2021年4月22日木曜日

玉川徹氏が指摘 ワクチン接種の遅れは「厚労省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」―【私の論評】現時点で国内でのコロナ禍を理由にオリンピック開催中止を声高に叫ぶ必要はない(゚д゚)!

玉川徹氏が指摘 ワクチン接種の遅れは「厚労省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」

テレビ朝日本社

 19日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜・午前8時)では、遅れがちの新型コロナウイルスのワクチン供給について特集した。

  コメンテーターで出演の同局・玉川徹氏(58)は「日本がなぜ先進国の中でここまで最低レベルのワクチン接種に甘んじているかと言ったら、厚労省が及び腰だったからじゃないですか」と指摘。その上で「他の国は戦略的に情報提供とか、オカネの面も含めて、どんどんワクチンを確保するんだって早い段階で動いていったわけでしょ。日本はそれをやらなかった結果として、これだけ遅れているんですよ」と続けた。

  さらに「ワクチンに対して後ろ向きというか、ワクチンで起こる副反応に対して、責任を取りたくないんですよ、厚労省は。自分たちが責任を負わされるのがイヤだって」と指摘していた。

【私の論評】現時点で国内でのコロナ禍を理由にオリンピック開催中止を声高に叫ぶ必要はない(゚д゚)!

玉川氏

玉川氏は、過去にも「コロナ検査においては偽陽性などない」という発言を同じ番組の中でしていました。このブログにも掲載したように、PCR検査においては、陽性と判定されたもののうち、本当に陽性である確率は上限で7割だとされています。

そうであれば、残りの3割は偽陽性であり、専門家もそのように語っています。玉川氏の発言は虚偽であるということになります。

このような明らかな虚偽を語った玉川氏にその後もコロナ感染についてコメントさせているのは、明らかにテレビ朝日の不手際です。

今回の、ワクチン接種の遅れは「厚労省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」というコメントも何の裏付けもなく語っています。玉川氏には、官僚の心を読むことのできるいわゆるテレパシー能力でもあるのでしょうか?

日本のワクチン接種率は世界の中でも低いのですが、それは日本の感染率が他国に比較すると、低いからです。感染症対策として、ワクチン接種を感染率の高い地域、国から最初に多めに実施し、その後に感染率の低い国で実施するというのが当然の流れです。

それを無視して、日本が金をものをいわせて、世界中からワクチンをかき集めて、日本だけを優先して、接種を早めに実施すれば、世界中から非難を浴びることになります。

高橋洋一氏は、ワクチン回数と、感染者数と間の強い相関関係を指摘しています。

具体的には、データ入手可能な84ヶ国のこれまでのワクチン接種回数とこれまでの感染者数(ともに人口当たり)をみると、相関係数は0.73もあったというのです。感染者が多い国ほどワクチン接種回数が多いのです。

相関係数とは、相関関係があるかないかを示す指標であり、1が最大であり、1だと完全に相関していることになります。これが、0.6以下だと相関しているとは言い難いですが、0.7以上なら相関関係にあるといえます。

高橋洋一氏は、実際にこれをブロットしたグラフをツイッターに公開しています。


感染を加味して順位を出すと世界の中で平均的になります。これについて高橋氏は以下のように語っています

 感染の度合を加味して、より多くワクチン接種が行われているかを見てみよう。実際のワクチン接種状況(百人当たり)と平均的なワクチン供給(百万人当たりの感染者数に0.0004を掛けた数)の差を見て、これがプラスならばワクチン接種が多い国、これがマイナスならばワクチン接種の少ない国とみよう。すると、イスラエルは81、日本はゼロとなった。

   このコロナ感染を補正しない人口百人あたりのワクチン接種回数でみると、データ入手可能な世界84ヶ国で日本は71位、OECD諸国31ヶ国で最下位31位だった。しかし、補正した数字では、世界84ヶ国で日本は45位、OECD諸国31ヶ国で19位である。

   褒められた順位ではないが、先進国では真ん中の少し下、世界ではほぼ真ん中だ。新型コロナ感染に応じた平均的なワクチン接種であり、カネにものを言わせて集め批判を受けることもなく、あくまで日本らしく控えめではないだろうか。

   こうしてみると、オリンピック中止という議論にはとてもならないだろう。

結局マスコミはコロナ感染で煽りたいだけなのです。このブログでも以前指摘したように、ワクチンの副反応を散々煽ってきました。そのような過去があるのに、玉川氏の語るように「厚労省が及び腰」という言い方はまさに煽りの典型です。これは、典型的なマッチポンプです。

現状は、マスコミが過去にワクチン接種副反応を煽ったために、日本ではかつては普通に行われていた、集団接種ができなくなって、今回のコロナ禍において、自治体にコロナ集団接種のノウハウがなく困っているという状況です。

オリンピックに関しては、日本国内のコロナ禍を理由に開催しないということになれば、国際的にみれば、非常に不可思議ということになるでしょう。なぜなら、日本の感染者数は100万人あたりの感染者数でみれば、桁違いに少ないからです。

以下は、高橋洋一氏が作成したイギリスと日本の新規感染者数を比較したグラフです。


グラフでみると、確かにイギリスのほうが少ないですが、ただし、イギリスの人口は日本よりも少なく、約半分です。それを紙すると、イギリスのほうが若干多いくらいです。

イギリスは、ワクチンを早めに打って、いまの状況です。これだけ元々感染者数が少ない日本では、これから本格的にワクチンを接種し始めれば、オリンピック開催のころには更に感染者が減ることになります。

であれは、オリンピック開催は日本国内の感染で不可能とするには、あまりに感染者数が少ないということで国際的には奇異なことと受け取られるのではないでしょうか。

無論、他国からコロナ患者が入ってくることを恐れるというのであれば、国際社会にも受け入れられる可能性はあるかもしれません。ただし、IOCはどう受け止めるでしょうか。IOCはどちらかというと、オリンピックを開催したいと考えていますし、それに多くの人は忘れていますが、IOCの決定ではなく日本がオリンピック中止を決定した場合、多額の賠償金が生じます。

以下は、現在までのコロナワクチン投与数の推移を示したグラフです。


先に、自治体にコロナ集団接種のノウハウがなくなっているとしましたが、このノウハウが急速に蓄積されて、これから幾何級数的に投与が増えていくと思います。そうなると、感染者数もおのずから減っていくはずです。

各自治体は、ワクチン投与の良い事例に関しては、積極的に他の自治体に知らせるべきです。そのようなシステムを構築すべきです。それが、ノウハウの蓄積に大いに役立つはずです。

今から、オリンピック開催中止を声高に叫ぶ必要など本当にあるのでしょうか。

菅義偉首相は20日夜、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を東京都に発令した場合、東京オリンピックの開催判断に影響するかどうかを問われ、「オリンピック(への影響)はないと思っている。安全・安心な大会になるように政府として全力を挙げていきたい」と述べました。首相官邸で記者団に答えました。

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2021年4月21日水曜日

日米が楽天グループを監視 中国企業株主で両国の情報流出を警戒 共産党の意向強く…経済的恩恵だけ享受はもはや通用せず―【私の論評】日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動をする楽天(゚д゚)!

日米が楽天グループを監視 中国企業株主で両国の情報流出を警戒 共産党の意向強く…経済的恩恵だけ享受はもはや通用せず


 日米両政府が、経済安全保障の観点から楽天グループを共同で監視する方針を固めた。中国IT大手の騰訊控股(テンセント)子会社が3月に大株主となったことで、日米の顧客情報が中国当局に筒抜けになる事態を警戒しているという。

 携帯電話事業参入で財務が悪化した楽天は日本郵政などを引受人に総額2423億円の第三者割当増資を実施。テンセント子会社は657億円を出資し、3・65%を保有する大株主となった。

 外為法では安全保障にかかわるサイバーセキュリティーや通信などの分野で外国の企業と投資家が国内企業に1%以上出資する際、事前届け出を求めている。資産運用目的で経営に関与しない「純投資」の場合は免除する仕組みで、楽天はテンセントの出資を純投資と説明する。

 だが、日本政府は楽天が米国でもネット関連事業を手掛け、米政府が自国民の情報流出リスクを懸念する事情も考慮。テンセントによる経営関与の有無や楽天の情報管理の実態を継続的にチェックし、米当局と随時意見交換する方針だ。

 テンセントは中国を代表するITグループで、ゲームや通信アプリ「微信(ウィーチャット)」などを手掛けるが、中国当局は自国のIT大手への統制を進めている。

 中国と覇権を争う米国も中国ハイテク企業への締め付けを強めており、日米首脳会談でも経済安全保障が議題となった。

 共産党の意向が強い中国では、経済活動に大きなリスクがつきまとう。政治問題に耳をふさいで経済的な恩恵だけを享受するやり方は通用しなくなっている。

 楽天グループは「テンセント子会社の出資は純投資であり、業務での協力を前提としたものではない。楽天の経営、ガバナンス、データに関与するものでは全くない。楽天と株主の間で情報は遮断され、特段懸念されるような事態は生じない」とコメントした。

【私の論評】日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動をする楽天(゚д゚)!

