうして、財務省的な緊縮主義には、清算主義的な思想が伴うことが多いです。清算主義的な思想とは、簡単にいうと今日我慢すれば明日はもっと良くなるという思想です。例えば病気をしていてもそれを我慢して自分ひとりで耐え抜けば、以前の健康だったときよりもさらに健康になるという歪んだ精神主義です。

もちろん病気であれば適切な診断と治療をうけたほうがいいにきまっているのですが、それを拒否したほうが“望ましい”とする思想です。この歪んだ思想はさすがに表に出し過ぎると批判も多いので、財務省的な「将来世代のために緊縮するのです」という理屈で繕うのが定番です。

しかし、財務省の緊縮主義のために、いまの若い人たちの健康が損なわれてしまえば、「将来世代」をまさに見殺しにすることになるのではないでしょうか。

研究開発の拡充、返済不用の奨学金の大幅拡充、小中学校の給食費や学用品の全額補助、学童保育の充実、教員の待遇改善、もちろんエアコン設置などなど、「将来世代のため」を本当に考えるならば、緊縮主義ではなく、積極財政しか解はないです。

日本の寄生虫である財務省の側につくかどうか、そこに私達や未来の世代の将来にかかっています。

国会議員は財務省の言うことを無視した方が良いです。財務省の言うことを真にうけて公言したら自分に災難がふりかかるのは必至です。実際そのような政治家が多いです。コロナ禍により時代が変わりつつあることを感じます。

政策に鈍感な人たちはその都度の政権批判しかせず、なぜ財務省が批判されるか理解しません。財務省の鈍感さを理解しようとしません。財務省こそ日本の危機を生み出し、いまもそれを続けてる最悪の組織といえます。

「われら富士山、他は並びの山」――。東大法学部卒のエリートが集う霞が関で、財務省は大蔵省時代から他省庁を見下ろしながら「最強官庁」を自任してきたのですが、今のままでは、「われら大和堆、他はすべて陸上の山」ということになるのではないでしょうか。

実際そうしたほうが良いです。財務省は、分割すると他の省庁を植民するという性癖があるので、分割した上で、すべて他象徴の下部組織に併合して、財務省のDNAを断つべきです。

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2020年12月20日日曜日

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 高橋洋一氏「批判ありきのマスコミを官僚が誘導する構図だ」 新著『マスコミと官僚の「無知」と「悪意」』で霞が関の実態解き明かす

高橋洋一氏

 菅義偉政権で内閣官房参与に就任した高橋洋一嘉悦大教授が、夕刊フジの連載「日本の解き方」をベースに加筆した新著『マスコミと官僚の「無知」と「悪意」』(産経新聞出版)を出版した。表題の通り、マスコミの報道や財務省を筆頭とする官僚らの行動が、日本経済や社会の妨げになっている実態を解き明かしたものだ。高橋氏は「批判ありきのマスコミを官僚が誘導している構図だ」と語る。

 同書は、安倍晋三政権時の2019年4月から菅政権誕生後の今年11月までの連載を再構成したもので、新型コロナウイルス対策や消費税減税論、大阪都構想といった問題についてマスコミ報道の間違いや官僚のミスリードなどを指弾している。

『マスコミと官僚の「無知」と「悪意」』表紙 帯をとった表紙

 官僚の世界を知り尽くし、財務省時代に多くのメディアと接したという高橋氏は、両者のもたれ合いの構図についてこう指摘する。

 「専門性がない記者は財務省など当局の話を聞いて書くしかないのだろう。そのため主計局の見解を代弁したような内容の記事ばかりになる。私に聞いてくれれば違う意見を言えるが、社内で怒られるのかもしれない。そこで一般紙では読めない見解が夕刊フジに載るというわけだ」

 コロナ禍の経済対策をめぐる議論でも、高橋氏は、財務省の意向が強く反映された報道に問題が多いと指摘する。

 「私は需給ギャップや自殺者、失業者の予測に基づいて規模を重視すべきだと主張したが、予備費や補正予算の規模が大きすぎるという批判ありきの報道ばかり。もし小さい規模にしていたら経済はもっとひどいことになっていたはずで、そうするとまた批判の種とするのは、『GoTo』をめぐるマッチポンプの報道をみても明らかだ」

 マスコミと官僚が結託し、世論を誘導するような状況は以前から変わっていないという高橋氏だが、「最近はインターネットの普及で反論を書くのも簡単になったし、ユーチューブで発信もできる。かつてのように言われっぱなしではなくなった」という。

 夕刊フジの連載について、永田町でも霞が関でも「読んでますよ、としょっちゅう言われる」という高橋氏。「連載の中でも繰り返し書いているが、現状は政府が国債を発行しても日銀が買い取るので国民負担は発生しない。政治家にはこれだけでも理解してもらいたい」と強調する。

 安倍政権当時から政策に関して見解を示すこともあったが、菅政権では正式に内閣官房参与という肩書が付き、風当たりも強まっている。NHK・Eテレの周波数帯売却案や受信料の値下げ案を打ち出したことも大きな話題になった。

 「前から同じことを言っているのに反応が大きくなった」と笑う。

 今後のマスコミについて「専門性のある記者がいろんな意見を聞いて、読者や視聴者の判断に委ねるのがいいと思う」としたうえで、「ヘンな内容の記事を書き続けてくれれば、ネタには事欠かない」と皮肉を込めた。

 ■高橋洋一(たかはし・よういち) 1955年東京都出身。東大理学部数学科・経済学部経済学科卒業。大蔵省(現財務省)理財局資金企画室長、米プリンストン大客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(官邸・総理補佐官付き)などを歴任。2020年10月、内閣官房参与(経済・財政政策)に就任した。

【私の論評】この書籍を読んで「日本の解き方」読めば正しい認識を持った上で、様々な議論に参加できる(゚д゚)!

この書籍さっそく、amazon kindleで電子書籍を購入して読み始めています。パラパラとめくったところでは、「夕刊フジの連載「日本の解き方」をベースにしているだけあって、ほとんど知っているものばかりでした。

ただし、新著には「日本の解き方」に書かれたことにさらに加筆ということなので、その加筆の部分に注目しつつ読んでいこうと思います。

また、一冊の書籍にまとめるということで、高橋洋一氏の考え方が体系的に理解できるということでも注目です。新聞の記事は、単一の短い読み物として構成されているため、他の記事との繋がりや関係などはほとんど考慮されないのが普通です。書籍にまとめるということは、そのようなことも十分に配慮されていると思います。

このブログを購読されている方ならおわかりのように、このブログでは、様々な記事を引用してそれを解説するという形をとっているのですが、「日本の解き方」の引用率はかなり高いです。調べたことはないのですが、おそらくこのブログでは一番引用率が高いのではないかと思います。

なぜそのようなことになったかといえば、現在の日本の大きな問題は、結局官僚とマスコミの問題に行き着くことが多く、特に財務省にはかなり問題があります。そうなると、高橋洋一氏のようにかつて官僚だった人であり、しかも官僚の世界にあまり毒されることもなくマクロ経済を熟知した上で、自由な発想で物事を語る人の意見がかなり参考になります。

太田財務次官

本日は、「日本の解き方」を産経新聞のサイト「ZAKZAK by 夕刊フジ」で検索してみたところ、一番古い記事で2020年7月11日のものでした。このブログでは、かなり古いものでは2012年あたりから、そのまま掲載してありますので興味のある方は、「日本の解き方」のキーワードで検索してごご覧になってください。

