2024年9月20日金曜日

<主張>日本人児童刺殺 中国政府に反省ないのか―【私の論評】深セン日本人児童殺害事件:邦人保護の緊急性と中国入国管理強化の必要性

<主張>日本人児童刺殺 中国政府に反省ないのか

まとめ
  • 中国深圳市で日本人男子児童が刺殺され、以前にも日本人母子が襲撃される事件が発生し、日本人の安全に対する懸念が高まっている。
  • 中国外務省は「同種の事件はどの国でも起こり得る」とし、具体的な再発防止策を示さない姿勢は大問題である。
  • 岸田首相は中国側に説明を求めるよう指示したが、より積極的な外交的対応をすべきである。
  • 事件の根本には中国共産党による反日教育があり、在留邦人の安全確保には中国の姿勢の変化が必要である。
  • 日本政府は中国への不要不急の渡航自粛を促し、企業は駐在員や家族の帰国を検討し、政府は帰国後の支援を行うべきである。

 中国深圳市で日本人学校に通う10歳の男児が刺殺され、数ヶ月前には蘇州市でも日本人母子が襲撃される事件が発生した。これらの事件は、日本人が中国で安全に暮らし、活動できるかという深刻な疑問を投げかけている。無辜の児童が命を奪われた痛ましさと、理不尽な凶行への怒りは計り知れない。

 中国外務省の対応は不十分で、「同種の事件はどの国でも起こり得る」という発言は許しがたい。短期間に日本人が相次いで襲撃される国は中国以外にない。中国政府は事態を深く反省し、具体的な再発防止策を明確に示すべきだ。

 岸田首相は中国側に説明を求めるよう指示したが、自ら動いて中国首脳に対策を講じるよう直接迫るべきである。また、日本政府は中国側に犯行動機などの情報公開を強く求めるべきだ。

 事件の根本的な原因として、中国共産党政権による反日教育が指摘される。東京・九段北の靖国神社で相次ぐ中国人の落書きも同じだ。政治的思惑で反日をあおる中国の姿勢が改まらない限り、在留邦人の安全は確保できない。

日本政府は中国への不要不急の渡航自粛を国民に促し、企業は駐在員や家族の帰国を検討すべきだ。政府は帰国後の住居や教育などの支援も行うべきである。

 このような邦人が被害を受ける悲劇を二度と繰り返さないために、日中両政府による迅速かつ効果的な対策が急務である。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい

【私の論評】深セン日本人児童殺害事件:邦人保護の緊急性と中国入国管理強化の必要性

まとめ
  • 深センでの日本人児童殺害事件は、意図的に日本人を標的とした可能性があり、邦人に対する重大な脅威として捉えるべきである。
  • 日本政府は海外で生活する日本人、特に子供の安全を守る責務があり、迅速かつ的確な対応が求められる。
  • 過去の事例(バングラデシュでの日本人殺害など)を踏まえ、今回の事件でも邦人保護のため帰国を強く促すべきである。
  • 中国での組織的な反日教育や歴史的対立の背景を考慮し、予防的に邦人の帰国を促すことが重要である。
  • 国内の安全確保のため、中国人の入国管理についてより厳密な審査や監視体制の検討が必要である。

この事件は確かに大変悲惨で、特に子供が犠牲となったことは多くの人々に深い衝撃を与えています。まずはなくなったお子さんの御冥福をお祈りさせていただきます。

深センでの日本人児童刺殺事件は、南山区(Nanshan District)で発生したと報道されています。南山区は、深セン市の中でも比較的裕福なエリアで、特に高い技術産業や外国人居住者が多く、日本人学校もこの地域に位置しています。


中国における日本人学校での事件がどのような意図のもとで発生したか、現時点での公式な情報はまだ明確ではないものの、日本政府は迅速かつ的確な対応を行うべきです。

日本政府は、海外で生活する日本人を保護をする責務があります。特に子供の安全が脅かされる状況では、迅速な対応が求められます。過去の例では、政治的緊張が高まった国や地域で、政府が自国民に対し帰国を促すケースは少なくありません。

たとえば、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック初期には、日本政府は感染リスクの高い地域からの邦人の帰国を奨励しました。こうした前例に基づき、今回の事件を受けて、深刻な安全保障上の懸念がある場合には帰国を強く促すことは正当です。

バングラデシュ北部ラングプルで、日本人男性の星邦男さんを銃撃し死亡させたとされる四人の犯人

日本人がターゲットとなった事件は、過去にも世界各地で発生してきました。たとえば、2015年10月3日、バングラデシュ北部ラングプルで、日本人男性の星邦男さんが銃撃され、死亡しました。星さんは農業プロジェクトに従事しており、移動中にバイクに乗った二人組に襲撃されました。

この事件では、イスラム国(ISIS)が犯行声明を出しましたが、バングラデシュ政府は国内の過激派組織「ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)」が関与している可能性を指摘しています。同時期にイタリア人もダッカで殺害されており、外国人を狙った一連の襲撃として国際的に大きな警戒が高まりました。日本政府も邦人保護のため、対応を強化しました。

今回の深センでの事件も、確証が得られていないものの、意図的に日本人を標的とした可能性が考えられるため、同様に邦人に対する脅威と捉えるべきです。

テロ行為はしばしば、社会に大きな恐怖や不安をもたらすことを目的としています。そして、その恐怖を最大化するために、無防備で弱い立場にある人々が意図的に狙われることが多いです。

2014年にパキスタンの学校で発生したタリバンによる襲撃事件での犠牲者

たとえば、2014年にパキスタンの学校で発生した襲撃事件では、タリバンが学生を標的にし、多くの子供たちが犠牲となりました。今回の深センでの事件がテロと見なされるべきかどうかはまだ議論の余地がありますが、子供が犠牲になったという事実は、深刻な意図を感じさせるものであり、日本政府としても「テロ」として警戒することは必要です。

中国当局が今回の事件をどのように認識し、対応するかは、今後の調査次第ですが、日本政府としては慎重かつ迅速な外交的対応が求められます。中国は1990年代から組織的・体系的な反日教育を実施しており、日中間の歴史的な対立や領土問題などが影響し、特定の個人や集団が日本人を敵視するケースも考えられます。

日本政府がこうした背景を踏まえて邦人保護に努めることは当然であり、事件の背景が明らかになるまでの間でも、予防的に帰国を促すべきです。

国内での安全を確保するため、中国人の入国管理について議論することも必要です。多くの国が、テロリズムや犯罪を防ぐために、特定の国からの入国に対して厳しい審査を行っています。

例えば、米国は9.11以降、特定の国からの入国者に対して厳しいセキュリティチェックを行う政策を導入しました。日本においても、中国からの移民や短期滞在者に対して、より厳密な審査や監視体制を検討することは、安全保障の観点から必要です。

深センでの事件は、偶然の犯行ではなく、日本人をターゲットにした計画的な襲撃である可能性が高く、邦人の安全が脅かされる状況にあります。日本政府は、まずは邦人保護を最優先に考え、帰国を強く促すことが重要です。また、国内でのテロの脅威に備えるため、中国人の入国についての議論も行う必要があります。

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2024年9月19日木曜日

今度はヒズボラの無線機が爆発、500人弱死傷 あわてて電池を取り外す戦闘員の姿も―【私の論評】中東情勢最新動向:イスラエルとヒズボラの緊張激化、米大統領選の影響と地域安定への懸念

今度はヒズボラの無線機が爆発、500人弱死傷 あわてて電池を取り外す戦闘員の姿も

まとめ
  • 18日にヒズボラの携帯無線機が爆発し、14人が死亡、450人が負傷。前日にはポケベルの爆発で12人が死亡、3000人近くが負傷。
  • ヒズボラ幹部が報復を宣言し、レバノン当局はイスラエルのモサドの関与を示唆。
  • 米国務長官とUN事務総長が事態悪化への懸念を表明し、外交努力への影響を警告。
  • イスラエルは北部国境に部隊を増派し、対立が激化する可能性が高まっている。

レバノンで起きたヒズボラの通信機器の連続爆発事件が、中東地域の緊張を高めています。18日には携帯無線機の爆発で14人が死亡、450人が負傷し、前日のポケベル爆発では12人が死亡、3000人近くが負傷しました。

