2023年3月22日水曜日

岸田氏訪問、ウクライナに大きな意義 「タフな首相」との声も―【私の論評】ベストタイミングの岸田首相キーウ訪問でかすむ中露首脳会談(゚д゚)!

岸田氏訪問、ウクライナに大きな意義 「タフな首相」との声も


 ウクライナにとって、岸田文雄首相から対ロシア圧力の強化と幅広い支援の継続、将来的な復興面での尽力など全面的な支持を取り付けられた意義は大きい。先進7カ国(G7)全首脳の訪問が実現し、ロシアへの抗戦は「民主主義を守る闘い」だとの色付けを改めて鮮明化できた上、5月の広島市でのG7首脳会議などを通じて自由主義陣営のさらなる結束の強化が期待できるためだ。

 ゼレンスキー大統領は岸田首相と会談した21日、「国際秩序の真の守り手だ」と日本を評価。日本の国力やアジアでの発言力、G7議長国としての役割を考慮すれば「本日の会談は世界的な成果をもたらすことができる」と強調した。

 岸田首相は会談で、制裁逃れをロシアに許さない仕組みづくりを日本やG7が主導すると表明。財政・復興支援で日本が役割を果たすとも述べた。日本は被爆国としてロシアの「核の威嚇」を容認しないことをG7首脳会議でも強く発信すると約束。いずれもウクライナが望んできた内容だ。

 ウクライナは後ろ盾とする米欧諸国に「支援疲れ」が広がることを危惧している。G7議長国の日本が強い姿勢を打ち出したことで、支援の継続や拡大が担保された形だ。

 同じ日にはロシアで中露首脳会談が行われ、和平の仲介に意欲を示す中国のロシア寄りの姿勢が浮き彫りになった。ロシアに侵略を断念させるためにもウクライナには日米欧との連携の重要性が増している。

 22日朝にワルシャワの首相府に到着した岸田首相はポーランドのモラウィエツキ首相に出迎えられた。前日にウクライナを訪問したばかりだったが、スーツ姿の岸田首相は疲れた表情を一切見せず、モラウィエツキ氏と笑顔で談笑する場面も。写真撮影では、満面の笑みで握手を交わした。取材に訪れた海外メディアの関係者からは「タフな首相だ」との声が漏れた。
共同記者会見で岸田首相は、ポーランドと日本の協力関係などについて語るモラウィエツキ氏を時折、じっと見つめながら真剣な表情で聞き入っていた。

【私の論評】ベストタイミングの岸田首相キーウ訪問でかすむ中露首脳会談(゚д゚)!

岸田首相のキーウ訪問、昨日の時点ではわからなかったことが本日明らかになりました。それは、岸田首相キーウ訪問のロシア側に対する事前通告ですが、通告されていたことが本日判明しました。

政府関係者によりますと、今回のウクライナ訪問について、日本政府はロシア側に対し、外交ルートを通じて事前に通告していたということです。

一方、課題となっていた岸田総理大臣の安全確保について、松野官房長官は22日の参議院予算委員会で、「ロシア軍の攻撃についての情報の入手やその情報に基づく避難など含め、ウクライナ政府が全面的に責任を負って実施した」と明らかにしました。

訪問の際の安全確保をめぐり、岸田総理大臣は現地で記者団に、「秘密の保持や危機管理、安全対策に万全を期すべく、慎重にウクライナ側と調整し、実現した。戦時下にあることから安全対策などの観点もあり、事前には厳格な情報管理を行った」と述べていました。

昨日は、岸田政権の、情報管理の甘さを指摘しましたが、どうもこれも違うようです。

岸田首相のポーランド着とキーウ行きの列車に乗った時間を確認すると、以下の通りです。
08:00 ポーランド着 
09:00 キーウ行列車に乗る
このことから、日本でテレビなどで、第一報が出た11:30には完全にウクライナ国内でした。岸田総理が列車に乗り込む映像のインパクトが強すぎてリアルタイムかのように錯覚した人が多ようですが、あれすら9:00より2時間半前の映像です。私自身も、踊らされたといえるかもしれません。岸田政権重要なことでは、情報統制も効いているようです。