この「日本の解き方」ブログに掲載して解説するという目的もあったので、結構長い間読んでいます。それもあってか、日本の経済の問題については、従来よりはかなり詳しくなりました。それととともに、マスコミと官僚の問題点も良く理解できるようになりました。

大方の経済学者等が言っていることは大体わかるようになりましたし、いわゆるエコノミストや、アナリストなどと称する人々の言うこと、テレビのコメンテーターの言うことや、新聞記事など言うことを鵜呑みにすることはなくなりました。

池上彰氏の経済ニュースほどあてにならないものはない・・・・

その中で、これは間違い、これは正しいとそれなりの背景から確信を持って言えるようになりました。これは、ブログの記事を書く上でも、経済の問題を考える上でもかなり役立っています。このようなことは、ネットで高橋洋一氏をはじめとして、他のまともな意見を語る少数の人々の記事を読んだ上で、マクロ経済の書籍などを読まなければなかったと思います。

そうして、「日本の解き方」を読むことで、マクロ経済の書籍を読むこともあまり苦痛ではなくなりました。私は、高橋洋一と同じく理学部の出身者なので、そもそもマクロ経済など大学で学んだこともなく高校で習ったはずの知識も忘れていました。それでも何度か読んでみようと思って、何冊か購入したこともあるのですが、結局積ん読で終わっていました。

しかし、「日本の解き方」を読み始めてからは、関連したところを読んだりしているうちに、徐々に読み慣れてきて、読むことがあまり苦痛に感じなくなってきました。

その上で、いいますが日本のマスコミの経済記者や政治家などほとんどマクロ経済を理解していないようです。私がみるところ、日本の大手新聞でマクロ経済を理解している人は、数人しかいません。金融機関の幹部の人でも、わからない人も多いことに驚きました。これは由々しき問題です。

マクロ経済学というと、非常に難しく考える人も多いでしょう。しかし、定量的に何かの答えを出すというのは、確かに難しいですが、その時々でどのような財政政策・金融政策をすべきか程度の判断は十分に可能です。それも、常識的に考えればわかることが多いです。

たとえば、為替に関しては、長期的にいえば相対的により強力に金融緩和をしている国の通貨が安くなることなどは、簡単に理解できます。お札をたくさん刷っている国のほうが、刷っていない国よりも安くなるのは当然です。モノもたくさんあれは、価値が低くなりますが、逆に少ししかなければ、価値はあがります。お金も同じことです。

実際には、様々な要素が絡まっているので、すぐにはそうはならなくても、長期的にはそうなります。だから、為替介入などあまり意味はないのです。できるのは、急速な為替変動を緩やかにするくらいのものです。これがわからない金融アナリストもいるようで、様々な複雑な要素を難しくこねくり回して、結局数ヶ月の目先のことしか予想できないようです。

高橋洋一氏の「日本の解き方」やその他の記事を読み、さらには自分で他の情報にあたったりしているうちに、日本は平成年間のほとんどの期間を財政政策、金融政策を間違えてきて、それでもなお、政治家やマスコミがそのことに気づかず、さらに同じ間違いを繰り返そうとしていることにかなりの危機感を持ちました。それが、このブログを書くことの原動力にもなりました。

上の記事で、高橋洋一氏が「最近はインターネットの普及で反論を書くのも簡単になったし、ユーチューブで発信もできる。かつてのように言われっぱなしではなくなった」と語っていますが、これは本当にそうだと思います。特にここ10年間あたりはそうだと思います。

やはり多くの人々がテレビや新聞などの情報に飽き足らず、ネットの情報を閲覧するようになってから、変わったようです。10年以上前だと、世間では高橋洋一氏の考えなど、「異端」的に扱われていたところがありましたが、ここ10年くらいでそのようなことがなくなってきました。

これは、高橋洋一氏をはじめとする、良心的な人々が、ネットなどを通じて、この10年間努力してきた成果だと思います。この努力に比して、最近のマスコミや官僚、一部の政治家や識者の発言や行動は旧態依然として見苦しい限りだと思います。

今までマクロ経済に疎いと感じられている方で「日本の解き方」を読んだことのない人たちも、今回の新著『マスコミと官僚の「無知」と「悪意」』(産経新聞出版)を読んで頂き、その後継続して「日本の解き方」を読んでいただければ、日本経済や日本の官僚とマスコミの問題について、正しい認識を持った上で、自分の頭で考え、様々な議論に参加し生産的な話ができると思います。

特にコロナ禍の現在、政府の役割が大きくなっている現在、様々な分野で議論をしなければならい人にとっては、役に立つと思います。

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2020年12月19日土曜日

激しさ増す豪中対立、民主主義国は結束を―【私の論評】外国でも独善的な振る舞いをした中国が待つ末路は、毛沢東時代の図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国に戻ること(゚д゚)!


 豪州がコロナウイルスの起源を究明する独立した調査を提唱したことを契機に、中国と豪州の関係は急速に悪化しているが、11月26日付けの英フィナンシャル・タイムズ紙が、中国の豪州に対する要求には危険な要求が含まれているとして、民主主義諸国が結束して中国の圧力に対抗すべきことを主張する社説を掲げている。


 中国が豪州に対する経済的締め付けを強めている。本年4月中旬、新型コロナウイルスの起源が明らかにされる必要があるとの豪州の閣僚の発言が報じられ始めた。これに対し、4月26日には、駐豪州中国大使のCheng Jingyo(成競業)は雰囲気が悪化すれば、観光客はどうして非友好的な豪州に行く必要があるのかと問う。親は子供を留学させる場所として適当かを問うであろう。国民は何故豪州ワインを飲まねばならないのか、何故豪州の牛肉を食べねばならないのかを問うことになると警告した。大使と外務省幹部との電話会談も行われたが、4月29日、モリソン首相は「新型コロナウイルスは世界で20万の命を奪い、世界経済を停止させた。よって世界で何が起こったのか独立した評価を求めるのは賢明で妥当と思う」と述べた。

 今回、引き金を引いたのは新型コロナウイルスの起源の調査の提案であるが、他にもある。Huaweiを5Gネットワークから排除することを早々と決定したこと、南シナ海に関する中国の立場に法的根拠はないと表明して「完全に違法」とするポンペオ国務長官の見解に同調したことなど、中国を怒らせた理由は色々ある。

 中国の反発は激烈であった。5月、中国は、豪州からの牛肉の輸入を一部停止し、大麦に 80%の追加関税を決定した。8月にはオーストラリア・ワインのダンピング調査が始まった。当初は法的な正当性の衣をまとうことを試みていたが、最近に至ってその手間は放棄し、税関に輸入の差し止めを非公式に指示するだけで済ましているらしい。順次締め付けは強まり、規制の対象は石炭、砂糖、木材、ロブスター、銅鉱石を含め13品目、対中輸出の3分の1に及ぶという。除外されている主要品目は代替輸入が困難な鉄鉱石及びLNGである。これらの妨害措置はWTOのルールを無視するものであり、恐らくは中国・豪州FTAに違反する行動である。

 フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、キャンベラの中国大使館がメディアに手交した苦情のメモが自由な言論を否認するような要求を含んでいることを重大視している。しかし、国内で言論を抑圧している中国に言論を論ずる資格はない。中国大使館のメモは、豪州政府がその政策に反するとの理由でビクトリア州に「一帯一路」への参加を反故にするよう強いていると苦情を述べているが、中国が外国との自由な合意を容認する筈もない。これらは一種の偽善である。いずれにせよ、接受国への苦情のメモをメディアに手交することは礼儀作法にもとるが、宣伝目的のメモの内容にいちいち取り合う必要はない。むしろ、重大視すべきは、豪州の貿易構造の中国に対する脆弱性につけ込んで、中国の意に逆らう豪州を経済的に圧迫する中国の行動である。