楽天グループを巡る「監視」が強まっています。共同通信は20日、楽天が中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)子会社から出資を受けた点について、日米両政府が共同で監視していく方針を固めたと報じました。この一報を受け、21日の東京株式市場では楽天株が一時前日比約6%下落しました。

日本政府は、通信事業を営み、莫大な個人情報を持つ楽天に対してテンセント子会社が出資する問題点に対して、きちんと対応する姿勢を見せるべく、共同監視の方針を打ち出したのでしょう。ただ、監視といっても日本側が「聞き取り」をして、それを米国と共有するスキームだといいます。

テンセント本社

米国では対米外国投資委員会(CFIUS)に、米国企業の買収や株式取得が安全保障に与える影響を調査する権限が与えられています。ところが、日本政府がそれをチェックする手段を持っていません。企業が必ず真実を語る性善説のうえに成り立つもので、プレッシャーにはなるものの、本質的な監視になるのか疑問符がつきます。

ただ、米国は国債金融を牛耳っているので、資金の流れを監視できますし、さらに高度なインテリジェンス能力を持っているので、様々な情報を得ることができます。これは、米国ではなく日本は日本政府にとって得られるものが多い共同監視ということができます。

楽天には、もう1つの監視が強まりつつあります。

それが、財務の健全性への監視です。

総務省は14日、高速・大容量通信規格「5G」向けの追加電波を、楽天モバイルに割り当てると発表した。東名阪エリアを除く全国において1.7GHz帯の基地局を開設できるようになる。地方での通信エリア拡大が期待でき、大手3社に比べて脆弱な楽天の通信環境の改善が見込まれます。

楽天にとっては悲願の割り当てです。ただ、認可にあたっては12の条件が課せられています。その1つに「設備投資及び安定的なサービス提供のために必要となる資金の確保、その他財務の健全性の確保に努めること」があります。

認可の条件に財務の健全性の確保が明記されているのです。これは2018年4月に楽天モバイルの参入を認めた際にもついた条件です。モバイル通信はライフラインの1つとなりました。インフラ事業を営むにあたり、資金難となって突然サービスを停止されては困るからです。

財務の健全性を示す指標の1つに自己資本比率があります。楽天の自己資本比率は20年末時点で4.86%でした。金融事業を抱えるため低くなるのは仕方がない部分もありますが、16年末の14.82%や19年末の8.03%と比べると、低下が著しいです。楽天はモバイル事業への投資がかさみ、前期に1000億円超の最終赤字となりました。今期もモバイル事業での投資を継続し、赤字の公算が大きいです。

  楽天グループ連結経営指標等(国際会計基準) クリックすると拡大します

楽天は4月19日、外貨建てでの永久劣後債の発行を決めたと発表しました。ドル建てが総額17億5000万ドル(約1900億円)。ユーロ建ては10億ユーロ(約1300億円)で、発行総額は約3200億円となります。一度の起債では同社の過去最大規模です。

劣後債は、償還や発行体の解散または破綻時に他の債務への弁済をした後の余剰資産により弁済される債券である。 このため、普通の債券による資金よりは株式発行などにより得られる自己資本に近い性格の資金となる。 そのため、通常は同じ会社が発行する普通の債券よりも高い金利が設定される。

ただ、格付け会社からの格下げリスクは抑えられるメリットもあります。また楽天グループは国際会計基準を導入しているため、永久劣後債で調達した資金を全額資本として扱えます。自己資本比率の改善にもつながります。

3月には冒頭で扱ったテンセント子会社や日本郵政などから総額2400億円の出資を受け入れました。矢継ぎ早に資金調達に走る背景には、財務の健全性を確保しつつ、モバイル事業のインフラ投資を加速する狙いがあります。

一方でまだ足りないとされている、数千億円をどう調達するかが課題です。楽天が非金融事業で稼ぐ営業キャッシュフローよりもモバイル事業の設備投資が大きくなり、その赤字額は「2年で1兆円」ともいわれています。劣後債の発行や第三者割当増資で6000億円弱を調達したのですが、その差である4000億円強をどう調達するかが課題なのです。

また、楽天モバイルは20年4月から今年4月まで、「1年間無料」とするキャンペーンを実施したため、モバイル事業の赤字は続きます。この4月からは、1年間無料だったユーザーの期限が終わり、有料へと切り替わるタイミングが始まっています。

楽天モバイルの売りの1つが、「いつでも解約、解約金は不要」というものです。いわゆる「2年縛り」のように、期間中に解約した場合の違約金も発生しないのです。ユーザーにとってはメリットがありますが、楽天からすればいつでも解約されるリスクでもあるのです。競合が20GBで約3000円という新料金プランを3月に始めており、楽天モバイルの競争優位性は低下しています。

楽天モバイルでの収益化が難しい中で、いかに資金を確保するのでしょうか。おそらく保有する海外株式の売却や傘下のフィンテック企業のIPO(新規株式公開)を用いるのではないかと考えられます。IPOは準備に時間がかかるため容易ではないですが、対応策を示さなければ格下げリスクが高まってしまうことになります。

もう一つ問題があります。それはクリーンネットワーク計画への対応です。

昨年8月5日、米国務省のマイク・ポンペオ長官は「米国の資産を守るためのクリーンネットワーク計画の拡大を発表する」という声明を発表しました。実はこの計画は突然湧いて出たものではなく、4月に発表された「クリーンパス・イニシアチブ」という、米国の5GインフラからファーウェイやZTEといった中国の通信企業を排除しようと再確認する取り組みが発展したものです。

クリーンパス・イニシアチブを発表したポンペオ国務大臣(当時)

クリーンネットワーク計画は、「中国共産党のような悪意ある攻撃者による執拗な侵入工作から、国民のプライバシーや米企業の最も機密性の高い情報を守るためのトランプ政権による包括的な取り組み」だと発表されています。この計画では、通信やテクノロジーのインフラを守るための5つの分野を指定しています。

まずは、「クリーンなキャリア」を標ぼうして、通信ネットワークが「信用ならない中国」の企業とつながらないようにすることを確認するといいます。さもないと、米国の安全保障への脅威になるからです。

2つ目は「クリーンなストア」。スマートフォンなどでアプリを入手するストアから中国製のアプリを排除します。中国製アプリはプライバシーを危険にさらし、ウイルスだけでなくプロバガンダや偽情報をばらまきます。スマホなどのデバイスから、個人や企業の貴重なデータが盗まれると、中国政府の利益になりかねないからです。

3つ目は「クリーンなアプリ」。中国のスマホメーカーは信用ならないアプリをスマホなどにプリインストールしたり、ダウンロードさせようとします。国務省によれば「中国政府による監視活動の手先であるファーウェイ」は、米国や他の国の先端企業のイノベーションを利用しており、そうした企業はファーウェイ製スマホなどのアプリストアから自分たちのアプリを撤退させるべきだと主張。さもないと、中国の人権蹂躙活動の片棒を担ぐことになると訴えています。

4つ目は、「クリーンなクラウド」です。中国製のクラウドサービスに対するけん制です。米国民の貴重な個人情報や、新型コロナのワクチン研究などを含む企業の知的財産が、敵対国家である中国のアリババやバイドゥ、テンセント、チャイナテレコム、チャイナモバイルといった企業のクラウドシステムで保存されたり処理されたりするのを防ぐ必要があると主張しています。さもないと、クラウドから中国政府などに情報が盗まれるというのです。

最後は、「クリーンなケーブル」です。インターネットの大半は、陸上や海底に設置された光ケーブルでデータを運ぶのですが、中国共産党はそうしたケーブルからとんでもない規模でスパイ工作を行って情報を獲得しています。世界中の大陸間を走る海底ケーブルから情報が盗まれないよう国外の同盟国と警戒を続けると述べています。

これらが、トランプ政権のクリーンネットワーク計画です。米国で禁止される方向で進んでいたTikTokやWeChatへの強硬姿勢も、まさにこの流れから出てきたものです。要するに、今後はこれまで以上に範囲を広げて中国企業などを締め付けていこうという意思表明なのです。

そうして、このクリーネットワーク計画は、バイデン政権にも引き継がれています。そしてこれに、既に述べた5Gなどの「クリーンパス・イニシアチブ」を加えることで、米政府の中国企業排除「クリーンネットワーク計画」が完全なものになります。

ちなみに米国務省は、これらの主張をクリアしたクリーンな通信企業を合わせて公開しました。その中には、日本からは、NTTやKDDI、楽天、ソフトバンク、NEC、富士通も含まれていました。

また英国やチェコ、ポーランド、スウェーデン、エストニア、ルーマニア、デンマーク、ラトビア、ギリシャなどが、ファーウェイよりもスウェーデンのエリクソンを優先的に導入すると約束していると発表しました。これらの国が、米国の中国企業排除に賛同しているということです。

楽天は愚かだと思います。新たなネットワーク構築するので、中国抜きのクリーンネットワーク作りやすい環境にあったのにもかかわらず、わざわざ中国を引き入れたのです。これで、米国からは楽天は「クリーンネットワーク計画」におけるクリーンな通信企業のリストから除外されたでしょう。

古いネットワークを用いる場合には、最初から中国のものを用いないことを前提とはしていないので、どこに中国のものが使われているかを確認した上で、それを排除し、さらに中国とは関係のない企業のものと交換しなければなりません。これには、膨大な時間とコストを要します。

日米政府による監視と財務の健全性の確保。強まる監視網に対し、楽天には丁寧な説明が求められています。そうでないと、クリーンネットワークとは認められないでしょう。

楽天では、法務部は機能しているのでしょうか。日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動していますが、これでは国内では上場を廃止されたり、米国から報復される可能性もでてきたといえます。

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2021年4月20日火曜日

中国爆撃機10機超、9時間にも及ぶ爆撃訓練…台湾への攻撃力アピールか―【私の論評】中国が台湾侵攻のため航空機を派遣すれば、甚大な被害を被る(゚д゚)!

中国爆撃機10機超、9時間にも及ぶ爆撃訓練…台湾への攻撃力アピールか

空軍の爆撃機「轟(H)6」

 中国軍で台湾を管轄する東部戦区は20日、空軍の爆撃機「轟(H)6」10機以上が最近、連続9時間に及ぶ爆撃訓練を行ったとSNS上で伝えた。中国は日米首脳会談の共同声明で台湾問題が明記されたことに反発しており、台湾への攻撃力を誇示する狙いがあるようだ。

 中国東部の軍用空港を離陸後に編隊飛行し、敵地と想定した訓練場に爆弾を投下した。香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、訓練場は内陸部の青海省にあるという。

 H6は対地・対艦ミサイルを搭載でき、台湾有事の際は台湾本島の攻撃を担うとみられている。

【私の論評】中国が台侵攻のため航空機を派遣すれば、甚大な被害を被る(゚д゚)!