これを受けてヒズボラ幹部が報復を宣言し、レバノン当局はイスラエルのモサドの関与を示唆しています。米国務長官とUN事務総長は事態悪化への懸念を表明し、外交努力への影響を懸念しています。

一方、イスラエルは北部国境に部隊を増派し、両者の対立が激化する可能性が高まっています。この一連の出来事は、中東地域の不安定さをさらに増大させ、平和への取り組みを複雑にする恐れがあります。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中東情勢最新動向:イスラエルとヒズボラの緊張激化、米大統領選の影響と地域安定への懸念

まとめ
  • ヒズボラはハマスよりも強力な軍事力を持ち、イスラエルにとってより深刻な脅威となっている。
  • イスラエルとヒズボラの間で低強度の戦闘が続いており、2024年8月には大規模な衝突が発生した。
  • 米国を含む国際社会は事態の沈静化と紛争の拡大防止に向けて外交努力を続けている。
  • トランプ政権によるアラブ諸国とイスラエルの関係改善は、ハマスやヒズボラの存在意義に深刻な影響を与えている。
  • 米大統領選挙の影響で、イスラエルは警戒を高めており、今回のポケベルやトランシーバーへの攻撃はその一環である可能性がある。
2023年6月21日、レバノン南部ジェジーヌ地区のアラムタ村で訓練を受けるヒズボラ戦闘員

ヒズボラやハマスはテロリストとして知られています。テロリストというと、日本では武装をした暴力団というようなイメージでしょうが、その軍事力だけをみれば軍隊と行っても良いような規模です。

そのなかでもヒズボラはハマスよりも強力な軍事力を持っており、イスラエルにとってより深刻な脅威となっています。具体的には以下の点でヒズボラの軍事力がハマスを上回っています。

1. ミサイル保有数:ヒズボラは12万~20万発の短距離ロケット弾やミサイルを保有しているとされ、これはイスラエル全土を射程に収めています。一方、ハマスは約2万発の中・長距離ミサイルを保有しているとされています。

2. 戦闘員数:ヒズボラは予備役を含めて約5万人の戦闘員を有しているのに対し、ハマスは約3万人の戦闘員を有しています[1]。

3. 戦闘経験:ヒズボラの戦闘員の中には、シリア内戦に参加した経験豊富なエリート特殊部隊約7000人が含まれています。この実戦経験がヒズボラの軍事力を高めています。

4. 装備と訓練:ヒズボラの戦闘員はハマスよりも訓練が行き届いており、装備も優れているとされています。

5. 地理的優位性:ヒズボラはレバノン南部を拠点としており、イスラエル北部に隣接しています。この地理的な近さが、イスラエルにとって即時的な脅威となっています。

これらの要因により、ヒズボラとの大規模衝突が発生した場合、イスラエルは甚大な被害を被る可能性があります。そのため、イスラエルはヒズボラに対してより慎重な対応を取らざるを得ない状況にあります。

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは最近、イスラエルとの間で低強度の戦闘を続けています。両者の間で攻撃の応酬が続いており、特にレバノンとイスラエルの国境地帯で緊張が高まっています。2024年8月25日には、ヒズボラがイスラエル北部に対して320発以上のロケット弾を発射し、イスラエル軍も約100機の戦闘機でレバノン南部を空爆するなど、大規模な衝突が発生しました。

この衝突の背景には、2024年7月にイスラエル軍がヒズボラの幹部サーレハ・アールーリーをベイルートで暗殺したことへの報復があるとされています。また、イスラエル軍はガザ地区でのハマスへの攻撃を継続しており、ヒズボラはハマスに連帯を示す形で攻撃を行っています。

2024年8月25日には、ヒズボラがイスラエル北部に対して320発以上のロケット弾を発射

イスラエル側の対応としては、ガラント国防相が「戦争を望んではいないが、準備はできている」と発言し、ヒズボラをけん制しています。また、イスラエル軍はレバノンでの地上作戦を想定した訓練も実施しており、事態の悪化を防ぐことが焦点となっています。

一方、国際社会の動きとしては、米国が事態の悪化を防ぐため外交努力を行っています。2024年9月16日には、アメリカの特使がイスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相らとヒズボラへの対応について協議すると報じられました。また、米国のブリンケン国務長官は、ガザ地区での戦闘を激化させ、戦闘を拡大させるような措置を避けることが重要だと強調しています。

イランはヒズボラの後ろ盾となっており、イスラエルとの対立においてヒズボラを支持しています。イランの国連代表部は、イスラエルが本格的な攻撃に踏み切れば、中東各地の親イランの武装組織がイスラエルに対する戦闘に加わる可能性を示唆し、警告しています。

この状況は、パレスチナ問題やイランの核問題など、中東地域の他の課題とも密接に関連しており、地域全体の安定に影響を与える可能性があります。米国を含む国際社会は、事態の沈静化と紛争の拡大防止に向けて外交努力を続けていますが、依然として緊張状態が続いています。

アブラハム合意

米トランプ政権におけるアラブ諸国とイスラエルの関係改善は、ハマスやヒズボラの存在意義に深刻な影響を与えました。これらの組織は、イスラエルとの対立を核心に据えているため、アラブ諸国がイスラエルと和解すれば、その政治的正当性が大きく損なわれます。

また、支援の減少、交渉力の低下、イデオロギー的基盤の弱体化、地域的影響力の低下といった問題に直面する可能性が高まります。2020年のトランプ政権の仲介によるアブラハム合意に対する強い反発は、この存在意義の危機を反映しています。

このような状況下で、ハマスやヒズボラは自らの存在意義を維持するために、より過激な行動に出る可能性があり、2023年10月のハマスによるイスラエル襲撃もこの文脈で理解できます。つまり、アラブ諸国とイスラエルの関係改善は、これらの組織の存在意義を脅かす重大な要因となっており、彼らの行動に大きな影響を与えていると言えるでしょう。

米大統領選挙の最中、イスラエルが警戒を高めている可能性は十分にあります。選挙結果によって米国の中東政策が大きく変わるため、イスラエルはその不確実性に備えていると考えられます。また、大統領候補者たちがイスラエル支持を強調することで、敵対勢力を刺激する恐れがあります。

さらに、テロ組織が米国の関心を利用して攻撃を仕掛ける可能性もあり、イスラエルはこれに対処するため警戒を強化しているでしょう。選挙期間中の米国の外交的空白を利用した地域の不安定化も懸念されます。このような状況から、イスラエルが警戒を高めるのは自然な流れと言えるでしょう。

今回のポケベルや、トランシーバーへの攻撃はその一環かもしれません。ただし、そうだとすれば、この攻撃にはリスクも伴います。地域の緊張を高め、報復攻撃を誘発する可能性があるため、イスラエルはこの決定を慎重に検討したことでしょう。

ただ、今回の通信機器への攻撃は、中東地域の出来事にとどまらず、世界中の戦争行為に影響を与える可能性を秘めており、まさにイスラエルはパンドラの箱を開けてしまったかもしれません。これについては、昨日の記事で詳しく解説しました。こちらもあわせて、ご覧になって下さい。

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衣服内で同時爆発、市民パニック 体中が出血、重傷者多数 レバノン―【私の論評】安倍政権下の日米安全保障協議(2プラス2)の成果:サイバー武力攻撃対策に先見の明

衣服内で同時爆発、市民パニック 体中が出血、重傷者多数 レバノン

まとめ
  • レバノンで17日に発生したポケベル型通信機器の同時多発爆発は、イスラエルのヒズボラ戦闘員を標的とした作戦と見られ、市民に大きな恐怖と混乱をもたらした。
  • 爆発により少なくとも9人が死亡し、約2,750人が負傷。病院には多くの重傷者が搬送され、医療従事者不足の中、非番の医師も治療に動員された。
  • 爆発の原因にはマルウェアや高性能爆薬の可能性があり、ヒズボラは通信機器の使用に警戒感を示し、独自の通信システムを利用するよう指示していた。


レバノンで17日、ポケベル型通信機器の同時多発爆発が発生し、市民をパニックに陥れました。この事件は、イスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員を標的としたイスラエルの作戦だと見られています。