 ウイルスの問題だけではない。去る9月、新華社は6月に豪州の情報機関が4人の中国人ジャーナリストの捜査に入りコンピューター、スマホ、文書を押収したとされる一件を暴露して豪州を非難する一幕があった。その前日の9月7日、身の危険を感じたABCとAustralian Financial Reviewの中国特派員2人が豪州大使館の介入を得て中国を脱出する一件が発生した。これに伴い中国に豪州の特派員はいなくなった。

 豪州は厳しい状況に置かれている。問題解決のための閣僚レベルの電話の要請にも中国は応じていないようである。この種の経済的圧迫は中国の常套手段であり、日本も韓国も経験済みである。チェコの上院議長一行が台湾を訪問した際にはチェコ製ピアノの発注が取り消された。他の民主主義諸国に効果的な手助けの手段があるようには思われないが、何はともあれ、民主主義諸国は豪州との結束を維持してやる必要がある。先日、モリソン首相が来日したが、我が国の政権交代に伴い外国首脳が訪れるのは珍しいことである。これも豪州が置かれた立場を反映しているのであろう。

【私の論評】外国でも独善的な振る舞いをした中国が待つ末路は、毛沢東時代の図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国に戻ること(゚д゚)!

オーストラリア政府は、中国の経済的締め付けを強めつけに対抗する措置を行っています。オーストラリア政府は、中国が大麦に高い追加関税を課し輸入を制限したのは不当だとして、WTOに提訴する方針を明らかにしました。中国政府はオーストラリアの対応を非難しています。

オーストラリアのバーミンガム貿易相は16日、記者会見し、中国がオーストラリア産の大麦に高い追加関税を課し輸入を制限したのは不当だとして、「16日夜、WTOに正式に提訴する方針だ」と述べました。

「オーストラリア政府は中国側の懸念に真剣に対処し、実際に行動を取り、中国企業を差別視するやり方を正すべきだ」(中国外務省 汪文斌報道官)

一方、中国外務省の汪文斌報道官は16日、記者会見でこのように述べ、オーストラリア側の対応を非難しました。

中国は、地元の反感を招くようなことを平気でしています。たとえば、中国の不動産会社「チャイナブルーム」が昨年5月にオーストラリアのクイーンズランド州にある楽園のようなケスウィック島(Keswick)を買収しました。

ケスウィック島の「立入禁止の看板」と風景(右)

この島は国立公園に指定され、島の80%を除く残りの20%を州に99年の長期賃貸する方法で契約しました。

しかしこの企業のせいで住民、そして観光客らにとんでもないトラブルが起きたのです。

不動産会社チャイナブルームは、「立入禁止」の看板を立て国立海浜公園に通じる道を封鎖して住民の出入りを遮断しました。従来のボートの傾斜路の利用を禁止した代わりに、めちゃくちゃに設置した新しいボートの傾斜路だけを開放しました。

民間や商業用飛行機の飛行場への出入りも阻止し、島への出入り困難にしました。住民は突然島に閉じ込められた捕虜同然の身になってしまったのです。ある住民は「島に閉じ込められた気分だ。ボートのない住民は往復2600豪州ドル(約20万円)を払い、ヘリコプターに乗らない限り行き来ができない」と訴えました。

それだけでなく、不動産賃貸やairbnb(宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイト)などを通じた宿泊・共有を禁止し、観光産業も壊滅状態に陥らせたのです。ケスウィック島に住んで15年になるレイナ・アズベリーは「私が知る限りでは昨年9月以降観光客は一人もいなかった」と語りました。

ケスウィック島の海岸

このようなやり方をする中国は、地元民の反感を買うのは当然のことです。日本の北海道あたりでも、中国人による土地買収を好き勝手にやらせておけば、このような事態が起きないとも限りません。

「中国人の心」に対して配慮を欠いたオーストラリアの態度に驚き、中国の外交官たちは自らの言葉がオーストラリア人の心をいかに傷つけるか気づかなかったようです。オーストラリアの政治家や公的機関に尋常でないほど深く浸透しているにもかかわらず、中国の外交官は、民主的な意思決定のダイナミズムを理解できなかったか、その要求に屈することを拒みました。

もし中国が、有能なP R会社等を通じて他の民主国家等と同様の通常の外交を行っていたら、新型コロナウイルスのパンデミックによる関係悪化はごく短期間ですんでいたかもしれないです。

 ところが実際には、中国政府が30年間にわたって築き上げたオーストラリアの意思決定に対する影響力があっという間に瓦解しました。ここ数カ月、オーストラリアは中国系企業による豪戦略資産の買収を厳しく規制すると発表、州政府や自治体が認可した買収案件に対し連邦政府が拒否権を発動できる新たな法案を提出しました。

またオーストラリアの大学に対する外国の干渉について議会の調査も開始しました。中国寄りの姿勢を取る政治家は、今ではかなり勇気のある者に限られます。振り子は逆に振れたのです。

 この動きは、オーストラリアだけではありません。一国のエリート層を取り込む中国の世界戦略は、民主主義国のほとんどで失敗しました。中国は、外国の内政干渉を食い止めようとするオーストラリアの努力を「ひどく理不尽な態度」と呼びました。

ところが一般市民から見れば、それは常識です。中国が世界の除け者になり、民主国家の政治家は、中国政府幹部と握手する姿は撮られたがらないし、中国にとってぼろい儲け話もなくなるでしょう。

習近平とともに写真に写る米国民主党関連者の面々 今ではこのような写真はみられたくないだろう

 オーストラリアが中国に背を向けたことで、自由主義や西側同盟を重んじる価値観が再確認されました。他の民主国家もこの例に倣うでしょう。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、香港や新疆ウイグル自治区における中国の人権抑圧を批判しました。

米国では、トランプ大統領が誕生し、中国に厳しい態度をとりはじめました。トランプ政権も米国内のありとあらゆるところに、中国勢の浸透があったことを暴露しています。

大統領選の決着はまだついていませんが、背後には中国の不当な選挙への干渉があったともいわれています。もしそれが明るみに出れば、トランプが再選され、ますます中国に対して厳しい措置をとることになるでしょう。

たとえ疑惑の解明が進まず、バイデン氏が大統領になったにしても、その後疑惑の解明がすすんだ場合、政権スタート当初からレームダックになり、民主党やマスコミ、SNSの権威は失墜し、米国の中国に対する態度はさらに厳しいものになるでしよう。識者の中には、バイデン政権成直後に疑惑解明が苛烈になる可能性があると語っている人もいます。大統領選挙の結果いかんにかかわらず、米国の中国に対する厳しい態度は維持されることになります。

欧州でも、中国の干渉に市民が反発しています。外国からの脅威に対する民主主義国の反応は必ずしも早くないかもしれないですが、最終的には排除されます。それこそ中国が学ぶべき教訓のはずです。

ただ、その中国はその教訓を学ばないかもしれません。中国で来年の経済運営の方針を決める重要会議が開かれ、新たな発展戦略として内需の拡大や国内産業の強化を図る方針が示されました。米国との対立が長期化する可能性を念頭に、国内経済主導への転換を明確にした形です。