台湾国防部(国防省)によると、中国軍機延べ20機が3月26日に、台湾の設定する防空識別圏に一時侵入しました。これだけの数の中国軍機が1日に侵入するのは異例。台湾側は空軍機を緊急発進(スクランブル)させました。

侵入が確認されたのは、戦闘機「殲16」10機、「殲10」2機、H6K爆撃機4機など。一部はバシー海峡上空を太平洋方向に飛行し、中国側に戻った軍用機もありました。最近では、今回の中国による爆撃訓練も含めて、このような中国による台湾への挑発が目立つようになりました。

日本のマスコミは、中国軍機が台湾の領空なとに侵入したことのみを報道し、台湾のこれに対する対抗手段などほとんど報道しません。そのため、多くの人は、台湾が簡単に中国に打ち負かされてしまうと思ってしまうことでしょう。これでは、バランスを欠いていると思いまます。そのため、本日は台湾の防空体制に関することを掲載しようと思います。

台湾への中国軍機による侵入が頻繁に行われている最中に、台湾国防部は3月31日、今年生産予定の地対空ミサイル「天弓3型」23基が全て完成したと明らかにした。また、中国からの威嚇に対抗するため、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の改良型「PAC3-MSE」の調達を決めたと発表した。2026年までに配備を完了させる見通しだとしています。

2007年10月10日のパレードで撮影された「天弓3」の写真

以下に、天弓3型ミサイルの性能を示した表を掲載します。

性能緒元(「天弓3型」ミサイル)
全長7m
直径46cm
重量1,635kg
弾頭重量不明(HE 着発/近接信管)
最大速度マッハ4.5
最大射程200km以上
最大射高25,000m
誘導方式中間誘導:慣性+指令誘導(修正)
  終末誘導:アクティブ・レーダー誘導


天弓3型は政府系研究機関、国家中山科学研究院(中科院)に生産を委託し、2015年から2024年まで製造されていすま。総予算は748億台湾元(約2905億円)超。蔡英文(さいえいぶん)総統が2019年1月に中科院を視察した際、天弓3型と対艦ミサイル「雄風3型」の生産を加速させるよう求めていました。

国防部は2007年から2021年までを期間とした「PAC2性能向上・PAC3調達」計画に関し、2017年にPAC3 の配備が完了したことも合わせて明らかにしました。

「天弓3号」の性能などの詳細については以下のサイトをご覧になってください。
「天弓3型」長距離地対空ミサイル
2007年10月10日のパレードで撮影された「天弓3」用の4連装ランチャーの写真

今回の爆撃機「轟(H)6」は、ソ連のTu-16を中国が国産化したものです。Tu-16は1940年代後半から開発が開始され、1952年に初飛行し、1954年には実戦配備が始まったものです。

当然のことながら、Tu-16にはステルス性が全くありません。そのため、この爆撃機が台湾を爆撃したり、ミサイル攻撃しようとしても、台湾側にすぐに察知され、「天弓3型」などのミサイルや、台湾空軍のF-16戦闘機等に撃墜されてしまうことになります。

ただし、このような古い爆撃機でも、役にたちます。それは、米軍のB-52爆撃機が現在でも現役で活躍しているのと同じ理由です。

たとえば、ミサイルや戦闘機を持たない、あるいはあったにしてもあまりないような脆弱な相手を攻撃するときです。あるいは、相手がミサイルや戦闘機を所有していても、こちら側が制空権を握った場合です。

現代の航空戦で雌雄を決するのは、ステルス戦闘機でしょう。米軍にはF-21やF-35のようなステルス戦闘機があり、それらが敵の戦闘機や、地対空ミサイルなどを駆逐してしまえば、その後にはB-52のような大型爆撃機で陸上や海上の目標を攻撃するほうが効率的ですし効果的でもあります。

そうして、中国にもステルス戦闘機があるとされています。ところが、このステルス性とやらが、かなり怪しいことがわかっています。

特殊加工が施されたステルス機は通常、レーダーでは探知が困難とされます。しかし、チベットで飛行訓練していた中国人民解放軍の最新ステルス戦闘機は、インド軍のレーダーによって探知されていたことが明らかになっています。軍事情報サイト・インド国防研究所(IndianDefenceReseachWing)が2018年5月20日に報じています。

報道によると、インド空軍は、中国軍ステルス戦闘機「殲20(J-20)」がチベット自治区空域を飛行訓練していたのを確認し、インド空軍のSu-30を出動させ追跡しました。すると、Su-30はJ-20をレーダーで捉えることができたというのです。

殲20(J-20)

インド空軍指揮官ArupShaha氏は「中国のJ-20にステルス性(隠密性)は全くない。特別な技能を使わずに通常のレーダーで探知できる」と同メディアに語りました。

中国国営メディアは、J-20はチベットで飛行訓練を行っておらず、「中国脅威論」に基づく捏造だと主張しました。

いっぽう、フランス国営RFIによれば、2018年の初めに発行された中国人民解放軍報には、運20、殲20、殲10などの軍機は「高原地区」で離着陸訓練を行う予定であると明記されていました。

中国のJ-20は、2002年に成都飛機公司所研が開発をはじめました。レーダーに検出されにくい特殊な外装で、ミサイルを搭載できる第五世代ステルス戦闘機として製造されました。2017年3月に正式に就役しました。

米軍では早くから、その性能に疑問を呈していました。米空軍のデービッド・ゴールドフェイン参謀総長(大将)は、2016年8月、米国防省で開いた会見で、J-20の能力は米軍の最新ステルス機と「比較する意味もない」と一蹴。30年前に発表された米国ステルス戦闘機F-117程度だと明かしました。

これが本当だとすれば、中国が台湾を攻撃しようとして、台湾に戦闘機と、爆撃機を派遣したとしても、中国の戦闘機は爆撃機を支援できません。

戦闘機も爆撃機も天弓3型ミサイルなどに撃墜されることになります。無論台湾が所有する地対空ミサイルの数を超えて、中国側がいくら犠牲を払ってでも、航空機を派遣してくれば、台湾もミサイルがつきて対抗できないことにもなるかもしれません。

しかし、台湾の地対空ミサイルは「天空3型」だけではありません。「天空2型」「天空1型」もあります。全部でどれだけの数があるのかはわかりませんが、いずれにしても、台湾を攻撃する航空機は甚大な被害を受けるのは確実です。

そのようなことは、中国側としても理解しているのでしょうが、このような演習とともに領空侵犯等を頻繁に繰り返すことにより、台湾が折れてくることを狙っているのでしょうが、台湾にはそのようなつもりは全くないようです。


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2021年4月19日月曜日

日米首脳共同声明で追い詰められた中国が、どうしても潰したい「ある議論」―【私の論評】小型原発を輸出しようという、中国の目論見は日米により挫かれつつあり(゚д゚)!

日米首脳共同声明で追い詰められた中国が、どうしても潰したい「ある議論」

処理水海洋放出の批判ともリンクする
 中国にとって最もイヤな声明

4月16日の日米首脳共同声明において、以下のような文言が盛り込まれた。
日米両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する。
日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。
日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。
日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。
日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。
安全保障における中国に対する日米の姿勢は明快だ。これについて、各紙の社説は以下のとおりだ。
朝日新聞「日米首脳会談 対中、主体的な戦略を」
https://www.asahi.com/articles/DA3S14875083.html
毎日新聞「菅・バイデン会談 問われる日本の対中戦略」
https://mainichi.jp/articles/20210418/ddm/005/070/010000c
読売新聞「日米首脳会談 強固な同盟で平和と繁栄導け」
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210417-OYT1T50342/
日経新聞「日米同盟の深化で安定と発展を」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK171ZV0X10C21A4000000/
産経新聞「日米首脳会談 「台湾」明記の意義は重い 同盟の抑止力高める行動を」
https://www.sankei.com/column/news/210418/clm2104180002-n1.html
東京新聞「日米首脳会談 米中との間合いを測れ」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/98895
各紙と中国との距離感により、日米首脳共同声明の評価が違っているのは興味深い。読売、産経は評価し、朝日、毎日、東京は評価せず、日経はその中間だ。


いずれにしても、これまでの日米首脳会談と比べても、中国には最もイヤなものだろう。なにしろ、中国が核心的利益として国家戦略に取り込んでいた新疆ウイグル自治区、南シナ海、香港、台湾、尖閣のいずれについても、日米は批判したからだ。

 人民日報での扱いは意外と小さいが

さっそく、中国は激しく反応した。まず、在米中国大使館は16日「中国の根本利益に関わる問題で、干渉することは許されない」とし反発した。中国外務省は17日内政干渉と反発し、強い不満と断固反対と表明した。

ひょっとすると対抗措置があるかもしれない。ただし、共産党機関紙・人民日報の扱いは、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出方針を批判する論評よりも小さかった。

また、経済面においても「日米両国は、二国間、あるいはG7やWTOにおいて、知的財産権の侵害、強制技術移転、過剰生産能力問題、貿易歪曲的な産業補助金の利用を含む、非市場的及びその他の不公正な貿易慣行に対処するため引き続き協力していく」とし、中国の台頭を許さないとの意図が明確だった。

気候変動では、「日米両国は、双方が世界の気温上昇を摂氏1.5度までに制限する努力及び2050年温室効果ガス排出実質ゼロ目標と整合的な形で、2030年までに確固たる気候行動を取ることにコミットした。この責任を認識し、菅総理とバイデン大統領は、『日米気候パートナーシップ』を立ち上げた」となっている。