爆発により、少なくとも9人が死亡し、約2,750人が負傷しました。SNSには、爆発の瞬間を捉えた動画が投稿され、病院には多数の負傷者が搬送されました。爆発の原因については情報が錯綜しています。マルウェアの使用や高性能爆薬の仕込みなど、様々な可能性が指摘されています。

ヒズボラは以前から携帯電話の使用に警戒感を示しており、最近では独自の通信システムを利用するよう指示していたとされています。この前例のない攻撃は、市民を巻き込み、恐怖と憤りを引き起こしています。医療従事者不足の中、非番の医師も動員されて治療に当たりました。ヒズボラはイスラエルを非難し、報復を示唆しています。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】安倍政権下の日米安全保障協議(2プラス2)の成果:サイバー武力攻撃対策に先見の明

まとめ
  • ヒズボラが導入したポケベル型通信機器の爆発事件は、物理攻撃とサイバー攻撃の境界が曖昧になってきていることを示している。
  • 2019年日米安全保障協議委員会では、サイバー攻撃による物理的攻撃を武力攻撃とみなすものとして、日米安保条約第5条の規定を適用しうるものとした。これは安倍政権の成果。
  • サイバー攻撃が物理的被害をもたらす「サイバー物理攻撃」のリスクが増大しており、電力網や水処理施設、自動車システムなどが脆弱性が狙われる可能性が高まっている。
  • IoTデバイスの普及に伴い、サイバー攻撃の現実世界への影響が強まり、サイバーセキュリティと物理的セキュリティの統合が重要となっている。
  • 法規制の強化とリスク管理の必要性が高まり、統合的なアプローチによるセキュリティ体制の構築が求められている。
ヒズボラが導入した通信機器は、台湾メーカーの最新型ポケベルで、ここ数カ月以内に導入されたものです。この機器は、イスラエルに位置情報を察知されにくく、サイバー攻撃のリスクが低いと考えられいたようです。

爆発の原因については、通信機器内部に爆発物が仕込まれていた可能性や、遠隔操作で爆発させる技術的可能性が議論されています。多くの専門家やメディアは、この攻撃がイスラエルの工作である可能性を指摘していますが、具体的な証拠は公表されていません。

一方、米国防総省は事件への関与を否定しています。技術的側面では、使用されていた機器が従来のポケベルよりも高度な機能を持っていた可能性が示唆されています。

この前例のない攻撃方法は、中東地域の緊張をさらに高める可能性があり、特にヒズボラとイスラエルの関係に大きな影響を与えると考えられます。しかし、この事件の詳細な仕組みや背景については、まだ多くの不明点が残されています。今後の調査や関係国の声明によって、さらなる情報が明らかになることが期待されます。


2019年4月19日に開催された日米安全保障協議委員会(2プラス2)(写真上)では、日米両国が「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて協力することを確認しました。これについては、このブログにも掲載しました。この会議で特に注目されたのは、宇宙、サイバー、電磁波を含む新たな領域での協力の重要性が強調されたことです。

特筆すべきは、サイバー攻撃に対して日米安保条約第5条が適用され得ることが明記されたことです。この条項は、日本国の施政下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合、日米両国が共同して対処することを定めています。具体的には、日本が武力攻撃を受けた際、アメリカ合衆国は日本を防衛する義務を負うことを意味します。

これは、サイバー攻撃による物理的攻撃を武力攻撃と同視し、自衛権の対象となり得ることを意味しています。この決定は、NATOなど他の国際的な取り組みの流れに沿ったものであり、サイバーセキュリティの国際規範の強化につながる重要な一歩だったといえます。

これらの成果は、安倍政権下での外交・安全保障政策の重要な一環として評価できます。安倍晋三首相の時代には、特に日米同盟の強化が重視され、「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンも安倍政権が提唱してきた戦略の一部でした。サイバー攻撃に対する日米安保条約第5条の適用を明記したことは、安倍政権のリーダーシップのもとで進められた安全保障政策の成果と言えます。

この合意は、主に中国とロシアの宇宙空間やサイバー空間での活動を念頭に置いたものですが、最近のレバノンでのポケベル型通信機器の爆発事件とも無関係ではないと考えられます。この事件は、通信機器を利用した新たな形態の攻撃として、サイバーセキュリティの重要性を改めて浮き彫りにしました。

ポケベル型通信機器の爆発事件は、従来の物理的な攻撃とサイバー攻撃の境界線が曖昧になりつつあることを示しています。この事件は、日米が2019年に合意したサイバー攻撃への対応強化の必要性を裏付けるものとなっています。通信機器を介した攻撃が、物理的な被害をもたらす可能性があることが明確になり、サイバーセキュリティと国家安全保障の関係がより密接になっていることを示しています。

このような状況下で、日米両国がサイバー防衛の協力を強化することは、同盟の強化だけでなく、新たな形態の脅威に対する国際的な対応能力の向上にもつながると考えられます。ポケベル型通信機器の爆発事件は、2019年の日米合意の重要性と先見性を改めて示す出来事となり、今後のサイバーセキュリティ政策に大きな影響を与える可能性があります。

AI生成画像

ポケベル型通信機器の爆発事件は、サイバー攻撃が物理的な被害をもたらす可能性を示す最新の事例です。このような「サイバー物理攻撃」または「サイバー運動攻撃」と呼ばれる攻撃は、近年増加傾向にあり、重大な懸念事項となっています。以下に、サイバー攻撃が物理的攻撃になりうる事例や可能性をいくつか挙げます

1. 産業制御システム(ICS)への攻撃:
2010年のStuxnetウイルスは、イランの核施設の遠心分離機を物理的に破壊しました。同様の攻撃が他の重要インフラに対しても可能です。

2. 電力網への攻撃:

2015年にウクライナで発生した停電は、サイバー攻撃によるものでした。2013年にはアメリカのカリフォルニア州で、メトカーフ変電所が物理的な攻撃を受け、大規模な損害が発生しました。2016年には、ロシアのハッカー集団がアメリカのバーモント州の電力会社のシステムに侵入を試みましたが、幸いにも電力網への直接的な影響はありませんでした。

同じ時期にイスラエルでも、国家電力局のコンピューターシステムが大規模なサイバー攻撃を受けましたが、迅速な対応により被害は最小限に抑えられました。

さらに、2022年にはアメリカで電力インフラに対する攻撃が急増し、過去10年で最多の件数を記録しました。これらの事例は、電力網がサイバー攻撃と物理的攻撃の両方に対して脆弱であることを示しており、電力インフラの保護が重要な課題となっています。

3. 水処理施設への攻撃:
2021年にフロリダ州の水処理施設がハッキングされ、飲料水に含まれる水酸化ナトリウムの濃度を危険なレベルまで上げようとする試みがありました。具体的には、ハッカーが遠隔操作で水処理システムに侵入し、水酸化ナトリウムの濃度を通常の100ppmから11,100ppm(約111倍)に引き上げようとしました。幸いにも、オペレーターがすぐに異常に気づいて設定を元に戻したため、実際の被害は発生しませんでした。

4. 自動車システムへのハッキング:
研究者たちは、車両の制御システムをリモートでハッキングし、ブレーキやステアリングを操作できることを実証しています。

5. 医療機器への攻撃:
インスリンポンプやペースメーカーなどの医療機器がハッキングされ、患者の生命を脅かす可能性があります。実際の攻撃ではなく、現在のところは潜在的なリスクや脆弱性の発見が報告されていますが、これらのリスクに対処することが患者の安全を確保する上で極めて重要です。

6. スマートホームデバイスの悪用:
スマート家電やIoTデバイスがハッキングされ、火災や他の物理的被害を引き起こす可能性があります。

これらの事例は、サイバーセキュリティが単にデータ保護の問題ではなく、物理的な安全にも直結することを示しています。重要インフラや産業システムのデジタル化が進むにつれ、このような脅威はさらに増大する可能性があります。

現在までは、サイパー攻撃が物理的攻撃になった事例はあまり報告されていませんが、今回の事件により、こうした攻撃が一気に顕在化したといえます。

今後の、サイバーセキュリティ対策は、デジタル空間と物理的な世界を包括的に捉えるアプローチが不可欠となりました。ネットにつながるIoT機器の普及により、サイバー攻撃が現実世界に及ぼす影響が増大しており、物理的なセキュリティ対策との連携が重要性を増しています。