中国では来年の経済運営を決めるため、習近平国家主席や李克強首相らが出席して、18日までの3日間「中央経済工作会議」が開かれました。

中国国営の新華社通信によりますと、会議では来年、経済政策の基本方針となる次の「5か年計画」が始まるにあたり、「新たな発展の枠組みを構築し、第一歩を踏み出す必要がある」という認識が示されました。そして、国内産業のサプライチェーンを強化することや、内需の拡大を図る方針が打ち出されました。

これは、米国政府による、中国企業に対する制裁や、経済的なつながりを切り離す「デカップリング」の影響を避けるねらいがあります。

米国で政権交代の動きが進む中でも、誰が大統領になろうとも、米中の対立が長期化する可能性を念頭に、国内経済主導への転換を明確にした形です。

中国としては、現在のやり方をしていれば、デカップリングが進むことは認識しているようです。ただし、内需拡大と気軽に言っていますが、それは今の中国には難しいことです。

なぜなら、このブログでも何度か述べてきたように、本気で内需拡大をするつもりなら、まずは民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければならないからです。これこそが、自由主義や西側同盟を重んじる価値観です。

それができれば、星の数ほどの中間層が輩出され、これらが自由に社会経済活動を行い、社会のあらゆる層でそれこそ、立体的にありとあらゆるところで、イノベーションが起こり、富を生み出すことになります。

これが、かつて経済的、軍事的に、強国になるためにいわゆる先進国が通ってきた道であり、この道を通った国だけが、現在先進国になっています。日本もかつて、このような道をたどり、特に戦後は社会のあらゆるところで、イノベーションが起こり、かつて発展途上国であったにもかかわらず先進国の仲間入りができたのです。

中国だけが例外にはなりません。例外になったように見えたのは、世界中から中国に対する投資が増えたためです。国内の非効率・不合理が取り除かれなければ、先進国にはなれません。

現在の中国では共産党主導の点のイノベーションしかおこらず、それでは社会のあらゆるところに非効率・非合理なことが残ってしまい、社会は停滞したままになり経済も発展しません。

これが、いわゆる中進国(国民一人当たりのGDPが100万以下の状態)の罠というものです。デカップリングした中国は、社会の行進性が残ったままであり、中進国にもなれないかもしれません。

国内と同様に、外国でも独善的な振る舞いをした中国が待つ末路は、毛沢東時代の図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国に、戻ることしかできないようです。それでも、中国は14億人の人口があるので、国内だけで何とかやっていけるかもしれません。

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2020年12月18日金曜日

日銀12月短観で明確になった…「V字」ではない景気の改善 着実な経済対策が不可欠だ―【私の論評】政府の需給ギャップを埋めようとする動きを応援し、それを怠るような動きをすれば、批判せよ(゚д゚)!

 日銀12月短観で明確になった…「V字」ではない景気の改善 着実な経済対策が不可欠だ 

高橋洋一 日本の解き方

日銀

 日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の業況判断指数(DI)は、前回9月のマイナス27から17ポイント改善し、マイナス10となった。改善幅は2002年6月調査以来18年半ぶりの大きさだった。

 日銀短観は、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引き景況感を示すDIで景気を判断する。

 内訳を見ると、自動車はマイナス61から48ポイント改善しマイナス13。自動車に引きずられる形で鉄鋼もマイナス55から30ポイント改善しマイナス25、非鉄金属もマイナス36から27ポイント改善しマイナス9、生産用機械もマイナス43から22ポイント改善しマイナス21となった。製造業16業種中15業種で改善した。

 造船・重機等はマイナス34から7ポイント悪化しマイナス41で、製造業で唯一の悪化だった。

 飲食や宿泊などを含めた大企業・非製造業のDIは、前回9月調査でマイナス12だったが、7ポイント改善してマイナス5と、これも2期連続の改善だった。

 宿泊・飲食サービスは、新型コロナウイルスの感染拡大で極めて大きな打撃を受けている。今回の調査で前回9月のマイナス87から21ポイント改善したものの、マイナス66にとどまっている。この改善は、政府の需要喚起策「Go To キャンペーン」の効果が主な要因と日銀は見ている。

 遊園地や劇場などの「対個人サービス」もマイナス65から22ポイント改善しマイナス43だった。非製造業12業種中11業種で改善した。

 建設は21から4ポイント悪化の17で、非製造業で唯一悪化した。

 大企業・製造業、大企業・非製造業ではほとんどの業種で改善したが、DIの水準では、大企業・製造業が16業種中14業種でマイナス、大企業・非製造業が12業種中6業種でマイナスにとどまっている。改善は見られるものの、水準としては悪い景況感のまま、いま一歩である。

 こうした傾向は中小企業にもあり、その深刻さは中小企業の方が大きい。中小企業・製造業ではマイナス44から17ポイント改善したがマイナス27、中小企業・非製造業ではマイナス22から10ポイント改善したがマイナス12にとどまっている。

 先行きも明るくない。短観では、現状とともに先行きを尋ねているが、大企業・製造業では現状がマイナス10に対して先行きがマイナス8、大企業・非製造業で現状マイナス5に対して先行きマイナス6と、いずれも悪い景況感のまま、好転しないとみている。

 中小企業・製造業では現状のマイナス27に対して先行きがマイナス26、中小企業・非製造業では現状のマイナス12に対して先行きがマイナス20。非製造業ではさらに悪化を見込んでおり、先行き不安が強い。

 今回の短観では、8日に発表された追加経済対策の結果はあまり反映されていないだろうが、今回の景気回復は「V字」ではないことが確認されたことになる。経済対策が着実に実行され、日本経済の回復基調を確実にしなければいけない。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】政府の需給ギャップを埋めようとする動きを応援し、それを怠るような動きをすれば批判せよ(゚д゚)!

日銀短観については、NHKのWEBニュースで、見やすいグラフを掲示していたので、それを以下に引用します。


日銀短観そのものは、以下のリンクからご覧になってください。

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka2012.pdf

日銀短観が示しているのは、ある意味「超最悪から最悪になっただけ」ということです。

それこそ、一番の元凶たる需要ギャップをしっかり埋めるための「令和の富国強兵」が待ったなしということです。

この短観の結果は予め予想できたことであり、別に驚くには値しません。これに対応するための政策も十分に考えられますし、日本政府にはそれができる能力が十分にあります。

それについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!
追加経済対策が決まった

基本的には、この記事で示したコロナ経済追加経済対策である第三次補正葉酸を確実に実行することです。第二次補正で積み上げた、予備費が7兆円も積み上げたままになっていたのですが、これは最近5兆円まで減ったそうです。第三次補正では、そのようなことがないように、速やかに(真水20兆円)予算を所定の期間に使い切ることです。

そうして、来春には需給ギャッブが十分に埋まっていなければ、さらに真水の20兆円の追加予算を立てて実行することです。

これで、安倍総理がコロナ対策で60兆円をつかい、菅内閣は40兆円を使うことになり、全部で100兆円となります。これで、需給ギャップを十分に埋められるでしょう。それどころが、お釣りがくるかもしれませんが、だからといって予算を削ることは許されません、

なぜなら、今後コロナ以外にも様々な予期しないことが予想されるため、予算をタイトにすることは許されないからです。

実際最近でも、新潟で車1000台以上“立ち往生”という雪害が起こっています。16日から降り続く記録的な大雪の影響で、高速道での事故が相次ぎ、実に1000台以上の車両が立ち往生を強いられました。