ただ、具体的な日時までは、出ていなかつたものの、訪問予定自体が、マスコミに流れていたのは、事実でこのあたりは何とかすべきでしょう。

岸田総理大臣がウクライナを訪問したことについて、ロシア政府はこれまでのところ目立った反応は示していません。

ロシア国営のタス通信は、「岸田総理大臣は、ロシアに事前に通告したかどうかは記者団に明らかにしなかった。ロシアによる特別軍事作戦の開始以来、日本の総理大臣がウクライナを訪問したのは初めてで、G7では最後の首脳となった」などと伝えています。

一方、ロシアの有力紙コメルサントは、同じ時期に首都モスクワで中国の習近平国家主席とプーチン大統領の首脳会談が行われていたことに言及したうえで、「日本の総理大臣のウクライナ訪問は、日本政府がウクライナを支援する姿勢を示すうえで、部外者でないことに重みや象徴性を持たせようとしたのだろう」と論評しています。

ただし、ロシア国防省は先ほど、核兵器が搭載可能な戦略爆撃機2機が日本海の上空を飛行したと発表しました。 ロシア国防省は21日、ロシア軍の長距離戦略爆撃機「ツポレフ95MS」2機が日本海の上空を飛行したと発表し、その映像を公開しました。

飛行は7時間以上におよび、戦闘機の護衛がついたとしています。 「ツポレフ95MS」は核兵器の搭載も可能で、ロシアは「戦略爆撃機」を「弾道ミサイル」「核ミサイル搭載潜水艦」とともに核戦略の三本柱としています。 岸田総理が昨日ウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領との会談に臨もうとする中で、ロシア側の発表には日本をけん制する狙いもあるとみられます。

一方、プーチン大統領と習主席の一連の会談は、アメリカとNATOが注目する中で行われました。3月21日に、彼は奇妙なほど大きな国旗の横で中国の習近平国家主席と写真を撮った。NATOは、ウクライナの戦場で使用するための軍事的な支援をロシアに提供しないよう中国に警告しており、中国は以前、検討しているもののまだ進めていないと述べています。

しかし、これまで中国は西側諸国からの広範な制裁に直面するロシアに経済的・外交的支援を提供してきた。バイデン政権の関係者は今週、世界におけるアメリカのリーダーシップに対する反感を共有することで、両国はより親密になっていると述べた。

ホワイトハウスのジョン・カービー(John Kirby)国家安全保障会議報道官は20日、記者団に対し、プーチンは習近平を、戦況が思わしくないロシアにとっての「命綱」と見なしていると述べました。

ただ、この会談岸田首相のキーウ訪問というベストタイミングで、すっかりかすんでしまいました。このタイミングでの訪問は、世界に対し日本のスタンスを示す上で重要です。
習近平が露に行っている間に、岸田総理がウクライナを電撃訪問したことで、海外メディアはアジアの大国の日本と某国の価値観を分けたと報道しました。

同じ時期に日本の指導者がウクライナを訪問したことは、地政学的な混乱の中で日本の立ち位置について強いメッセージを送るものとなりました。

今回の岸田首相のキーウ訪問は大成功です。台湾有事にも世界の注目が集まりました。日本外交の大勝利です。

空から見てる安倍さん、岸田さん素晴らしい外交をやってくれました。安倍元総理も喜んでいらっしゃるでしょう。


これで、習近平の露とウクライナの仲介等の外交パフォーマンスは事実上、潰れたともいえます。プーチンは、習近平との会談の前に、論文を発表しましたが、これもほとんど無意味になってしまいました。 岸田首相のキーウ訪問は、侵略者ロシアと戦うウクライナへの連帯と支援の継続を伝える上で意義があります。高く評価したいです。