同時に、人的要因や組織的な取り組みも考慮に入れる必要があります。統合的なリスク管理を行うことで、より効果的なセキュリティ体制を構築できます。

また、強化される法規制への対応も、この包括的なアプローチの中で考えていく必要があります。サイバー空間と物理的な世界の境界が曖昧になっている現代において、このような統合的な視点は、組織の安全と持続可能性を確保するための鍵となるでしょう。

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2024年9月17日火曜日

なぜ「日本語が話せない」在日中国人が急増しているのか…国内にじわじわ広がる「巨大中国経済圏」の実態―【私の論評】在日中国人の急増と社会・経済圏形成:日本がとるべき対策

なぜ「日本語が話せない」在日中国人が急増しているのか…国内にじわじわ広がる「巨大中国経済圏」の実態

まとめ
  • 日本における中国人の数は増加傾向にあり、2023年末時点で約82万2000人に達し、在日外国人の約3分の1を占めている。
  • 在日中国人の中で、「高度専門職」や「経営・管理ビザ」の取得者が増加しており、20~39歳の働き盛りが全体の半数を占めている。
  • 在日中国人は、内装業や顔認証システムの導入など、中国人向けのビジネスを展開し、独自の経済圏を形成している。
  • 中国系企業は、中国の先進技術(顔認証システムや清掃ロボットなど)を日本市場に導入する役割を担っている。
  • インバウンド事業、特に中国人団体旅行において、来日から観光、買い物まで一貫して中国人が関わる「一条龍」(イーティアオロン)と呼ばれる経済ネットワークが形成されている。
日本に住む中国人の数は年々増加しており、2023年末時点で約82万2000人に達しています。これは山梨県の人口に匹敵し、全在日外国人の約3分の1を占めています。中国人の多くは東京都や神奈川県、埼玉県など首都圏に集中し、特に20〜30代の働き盛り世代が増えており、「高度専門職」や「経営・管理ビザ」を取得している人が多いです。かつてのような不法滞在者や犯罪者は減少し、中国人の経済活動は日本国内でますます活発化している。


在日中国人は日本国内で中国人同士の取引を重視し、独自の経済圏を形成している。たとえば、内装業を営む周勇強氏のケースでは、中国人顧客が口コミで広がり、社員や仕入れ先、顧客のほとんどが中国人で構成されるビジネスモデルを構築している。日本では通常、マンションの内装があらかじめ整えられているが、

中国ではスケルトン状態で販売され、顧客自身が内装を手配する。そのため、日本国内でも中国人顧客が自分の好みに合わせて内装を変える需要があり、周氏の会社はこのニーズに応えている。また、富裕層が日本で不動産を購入した際に内装を依頼するケースも増えており、彼の会社はそれに対応してビジネスを拡大している。

一方、顔認証システムなどの先進技術も中国から日本に持ち込まれている。天時情報システムの武藤理恵氏が手掛ける顔認証システムは、非接触で衛生的であることから、特にコロナ禍で急速に需要が拡大した。このシステムは企業やホテル、スポーツジムなどに導入され、日本国内の中国系企業がその設置を担っている。武藤氏は中国の技術の進展に衝撃を受け、これを日本市場に導入することを決意し、日本におけるビジネス展開を図っている。

さらに、観光業でも中国人同士のネットワークが活発だ。団体旅行客は中国の旅行会社で手続きを行い、来日後も中国系旅行会社によってサポートされている。かつての「爆買い」ブーム時には、中国人観光客をターゲットとした免税店や土産物店が増加し、観光バスのガイドや販売員も中国人が多く従事していた。

また、個人旅行者はSNSを駆使して情報を集め、日本滞在中も中国人経営の違法タクシーなどを利用することがある。これらの中国人向けのビジネスは「中国式エコシステム」(中国語では一条龍"イーティアオロン")とも呼ばれ、中国人だけで経済活動が完結する仕組みが日本国内に広がっている。

このように、日本国内では中国人が独自の経済圏を形成し、観光業やサービス業、技術分野においてもその影響力を強めており、日本社会においても無視できない存在となっている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】在日中国人の急増と社会・経済圏形成:日本がとるべき対策

まとめ
  • 日本のインターナショナルスクールや進学校に中国人学生が増加傾向にあり、中国の中産階級や富裕層が日本の教育機関に注目している。
  • 中国人による高級マンション購入が増加しており、2022年の外国人による新築マンション購入の約7割を占めている。
  • 在日中国人コミュニティが独自の「中国式エコシステム」を形成し、日本のインフラや教育システムを利用しながら経済活動を行っている。
  • 中国の法律が海外在住の中国人に対しても中国政府への協力義務を課しており、これが潜在的な安全保障上のリスクとなっている。
  • 日本は国家安全保障の観点から、ビザ発給基準の厳格化や技術流出防止策の強化など、在日中国人に対する対策を強化する必要がある。
最近、日本のインターナショナルスクールや進学校に中国人の学生が増加しています。インターナショナルスクールは、英語での国際的な教育を求める中国人家庭に人気で、ビジネスや滞在の関係で通うケースも多いです。

また、日本の進学校には、中国のエリート層からの入学希望者が増えており、日本の教育システムに合わせた支援を受けることが一般的です。中国の中産階級や富裕層の家庭が、将来の国際的キャリアを見越して、日本の教育機関に注目しています。この動きは教育だけでなく、ビジネスや外交にも影響を与えています。

「億ション」を購入する中国人に関してはテレビも話題に

都内の高級マンション、いわゆる「億ション」を購入する中国人が増加しているという傾向が報告されています。不動産経済研究所の調査によると、2022年の外国人による新築マンション購入のうち、中国人が約7割を占めており、その多くが1億円以上の物件です。東京都心部、特に港区や中央区での購入が目立ちます。

日本の不動産市場の安定性や、円安の影響で割安感が出ていることも要因とされています。これらの購入者は、自社の中国人社員や家族の居住用、または資産運用として物件を取得しており、都心部の不動産価格上昇にも影響を与えている可能性があります。

東京には中国語専門の本屋(写真下)が開店しました。この書店は、在日中国人や中国語を学ぶ人々のために、中国本土や台湾、香港の書籍を約2万冊取り揃えています。書店内には文学作品や学術書、教材などが豊富にあり、訪れる人々は中国茶を楽しむこともできます。この新たな書店の開店は、日本における中国語の需要の高まりを反映しており、在日中国人コミュニティにとって重要な文化的資源となるでしょう。


中国人による「中国式エコシステム」は、日本のインフラや教育システムを利用して独自の経済圏を形成しています。この現象は、上の記事にもある通り在日中国人の増加に伴い、特に20代から30代の「高度専門職」や「経営・管理ビザ」を持つ人々が増えていることに起因しているようです。

彼らは日本でのビジネスや教育を通じて、自己のコミュニティ内で経済活動を行い、口コミを通じて顧客を増やしています。このような状況は、日本社会への統合を妨げる可能性があり、文化的な摩擦や教育システムへの影響も懸念されます。

また、中国系企業が日本市場で成長する一方で、関連ビジネスはほとんど中国人によって占められ、日本経済全体への還元が限定的であるという批判もあります。こうした動きは、長期的には日本社会の調和や国民の一体感に課題をもたらすかもしれません。

ただ、2023年末時点での在日中国人人口約82万2000人は、日本の総人口の約0.66%に相当します。これは日本の総人口の1%にも満たない割合です。そのため、現在のところは、大きな弊害があるとはいえないでしょう。

しかし、今後中国の経済の低迷などから、日本に合法的に移住する中国人が増えるのは間違いないでしょう。いずれ、弊害がかなりでてくることになるでしょう。

しかし、それ以前に日本は、中国人の「高度専門職ビザ」や「経営・管理ビザ」を制限すべきです。以前もこのブログに掲載したように、米台は中国人の移住を厳しく制限しています。これは、台湾に関しては、当然といえば、当然です。これは、中国による浸透を防ぐことが大きな目的であるからと理解できます。