このようなことが、もっと大規模に起こることも十分に考えられますし、さらに地震・津波の被害や、台風、大雨などの被害もあり得ます。コロナもいつ終息するかなどもまだはっきりしません。これらにも備えて、何かが起これば速やかに対策を打てるようにしなければ、需給ギャップを埋めることはできません。

需給ギャップを埋めるために、このようなことをすることにさしたる確証も何もないのに、これに反対したり、多すぎると批判する異常な人々が大勢います。これを実行するために、政府が大量の国債を発行し、日銀がこれをすべて買いとるという方式に、これまた何の確証もなく、反対する人もいます。

あるいは、民需が予想されるから、予算は少なくて良いという人もいますが、これも嘘です。これは、常識で考えてもわかるでしょう。需給ギャップが埋まっていなければ、民間企業は投資するどころか、支出を控えるようになるだけです。

さらには、国債を大量に刷れば、国の借金が増え、将来世代へのつけになるという人もいますが、これも真っ赤なうそです。この記事にも、ノーベル賞を受賞した経済学者ポール・サミュエルソン氏が財政赤字が将来世代へのつけになることはないことを理論的に示したことを掲載しました。

これらの何の確証もない財務省を筆頭とする様々な反論論に政治家がまどわされ、政府が対策を怠れば、大変なことになります。潜在GDPと実際のGDPの差であるGDPギャップは、内閣府の推計でも30兆円超もあります。これを放置すると、半年後以降の失業率が上昇します。おそらく失業率2%程度上昇、失業者で見れば120万人程度が増えるでしょう。それに伴う自殺者は6000人程度増えるでしょう。それはコロナによる死者2400人の2倍以上になります。

これに対して他人事でいられるでしょうか。コロナ禍経済対策で、このような被害を被るのは、あなた自身かもしれないし、あなたのお子さんや親や孫、親族かもしれません。会社の同僚や学校の仲間かもしれません。できないというのであれば、致し方ありませんが、日本政府にはこれに対応できる能力が十分にあるのに、そのようなことになるを、到底容認できるわけがありません。

このようなことをなくするために、政府が需給ギャップを埋める政策を実行することを阻もうとする無責任勢力の愚鈍な馬鹿どもの戯言に付き合うべきではないのです。このような戯言には、耳を貸さずとにかく、政府の需給ギャップを埋めようとする動きを応援すべきです。そうして、政府が需給ギャップを埋めることを怠るような動きをすれば、徹底的に批判すべきです。

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2020年12月17日木曜日

中国による米選挙介入疑惑、トランプ政権が新たな情報入手か―【私の論評】中国による選挙介入疑惑は何らかの形で解明されるべき(゚д゚)!

 中国による米選挙介入疑惑、トランプ政権が新たな情報入手か

ラトクリフ米国家情報長官、報告書の議会提出保留を検討-関係者
米国家情報長官、中国の脅威を十分に反映した報告書を望む

 11月3日の米大統領選挙に外国勢力が介入した可能性について、ラトクリフ米国家情報長官は報告書の議会提出を保留することを検討している。米有権者に影響を与えようとした存在として、中国にもっと言及するべきだというのが理由。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 トランプ大統領が選挙結果の受け入れを拒む中、同報告書は18日に議会への提出が予定されている。

 情報の機密性を理由に匿名で語った関係者によると、ラトクリフ氏は中国がもたらした国家安全保障上の脅威を十分に反映した報告書を望んでいる。 

ラトクリフ米国家情報長官

 トランプ政権ではラトクリフ氏のほか、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ポンペオ国務長官、バー司法長官らが今夏、米選挙に対しては中国がロシアよりも大きな脅威だと示唆していた。ただ、当時の情報機関の評価はそうした主張を支持していなかった。

 関係者らによるとラトクリフ氏が懸念を強めたのは、トランプ氏の再選を阻むために中国指導部が取った行動、もしくは立てた計画についてより詳しい最新情報が出てきたことが理由。

 関係者の1人は、その情報の一部は中国語によるもので、選挙の前後数週間で集められたものだと述べた。内容についてはまだ評価中だという。

 中国側は以前、トランプ政権の主張を虚偽だと否定していた。在ワシントン中国大使館はコメントの要請に応じていない。国家情報長官室(ODNI)はコメントを控えた。

【私の論評】中国による選挙介入疑惑の解明は、誰が大統領になるかよりも、米国と他の民主主義国にとってはるかに重要(゚д゚)!

今回の米大統領選で、トランプ大統領の陣営は大規模な不正が行われたと主張していますが、そこには中国の関与があったと断言しています。「両雄並び立たず」という格言が示すように、バイデン政権の誕生は、米中の力関係を逆転させ、中共の世界支配へ王手をかけるものです。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は9月4日の記者会見で、外国政府による米大統領選への介入工作について「中国が最も活発だ」と非難しました。「過去40年の米外交で最大の失敗は対中政策だ」と述べ、中国への批判を強めました。

オブライエン氏は中国、イラン、ロシアを挙げ「この三つの敵国が米国の選挙を妨害しようとしている」と指摘。中でも「中国による米政界への工作が最も大規模」と強調し「介入しようとすれば深刻な結果を招く」と警告しました。

1989年に中国当局が民主化運動を武力弾圧した天安門事件を引き合いに「目を背ければ、中国は豊かで民主的になると思い込んだ」と過去の米政権の対中姿勢を問題視。中国による少数民族ウイグル族や香港、台湾への強圧的姿勢を例示し「全く逆に、人権侵害は年々ひどくなっている」と非難しました。

今度の選挙に中国共産党が関係したという様々な情報が巷に流れています。12月に入ってからの主なものを下に列挙します。

第1に、「紅3代」の伊啓威は中国広東省の工場で米大統領選挙の投票用紙が印刷された事実を暴露している(『エポックタイムズ』「中国製の偽投票用紙が米国に大量流入 選挙介入狙う 元高官子弟が証拠動画を公開」12月8日付)。


第2に、FBIが中国など外国での取引で税法やマネーロンダリング(資金洗浄)関連法に違反の疑いがあるとして、バイデン候補の息子、ハンター・バイデンに事情聴取を行っています(『CNN』「米連邦当局、バイデン氏息子を刑事捜査 中国ビジネスが焦点」12月10日付)。また、FBIが(バイデン候補に投じられたと疑われている)不正票に関する捜査がようやく動き出しました。(『BonaFidr』「FBIが50万枚の偽造されたバイデン票を犯罪捜査中―接戦州の4州が捜査対象」2020年12月12日付)。

第3に、シドニー・パウエル弁護士が大統領選挙当日、(日米開戦の象徴「パールハーバー」を模して、主に中国からの)「サイバー・パールハーバー」が起きたと発言しています(『Media Matters』「シドニー・パウエル氏、2020年の選挙は「サイバー・パールハーバー」攻撃の対象だったとルー・ドブス氏に語る」12月10日付)。

第4に、リン・ウッド弁護士が、中国製の投票用紙がメキシコ経由で米国に入ったと証言しました(『新唐人テレビ』「リン・ウッド弁護士『米国は決して共産主義に支配されない』」12月12日付)

第5に、中国人民大学国際関係学院副院長の翟東昇が、思わず口が滑ったのか、米中エリート同士の深い関係について暴露してしまいました(『看中国』「習近平のシンクタンクが米国エリート階層への潜入詳細を暴露」12月8日付、及び 同「翟東昇氏の演説は炎上を続け、彼が言及した人物の正体が明らかになった」12月11日付)。