ここで、注目すべきは、「日米気候パートナーシップ」において、「日米両国は、気候変動対策に取り組み、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵(蓄電池や長期エネルギー貯蔵技術等)、スマートグリッド、省エネルギー、水素、二酸化炭素回収・利用・貯留/カーボンリサイクル、産業における脱炭素化、革新原子力等の分野を含むイノベーションに関する協力の強化により、グリーン成長の実現に向けて協働することにコミットする」とされたことだ。

ここで、「革新原子力」(advanced nuclear power)という概念が盛り込まれている。これは、いわゆる小型原子炉であり、現在の原発の主流である軽水炉の出力が1基当たり100万キロワット程度なのに対し、3万キロワット以下と小さい。

福島第一原子力発電所の事故は、全電源が喪失し、原子炉を冷やせなくなって、メルトダウンが発生した。しかし、小型原子炉では、冷却機能を喪失しても自然冷却による冷却が可能というメリットがある。

 中国が「潰したい」もの

小型原子炉で世界をリードしているのはアメリカだ。米国のバイデン政権はパリ協定に復帰したが、2兆ドル(206兆円)を投じる気候変動対策には原子力発電所の活用、特に小型原子炉の開発が盛り込まれている。

実は、日本もこの方向である。バイデン政権を見越して、米大統領選の直前の昨年10月26日、菅政権はギリギリのタイミングで「2050年カーボンニュートラル」を打ち出した。それを受けて、経済産業省は12月25日、カーボンニュートラルを実現するにあたって、既存の原子力発電所の再稼働と並行し、新型原子炉の開発を推進するとした。

日米欧どこでも、再生エネルギーには50~60%しか頼れない。残りの主力は原発と火力だ。カーボンニュートラルのためには火力で生じるCO2を回収・貯留する必要がありコスト高にならざるを得ない。となると、やはり原発が必要だ。

といっても、従来の大型原発の再稼働も政治的に難しく、新設は事実上不可能に近いので、いずれ減らしていかざるを得ない。その場合、カーボンニュートラルで、より安全な小型原子炉の開発が大きなカギを握るだろう。

この原子力は、安全保障とも密接に関わっている。日米間で原子力協定があるが、日本は非核保有国で唯一再処理とウラン濃縮の権利を得ている。特に再処理工場は一つでもあれば、油田一つに相当するエネルギー貢献があり、エネルギー自給率の向上に寄与する。

これを利用しない手はないが、それには、従来の巨大な原子炉ではなく、小型原子炉を活用すべきだ。

ところが、こうした話を潰そうとするのが、中国だ。

政府は、4月13日東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を決めた。中国は、日本の方針を強烈に批判し、日本の原子力政策を変えようとしている。これこそまさに内政干渉だ。その中国に、韓国も同調し、日本を批判している。

 処理水問題でわかる「中国とマスコミの距離感」

新聞各紙の社説は以下のとおりだ。
朝日新聞「処理水の放出 納得と信頼欠けたまま
https://www.asahi.com/articles/DA3S14869849.html
毎日新聞「原発処理水の海洋放出 福島の不信残したままだ
https://mainichi.jp/articles/20210414/ddm/005/070/104000c
読売新聞「処理水海洋放出 円滑な実施へ風評被害を防げ」
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210413-OYT1T50306/
日経新聞「処理水の海洋放出は地元の理解重視で」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD132J10T10C21A4000000/
産経新聞「処理水の海洋放出 「風評」に負けてはならぬ」
https://www.sankei.com/column/news/210411/clm2104110002-n1.html
東京新聞「原発汚染水 不安は水に流せない」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/97972?rct=editorial
これらを見ると、見事なほど、上に掲げた日米首脳共同声明に対する評価とそっくりだ。読売、産経は評価し、朝日、毎日、東京は評価せず、日経はその中間だ。それは、処理水の問題も、各紙と中国との距離感でその主張が自ずと決まるのだ。

この問題については、長い間検討されてきた経緯がある。その結果、昨年2月10日に資源エネルギー庁の小委員会が報告書をまとめて公表している。

この種の問題と常として、政府はこの報告書を各方面で説明している。その中には、各国の在京大使関係者も含まれている。もちろん、原発国ではトリチウムを含む処理水を放出しているので文句を言えるはずなく、「全体として、批判や抗議などはなかったという報告を受けている」と当時の菅官房長官は会見で述べた。

IAEA(国際原子力機関)も4月2日、この報告書に対しレビューを公表し、「科学的・技術的根拠に基づいている」、「技術的に実施可能」と日本の報告書を評価した。

 米韓首脳会談に一抹の不安が

福島第一原発では、「多核種除去設備」を使い高濃度の放射性物質を含んだ水を浄化しているが、トリチウムが残る。ただし、もともとトリチウムは自然界に存在し、酸素と結びつき「水」のかたちで大気中の水蒸気や雨水、海等にも含まれている。

もともと自然界にあるのものをかなりの程度希釈しておけば影響は出ない。こうした観点から、科学的に定量的な安全基準が決められている。

その科学的な話について、感情的に否定しようというのが、中国や韓国、それに国内に一部存在する政治家やメディアなどだ。

抗議した中国の報道官は、中国でもトリチウムを放出していると指摘されると、日本は福島原発事故があったから違うと気色ばんだ。これは典型的な感情であって、放射能の量の問題であって、事故があっても量が少なければ安全というのが科学的態度だ。

なお、韓国も中国に同調して日本を批判している。米国にその話をすると、当然ながら米国は取り合わなかった、一体韓国は何を考えているいるのだろうか。このままでは、来月にもある米韓首脳会談もうまくできるかどうか、他国のことながら心配になる。

一部に指摘される風評被害は、こうした感情論に起因している。感情論では、根拠なしの楽観論か悲観論になりがちで、後者が風評被害を引き起こす。この意味で、科学的でないマスコミの記事が風評被害を引き起こすとも言える。

日米首脳共同声明に戻ると、筆者は評価できるという立場だが、それはこれまでの社会科学の法則から判断している。

 やがて行き詰まる中国

これまで、本コラムでは、民主主義国は戦争しにくいと書いてきた。民主主義については、両方ともに民主主義国だと滅多に戦争しないという意味で、古典的な民主的平和論になる。

だが、仮に一方の国が非民主主義的な立ち位置を取っていると、戦争のリスクは高まり、双方ともに非民主主義国なら、戦争のリスクはさらに高まる(2015年7月20日「集団的自衛権巡る愚論に終止符を打つ!戦争を防ぐための『平和の五要件』を教えよう」)。

それと、ある一定以上の民主主義国にならないと、一人当たりGDPは長期的には1万ドルを超えにくい(2021年3月22日「米中『新冷戦』が始まった…孤立した中国が『やがて没落する』と言える理由」)。


これらから予想される近未来は、中国は民主化を否定しているので、近い将来に経済で行き詰まる。そのとき、これまでの歴史では対外進出であり、残された場所は台湾と尖閣しかない。

それに備える覚悟を示したのが、今回の歴史的と言える日米首脳共同声明だ。

【私の論評】小型原発を輸出しようという、中国の目論見は日米により挫かれつつあり(゚д゚)!

カーボンニュートラルの実現に原子力発電は欠かせません。再生可能エネルギーとして期待される太陽光発電や風力発電は出力が少なく、天候に左右されやすいからです。

その点、原子力は安定電源とされます。しかし、2011年の福島第一原子力発電所の事故を受け、大型軽水炉を増やすのは難しくなりました。かといって、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い火力発電を増やすとカーボンニュートラルの実現から遠ざかってしまうことになります。

菅政権が「2050年カーボンニュートラル」を掲げたことを受け、経済産業省は20年12月25日にその具体的な産業施策として「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表した。

その中で注目されるのが新型炉です。具体的には、[1]小型モジュール炉(SMR)、[2]高温ガス炉(HTGR)、そして[3]核融合炉、です。経済産業省は20年12月、カーボンニュートラルを実現するにあたって、既存の原子力発電所の再稼働と並行し、これら3つの新型炉の開発を推進するとしました。

3つの新型炉のうち、最も開発が進んでいるのが[1]小型モジュール炉(SMR)です。これは、文字通り小型の原子炉にモジュール化の発想を取り入れたもので、使い勝手がよく安全性も高いとされています。

現在、原子力発電所の主流である軽水炉の出力が1基当たり1GW(ギガワット)前後なのに対し、SMRは同300MW(メガワット)以下てす。

SMRはその小ささゆえ、主要な部品を工場で製造してから発電所の予定地に運び込めます。そのため、現在の原発よりも、工期の短縮や初期投資を抑えられるとの期待があります。さらに、電力需要に応じて原子炉の数を変えれば、電力出力を柔軟に変更できるというメリットもあります。

1基当たりを小型化・低出力化すると原子炉としての安全性も高まります。冒頭の高橋洋一氏の記事にもあったように、出力が小さいため冷却機能を喪失しても自然冷却による炉心冷却が可能です。

福島第一原発の事故では、津波による浸水で非常用発電機が使えなくなり、炉心を冷やす機能を失いました。出力が小さいSMRでは、こうした心配を低減できるのです。

SMRで先行するのは米国です。例えば、米NuScale Power(ニュースケール・パワー)は小型の加圧水型炉(Pressurized Water Reactor:PWR)の開発を進めています。PWRを構成する圧力容器や蒸気発生器、加圧器などを1つのモジュール「NuScale Power Module(NPM)」に収めた、いわば「一体型」の原子炉です。27年にも、米アイダホ国立研究所に発電所を建設する計画があります。

     小型モジュール炉「NuScale Power Module」
     高さ約23×直径約4.6m。加圧水型炉(PWR)を構成する圧力容器や蒸気発生器、加圧器など
     を1つのモジュールに収めている。(出所:米NuScale Power)

小型といっても、NPMは7階建ての建物と同じくらいの高さがある。とはいえ、既存の原子力発電所と比べれば、「一般的なPWRの格納容器内に120個以上が収まってしまう」(同社)という小ささです。1基当たりの熱出力は250MW、電気出力は77MW。工場では3つの部品に分けて製造し、建設地にはトラックや船舶で運び込みます。用途に応じて、最大12基までを組み合わせます。