では米国では、なぜ移住を制限しているかといえば、それはスパイの入国を阻止するという意味合いがあります。


2020年5月に発令された大統領布告13936号は、当時の米国大統領ドナルド・トランプ氏によって発令されました。この布告は、中国の軍民融合戦略に関連する学生や研究者のビザ発給を厳しく制限する内容を含んでいます。

具体的には、中国の軍事関連機関と関係のある学生や研究者に対して入国を制限し、スパイ活動や情報収集のリスクを軽減することを目的としています。また、米国の先端技術や機密情報が中国軍に流出することを防ぐため、ビザ発給の審査が厳格化されています。

この政策は、米国の国家安全保障と技術的優位性を維持するための重要な施策として位置づけられています。

米台と比較すると日本は、あまに無防備です。それは、現状では今だ在日中国人の数が少ないということに起因しているのでしょうが、在日中国人の数は今後増えることはあっても今のままでは、減ることはないでしょう。

中国の国家情報法、反スパイ法、国家安全法等の法律が海外在住の中国人を含むすべての中国国民に対し、中国政府への協力義務を課している現状を踏まえると、日本は国家安全保障の観点から、在日中国人に対する対策を強化する必要があります。

具体的には、ビザ発給基準の厳格化、技術流出防止策の強化、情報収集・分析能力の向上、違反者の国外退去等法的枠組みの整備、国際協調などが求められます。これらの対策を、すべての在日中国人、日本へ移住しようとする中国人に対して一律に適用されるべきであり、「日本社会・経済への貢献」、「平等・人権」、「人柄」、「信条」等という主観的・抽象的な判断に基づいて例外を設けるべきではありません。

日本は自国の安全と利益を最優先に考え、潜在的なリスクを最小限に抑えるための措置を講じる必要があります。

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2024年9月16日月曜日

「トランプが負けたら米国は血の海になる」!?…大統領選「テレビ討論会」はデタラメだらけ!ハリスとABCが深めた「米国の分断」―【私の論評】行き過ぎたアイデンティティ政治が招きかねないファシズムの脅威

「トランプが負けたら米国は血の海になる」!?…大統領選「テレビ討論会」はデタラメだらけ!ハリスとABCが深めた「米国の分断」

まとめ
  • テレビ討論会での司会者の偏った対応が、トランプとハリスの発言に対するファクトチェックに影響を与えた。特に中絶に関する議論では、ミネソタ州の法律が誤解され、トランプの指摘が否定された。
  • ハリスはトランプ政権下での体外受精治療(IVF)の禁止を主張したが、トランプはその方針を打ち出しておらず、ハリスの発言は事実誤認であった。
  • FBIの犯罪データについて、トランプの主張が正しい可能性があるにもかかわらず、司会者はそのデータを根拠にトランプを批判した。
  • シャーロッツビル事件に関するトランプの発言が誤解され、ハリスはその文脈を無視して批判を行ったが、司会者はその誤りを指摘しなかった。
  • 政府とメディアが一体となって真実を歪め、政敵を攻撃する傾向が見られ、これはファシズム的な現象として警戒すべき状況である

アメリカ大統領選挙のテレビ討論会

アメリカ大統領選挙のテレビ討論会において、司会者の偏った対応や事実誤認が見られた。トランプの発言に対して不適切なファクトチェックが行われ、ハリスの誤った発言は修正されなかった。中絶に関する議論では、ミネソタ州の法律や実態が正確に伝えられず、体外受精治療に関するトランプの方針も無視された。犯罪統計についても、FBIのデータの不備が考慮されなかった。シャーロッツビル事件や移民問題に関するトランプの発言も、文脈を無視して批判された。

中絶に関して、ミネソタ州知事ワルツの発言をトランプが指摘した際、司会者は不適切なファクトチェックを行った。実際には、ミネソタ州の中絶指針では妊娠期間による制限がなく、生存乳児保護規定も削除されている。これは生後の赤ちゃんを殺すのを認めたと表現しても、間違いとはいえない。

ハリスの体外受精治療に関する発言も事実誤認であり、トランプ政権がIVFを禁止したのが仮に事実として正しいとしても、自分たちの政権でIVFを復活させればよいだけである。そしてそもそもトランプ政権がIVFを禁止したという事実はない。トランプが最近発表したIVF支援方針は無視された。

犯罪統計に関しては、FBIのデータ収集システムの問題(システム交換によるものとされる)により、多くの都市のデータが反映されていない状況が指摘された。そのため、FBIの統計と司法統計局の調査結果に大きな矛盾が生じている。トランプの犯罪増加の主張に対する司会者の反論は、この状況を考慮していなかった。

シャーロッツビル事件に関するトランプの発言は、文脈を無視して批判された。トランプがネオナチや白人至上主義者を「とてもよい人」と呼んだという解釈は、左派系のファクトチェック機関も否定している。しかし、ハリスはこの誤った解釈を繰り返し、司会者も修正しなかった。

移民問題に関して、トランプのスプリングフィールドでの発言が取り上げられた。ハイチからの移民が増加したことによる地域の変化や住民の不満が背景にあるが、これらの複雑な状況は無視され、トランプの「ハイチからの移民がペットを食べている」という一部の発言のみが切り取られ批判された。

これらの事例は、政府とメディアが一体となって真実を歪め、政敵を攻撃するファシズム的な傾向を示している。この状況下で、かつての民主党支持者やイーロン・マスク、ザッカーバーグなどの著名人がトランプ支持に回る現象が起きている。これは現在の民主党のあり方にファシズムの兆候を感じ取り、民主主義の危機を懸念しているためだと考えられる。

朝香 豊(経済評論家)

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】行き過ぎたアイデンティティ政治が招きかねないファシズムの脅威

まとめ
  • 著名人(ケネディ、イーロン・マスク、ザッカーバーグ)は、民主党の権威主義や検閲が民主主義に対する脅威であると認識しているようだ。
  • 民主党がポリティカル・コレクトネス、アイデンティティ政治、キャンセル・カルチャーを受け入れていることが、言論の自由を脅かす。
  • アメリカ社会では、アイデンティティ政治やキャンセル・カルチャーの進行が表現の自由や学問の自由に対する懸念を呼んでいる。
  • 調査結果によると、多くのアメリカ人がポリティカル・コレクトネスやキャンセル・カルチャーを自由や社会の分断に対する脅威と見なしている。
  • トランプ氏の今後の討論会欠席の意向を表明したが、これはハリス・メディアに付け入る隙を与えないようにすることと、米国社会のさらなる分断をさけるためと、さらにトランプの選挙戦略の一環とみられる。

ロバート・ケネディ・ジュニア、イーロン・マスク、ザッカーバーグのような著名人は、警告のサインに気づいているようです。彼らは、民主党の権威主義と検閲へのシフトが民主主義への脅威であることを理解しています。


イーロン・マスク(左)とザッカーバーグ
これらの人物は、自由と米国建国時の理念を守ろうとしているようです。彼らは、現状の民主党が米国の憲法上の権利に重大な危険をもたらしていることを認識しています。 また、民主党がポリティカル・コレクトネス、アイデンティティ政治、キャンセル・カルチャーを受け入れていることも、ファシズム的傾向を示していると言えるでしょう。彼らは、米国人をグループに分け、対立を煽り、検閲や反対意見の封殺を推進していると批判されています。これは、民主主義社会の根幹である言論と表現の自由を侵食する危険な動きです。


これらのうち日本ではあまり知られていないアイデンティティ政治(Identity Politics)とは、個人の人種、性別、宗教、性的指向、階級などの社会的な属性に基づいて、そのグループの利益や権利を重視し、政治的主張や活動を行うことです。この考え方では、歴史的に抑圧されてきたグループが自身のアイデンティティを強調し、平等な権利や社会的な公正を求めることが重視されます。しかし、これは一方で米国人としての統一性や共通の理念を破壊する動きでもあります。

ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーは、アイデンティティ政治の一環とみなすことができます。これらは、アイデンティティ政治が重視する社会的な公正や権利の拡張を目指すものの一部であり、特定の社会的グループの利益を守るために展開されています。要するに、ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーはアイデンティティー政治を展開するための道具といえます。