2023年3月21日は、21世紀の世界において、日本と中国が真逆の立場を鮮明にして、別の道を進み始めた「運命の日」として記憶されることになるでしょう。 これから、日中関係が大きく変わることになります。

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2023年3月21日火曜日

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安全確保、国会の承認…ハードルも実行 首相のウクライナ電撃訪問

20日、記者団の取材に応じる岸田首相=ニューデリー

 岸田文雄首相は昨年以降、ロシアの侵攻が続くウクライナの首都キーウへの訪問を模索し続けてきた。ウクライナ情勢が主要な議題となる5月の広島での先進7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国を務めるにあたり、現地を訪れてゼレンスキー大統領と直接言葉を交わすことが不可欠だと考えていたからだ。だが、首相の安全確保や国会の事前承認などのハードルが立ちふさがり、実現までの道のりは難航を極めた。

 「私自身、ウクライナに招待されてから訪問の時期は検討し続けてきた。今は何も具体的に決まったものはない」

 19日夜、インドを訪問する前、首相は公邸で記者団にこう語った。だが、水面下ではインドを訪れてモディ首相との会談などを行った後、ウクライナに電撃訪問する手はずを整えていた。

 首相が現地入りする計画を立てたのは今回が初めてではない。昨年6月にはドイツでのG7エルマウサミットに合わせたウクライナ訪問を検討した。隣国のポーランドを経由し、陸路で首都キーウを目指す案だったが、他の外交日程との関係で両立できなかった。

 同様の計画は昨年末にも持ち上がった。だが、ロシア軍によるキーウに対するミサイルや自爆型ドローンの攻撃が激しさを増し、実現には至らなかった。

 「簡単なことではない」。首相周辺は頭を悩ませた。

 訪問が難航したのはNATO(北大西洋条約機構)などに加盟しておらず、安全上の制約があったことが大きい。戦後、日本の首相が戦闘が行われている国や地域を訪れたことはない。

 加えて、今年1月の国会召集後は海外出張の慣例となる国会の事前承認がネックとなった。渡航の日程が明らかになれば首相の安全確保が難しくなるからだ。

 ただ、2月にバイデン米大統領がキーウへの電撃訪問を果たし、現地を訪れていない首脳が首相だけとなると、与野党から「(事前承認が)当てはまらない場合もある」(自民党の高木毅国対委員長)などとの声が相次いだ。首相は事前承認がなくても国会の理解は得られると見極めた。

 それでも首相自身の安全上のリスクが消えたわけではなかったが、電撃訪問の決断を下した。

【私の論評】問題はあったものの、我が国が普通の国になりつつある手応えを感じた岸田首相のキーウ訪問(゚д゚)!

G7首脳テレビ会議に出席した岸田首相。画面はウクライナのゼレンスキー大統領=2月、首相公邸

岸田総理 のキーウ電撃訪問、ゼレンスキー大統領 との直接会談は大変有意義です。しかも中国の周主席が訪露しプーチン大統領との会談直後のタイミングで行われたことは、重要です。

日本では、閣僚が国会開会中に海外訪問するには国会の事前承認を得る慣例があります。政府は渡航日程が明らかになることで安全確保が難しくなるとの懸念があります。このため、インド訪問に合わせて、ウクライナに電撃訪問する形を取ったとみられます。

しかし、総理が列車移動中でのマスコミ報道合戦、危機管理が憂慮されます。米大統領訪問は事後の報道でした。

岸田首相がウクライナ電撃訪問と言いながら「インドから極秘でウクライナに向かった。ポーランドでの姿を日テレのカメラが捉えた」等このような、過剰報道 がキーウへのミサイル攻撃を誘発し、ゼレンスキー大統領や岸田首相に危険が及びかねないということをマスコミは懸念しなかったのでしょうか。