従来のPWRと同じように、NPMは冷却材として軽水、つまり普通の水を使います。炉心で加熱された軽水は高温の高圧水となって蒸気発生器の一次側に入り、二次側に熱を受け渡します。

この二次側の熱で蒸気を作り出し、外部の蒸気タービンを回して発電します。従来の原発では、一次側の軽水を循環するのにポンプを用いています。NPMでは圧力容器内の自然対流で軽水を循環させるため、ポンプが不要となります。

そもそも、NPMはそれ自体を大きな水のプールに浸した状態で運転させるため、非常時に冷却材が不足するなどのリスクを減らせます。「冷却するのに、コンピューターや作業員による操作の他、外部からの電源や冷却材の供給を必要としない」(同社)。いわば、受動的に安全を確保できる仕組みとなっています。

同社のNPMは、水素を生産することもできます。同社は水素生産に関する最新の評価結果を発表しました。NPMモジュール1基による水素生産量は、200MWt(熱出力メガワット)の場合の毎時1667キロ(1日当たり40トン)から、250MWtの場合の毎時2053キロ(1日当たり50トン)に増加します。

均等化発電コストの低下によってコスト競争力があるとの予測も発表されました。1基のNPMで1日に50トンの水素を生産すると、天然ガスから水素を生産する場合と比べて、1日当たり約460トンの二酸化炭素(CO2)排出量を削減できます。NPMによる水素生産では、電力の一部を電気分解する水蒸気の温度上昇に使用します。

米原子力規制委員会(NRC)は2016年からNuScaleの設計認証審査を実施していますが、もし認可が下りれば、同社は初となる商業用小型原子炉の建設をようやく開始できるようになります。しかし審査プロセスは厳格であり、提出済みの技術情報を記載した申請書は12,000ページにも及びます

今年中には判断が下されるとみられています。とはいえ、同社はすでに小型モジュール炉12基で構成される発電所をアイダホ国立研究所内に建設するための認可を取得しています。早ければ2026年にも、米国西部の複数の州に電力の供給が開始される可能性があります。

小型モジュール炉は、米国の送電網に加わる“初”の小型原子炉となるかもしれないですが、それでも“唯一”の小型原子炉にはならないでしょう。米エネルギー省はマイクロ原子炉にも関心を向けているのです。これは一般的に発電出力50メガワット未満で、「プラグアンドプレイ」方式の原子炉です。

小型モジュラー炉は、工業プロセスなど大きな負荷への対処に適している。一方でマイクロ原子炉は、僻地にある軍事基地への送電やアラスカの遠隔地にある集落への電力供給の維持といった、小規模な需要に対応するうえで理想的です。将来的には都市部におけるカーボンフリーの電力源として、「オールウェイズオン(常時給電)」方式でも利用できる可能性も秘めています。

中国も小型原発の開発には、着手しています。その用途は、南シナ海において船などに小型原発を積載し、洋上で原子力発電をするというものです。これは、2016年に公表され、当時は2019年には実用化すると公表されていました。しかし、未だに実現はしていません。

ロシアの浮体原子力発電所概念図 中国はこれに似たものを南シナ海に設置することを企図している

小型原発なら、中国本土で組み立て、それを船につんで南シナ海に運び、船に設置して洋上に浮かべたまま発電できます。現在の原発のような大型なものであれば、原材料を現地に運びそれをすべて現地で組みたてることになり、とてつないコストと時間がかかります。現実的には不可能でした。しかし、小型原発でそれが可能になるのです。

中国としては、日米が小型原発で先端を行けば、様々な狂いが生じてくるのでしょう。

中国の国政助言機関である中国人民政治協商会議(政協)が2019年6月に開催した会議で、広域経済圏構想「一帯一路」に基づき今後10年間に海外30カ所に原子力発電所を建設することが可能との意見が出たそうです。

中国核工業集団公司(CNNC)の董事長(会長)を務めた王収軍常務委員は同年同月19日の会議で、中国は一帯一路がもたらす好機をフルに活用し、原子力産業を資金面と政策面でさらに支援する必要があると指摘しました。

当時政協のウェブサイトに掲載された報告書によると、王氏は「原発で『国外に打って出る』ことはすでに国家戦略となっており、原発輸出はわが国の輸出貿易の最適化、国内の高度な製造能力を自由化することに資する」と述べたそうです。

中国電力業界ニュースサイトのBJX.com.cnによると、王氏は、一帯一路の原発プロジェクトで2030年までに中国企業が1兆元(1455億2000万ドル)の利益を上げることも可能と指摘しました。

この背景には当然のことながら、小型原発があったでしょう。中国は、南シナ海などでの洋上原発を小型原発により可能にするとともに、その技術を転用して、小型原発を輸出することにより、今後見込みのない中国の経済の起死回生の救世主にしようとしたのでしょう。

小型原発なら、国内でそのほとんどを組立て、現地ではその設置をするだけで良いので、低コストで販売できます。そうして、大規模な発電をしたいという要望があれば、モジュールを増やせば良いだけです。

ただ、その目論見は日米によって、くじかれる可能性もでてきたのです。日米が、小型原発の開発に先行して、国内はもとより、海外に輸出を始めれば中国の出る幕はなくなります。せいぜい、南シナ海の洋上原発などて終始することになるでしょう。

そうなると、中国国内は今後経済が悪化するため、新たな発電所は必要性が低く、今でも何の富も生み出さない、南シナ海の埋立地にますます大枚をつぎ込むだけのことになり無意味になってしまいます。

そのようなことを防ぐためにも、中国はなんとしても日米による小型原発の開発を潰したいのでしょう。そうした試みに乗っているのが日本のマスコミというわけです。この有様では、このブログでも過去に掲載したように、マスコミは今後10年で崩壊するのは間違いないようです。

高橋洋一はマスコミを揶揄して「マスコミはなんでも大げさに"テイヘンだ、テイヘンだ"と騒ぎ立てるが、本当にマスコミは"テイヘン(底辺)"だ」ということがありますが、まさにそのとおりのようです。

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2021年4月18日日曜日

評論家の石平氏 進次郎環境相の太陽光パネル義務化発言は「立派な憲法違反」―【私の論評】小泉氏は日本の環境大臣として「日本の石炭による火力発電は太陽光パネルよりクリーンなこと、これって意外と知られていません」と発言すべきだった(゚д゚)!

評論家の石平氏 進次郎環境相の太陽光パネル義務化発言は「立派な憲法違反」

小泉進次郎環境大臣

 中国事情に詳しい評論家の石平氏(59)が18日、ツイッターを更新。小泉進次郎環境相(40)が、政府の2030年度の温室効果ガス削減目標を達成するため「一番のカギは再生可能エネルギーだ」として、住宅への太陽光パネル設置義務化について「視野に入れて考えるべき」との考えを示したことを激しく批判した。


 石平氏は「国民の私有財産である住宅をどうするかを、政治が『義務化』する云々というのは民主主義の根本をひっくり返すような暴論であり、中国共産党ですらできなかったファシズム的な発想だ」と小泉氏の考えを批判。「われわれ日本国民はいつから、てめえのようなチンピラ政治家の被支配民になったのか?!」と激怒した。

 さらに小泉氏の発言は「明らかに、国民の財産権を明記した日本国憲法への冒涜であって立派な憲法違反だ」と指摘。続けて「普段では『護憲』の立場をとる立憲民主党などの野党は、このファシズム政治家の暴論を国会の場で追及してほしい。今こそ出番だ!」と野党の奮起を促した。

【私の論評】小泉氏は日本の環境大臣として「日本の石炭による火力発電は太陽光パネルよりクリーンなこと、これって意外と知られていません」と発言すべきだった(゚д゚)!

冒頭の元記事は、東スポのオンライン記事です。そのためもあってか、「ファシズム政治家」と石平氏の発言をそのまま引用するだけで、なぜ「ファシズム政治家」と言えるのかという部分は、太陽光パネル設置義務化に関して石平氏の国民の「家は国民の私有財産という」ツイッターの発言しか述べていません。

しかし、それ以外にも太陽光発電は、「エネルギー政策」としても「安全保障上」も下策中の下策です。

そのことを、太陽このブログではすでに「エネルギー政策」としても「安全保障上」下策中の下策であることは述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。

太陽光発電業界の中国強制労働への依存がバイデンのクリーンエネルギー経済を脅かす―【私の論評】日米ともに太陽光発電は、エネルギー政策でも、安全保障上も下策中の下策(゚д゚)!

太陽光パネルに寝そべる女性 環境問題はセクシー?