アイデンティティ政治は米国人としての統一性や共通の理念を破壊する動きでもある

例えば、黒人の権利運動、LGBTQ+の権利拡大、フェミニズムなどがアイデンティティ政治の一部です。支持者はこれが社会正義の推進に不可欠だと考える一方で、批判者は、米国人という統一性や共通の理念等を破壊し、社会を分断させたり、特定のグループを優遇しすぎる可能性があると懸念しています。

アメリカ社会では、ポリティカル・コレクトネス、キャンセル・カルチャー、アイデンティティ政治が行き過ぎた事例が増加しています。これらの現象は、表現の自由や学問の自由を脅かす可能性があるとして、特に保守派からの批判が高まっています。 

一例として、2020年6月にサンフランシスコのゴールデンゲートパークで発生した事件があります。抗議者が、アメリカ国歌「星条旗」の作詞者であるフランシス・スコット・キーの銅像を引き倒しました。理由はキーが奴隷所有者であったからですが、この行為は歴史的人物の功績を全否定することにつながるとして批判されました。

 また、大学キャンパスでの言論の自由の制限も問題視されています。保守派の講演者が、学生団体からの抗議により講演を中止せざるを得なくなるケースが増加しており、これが多様な意見を聞く機会を奪い、大学本来の自由な議論の場を損なっていると指摘されています。

 さらに、ソーシャルメディア企業がトランプ氏などの保守派のアカウントを停止したり、投稿を削除したりすることも、表現の自由を脅かす行為として批判されています。特定の政治的見解を持つユーザーが選択的に規制されることは、公平性に欠けるとの指摘があります。 

2021年3月に実施されたハーバードアメリカ政治研究センターとザ・ハリス・ポールによる世論調査では、キャンセル・カルチャーに対する懸念が浮き彫りになりました。調査結果によると、回答者の64%がキャンセル・カルチャーの成長を自由への脅威と見なしており、36%はそう考えていませんでした。

また、36%がこの問題を大きな懸念事項と捉え、54%がインターネット上で意見を表明する際にキャンセルされることを懸念していると答えました。この調査は、アメリカ社会におけるキャンセル・カルチャーに対する不安が広がっていることを示しています。 ポリティカル・コレクトネスやアイデンティティ政治に関する他の調査結果も存在します。

2021年のピュー研究所の調査では、アメリカ人の59%が「人々は自分の言動に過度に気をつけている」と答えており、ポリティカル・コレクトネスに対する懸念が示されています。

また、2018年のギャラップ社の調査によると、アメリカ人の57%が「アメリカは政治的に正しくなりすぎている」と考えています。

2020年のユーガブ社の調査では、55%が「キャンセル・カルチャーは民主主義社会にとって脅威である」と回答しています。

さらに、2022年のアメリカン・パースペクティブス調査では、回答者の66%が「アイデンティティ政治は人々を分断している」と感じています。

2021年のモーニング・コンサルト社の調査では、アメリカ人の64%が「ポリティカル・コレクトネスは表現の自由を制限している」と回答しています。

キャンセル・カルチャーは異論を唱える人を社会的・文化的に抹殺する


これらの調査結果は、多くのアメリカ人がポリティカル・コレクトネスやアイデンティティ政治に対して懸念を抱いていることを示しており、特に表現の自由や社会の分断に関する不安が顕著です。

これらの事例からも、アイデンティティ政治とキャンセル・カルチャーが行き過ぎると、社会の分断を深め、民主主義の基盤である言論の自由を脅かす可能性があることがわかります。今後、多様性を尊重しつつ、米国民としての統合を図りながら、いかに建設的な対話を促進するかが、アメリカ社会の重要な課題となっています。

米国社会の分断は、直接的ではないにしろ、先日のトランプ氏暗殺未遂事件などにつながっている可能性は否定しきれません。本日も暗殺未遂がありました。米国の社会の分断は、深刻なレベルに達しているようです。

なお、この記事の筆者である朝香氏は、「今回の討論会を通じて、トランプ陣営はハリス陣営の戦術を十分に理解できた。これを踏まえて、次回の大統領選挙討論会ではトランプが攻勢に出ることを期待したい」と述べています。

しかし、トランプ氏は今後討論会に出ない意向を表明しています。私はこれに賛成です。なぜなら、討論会が繰り返されるたびに、ハリス陣営やメディアはあらゆる手段を用いてトランプ氏を攻撃し、彼らに付け入る隙を与えるだけになるでしょう。

その結果、米国社会の分断が一層深まる可能性があります。これを考えると、今後の討論会に参加しないというトランプ氏の考えは、正しいし合理的であり、これはトランプ氏の巧妙な戦略の一環である可能性が高いです。この点については、以前のブログでも言及していますので、ぜひそちらもご覧ください。


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2024年9月15日日曜日

中国から台湾へ密航者相次ぐ いずれも軍事要衝に漂着、ゴムボートをレーダー検知できず―【私の論評】日本の安全保障と中国人の日本移住:米台との比較と今後の課題

中国から台湾へ密航者相次ぐ いずれも軍事要衝に漂着、ゴムボートをレーダー検知できず

まとめ
  • 台湾の海巡署は、9月14日に北部・新北市の海岸付近でゴムボートに乗った中国籍の男を発見・拘束し、男は脱水症状を訴えて治療を受けている。
  • 男は中国浙江省寧波から出発し、台湾で新たな生活を始めたかったと供述している。
  • 現場は中国軍の上陸が想定される淡水河の河口から数キロの地点であり、台湾への密航者の漂着が相次いでいることから、台湾側の対応能力を試す「グレーゾーン作戦」の可能性が指摘されている。


台湾の海巡署は、9月14日に北部・新北市の海岸付近でゴムボートに乗った中国籍の男を発見し、拘束した。この男は重度の脱水症状を訴え、病院で治療を受けている。彼は30歳前後で、中国浙江省寧波から出発したと供述し、「中国で借金があり、台湾で新たな生活を始めたいと思った」と説明している。

拘束された地点は、中国軍が台湾に侵攻する際の上陸地点として想定される淡水河の河口から数キロの距離にあり、台湾当局はこの地域における中国からの侵入に対して警戒を強めている。実際、6月には小型ボートを使って侵入した中国海軍の退役軍人が逮捕され、「自由を求めて台湾に投降した」と供述していた。

今回の事件は、台湾における中国からの「密航者」の漂着が相次いでいることを示しており、台湾の対応能力を試す「グレーゾーン作戦」の一環ではないかとの懸念も広がっている。台湾の陸軍は、有事に備えて防衛部隊を配置しており、淡水河の河口は台北の官庁街から約22キロの距離に位置している。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日本の安全保障と中国人の日本移住:米台との比較と今後の課題

まとめ
  • 台湾では、中国人男性が亡命を希望し、海巡署が逮捕した事件が発生。これにより台湾の防衛上の弱点が指摘されている。
  • 日本でも密航の問題があり、中国からの不法入国が増加している。特に「蛇頭」と呼ばれる密航組織が関与しているケースが多い。
  • 日本と台湾は密輸密航対策協力覚書を締結し、海上保安機関間の協力を強化している。
  • 中国経済の悪化により特に若年層の不安が高まっている。これが日本への移住の増加につながっている。
  • 日本に移住する中国人の増加には不動産市場や教育機関への影響、安全保障上の懸念があり、高度人材の受け入れについても慎重な対応をすべきであり、日本も米台と同じく中国人の移住を制限すべきである。

台湾メディアの「フォーカス台湾」によれば、台湾の海巡署は9月9日、新北市の河口に小型船で侵入した60歳前後の中国人男性を逮捕しました。この男性は、中国政府を批判したことを理由に亡命を希望していると供述しています。この事件に関連して、台湾の国防相は、中国の「グレーゾーン作戦」の可能性を指摘しました。

海巡署は、レーダーで小型船を台湾の漁船と誤認し、対応が遅れたことが問題視されています。台湾政府は、警備体制の強化を検討しており、過去11年間で121人の中国人が台湾に不法進入していることも報告されています。専門家は、この事件が台湾の防衛上の弱点を探る中国の試みである可能性を指摘しており、台湾の沿岸警備の課題が浮き彫りになっています。