岸田首相が、ウクライナに到着する前に報道されてしまって良いのでしょうか。これまでの「電撃訪問」は、各首脳がキーウでゼレンスキーと手を握っている写真とともに第一報が伝えられたはずです。これこそ、電撃訪問です。


ロシアで安全保障会議副議長の立場にあるメドベージェフ前大統領は2月20日、ウクライナの首都キーウをバイデン米大統領が電撃訪問したことについて「事前に身の安全の保証を受けた」ものだったと通信アプリ「テレグラム」でコメントしました。

米高官は、ロシア側には訪問を知らせていたと説明しています。メドベージェフ氏の投稿は、事前通告を踏まえてロシアが安全を保証し、短時間の滞在中に空爆を行わなかったことを意味していると言えそうです。

ロシア当局も、バイデン大統領がキーウを訪問することを知りながら、これを表にだすことなく、報道などで明るみに出た直後、これに対して批判を表明したのです。

このような事前通知は、岸田首相のキーウ訪問直前になされたのでしょうか。

他国における、電撃訪問では、同行記者が皆が訪問の事実を知っていて同行しています。報道機関も知っていても報じないのです。また、事前通告された国でさえ、それを公にするのは、電撃訪問が公にされた後に行うてのです。だからこそ、電撃訪問が成り立つのです。普通の国では当たり前の、このようなことを日本は未だにできないのです。

岸田首相は、周りの人に相談をしすぎるきらいがあるので、情報が漏れやすいようですが、それにしても、首相個人や相手国の人たちの安全を考えれば、迂闊に事前に報道などできないはずです。

それに、事前の報道は控えたほうが、電撃訪問が成り立ち、よりインパクトがある報道になると思います。

日本以外の国々では、一般的には、政治的な訪問や会議の計画は慎重に進められ、関係者間での情報共有が必要不可欠です。もし情報が漏れてしまう場合、それは計画が狂う可能性があります。また、外交や国際関係においては、相手国との信頼関係を築くことが非常に重要であり、情報漏洩が発生した場合は信頼を損なうことにつながるため、非常に厳しい対応が必要となります。

このあたりの認識が、政府も報道機関も認識の甘さもあり、戦後、日本の首相が戦闘が行われている国や地域を訪れたのがはじめてということもあり、たとえば誘拐報道に関する協定などあるはずもなく、法律や規定なども整備されていないことが露呈されたともいえます。

この状況で情報が漏れたこと、スクープとでも言いたげに報道する事、情報をコントロールできなかった政府日本の情報統制等など仕組みに問題ありと思います。今後このような閣僚の戦地への訪問など、あり得ると思います。今後こうした場合に備えて、法律、制度なども含めた仕組みづくりをしていくべきです。

2017年インドのモディ首相とともにオープンカーに乗り、沿道の人たちから歓迎を受ける安倍首相(当時)

ただし、このようなことが問題視される事自体が、我が国も普通の国になりつつ事の証でもあり、岸田政権における成果ともいえるでしょう。戦後日本の首相は、誰も戦地を訪問していません。数年前までは、日本の首相が戦地を訪れるなど考えられませんでした。それが、ウクライナ戦争という未曾有の事態が生じている最中でありながらも、実現したことは驚くべきことです。

首脳会談が無事終わり、岸田首相が安全に日本に帰国できるよう願います。

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2023年3月20日月曜日

放送法文書問題、高市氏追及の構図崩壊か「謀略なら予算審議と切り離し特別審議を」―【私の論評】忘れてはならないのは、高市大臣は被害者であること(゚д゚)!