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から太陽光発電がなぜ「エネルギー政策」としても、「安全保障上」も下策中の下策なのかを以下に一部を引用します。

1.エネルギー政策の観点から

太陽光発電は、エネルギー問題で国政の中でも重要な問題でいろいろと議論もありますが、一番重要なのは発電能力です。太陽光パネルを東京の山手線内全体に敷き詰めても原発の半分以下しか発電できないのです。

太陽光発電、要はエネルギー効率が極端に低いのです。低いからこそ、メガソーラーのように、広い面積が必要になるわけです。

しかし、石炭等は、最近イメージが悪くなり嫌われていますが、実はあれこそ究極の自然エネルギーであり、そもそもあれは化石です。恐竜がいた頃に木がいっぱい生えていて、それが化石になって大量に溜まっていて、それを採掘すればすぐに燃料になります。

ですから、石炭の火力発電所で発電すれば、メガソーラーよりも、圧倒的に少ない面積で済みます。同じ電力なら、石炭による火力発電のほうが、メガソーラのように、大量の森林を伐採しなくても、建設できます。

石炭による火力発電というと、大気汚染などのマイナスイメージを抱きがちですが、最近の火力発電所はそうではありません。石炭が燃焼するとSOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素酸化物)、ばいじん(すすや燃えカス)が発生します。

日本は高度成長時代には大気汚染が深刻な問題でしたが、過去40年以上にわたり環境対策技術や効率的な燃焼方法を開発するなど環境負荷を低減する努力を行ってきた結果、世界の石炭火力を牽引する存在となりました。

今日、石炭火力の煙はきちんとした浄化処理を行ったうえで大気中に放出されています。つまり“黒い煙”どころか、ほとんど何が出ているか見えない状態なのです。

実はクリーンな日本の石炭による火力発電

わずかな発電をするにも、広大な敷地を要する太陽光発電は、イメージのように決してクリーンなものではなく、大量森林伐採により環境を破壊して、場合によっては土砂崩れなどの直接の危険を及ぼす可能性も大です。

それととも、エネルギー効率がかなり低いことから、わずかの電力を発生させるためにも、対利用のパネルを必要とします。

そのため現状のままだと、2040年には、ソーラーパネル破棄問題が必ず起こります。現状設置されているパネルが一斉に寿命を迎えるため、廃棄されることになりますが、その廃棄量は80万トンといわれています。当然のことながら、今のままだと処分場ひっ迫するのは目に見えています。

さらに、FIT(固定価格買い取り)制度が状況を悪くしていまいました。

これは、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が買い取ることを国が約束した制度です。

2012年より開始され、20年間継続されます。これは、2012年7月1日民主党政権下でスタートしています。今年の2022年で終了します。詳しくは、以下のサイトを御覧ください。


これは、日本のエネルギー自給率向上が目的で、再生可能エネルギーの普及促進を目指したものです。そのため東日本大震災の後、原発での発電が中止され、エネルギー問題をどうすべきかという問題に直面し、一躍メガソーラなどが脚光を浴びたのです。

皆さんも、これに類した広告をご覧になったことがあると思います。「今こそソーラー発電に投資を!」「エコで儲かる!」「頭金ゼロで毎月○万円の収入」「20年にわたって国が保障してくれる!」

ただし、エネルギー効率が極端に低いソーラー発電で儲かる人はほんの一部です。たとえば、かなり大きな家を持っている人や、それから地主です。こういう人たち土地を貸してメガソーラーを設置すれば儲かるでしょう。それからそこへ投資する投資家も儲かります。それからそこで建設を請け負った事業者も儲かります。しかし、どうして儲かるかというとそれを払う人がいるからです。

2.安全保障の観点から

ソーラー発電の最大の問題は、その覇権を握るのは中国だということもあります。以下に、太陽光パネルのシェアランキング(2019年)をあげておきます。
1位、ジンコソーラー(中国)
2位、JAコソーラー(中国)
3位、リナソーラー(中国)
4位、カナディアンソーラー(カナダ)→製造は中国
5位、ロンジコソーラー(中国)
なんと5位までが、中国です。世界が太陽光発電をやればやるほど中国が儲かるようにできているのです。

中国は世界一の石油輸入国、米国は世界一の産油国です。石油からソーラーへの流れが主流になれば、中国に利があるのは当然のことです。

ソーラーパネルの中にはシリコンが入っていますが、これがパネルの心臓部です。これを中国が製造していますが、そののシェアが世界の8割を占めています。さらにその内6割がウイグルで作成されています。世界の半分は新疆ウイグル自治区で作成されているのです。

なぜそこで作っているかというと、中国は今でも石炭による火力発電で発電していて、低コストで豊富な電力を使えるからです。実は、シリコンを製造するには、豊富な電力が必要だからです。

それに、中国では環境規制があまいですから、公害対策をほとんどしなくても良いので、さらに安く作れます。さらに、ウイグル人を強制労働させて、安くしているのです。太陽光パネルのシェアランキングでほとんど中国製が占めているのはそのせいです。他の国々では、どうしてもコスト高となり、中国勢には勝てません。

それに、温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

太陽光発電のソーラーパネルが世界一低価格であることから、当然のことながら、日本をはじめとしして、世界中で発電効率が低いソーラーパネルを設置するなら、少しでも利益をあげるため、中国製にならざるをえないことになります。

これは、中国の人権侵害を容認するどころか、それを推進しているようなものです。これは、強制労働させない我が国をはじめとする先進国の雇用を奪うことにもなりますし、中国のブラック産業を推進することにもなります。

日本も現在、中国制のソーラーパネルが至るところで設置されています。この設置には、中国系の事業者が関わっているものも多いです。そうすると、ソーラー・バネルによって、中国に繋がている可能性もあります。これは、安全保障上の脅威でもあります。

中国でも、メガソーラーを至るところに設置すれば、後々とんでもないことになるはずです。そんなことより、日本あたりから技術を正式に買い取って、石炭による火力発電などをクリーンなものにするほうが余程理にかなっていると考えられます。

ただ、中国はそれを考える必要もないのでしょう。メガソーラーの処分は、これまたウィグル人の強制労働に頼ろうと考えているのかもしれません。

このような危険で残念ともいえる、中国製パネルを住宅へ設置することを義務化するなど、とても正気の沙汰とは思えません。

小泉「プラスチックが石油から作られていること、これって意外と知られていません」と最近語りましたが、これって以外と知られていることがある調査で明らかになっています。

その調査では、84%は「プラスチックは、主に石油や天然ガスから作られる」ことを知っていました。これは、当然といえば、当然です、小学校あたりでも、プラスチックが石油等から作られていることを教えていますし、高校では有機化学の時間に教えているはずです。

高校では有機化学も教える

有機化学のことは、忘れてもプラスチックが石油などからつくられていることは多くの人が覚えていると思います。

小泉進次郎氏は日本の環境大臣であることも踏まえて、このような愚かな発言をするのではなく、以下のような発言をすべきでした。

「日本の石炭による火力発電は太陽光パネル発電より実はクリーンなこと、これって意外と知られていません」

まあ、無理でしょう。それにしても、中国は強制労働でウイグル人に強制労働で太陽光パネルをつくらせてもクリーンな環境を作り出すことはできないでしょう。なぜなら、太陽光パネルは発電効率が極端に低いからです。

習近平は温暖化目標を達成するのは、太陽光パネルではなく、原発だと考えているかもしれません。いや、先程述べたように、短期的には中国の経済が落ち込むので、当面は楽々と達成できると見込んでいことでしょう。

それは、習近平自身が良く認識していることでしょう。そんなことはどうでも良いのです。まずはてっとり速く儲けられれば良いですし、森林の伐採問題や環境問題などどうでも良いのです。それにうまくすると、ソーラパネルにメンテナンスなどのためと称して、通信装置をつければ、それこそ全世界に中国の通信網を張り巡らすことができるかもしれないと考えているかもしれません。

全家庭に強制的に取り付けられるということにでもなれば、それこそ個々人を世帯単位で把握できることになります。まさに、小泉氏の発言は、中国を利する以外のなにものでもありません。

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2021年4月17日土曜日

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中国V字回復に影落とす新冷戦 米の禁輸措置で半導体不足深刻

北京のファーウェイ販売店で展示されていた最新機種「Mate X2」

 中国の今年1~3月期のGDPは、新型コロナウイルス禍で昨年、初のマイナス成長に落ち込んだ反動で過去最高の伸びとなった。中国の経済規模が米国を追い抜く日がさらに近づいたとの見方もある。ただ、米国による対中禁輸措置で半導体不足が深刻化。国家発展戦略の柱であるハイテク産業だけでなく、V字回復に貢献してきた自動車産業も打撃を受けるなど「新冷戦」とも呼ばれる米中対立が中国経済に影を落とす。 (北京・坂本信博)

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 北京市中心部にある中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の販売店。一番目立つ場所に、2月下旬に発売されたスマートフォンの最新機種「Mate X2」が展示されていた。上位機種は約1万9千元(32万円)と高額だが、人気を集めている。

 高機能が詰まった折りたたみ式で、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム対応。店員は誇らしげに説明してくれたものの「残念ながら在庫切れで、入荷時期は未定です」と申し訳なさそうに言った。

 トランプ米前政権はハイテク分野で対中輸出規制をかけ、バイデン政権も方針を継続。その影響で、同社や半導体受託生産最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は、高性能半導体や製造機の調達が困難になっている。新商品も近く発売予定だが、ファーウェイ社員は「最新鋭スマホ用の高性能半導体は在庫が尽きかけている」と明かす。

 あらゆる分野の製品に欠かせない半導体について、業界関係者は「コロナ禍で世界的に半導体の生産体制が逼迫(ひっぱく)していることに加え、米国の禁輸措置で需給バランスがますます崩れている」と指摘する。

 中国メディアによると、新興電気自動車(EV)メーカーの上海蔚来汽車は先月、半導体不足などを理由に5日間の生産停止を余儀なくされた。中国自動車工業協会によると、今年2月の自動車生産台数は前月比で4割近く減ったという。

 習近平指導部は自国の科学技術向上を掲げ、2025年には半導体の自給率を7割とするための支援策を強化。昨年だけでも約1万社が新規参入した。ただ、半導体製造装置メーカーの世界トップ10社は欧米や日本が占めており、技術力不足も深刻だ。業界関係者は「半導体製造装置を確保できなければ、メード・イン・チャイナは二級品どまりになる」と指摘する。

 米中対立の先が見えない中、米国は日本などと半導体などの確保を巡り連携を深める。北京の外交筋は「中国にとって、半導体や工作機械の製造技術を持つ日本は重要な存在。習指導部は日米首脳会談の行方を注視している」と話した。

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バイデン政権は、トランプ政権に引き続き、ハイテク規制をさらに強めていくようです。ハイテク規制とは、米中対立の激化に伴い、トランプ前米政権が導入した通信機器など高度技術を扱う中国企業に対する規制のことです。

機密情報の漏洩防止や、不公正な貿易慣行に対抗する狙いがあります。超党派で対中強硬論が広がるなか、2020年8月から連邦政府と取引する米国企業に対し規制対象の中国企業の製品を使うことを禁止しました。