第6に、「ロシアゲート」疑惑の急先鋒、米民主党エリック・スウォーウェル(Eric Swalwell)議員らが、中国共産党の女性スパイ(方芳<Christine Fang>)のハニートラップにかかった事が報じられています(『蘋果日報』「米情報機関:大量の女性スパイ  中国の女性スパイの手法は最高レベル」12月13日付)。

中国共産党の女性スパイ(方芳<Christine Fang>)

12月に入ってすら、これだけの情報が巷に流れているわけですから、これに関してはやはり、最高裁判所で審議をすべでした。

ただし、テキサス州パクストン司法長官やパウエル軍事弁護士の提訴は、『国家反逆罪』の審理であり、連邦最高裁の管轄外だという見解も出てきました。

連邦最高裁は、第3条の 反逆条項1および2により、 これらの提訴は連邦最高裁の管轄外というものでしたが、今回の不正選挙の疑義の中には、国家反逆罪とまではいかなくても、様々な不正疑惑があったはずで、それは管轄内であると考えられます。

次のシナリオ としては『軍事法廷』 か 『外国情報監視法(FISA)裁判』が考えられます。ただ、残念なのは、これらの裁判はその性格から審議は非公開となります。

FISA裁判所の権力は米国最高裁判所と並行し、判事による判決は最終判決として確定し、上告はありません。法廷審理は非公開であり、場合によっては一部抜粋された情報を公開することもありますが、すべての情報を公開することはまずありません。

訴訟の秘密性により、米国政府が許可した特別免許を保有する弁護士の出廷のみが認められています。国家安全を脅かす情報が一旦確定すれば、実質的抗弁すらできない状況であるため、FISA裁判所の被告にさえなれば、ほぼ有罪確定となります。

トランプ陣営が外国情報監視法裁判所に提訴できた場合、バイデンが敗北したと見て良いと思います。

国家情報長官「ジョン・ラトクリフ氏」のこれらに向けての早々の動きが注目されています。

ラトクリフ米国家情報長官は、米国と世界の民主主義にとって中国がナチスドイツ以来最大の脅威であり、政策担当者は中国政府との長期的な対立に備える必要があると指摘しました。

ラトクリフ長官は、中国をより重視すべく、850億ドル(約8兆8200億円)の情報予算の中で既に資源を移しつつあると述べた。「中国の意図や活動に関する率直な洞察を政策担当者に与えるのに必要な資源」が米情報コミュニティーに備わるようにするといいます。

3日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で、同長官は「中国は現在の米国にとって最大の脅威であり、世界中の民主主義と自由に対する第2次大戦後最大の脅威だ」と指摘。「情報は明確に示している。中国政府には米国やその他地域を経済、軍事、技術の面から支配しようとする意図がある」としました。

さらに同長官は「今後、中国を米国家安全保障の第一の焦点とすべきだ」と主張。「中国政府は米国との終わりなき対立に備えている」と続けました。

民主党の一部の議員は、中国による選挙介入についての懸念を一蹴していました。日本では、選挙直後からバイデン勝利の決め打ちをしていました。一部の保守層にも同じような動きがありました。彼らは、大統領選挙が終わった直後から、「不正はあったかもしれないが、選挙の結果を左右するだけのものではない、そんなことよりも日本はバイデン政権への対処法を考えるべき」と早急に結論を出していました。

このような性急な対応は危険です。中国に対してそうして米国の有権者に米政府が中国政府による干渉を「厄介だとは思っても危険だとは思っていない」というメッセージになりかねないです。日本の一部の早急な結論を出した保守層にも同じようなことがいえます。

それが中国をさらに勢いづかせるのはほぼ確実で、そうなれば彼らは米国をはじめとする先進国に対するさらなる介入工作を続けるでしょう。現に彼らは、南シナ海でのますます積極的な活動を含め、そのほかの地政学的な目標を追求する上でも同様の戦略をとっています。

行政や立法の当局者による早まった発言は、中国による選挙介入に関する米政府の知識がきわめて少ないという厳しい現実を無視したものでもあります。西側諸国では、ロシアの脅威に対処するための先進技術の開発が進む一方で、中国による悪質な活動をリアルタイムで暴き、阻止する能力や手段はないのが現状です。

最近では、オーストラリアでも、中国の情報機関が中国系の男性に資金を出して選挙に立候補させようとしたことがありました。オーストラリアの例が参考になるならば、中国による複雑な政治介入工作を解明するのには、何年もの時間がかかる可能性があります。

さらに悪いことに米国の政界は党派間の対立が激しいため、オーストラリア政府が採用したような、市民社会や学会、諜報コミュニティーや実業界からの先入観にとらわれない意見に頼る形の調査を行うのは難しいです。

中国による米選挙への介入について、これまで以上に統合的な対処を行い、民主・共和両党が協力して一般市民に脅威を伝える努力をしない限り、米国は2022年にも2024年にもほぼ確実に、また同じような状況に直面することになるでしょう。そして日本も含む他の民主主義諸国も適切な対策を講じない限り、同じような介入に直面することになる危険があります。

米国はまず、党派を超えて中国による介入の脅威を認めることで、第一歩を踏み出すべきでしょう。

そうして、今回の中国による選挙介入疑惑は何らかの形で解明されるべきでしょう。これは、誰が大統領になるかよりも、米国と他の民主主義国にとって、はるかに重要なことです。ただし、結果としてトランプ氏が再選されるなら大歓迎です。

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2020年12月16日水曜日

台湾企業の対中依存軽減に必要な「南向政策」と米台協力―【私の論評】英台を速やかにTPPに加入させ、中国が一国二制度を復活し香港を元に戻すなら香港を加入させよ!

 台湾企業の対中依存軽減に必要な「南向政策」と米台協力

岡崎研究所

 台湾の蔡英文政権は11月20日に、米国駐台湾代表処(AIT)との間で初の「経済繁栄パートナーシップ対話」を開催し、今後5年間にわたる覚書に署名した。その内容は、米台間の経済協力強化だけではなく、米台のアジア・太平洋地域への共通の取り組みを模索するものとなっている。


 Taipei Timesの11月28日付け社説は、「中国は過去数年、東南アジアやオセアニアに対し、米台を排除する方向で、投資を拡大してきた」と述べている。そして、米台としては、東南アジア、オセアニア諸国に対する今後のインフラ支援やサプライチェーン面での協力を通じ、これら諸国の対中依存の脱却を図るべし、と論じている。興味深い内容であると言える。

 中国は「一帯一路」政策を通じ、カンボジア人を土地から追い出し、環境を破壊して地域物流拠点を作り、また、スリランカでは、融資を返済できないことの対価として主要な港湾を買収するなどしてきた。台湾、豪州、ニュージーランド、米国にとって、南アジア、東南アジア諸国におけるインフラ支援から、大きな利益を得ることができる。それは、これらの諸国を対中国依存から解放し、生産活動を友好的なサプライチェーンに多様化してゆくことである。

 蔡英文政権自身、台湾が中国との間の貿易・投資の対中依存度を下げる方向で、台湾企業を中国から東南アジアへ移行させるという、いわゆる「南向政策」を進めてきてからすでに数年になる。しかし、数字から見る限り、台湾経済の中国依存度はその後も基本的には大きくは変わっていない。