放送法文書問題、高市氏追及の構図崩壊か「謀略なら予算審議と切り離し特別審議を」

放送法文書問題で、高市氏への追及が続くが…

安倍晋三政権下で、放送法の「政治的公平」を協議した経緯とされる総務省の「行政文書」が流出した問題が迷走気味だ。総務省の調査で、当時の高市早苗総務相(現経済安保担当相)と安倍首相が放送法の解釈をめぐって電話で協議したとする文書は「作成者不明」「確認されず」と説明されるなど、文書の真偽に疑問が深まっている。高市氏は「(内容が)捏造だ」と明言しているが、一部野党は、20日の参院予算委員会でも追及するという。

【写真】総務省が公表した「行政文書」に関する調査結果の資料

「政治的立場を離れて客観的に分析しても、高市氏の説明が正確だったとの見方が強まっている。野党がさらに追及するなら、新たな手段で真相究明する局面ではないか」

官僚組織に詳しいジャーナリストの石井孝明氏はこう指摘した。

総務省は17日、「『政治的公平』に関する行政文書の正確性に係る精査について(追加報告)」を公表した。

これには、《作成者および同席者のいずれも、この時期に、放送部局から高市大臣に対して、放送法の解釈を変更するという説明を行ったと認識を示す者はいなかった》《高市大臣から安倍総理又は今井秘書官への電話のいずれについても、その有無について確認されなかった》とあった。

つまり、高市氏らによる放送側への圧力や、放送法の解釈変更を図ったとする〝構図〟が崩れつつあるのだ。

そもそも、問題の行政文書は作成者不明のものも多いうえ、公文書管理法に基づく「行政文書ファイル管理簿」に記載されないなど、不適切管理が判明している。

石井氏は「高市氏や安倍氏を巻き込み行政文書が偽造された疑いがある。また、情報漏洩に関わった人物には国家公務員法違反の疑いもある。万が一、そのような〝謀略〟だったとすれば、大問題だ。もはや、予算審議と切り離し、国会の委員会などで別途、特別審議を開いて証人喚問などを行い、その結果、事件性があれば刑事告発をすればいい」と指摘する。

ただ、一連の騒動で、高市氏の消耗は激しいようだ。

高市氏は18日、自身のツイッターで《総務省文書騒動で役所の公務は殆どできなくなりました》《多くの企業が参加される経済安全保障の講演会もドタキャン。「国会軽視」はしていません》などと書き込み、担当する機密情報の取り扱い資格「セキュリティー・クリアランス」の法整備が影響を受けている現状に苦悩を明かした。

【私の論評】忘れてはならないのは、高市大臣は被害者であること(゚д゚)!

総務省が公表した「行政文書」に関する調査結果の資料に関しては、以下の総務省のサイトからご覧いただけます。
「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

 3月7日、当省が公表した総務省の「行政文書」の正確性に係る精査(本体PDF参考資料PDF)について、お知らせします。

本体は4ページですし、参考資料は78ベージです。まずは、今回の出来事について、論評する人は、まずはこのくらいは読んでからにすべきと思います。特に本体は絶対に読むべきでしょう。

本体を読めば、参考資料はとてもまともな「行政文書」とはいえないことが誰にでも理解できます。

いわゆる、「もりかけさくら」問題に関しても、このような文書がいくつも公表されていましたが、ほとんど読まないで批判している人もみかけました。そのような愚かな真似はすべきではありません。

この参考資料が、今回のいわゆる「行政文書」というものです。総務省の調査内容が書かれたある本体を読むと、この文章の信憑性を疑わせる内容で満載です。総務省が調べた結果を捏造することもないと思いますが、高市氏を批判する人たちは、この文書の内容を真摯に受け止めているのでしょうか。

そうして、この文書は総務省から違法に持ち出されたものです。こうした内部告発は公益通報として保護される公益通報者保護法がありますが、偽造文書であるならば、この制度でも守られることはありません。まずは、この違法行為の責任が追及されるべきです。

公文書漏洩は国家公務員法違反(110条)として、罪に問われます。そしてそのそそのかしも罪に問われます(同111条)。外務省機密漏洩事件(西山事件、1971年)で、毎日新聞記者の西山太吉氏は、機密漏洩を依頼しそれを公表したことで罪に問われ逮捕、起訴され、最高裁で有罪が確定しました。