トランプ前政権で対象となったのは通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など5社でした。18年に禁輸措置を課されたZTEは経営が行き詰まり、習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ前大統領に制裁解除を訴える事態にも発展しました。

バイデン政権下でもハイテク規制の緩和は見込めないとの見方が強いです。米産業界では過度な規制で中国企業と取引する米半導体産業も打撃を受けるとの懸念があがっています。サプライチェーン(供給網)の米中デカップリング(切り離し)で日本企業にも悪影響が広がる可能性もあります。

上の表にもあるように、バイデン米政権は米国内の民間企業に対し、中国製IT(情報技術)機器やサービスの利用を規制します。5月中旬にも、政府の許可を事前に取るよう求める制度を導入し、政府の判断で利用を禁じます。企業を通じて中国政府に機密情報が漏洩するのを防ぎます。日本企業の米国法人も対象で、企業は難しい対応を迫られることになります。

アップルは昨年7月にある重大な発表を行なったものの、世間の注目度は比較的低いものでした。その発表とは、iPhoneで当時の最新モデルだった「11」の製造拠点を中国からインド・チェンナイへ移行するというものでした。

その数週間後、サムスン電子やフォックスコン、ペガトロン、ウィストロンといったアップルのサプライヤー、インド製造企業のマイクロマックスとラバ、そしてさらに18社の企業が、インド政府が電子機器製造の大規模生産を推奨するために立ち上げた「生産連動型インセンティブ(PLI)」スキームの申請を行いました。同スキームへの参加により、これら企業は製造拠点の多くをインドへ移すことになります。

インドのiPhone製造工場

同スキームに参加することで、インドへ輸出する電子製品に対する20%の課税を回避できます。量的にみれば世界で最も重要な市場の一つであるインドは最近、保護的な貿易政策を強化してきました。またこの動きは、中国における製造コストの上昇と製造の機械化、それに伴う労働力依存の低下に関連した、より深いマクロ経済的な問題を反映しています。

同時に、米国のバイデン政権はトランプ政権に引き続き中国に対し、国内市場を世界に向けて開いて競争を受け入れ、自国民の人権を尊重するよう圧力をかけ続け、同盟国にも同調するよう働きかけつつあります。アップルが製造拠点の一部を中国の隣国であるベトナムへ移転した際には、同国の地方部に経済効果が生まれました。

このような傾向がみられるのに、日本では未だに中国に拠点を置き続けたり、関係を強化す企業が多いです。さらに、日本は経済安保に絡んだ法整備も遅れています。3月に公表された中国IT大手の騰訊(テンセント)子会社による楽天への出資では、外為法の不備が露呈しました。

楽天三木谷社長

テンセントはトランプ前政権時に「安保の脅威」とみなされていた企業です。バイデン政権は日本に対して「米欧並みに厳しい法整備」(米国家安全保障会議)を望んでいます。これを考えると、まさに楽天三木谷社長の意思決定は周回遅れと言われても仕方ないと思います。

中国政策は日米が足並みをそろえて共同戦線を張ることが重要です。いくら米国がハイテク規制を強めても、日本から日米の技術を使用したハイテク製品や、技術が入れば、無意味となるからです。

米議会には、日本の対中輸出制裁を米国と同水準まで厳格化するよう求める声が根強いです。まさに「脱中国依存」への日本の覚悟が問われているのです。

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2021年4月16日金曜日

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日米首脳、共同文書で対中牽制「台湾」明記へ 菅首相とバイデン大統領、初の対面首脳会談

バイデン米大統領と菅総理

 菅義偉首相は米東部時間15日夜(日本時間16日午前)、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に政府専用機で到着した。ジョー・バイデン大統領と16日午後(同17日未明)、初の対面形式による首脳会談に臨む。会談では、軍事的覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国への対応を協議し、新型コロナウイルス対策や気候変動問題での協力も申し合わせる。会談後に発表する共同文書に、台湾海峡の平和と安定に関する問題が明記される可能性が高まっている。

 「(日米首脳は会談で)中国や台湾海峡について深く話す」

 米政権高官は15日、首脳会談に先立つ電話記者会見でこう語った。

 ホワイトハウスで行われる会談では、日本の外交・安全保障の基軸である日米同盟を強固にする重要性で一致。「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の連携強化を申し合わせる。

 菅首相は東京五輪・パラリンピックの成功に向けた協力も呼び掛ける。新型コロナワクチンをめぐり、途上国向け支援を含む日米協力の在り方についても意見を交わす。

 こうしたなか、会談後に発表する共同文書に、台湾海峡の平和と安定の重要性について記載することが調整されている。外務省によると、日米首脳の共同文書で「台湾」を明記することは、佐藤栄作首相とリチャード・ニクソン大統領による1969年の会談以来。

 米台関係をめぐっては、クリス・ドッド元米上院議員と、リチャード・アーミテージ元国務副長官らの非公式代表団が訪台し、15日に蔡英文総統と会談した。

 こうした動きに対し、中国側は軍事的挑発を行った。

 台湾の中央通信社が運営する日本語サイト「フォーカス台湾」によると、中国軍は15日から、台湾周辺海域で6日間の実弾射撃演習を実施しているという。

 日米首脳の共同文書に、台湾が明記される意義は何か。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「ドナルド・トランプ政権が米中関係を逆転させて以来、バイデン政権も『台湾重視』の基調は踏襲している。バイデン政権は、台湾海峡での軍事的紛争を望まず現状を維持を望んでいる。沖縄県・尖閣諸島周辺に中国海警局船が連日侵入している日本にとっても安全保障上、メリットがある。日米が立場を明確にすることは、中国にとっては『内政干渉』で、非常に嫌がることだろう」と語った。

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日本の首相が近隣諸国以外で最初の外国訪問先として米国を選ぶことは、これまでも珍しいことではない。しかし、今回の菅首相とバイデン米大統領の首脳会談には特筆すべき点があります。菅総理は、バイデンが大統領就任後初めて直接対面する外国首脳なのです。 菅総理が一般の米国民の間ではほとんど無名の存在であることを考えると、今回の首脳会談はバイデン政権が菅総理を極めて重視していることの表れとみて良いでしょう。

これは、バイデン政権が日本を特別な存在とみていることの現れです。これは日本にとって日米同盟を強化するための絶好の機会であり、米国と協力して軍事力で脅威を増す中国に対し、「ノー」を突き付けることにつながります。

バイデン大統領はクアッドの4カ国首脳会談で「『自由で開かれたインド太平洋』は不可欠である。アメリカはこの地域の安定を目指し、全ての同盟国やパートナーとの協力を強く約束する」と述べました。

3月12日米豪印の首脳とテレビ会議をするすが首相(右端)

バイデン氏は大統領選挙の前から対中戦略の大きな柱として同盟国との協力を前面に打ち出すことを構想していました。特に中国の習近平政権と長期的に競争していくために地理的にも歴史的にも中国との関係が深い、日本との協力関係を重視しようとしています。日本はインド太平洋地域での駐留米軍の最大拠点で、経済力では中国に世界第2位の地位を奪い取られたものの、世界第3位を保っています。

こうした日本との連携を強化することで、米国の同盟国や友好国に安心感を与えることも狙っているのでしょう。

中国の行動、言動には目に余るものがあります。

沖縄県の尖閣諸島周辺海域での中国海警局船の日本領海侵入、東・南シナ海での軍事的行動、台湾に対する威嚇、香港からの民主派の強硬的一掃。習近平政権は、地域の安全と平和を脅かしています。国際社会を蔑ろにする一連の行動はどこから生まれるのでしょうか。

習近平国家主席(中国共産党総書記)は「党の指導や中国の主権と安全、それに党と国の利益が損なわれるようなことがあれば、どこまでも強く闘う」とことあるごとにその闘争の意志をあらわにしてきました。

すでに日本は否応なく、中国との最前線に置かれています。中国が最も恐れるのは、米国の世界最強の軍事力です。日本が強権的な中国に対抗するには、この米軍の軍事力を利用して中国に無謀な軍事行動を思いとどまらせ、軍事的圧力、すなわち抑止力を効かせることです。

そうして、その体制は確実に構築されつつあります。これからもさらに強化されていくでしょう。今回の日米首脳会談はまさに、それを中国に対して強烈に示しました。日米は、中国が台湾に侵攻すれば、日米は動かざるを得ないとの強烈なメッセージを受け取ったことでしょう。

QUAD、日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)、それに続く日米首脳会談です。さらに米国は日米首脳会談以前に、台湾にアーミテージ氏などを含む代表団を台湾に送っています。日米が中国に対してこのような動きをすることは、前から十分に予測できたことです。

日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)を伝えるテレビ

これに呼応して中国で気になる動きがあります。今年7月、中国共産党は党創設100年を迎えます。2049年には毛沢東(党主席)が中華人民共和国の建国を宣言した1949年から100年となります。

中国共産党は3月23日、7月の党創立100周年に関する記者会見を開き、軍事パレードを行う予定はないことを明らかにしました。党中央軍事委員会政治工作部の李軍少将が「建党100年の祝賀活動の中に閲兵は入っていない」と明言しました。

今年の中国は中国共産党の建党100周年だけではなく、新経済五カ年計画の初年度という節目の年でもあります。党・政府としては年初から勢いよくダッシュをかけ、大きな成果を挙げたいところでしょう。

ところが昨年末の中央経済工作会議で決まった今年の経済運営方針をみると、内外の不透明要因があまりに多過ぎて、いかにも歯切れの悪い内容となっています。

昨年第14次五カ年計画を打ち出した周近平だが・・・・・

重点政策として打ち出されたのは、(1)国家の戦略的科学技術力の強化(2)産業チェーン・サプライチェーンの自立的なコントロール能力の増強(3)内需拡大を戦略的ベースにすることを堅持(4)改革・開放の全面的な推進(5)優良種子と耕地問題の解決(6)独占禁止の強化と資本の無秩序な拡大の防止(7)大都市の住宅の突出した問題の解決(8)カーボンニュートラル活動の推進-という8項目でした。前年の6項目から2つ増えたうえに、これまでになかった政策がずらりと並んでいます。