 台湾の企業からすれば、中国の意に沿わない方針を取れば、中国がそれを利用して、台湾企業への締め付けを強化するのではないかとの警戒意識があるため、慎重にならざるを得ない面があるのだろう。かつて陳水扁・民進党政権下で、当時中国に進出していた台湾の「奇美企業」が「台湾独立派」であるとして、中国での営業活動から排除されようとしたことがある。このケースは台湾の関係者の記憶にはいまだ鮮明に残っているようだ。

 ただし、台湾の企業自身が中国市場への依存度を徐々に減らしていくためにも、「南向政策」を続け、米国と一緒になって、対アジア・太平洋政策を促進することは、中国の拡張主義を抑止するための安全保障上の重要な手段であることに変わりはなく、今日、台湾内部においてもそのような見方が強まっていると言って良い。

 米台間のさらなる緊密化は日本にとっても、懸案となっているTPP(環太平洋経済連携協定)への台湾加入を促進する良い機会となろう。最近は、中国自身がTPPに加入することについて意欲を示し始めたが、これは、米国の政権交代や、台湾のTPP加入の可能性等に対する警戒感や牽制から出ているのではないかと思われる。

【私の論評】英台を速やかにTPPに加入させ、中国が一国二制度を復活し香港を元に戻すなら香港を加入させよ!

菅義偉首相は11日のインターネット番組で、中国や韓国による環太平洋経済連携協定(TPP)への参加の可能性について慎重な見方を示しました。「参加11カ国の了解がなければ簡単には入れない」と述べました。

APECの関連業にあてた菅総理のビデオメッセージ

菅義偉首相は先月20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連行事「CEO(最高経営責任者)との対話」にビデオメッセージを寄せ「環太平洋経済連携協定(TPP11)の着実な実施と拡大により、アジア太平洋自由貿易圏の実現を目指す」と呼びかけました。

TPPが他の枠組みより高い水準のルールの順守を要求することを踏まえ「大きなハードルがある。戦略的に考えながら対応する」とも語りました。

中国は今のままだと、TPPに加入できません。現在無理に入ろうとすれば、TPPに加入するために、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現しなければなりません。これをすれば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊します。

そのようなことは、最初からわかりきっているのに、なぜTPPに入ろうとするのかといえば、結局のところTPPのルールを中国にも入りやすいように変えて、自由貿易の美味しいところだけをつまみ食いしようという魂胆でしょう。

しかし、日本をはじめ他のTPP加盟国もこれに与することはないでしょう。中国ができるとすれば、一国二制度を復活して、香港を元の状態に戻し、その上で香港をTPPに加入させるということならできるかもしれません。

中国が間接的にでも、TPPに加盟したいなら、このくらいしか方法はないでしょう。それに、TPPの現在の加盟国も、香港を元の状態に戻してその上で参加するか、それこそ大陸中国本土が香港のようならなければ、加盟を許すべきではありません。

厄介なのは、TPPに入る意向をみせた中国に追随する韓国です。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を検討すると表明しました。

文在寅韓国大統領(左)、習近平中国主席(右)

これまでの韓国の通商交渉は、2国間の自由貿易協定(FTA)中心だでした。これは相手国を選び、対象をモノの関税だけに限定するというスタイルです。

韓国の2国間FTAの相手国をみると、米国、欧州連合(EU)、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ベトナム、中国などです。TPP締結国11カ国のうち、日本とメキシコを除く9カ国とFTAを締結しています。

韓国は今まで2国間FTAで日本を避け続けてきたのは明白です。もし、韓国と日本がFTAを締結すれば、韓国の産業構造は日本と似ており、両国で関税を互いに引き下げた場合、大量の日本製品が韓国に流入し、韓国内の産業を毀損することを韓国が恐れたためでしょう。

日本が入っているTPPに韓国が入れば同じことが起こります。だからこそ、韓国は最近まで、TPPに加入する気はなかったのでしょう。

さらに、TPPでは加入国の国有企業改革が求められますが、韓国には未だ韓国電力公社、韓国石油公社などの政府系企業が存在しており、TPPに加入すれば大きな影響を受けることは必至です。さらにコメの自由化を求められるます。

そのため、韓国はTPPに参加せず、中国とのFTAを優先しました。韓国がTPPに参加しなかった表向きの理由は、中国とのFTA交渉のために実務的にできなかったというものでした。実際、朴槿恵(パク・クネ)政権の時、TPP交渉が行われている間、韓国は中国とのFTA交渉に没頭していました。

そのあたりから、韓国の中国従属スタイルが強化されていきました。その中国がTPPに参加できないこともあり、中国を意識して韓国はTPPを加入しなかったという背景もあるでしょう。

日本はどう対応すべきかといえば、あくまで中韓が今のTPPルールを守るなら両国を拒む理由はありません。

ただ、先に述べたように、中国は今のままだとTPPには加入できません。韓国も相当ハードルが高いです。とはいいながら、中国よりは入りやすいです。

であれば、先程も述べたように、中国に対しては一国二制度を復活して、香港を元に戻せば、香港の加入を審査するものとして、中国が一国二制度を破棄する行動にでれば、香港の加盟をすぐにも取り消す旨を伝えるべきでしょう。それができないというのなら、中国不参加となっても良いでしょう。

韓国も相当ハードルが高いはずですから、ルールが守れないというなら不参加で良いでしょう。

そのようなことよりも、上の記事にあるよに台湾の参加を優先すべきです。そうして、現在EU との通商交渉が「合意なき離脱」になりそうな、英国のTPP参加も優先すべきです。

蔡英文台湾総統(左)とボリス・ジョンソン英首相(右)

そうして、米国の参加も視野にいれるべきです。TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

そうして、いずれ日本はWTOにTPPのルールを元にしたルールをWTOの自由貿易のルールにすることを迫るべきです。

日本がWTOを改革のため、TPP協定の規定をWTOに採用するように働きかければ、元々オバマ大統領時代に、米国がTPPを推進しようとしたわけですから、これに対して米国も賛同せざるを得ないと思います。

単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定であり、しかも自ら加入の可能性を表明した協定をWTOに持ち込むことには中国も真っ向から反対できないでしょう。

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2020年12月15日火曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!

 高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」

追加経済対策が決まった

事業費総額73兆円(財政支出40兆円)のコロナ経済対策がまとまった。筆者は、内閣官房参与でもあるので、政策決定には関与していないが、アドバイザーの立場だ。その観点から、マスコミ報道を見てみよう。

マクロ経済学では「まず規模」

日本経済新聞は、社説で「経済対策の規模が膨らみすぎてないか」という見解だ。

政府内にはいろいろな立場があるが、筆者から見れば、以下で理由を書くが、皮肉をこめていえばこれはありがたい見方だ。

日経新聞は、「無駄やばらまきを排除できたとは言い難い」といい、防災・減災事業(国土強靱化)をやり玉にあげ、「本当に必要な事業を選別したようにはみえない」としている。

公共事業が、コストベネフィット分析による費用便益費で採択されることを日経新聞は知っているのか。知らないのだろう。もし知っていれば、これまで割引率が4%と高すぎて、必要な公共事業が採択されなかったこともわかるはずだ。マスコミはこうした専門的な知見がないので、雰囲気でいい加減なことを書いている。この割引率は見直しが検討されており、今後の公共事業採択の可否を左右するものなので、日経新聞は取材して是非記事にすべきだろう。

日経新聞は社説の最後を「競うべきは『賢い支出』であって、経済対策の規模ではない」と締めくくっている。これでは、マクロ経済政策の基本がわかっていないと言わざるを得ない。