この総務省文書騒動では、これを漏らした総務官僚は罪に問われます。また詳細の解明が必要ですが、それをそそのかした場合に、小西氏は罪に問われます。小西議員には不逮捕特権が国会議員としてあるが、それは国会会期中のみです。また捜査は可能です。

総務省は、情報漏洩について、違法行為がある以上、当然、刑事告発の義務を負います。総務省は情報漏洩の懸念で左派からマイナンバー制度への批判を繰り返されています。職員が堂々と情報漏洩をしているのです。その懸念が正しいことになってしまうでしょう。行政の信頼を失わせることになります。

偽メール事件で議員辞職した永田議員

また虚偽情報によって、高市早苗大臣の政治責任を追及した、小西議員、そして立憲民主党は当然批判されるべきです。2006年の偽メール事件を覚えているでしょうか。民主党の永田寿康衆議院議員が堀江貴文氏のメールを根拠に武部幹事長への堀江氏からの不正献金をを国会で追及した事件です。メールは偽物で、民主党首脳部は総辞職、永田氏は議員辞職の後に自殺しました。

今回も似たような構図です。しかし、これは公文書偽造と、首相と大臣を電波官僚が騙した疑惑とセットになっています。偽メール事件より悪質な事件です。小西議員は、3月19日に高市氏に辞職を迫る焦ったようなおかしなツイートをしています。しかし客観的に、違法性が問われるのは彼です。動揺しているようですが、精神的にも法的にも社会的にも彼は大丈夫なのでしょうか。

小西洋之議員の3月19日ツイッター

最初から最後まで、この騒動での小西洋之氏の意図が不明なのですが、結果として彼は何事も成し遂げでおらず、道化師の役割を果たしただけです。

つまり物事を混乱させて、それを進めてしまう人の役割を果たしたのです。余計なことをしたばかりに、彼がかつて関係を持った上司や同僚を犯罪者にしてしまったのかもしれないです。

ただ、不思議なのは、情報漏洩者は、小西氏のような「小物」に文書を渡して何をしたかったのかと言うことです。これが政府を攻撃する重要文書とでも勘違いしたのでしょうか。これも解明が待たれるところです。

さらに、不思議ことですが、現在野党は高市早苗大臣を個人攻撃しています。日本の野党は政策の提言ではなく、政府を大混乱させることを狙って、常に国会活動をしています。

政府を混乱させるという視点に立てば、総務官僚が首相と大臣を騙したという大スキャンダルを追及した方が、騒ぎは大きくできると思います。それに最近でいえば、防衛増税など、与党を追求するなら、現状なら事欠かないと思われるのですが、そちらのほうはしないで、今回のような真偽も明らかでない「行政文書」に集中するのですから、本当に頭がどうかしているとしか言いようがありません。

誠に不思議な人たちです。頭が悪いのでしょうか、あるいは電波利権を守ろうとしているのでしょうか。また自民党も、岸田首相も、高市さんをかばわないのが本当に不思議です。首相候補とされる彼女の政治生命を潰したい考えがあるのでしょうか。この件に関しては、高市さんは明らかに被害者です。

自民党がこの問題で、関係者の証人喚問した上、総務省、もしくは同党が刑事告発をすべきです。もしくは、これだけ人権侵害された高市早苗内閣府大臣ご自身が自らしても良いでしょう。捜査機関によって、この疑惑を明らかにする必要があります。

今回の問題のメディアや野党の大騒ぎはずれています。私は以前から小西洋之氏の幼稚で愚かな発言と行動にずっと不快感を持ってきました。彼が政治的、社会的自爆をするのは喜ばしいことです。しかし、個人的な好悪を離れても、この騒動は不思議さに溢れています。早く決着すべきです。