日本でも、密航の問題があります。日本への中国からの密航に関する具体的な統計データは限られていますが、いくつかの重要な点があります。近年、日本の国境を越えた不法入国が増加しており、特に「蛇頭」と呼ばれる国際的な密航組織(主に中国の福建省を拠点とする)が関与しているケースが多いです。また、国内に根付いた不法滞在者が犯罪グループを形成し、身代金目的の誘拐や広域窃盗事件が報告されています。


2018年には日本と台湾が「密輸密航対策協力覚書」を締結し、海上保安機関間の協力が強化されました。密航者は小型船やゴムボートを使用することが多く、レーダーでの検知が難しい場合もあります。経済的理由から新たな生活を求める人々が密航を試みるケースも見られ、これらは日本の法執行機関にとって継続的な課題となっています。

日本の海上保安庁と台湾の海巡署(日本の海保に相当)が2024年7月18日、千葉県房総半島沖で初めての合同訓練を実施しました。これは1972年の日台断交後、初めての海上訓練となります。この訓練の主な目的は、中国の強引な海洋進出に対応し、東シナ海や南シナ海での不測の事態に備えることです。また、台湾有事への危機感が高まる中、訓練の定例化も目指しています。

この訓練に関しては、具体的な訓練内容は公開されていないため、詳細は不明ですが、両国の海上保安機関の連携強化と、地域の海上安全と法執行能力の向上を目的としたものだと推測されます。「密輸及び密航への対策に係る協力に関する覚書」に基づいた訓練も行われた可能性が高いと考えられます。

日台合同訓練のため東京港に入港する台湾の「巡護9号」7月11日

私は、今回の出来事は確かに「グレーゾーン作戦」などの軍事的な意味合いを否定はしませんが、そのようなことよりも、もっと差し迫った脅威が、それも台湾よりは日本にあると考えています。

それは、中国経済の悪化が移住や密航等の増加につながる可能性です。まず、経済の減速に伴い、失業率の上昇や所得の低下が予想され、これによりより良い経済機会を求めて海外へ移動しようとする人々が増える可能性があります。また、経済悪化は社会的な不満や不安を高める傾向があり、政治的な抑圧と相まって、一部の人々が国外への脱出を考えるきっかけとなることも考えられます。

さらに、経済の不確実性が高まると、富裕層が資産を海外に移転しようとする動きが強まります。これが合法的な移住だけでなく、非合法な手段での出国にもつながる可能性があります。中小企業の倒産が増加することで、経営者や従業員が新たな機会を求めて海外へ移動しようとすることも考えられます。また、特に若年層において、中国国内での将来に対する不安が高まっており、これが海外への移住や場合によっては密航につながる可能性もあります。

米台と日本における中国人の移住状況には顕著な違いがあります。米国では、2023年に不法入国した中国人が3万7000人以上に達し、前年の約10倍に増加しました。この急増の背景には、ビザ発給制限や中国国内の経済・政治的な不満、さらにSNSを通じた密入国情報の拡散が影響しています。

多くの人々がより良い経済機会や自由を求めて、冒険的な試みとして不法入国を選択しています。

台湾は中国人の移住に対して厳格な規制を設けています。原則として、中国人の台湾への渡航は禁止されており、移住には特別な手続きが必要です。主に、台湾人との結婚や台湾での就労、投資、就学が認められています。

特に中国人配偶者の場合、居住権を得るまでに長期間かかります。また、中国人は台湾国籍と中国国籍を同時に持つことができず、台湾国籍を取得するには中国国籍を放棄する必要があります。これらの規制は、人口構成の変化や安全保障上の懸念から設けられており、台湾政府は慎重に管理しています。

一方、日本では、中国人の合法的な移住が増加傾向にあります。これは、日本の労働力不足を背景に外国人労働者の受け入れが拡大していることが大きな要因です。

また、日本の大学や専門学校への留学生の増加、さらに日本企業による中国人高度人材の採用も進んでいます。これらの動きは、教育やキャリア向上を目的とした安定した移動パターンを示しています。

このように、米台への不法入国は主に経済的な冒険を求める動機による一方、日本への合法的移住は、より安定した生活を求める傾向が強いです。今のままだと、今後日本への合法移住が増えていくのは間違いありません。

米台が中国人の移住を制限しているにもかかわらず、日本はそうではありません。これは、大きな問題になりつつあります。

日本に移住する中国人の増加には、いくつかの懸念すべき点があります。特に、多くの中国人移住者が日本に帰化せず中国籍を保持し続けることは、潜在的な危機をもたらす可能性があります。

まず、不動産市場への影響や教育機関への圧力、文化的摩擦、雇用市場への影響などが懸念されます。さらに、安全保障上の問題も重要です。中国籍を保持し続ける移住者の中に、中国政府のスパイ活動に関与する可能性がある人物が含まれる可能性があり、日本の国家安全保障に影響を与える恐れがあります。

在日中国人組織で日本最大規模の「華人時代」写真は2018年の東京マラソンの応援で集まったときの写真

この懸念は、中国の法律によってさらに深刻化する可能性があります。中国には、海外に居住する中国人にも中国政府への協力を求める法律が存在します。具体的には以下の法律が挙げられます。
  1. 国家情報法(2017年制定):第7条で「いかなる組織及び公民も、法に基づき国の情報活動を支持、協力、協助する義務を負う」と規定しています。
  2. 反スパイ法(2014年制定、2023年改正):海外の中国人を含むすべての中国国民に対し、スパイ活動に関する情報を当局に報告する義務を課しています。
  3. 国家安全法(2015年制定):第11条で「中華人民共和国の公民、法人その他の組織は、国家の安全を維持する義務を負う」と規定しています。
これらの法律は、中国国籍を持つ者に対して、居住地に関わらず中国政府への協力を求める内容を含んでおり、日本在住の中国人にも適用される可能性があります。この法律により、個々の中国人の人柄や信条などは関係なく、日本への安全保障上の脅威が高まったといえます。

長期的には、移住者の増加が日本の社会保障制度に追加の負担をかける可能性や、特定の地域で中国文化の影響が強まり、日本の伝統的な文化や生活様式が変化する可能性も懸念されます。

高度人材を含む中国人の日本への移住には、極めて慎重な対応が必要です。中国の国家情報法により、これらの人材が日本の重要な技術や情報を中国政府に提供する可能性があり、安全保障上の重大な懸念があります。

また、産業スパイのリスクや、企業や研究機関の中枢での意思決定への影響も無視できません。さらに、習得した技術や知識の中国への移転、日本の長期的な国家戦略への悪影響、そして社会的影響力を通じた中国に有利な世論形成の可能性も考慮すべきです。

特に政府機関や防衛関連企業での機密情報へのアクセスは、国家安全保障上の極めて深刻なリスクとなります。

これらの理由から、特に高度人材とされる中国人の移住については、日本の国家安全保障、技術的優位性、そして長期的な国益を守るため、厳格な審査基準を設け、受け入れを厳しく制限すべきです。同時に、既に日本国内にいる中国人高度人材に対しても、適切な監視と管理体制の構築や場合によっては国外退去を求めるなどの対応が不可欠です。無論、高度人材以外の中国人に対しても、厳しくすべきです。

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2024年9月14日土曜日

中国、来年から15年かけ定年引き上げへ 年金財政逼迫を緩和―【私の論評】日・米・中の定年制度比較と小泉進次郎氏のビジョン欠如が招く日本の雇用環境破壊

中国、来年から15年かけ定年引き上げへ 年金財政逼迫を緩和

まとめ
  • 中国全国人民代表大会は法定退職年齢を段階的に引き上げる草案を承認し、男性は63歳、女性は58歳または55歳に設定される。
  • 平均寿命が延びる中、労働人口の減少が懸念されており、定年引き上げは年金財政の改善に寄与する可能性がある。
  • 専門家は、長期的には労働力不足を回避し、生産性の安定に役立つと指摘している。
中国全国人民代表大会常務委員会

 中国全国人民代表大会常務委員会は、退職年齢引き上げの草案を承認した。現在の退職年齢は男性が60歳、女性はホワイトカラーで55歳、工場労働者で50歳と低く、年金財政の逼迫を緩和するために段階的に引き上げる。