まず潜在GDPと実際のGDPの差であるGDPギャップは、内閣府の推計でも30兆円超もある。これを放置すると、半年後以降の失業率が上昇する。おそらく失業率2%程度上昇、失業者で見れば120万人程度が増えるだろう。それに伴う自殺者は6000人程度増えるだろう。それはコロナによる死者2400人の2倍以上だ。

マクロ経済政策の究極の目標は雇用の確保だ。それができれば自殺者の増加を抑えることもできる。

以上のことから、GDPギャップを経済対策の有効需要で埋めないと後で失業が増え、結果として命が失われるので、経済対策はまず規模というのが、マクロ経済学からは正解になる。日経社説を書いた人は経済学のイロハを学びなおしたほうがいい。

こうしたことから、日経社説で「大きすぎる」と批判されたのは、筆者から見れば、今回の経済対策が妥当だと評価されたようなものになる。

大量の国債発行をどう見るか

また、朝日新聞の記事では、今回の経済対策によりと大量の国債発行となることについて、「新型コロナ前から先進国で最悪レベルだった財政状況は一層の悪化が避けられない」と書かれていた。

これは間違いだ。これまでのコロナ対策では大量の国債発行がなされたが、ほとんど日銀が買い入れている。日銀買い入れ国債について利払いがされるが、それは日銀の収益になって日銀から政府への納付金になる。このため政府にとって財政負担はない。

これはやり過ぎればインフレ率が高くなるが、今のところ、コロナのためにインフレ目標には程遠い。こうした政府と中央銀行とのコラボは、日本だけではなく欧州でも行われている。

日経新聞や朝日新聞が批判的に取り上げたのは、今回の経済対策がまともだという証明だろう。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「FACTを基に日本を正しく読み解く方法」(扶桑社新書)、「国家の怠慢」(新潮新書、共著)など。

【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた
「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!

このブログでは、政府の経済対策については厳しいことも掲載してきましたが、それは菅政権による事業費総額73兆円(財政支出40兆円)のコロナ経済対策がまとまる前の話であり、さらに第二次補正予算の予備費10兆円が、つい最近まで使われず、7兆円積まれたままであることを批判したものです。

最新の報道では、政府は15日、追加経済対策を受けた2020年度第3次補正予算案を閣議決定しました。一般会計の歳出の追加額は21.8兆円で、税収減の穴埋めを含め新規国債22.4兆円を追加発行するとしています。


そうなると、真水の経済対策は約22.4兆円ということになります。高橋洋一氏は、コロナ対策には100兆円必要と語っていたことがあります。安倍政権でコロナ対策の約60兆使っていますから、菅政権ではこれに加えて、40兆使う必要があるわけです。今後来年の補正予算で、20兆くらいの真水の予算を計上すれば、経済対策としては満点になります。

これを考えると、日本の経済対策は金額的には、高橋洋一氏が語るように、まともといえます。

上の記事にもあるように、これまでのコロナ対策では大量の国債発行がなされたが、ほとんど日銀が買い入れています。日銀買い入れ国債について利払いがされますが、それは日銀の収益になって日銀から政府への納付金になります。

このため、政府にとって財政負担はありません。国債発行をし過ぎればインフレ率が高くなるるでしょうが、今のところ、コロナのためにインフレ目標には程遠いです。 

現状は、コロナショックで需要喪失なので、インフレの心配がなく、しかも通貨発行益を活用するので財政悪化もなく将来世代への心配もありません。こうした政府と中央銀行とのコラボは、日本だけではなく欧州でも行われています。 

この期に及んでも、まだ「将来世代への付け回し」というのは、呆れてしまいます。日銀以外が保有する国債についてはいずれ税金で返済するのですが、日銀が保有する国債はそうではなく、利払い負担も償還負担もありません。 

強烈なインフレにならない範囲で、国債発行という手法が使えるのです。不勉強なテレビのコメンテーターも似たような発言をしていますが、今や単なる無知をさらけ出しているだけです。

20世紀を代表する経済学者の一人であるポール・サミュエルソンは、たとえば戦時費用のすべてが増税ではなく赤字国債の発行によって賄われるという極端なケースにおいてさえ、その負担は基本的に将来世代ではなく現世代が負うしかないことを指摘しています。

なぜかといえば、戦争のためには大砲や弾薬が必要なのですが、それを将来世代に生産させてタイムマシーンで現在に持ってくることはできないからです。その大砲や弾薬を得るためには、現世代が消費を削減し、消費財の生産に用いられていた資源を大砲や弾薬の生産に転用する以外にはありません。

将来世代への負担転嫁が可能なのは、大砲や弾薬の生産が消費の削減によってではなく「資本ストックの食い潰し」によって可能な場合に限られるのです。

このサミュエルソンの議論は、感染拡大防止にかかわる政府の支援策に関しても、まったく同様に当てはまります。政府が休業補償や定額給付のすべてを赤字財政のみによって行ったとしても、それが資本市場を逼迫させ、金利を上昇させ、民間投資をクラウド・アウトさせない限り、赤字財政そのものによって将来負担が生じることはありません。

ノーベル賞を受賞した経済学者ポール・サミュエルソン氏

そして、世界的な金利の低下が進む現状は、資本市場の逼迫や金利の高騰といった経済状況のまさに対極にあるといってもよいです。それは、政府が感染拡大防止のために実施した経済的規制措置によって生じている負担の多くは、将来の世代ではなく、今それによって大きく所得を減らしている人々が背負っていることを意味します。そうした人々に対する政府の支援は、まさしくその負担を社会全体で分かち合うための方策なのです。

こうしたノーベル賞を受賞した経済学者であるサミュエルが、赤字財政そのものによって将来負担が生じることはないと述べ、事実米国のトランプ大統領が大規模な赤字財政を実行して、米国人の赤字財政に関する考えを変えてしまいました。

トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれないです。それは、財政赤字に対する米国人の常識を覆した、ということです。

トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませました。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけています。

これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずでした。しかし、現実にそのようなことは起こっていません。トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしたといえます。


米国では連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えています。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張です。

このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起すこともなく、結局将来世代へのつけともならないでしょう。

ましてや、日本の場合は、デフレ傾向にあるのですから、インフレには程遠く、この状況を改善するには、国債を大量に発行して、感染対策にどんどん使うべきなのです。物価目標2%を超えるまで実行すべきなのです。そうして、日本は負債だけをみるのではなく、政府資産もみれば、トータルではさほど酷い財政赤字ではないのですから、なおさらです。統合政府(政府に日銀も含めた場合の政府)ベースでは、2018年くらいから、財政赤字どころか、黒字になっているくらいです。この状況は、米国や英国などよりも良い状況です。

大量の国債発行が将来世代への付け回しと主張する方々は、是非ともその内容を論文にでも書いて発表していただきたいです。これがノーベル賞委員会に受理されれば、サミュエルソンをはじめとする多くの経済学者の過ちを覆し、ノーベル経済学賞を受賞できます。日本では、未だ経済学賞の受賞者が出ていないので、日本からそれを出すという意味あいでも是非とも実行してみてください。無論これは、皮肉ですが・・・・・・

このブログでも何度か主張してきましたが、今回の戦後最大の危機のときに、今こそ大規模な積極財政と金融緩和をしなければ、大量の失業者や自殺者を出すことになり、その悪影響は長期にわたって続くことになり、それこそ将来世代に対してつけを回すことになります。

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