(1)と(2)はいずれも新登場の最重要課題で、ともに米中経済戦争の激化の中で、早急な解決を迫られています。米国からの対中制裁による打撃が、いかに深刻かを物語っていますが、これまでやってこなかったことを急にやり始めるわけですから、そう簡単には望んでいる結果を出せないでしょう。

(6)はアリババ子会社の上場中止という衝撃的な事件を受けて、急遽追加されたとみられます。ある程度の規制は必要としても、締め付けが過ぎれば、せっかく盛り上がってきたネット消費に冷水を浴びせかねないです。

8項目政策で明らかなのは、党・政府がこれまで以上に前面に出て、なりふり構わずに成長率を確保し、建党100周年を祝いたいという思惑でしょう。そして新型コロナウイルスの流行からいち早く立ち直り、中国が「独り勝ち」したことを世界に誇示したいのでしょう。

建党記念日は7月1日に設定されてきましたが、実際には7月23日に最初の共産党大会が開催されたようです。この日はくしくも東京オリンピック開会日の7月23日と重なっています。

いずれにしても7月に入れば、世界の関心の目は、東京が新型コロナを乗り越えて、オリンピックを無事に開けるかどうかに集まってくるでしょう。新型コロナを世界に拡散させた中国を見る国際社会の目が依然として厳しい中で、中国はどのように建党100周年の記念日を祝うのでしょうか。ただし、中国は7月1日、中国共産党(中共)の結党100周年記念日に習近平国家主席(68)が「重要演説」を行う計画だと明らかにしました。

中国の習近平指導部は、「抗日戦争勝利70周年」の15年、軍創設90周年の17年、建国70周年の19年と、ほぼ2年に1度のペースで軍事パレードを実施し、内外に軍事力を誇示してきました。党創立100周年という重要な節目でのパレード見送りは、台湾問題や新疆ウイグル自治区の人権侵害などをめぐり欧米が批判を強める中、中国脅威論がさらに高まるのを避ける思惑もありそうです。

それに変えて、習近平が重要演説を行うというのですが、はたしてどのような演説をするのでしょうか。良い材料が一つもない現状の中国です。あまり期待できそうにもありません。

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2021年4月15日木曜日

蔡総統、米代表団と会談 「台米のパートナー関係の深化が示された」/台湾―【私の論評】ケリー氏を中国に、アーミテージ氏を台湾に派遣したバイデン政権の本音(゚д゚)!

蔡総統、米代表団と会談 「台米のパートナー関係の深化が示された」/台湾

ドッド元米上院議員(左)らへのあいさつをする蔡総統


蔡英文(さいえいぶん)総統は15日、米バイデン大統領が台湾に派遣したドッド元米上院議員率いる代表団と総統府(台北市)で会談した。蔡総統は、バイデン政権下で初の代表団派遣だと紹介した上で、「深化を続ける台米双方のパートナー関係を示した」と歓迎した。

代表団のメンバーはバイデン氏の盟友であるドッド氏のほか、アーミテージ、スタインバーグの両元国務副長官ら。代表団は14日午後に訪台した。

蔡総統はあいさつで、バイデン政権が台湾海峡の平和と安定の重要性を繰り返し表明していることに感謝の意を示した上で、中国が台湾周辺の海空域での軍事活動を活発化させ、地域の平和と安定を脅かしていることに言及。台湾には米国などの国家と共同でインド太平洋地域の平和と安定を守っていく意思があると強調した。

ジェームズ・スタインバーグ氏(写真左)リチャード・アーミテージ氏(写真中央)、クリス・ドッド氏(写真右)

ドッド氏はあいさつで、米国が断交後の台湾との関係のあり方を定めた「台湾関係法」の制定から今年で42年となることに触れ、当時、自身が制定に向けて奔走したことを紹介。同法の重要性は年々明白になり、「米国と台湾のパートナーシップはこれまでで最も強固になっている」と自信を示した。

また、米台関係における米国の約束を再確認し、共有する多数の利益における協力関係を深化させるのを目的に、バイデン氏の意向を受けて訪台したと説明。バイデン政権は台湾の国際空間を広げる手助けをし、自衛における投資を支援すると確信していると言及した上で、同政権は既存の頑丈な経済的結び付きのさらなる深化を模索するだろうと述べた。

【私の論評】ケリー氏を中国に、アーミテージ氏を台湾に派遣したバイデン政権の本音(゚д゚)!

14日には、バイデン政権で気候変動問題を担当するジョン・ケリー大統領特使が中国・上海を訪問しています。この「同時外交」は何を意味するのでしょうか。


「米国が台湾およびその民主体制への関与(の深さ)に関して重要なシグナルを送るものだ」

米ホワイトハウスは声明で、ドッド氏らの派遣について、こう強調しました。非公式代表団は、台湾関係法が今月10日に制定から42年を迎えたことに合わせて訪台しました。

ドッド氏は、バイデン大統領の盟友として知られます。アーミテージ氏は共和党のブッシュ(子)、スタインバーグ氏は民主党のオバマ各政権下で国務副長官を務めました。

両氏の派遣は、米国が超党派で台湾を支える決意を示す狙いがあるようです。

これに対し、中国外務省の趙立堅報道官は14日、「中国は、どのような形式でも米台の公的往来に断固反対する」といい、厳正な申し入れを行ったことを明かしました。

同じタイミングで中国を訪問したケリー氏は「親中派」として知られ、温室効果ガスの排出削減策をめぐって中国の気候問題担当特使、解振華氏と会談する予定。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、中国外交トップの楊潔チ共産党政治局員や、王毅国務委員兼外相らと会談する情報もあります。

バイデン政権の、訪中と訪台の同時外交は一体何を意味するのでしょうか。

人権問題や多様性に熱心だとされるバイデン政権は、台湾や香港、ウイグル問題にも取り組まざるを得ないです。

一方で、ケリー氏の訪中は、このブログでも以前指摘したとおり温室効果ガスの排出削減を中国に承服させる代わりに、ドナルド・トランプ前政権による経済制裁を緩める等の宥和策に進む可能性があります。リチャード・アーミテージ元国務副長官(共和党)は現在は、超党派の非営利政策研究機関米国・ワシントンDCにある戦略国際問題研究所(CSIS:Center for Strategic and International Studies)に属しています。

CSISのリチャード・アーミテージ元国務副長官(共和党)とジョセフ・ナイ元国防次官補(民主党)は、「第5次アーミテージ・ナイ報告書」【The U.S.-Japan Alliance in 2020 AN EQUAL ALLIANCE WITH A GLOBAL AGENDA (日米2020年の同盟関係 グローバルな課題を持つ対等な同盟)】において日米同盟に関する提言を行いました。

アーミテージ氏は、「序章」において「2021年バイデン次期政権が発足するこの機会に、日本と米国の同盟関係が新たなステップを迎え、日本が自由貿易や多国間協調で対等な役割を担うようになった」と強調しました。

「特に安倍前首相の功績は大きく、憲法9条の再解釈により集団的自衛権行使を容認し、環太平洋パートナーシップ協定の完成、自由で開かれたインド太平洋構想の策定など、日本の革新的でダイナミックな地域リーダーシップにより、米国をはじめアジア地域に大きな利益をもたらした」と総括しました。

これを引き継ぐ菅義偉首相の努力を熱烈に支持するとともに、バイデン次期大統領と最も早く首脳会談を行う訪問者の一人になるよう推奨しました。

「安全保障同盟の推進」の章では、「日本は必要不可欠で対等な同盟国になっただけでなく、戦略概念の創造者として、『自由で開かれたインド太平洋コンセプト』など地域のパートナーシップのネットワーク化までやってのけた」と日本のイニシアティブを絶賛しています。

そして「日米同盟にとって最大の安全保障上の課題は『中国』である」と断言。「アジアの現状を変更しようとする中国の行動に対し、ほとんどの近隣諸国の間で安全保障上の懸念が高まっている」と分析しています。

「米国の尖閣諸島への日米安保条約第5条適用のコミットメントは、尖閣諸島防衛のための軍事力を強化し、共同計画の策定に繋がるだろう」と見積もっています。米国のコミットメントは、尖閣諸島の防衛が日米同盟の重要な部分であると認識している証左とも述べています。

「第二の地域安全保障上の懸念は『北朝鮮』である。25年間の外交の失敗により北朝鮮の非核化は短期的には非現実的な課題となった。今後は、核武装した北朝鮮をどのように封じ込めるかという戦略を優先すべきだ」と述べています。

「金正恩は、自殺願望があるわけではなく、政権の存続を求めているのである。従って、簡単ではないが、抑止と封じ込めは可能である」と結論付けています。


このように、アーミテージ氏は端的にいうと知日派であり、反中派でもあります。

ケリー氏を中国に派遣し、アーミテージ氏を台湾に派遣したバイデン政権には、対中人権政策と対中宥和のどっちつかずの、二重路線が感じられます。ただし、台湾をめぐっては、バイデン政権として台湾を国家承認はしないものの、台湾海峡を維持しなければ米軍も動かざるを得ないというのが本音のようです。

米海軍の駆逐艦が10~11日に台湾海峡を通過し、中国大陸と台湾本島の中間線を中国側に越えた海域で航行していたことが11日、分かっています。台湾の国防部(国防省に相当)関係者が明らかにしました。

中間線は中台間の事実上の停戦ラインとして機能しており、米軍が越えるのは極めて異例です。中国軍機が中間線を台湾側に越えて飛行した際、米国は「地域の安定を害する」(国務省)と批判していました。今回は米側が中国を強く牽制した形です。

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