 2024年から実施され、最終的に男性は63歳、女性はホワイトカラーで58歳、工場労働者で55歳となる。退職年齢の引き上げは15年かけて行い、労働者は早期退職や延長を選べるようにする。

 年金財政の問題は深刻で、さらなる改革がなければ、2035年までに制度が資金不足に陥る可能性があると指摘されている。労働力人口の減少や平均寿命の延びが背景にある。

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【私の論評】日・米・中の定年制度比較と小泉進次郎氏のビジョン欠如が招く日本の雇用環境破壊

まとめ
  • 中国の定年年齢はかなり低く、定年引き上げは平均寿命の延長に伴う当然の措置といえる。
  • 米国には定年制度がなく、年齢に関わらず個人の意思で退職時期を決定できるが、能力低下での解雇は可能。
  • 米国の定年制度のメリットはキャリアの柔軟性が高いことだが、若年層の雇用機会が制限される可能性もある。
  • 小泉進次郎氏が「解雇規制の見直し」を提案しているが、米国と雇用慣行と異なる日本でこれを実施すれば、雇用の不安定化や企業競争力の低下などの懸念がある。
  • 小泉氏や中国共産党の政策は、将来の雇用環境に対する明確なビジョンが欠けている。
上のニュースを見て、中国にも定年制があることは知っていましたが、その定年年齢が非常に低いことには驚きました。中国人の平均寿命は過去数十年で大幅に伸び、現在は78歳前後となっています。さらに今後も寿命が延びると予測されており、今回の退職年齢の引き上げは当然のことといえるでしょう。

中国の定年退職者

一方、米国には「定年」という制度が存在しません。定年がないと聞くと、死ぬまで働かされるのかと思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。退職年齢はあくまで個人の判断に委ねられているのです。

米国では、1967年に制定された「雇用における年齢差別禁止法(ADEA)」により、40歳以上の労働者に対する年齢差別が禁止されており、定年制度は事実上廃止されています。そのため、企業が特定の年齢に達した従業員を強制的に退職させることはできません。この法律は採用においても適用され、求人広告や面接で年齢に関する質問をしたり、特定の年齢層を対象にした募集を行うことも禁止されています。

また、履歴書に生年月日の記載を求めることも避けられています。一部の職種(パイロットや公共交通機関の運転手など)では、安全性の観点から年齢制限が設けられることがありますが、一般的には個人の意思に基づいて退職時期を決めることが可能です。

ただし、年齢に関係なく、体力や能力の低下で業務が遂行できなくなった場合には解雇の対象となります。米国では、従業員の業務遂行能力が低下し、職務を適切にこなせない場合、解雇される可能性があります。ADEAは40歳以上の労働者を保護していますが、業務遂行能力に基づく雇用判断は許可されています。

雇用主は、解雇が年齢ではなく、業務遂行能力の低下に基づくものであることを証明する必要があります。また、解雇前に従業員に改善の機会を与えることが推奨されています。このように、年齢そのものを理由にした解雇は禁じられていますが、能力低下が証明されれば解雇が可能です。

米国では年齢を理由とした賃金カットや差別的待遇も厳しく規制されており、労働者の権利が法的に保護されています。ただし、能力や実績に基づく待遇差は認められています。

2021年の調査によれば、米国の平均的な退職予定年齢は64歳です。社会保障給付は62歳から受け取ることができ、65〜67歳で満額受給が可能です。これらが実質的な退職年齢の目安とされています。このように、米国では年齢を理由にした強制退職は認められておらず、個人の選択によって働き続けることが可能です。

日本や中国のように定年制がある国と、米国のように定年がない国とでは、労働者にとってどちらが望ましいのでしょうか。

定年制は雇用の安定性を提供し、定年までの雇用が保証される一方で、米国では年齢に関係なく能力に基づいて評価されるため、高齢者でも働き続ける可能性があります。

このため、日本や中国では新卒定期採用が一般的ですが、米国にはそのような制度がありません。キャリアのない新卒者は労働市場で不利になることが多く、人員整理の際にも新卒者が最初に対象になりやすいです。

一方、米国の制度はキャリアの柔軟性を高め、新しい挑戦をしやすくする利点がありますが、定年制がある国では年金受給開始年齢と連動して退職後の生活設計がしやすいというメリットもあります。また、米国の制度は年齢差別を防ぐ一方で、高齢者が長く働くことで若年層の雇用機会が制限される可能性も指摘されています。

定年がある日本ではバイデンの年齢が問題にされたが、定年がない米国では認知能力が問題とされた

どちらの制度が良いかは、一概には言えません。個人の価値観、キャリア目標、健康状態、経済状況によって、適した制度は異なります。理想的には、個人が選択肢を持ち、年齢に関係なく能力を発揮できる環境を提供しつつ、社会保障制度とのバランスを取ることが望ましいでしょう。

ところで、雇用というと、小泉進次郎氏は9月6日の総裁選出馬会見で、首相として1年以内に解雇規制の見直しを断行する意向を表明していました。現行の解雇規制について「大企業は解雇が困難で、配置転換が促進されている」と指摘し、特に「解雇回避の努力」を見直す方針を示しました。

小泉氏が言及している「4要件」とは、日本の労働法に基づく「整理解雇の4要件」のことです。これは企業が経済的理由で従業員を解雇する際に満たすべき条件として確立されたものです。

整理解雇の4要件は以下の通りです。

1. 人員整理の必要性:企業に経済的な人員削減の必要があること。
2. 解雇回避の努力義務:配置転換や希望退職の募集など、解雇を回避するための努力が行われたこと。
3. 被解雇者選定の合理性:解雇対象者の選定が合理的かつ公平な基準に基づいていること。
4. 手続きの妥当性:労働組合や従業員との協議が適切に行われたこと。小泉氏は、特に2番目の「解雇回避の努力義務」の見直しに意欲を示し、現行規制が大企業の解雇を難しくし、配置転換を促していると述べています。彼の提案は、これらの要件を緩和し、企業が人員整理をより柔軟に行えるようにすることを目指しています。

もし日本が米国のような雇用慣行を採用しているなら、小泉氏の主張にも一定の理解ができるかもしれませんが、現状では「解雇回避の努力義務」を軽減することは日本の雇用環境にいくつかのデメリットをもたらす恐れがあります。

まず、雇用の不安定化が進み、労働者の生活基盤が脅かされる可能性があります。また、企業が容易に従業員を解雇できるようになると、長期的な人材育成や技能の継承が困難になり、企業の競争力が低下するかもしれません。

さらに、解雇が容易になることで労使関係が悪化し、労働争議が増えることも考えられます。これにより企業の生産性が低下し、イメージも損なわれる恐れがあります。加えて、雇用不安が消費意欲を減退させ、内需が低迷するリスクもあります。

失業者が増えることで、社会保障制度への負担が増し、企業の社会的責任が軽視される可能性もあります。結果として、正規雇用の減少や非正規雇用の増加が進み、所得格差が拡大する懸念があります。これらの点を考慮すると、日本の雇用環境に適した改革を慎重に進めるべきです。

小泉氏の発言は、これらの影響を十分に考慮しておらず、しかも1年間で断行するというのですから、拙速であるといわざるを得ません。

小泉進次郎氏

中国共産党ですら、定年引き上げという雇用環境に大きな影響を与える改革を15年かけて段階的に進めようとしています。それにもかかわらず、小泉氏は1年以内に雇用環境に大きな変化をもたらす可能性のある改革を実行すると語っており、これは暴挙と言えるでしょう。

さらに、小泉氏と中国共産党には共通点があります。それは、両者ともビジョンのない政策を提案していることです。雇用環境を大きく変える可能性のある政策を掲げているものの、将来的にどのような雇用環境を目指すのかというビジョンが欠けています。

ビジョンのない政策は短期的な対応に終始し、長期的な発展には繋がりにくいものです。一貫性が欠如し、政策の効果が相殺される恐れがあります。また、限られた資源が非効率に使われ、無駄な投資が増える可能性もあります。さらに、短期的な利益に基づく政策が優先されることで、社会の分断が深まり、国際競争力が低下する恐れもあります。

このような背景を踏まえれば、小泉氏の主張は政治的センスを欠いており、総裁選への出馬は再考すべきではないかと感じます。

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