国会は開催に経費が1日約3億円かかります。こんな無駄な馬鹿騒ぎをするより、司法の手に委ねるほうがはるかに合理的です。そもそも、「もり、かけ、桜」などの問題も司法の手に委ねていれば、裁判にもならなかったでしょう。国会で無駄な審議が繰り替えされることもなかったでしょう。

今回の件は、予算審議や、高市大臣の進めるセキュリティクライアンス(情報の保護)の問題から切り離し、総務委員会の下に特別委員会を作り、関係する電波官僚を証人喚問し、その結果を受けて刑事告発をする等行動が、速やかな解決をもたらすでしょう。この無駄な空騒ぎは、国益にも、国民のためにもならないです。

国会においては、このような馬鹿騒ぎをするのではなく、ウクライナ戦争ですっかり変わってしまった世界情勢に対して日本はどうするかなどの、真摯な議論をすべきです。

本日も習近平がロシアを訪問しています。中露が結託を強めれば、ウクライナ戦争は長引く懸念もあります。蔡英文台湾総統が、今年の8月訪米します。日本はどうするのでしょうか。そもそもG7の首脳は、岸田総理を除いてすべてウクライナを訪問しています。岸田総理はどうするのでしょうか。国会で馬鹿げたから騒ぎで高市いじめを続ける時間などないはです。

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2023年3月19日日曜日

プーチン氏の威信失墜 カギ握る国際社会の協力―【私の論評】今回の「子供連れ去り」の件での逮捕状は国内法でいえば別件逮捕のようなもの、本命は"武力行使そのもの"の判断(゚д゚)!

プーチン氏の威信失墜 カギ握る国際社会の協力


 国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は17日、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナからの子供連れ去りに責任があるとして、戦争犯罪容疑で逮捕状を出した。国連安全保障理事会の常任理事国の元首にICCが逮捕状を出すのは初めて。身柄拘束は困難とされるが、ウクライナ侵略を巡る戦犯容疑者として扱われることで、国際社会でプーチン氏の威信は失墜し、孤立が強まる可能性がある。

 ICCの発表によると、プーチン氏は指導者としてウクライナ占領地からの住民連れ去りに加担し、部下の犯罪を止めなかった責任などを問われた。戦時の文民保護を定めたジュネーブ諸条約は、住民の違法な移送や追放を禁じている。

 ICCのカーン主任検察官は、少なくとも子供数百人が孤児院や施設から連れ去られ、多くはロシア国籍を押し付けられて養子に出された疑いがあるとした。ICCは養子縁組を進めたリボワベロワ露大統領全権代表の逮捕状も出した。同代表は子供の権利問題を担当している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は逮捕状発行について、「歴史的な決定だ」と歓迎。バイデン米大統領は17日、記者団に「正しいことだと思う」と支持を表明した。米国はICC非加盟だが、カーン氏らの捜査に協力する姿勢を示してきた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は「ロシアの責任を追及する過程の始まり」とした。

 一方、ロシアは猛反発した。ペスコフ大統領報道官は「言語道断で容認できない」と逮捕状発行を批判。ロシアはICC非加盟であり、ザハロワ外務省報道官も逮捕状は「法的に無効。ロシアは(身柄拘束の)義務を負わない」とした。

 ICCが現職の国家最高指導者に逮捕状を出したのはプーチン氏で3人目。他の最高指導者2人の裁判はいずれも実現していない。

 ICCはこれまでアフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)の国内武力紛争を巡り、政府当局が身柄を引き渡した武装勢力指導者を裁くなどしてきた。だが、ロシアが今回、プーチン氏を引き渡すことは望めず、重要となってくるのは国際社会の協力となる。

 ICCの加盟国は容疑者の逮捕や身柄引き渡しで協力義務を負う。ICCは拘束を強要することはできず、過去にはICCに逮捕状を出されたスーダンの大統領が周辺国などを外遊していた事例もある。ICCのホフマンスキ所長はこのため、「逮捕状の執行は国際社会の協力にかかっている」と訴えた。

 プーチン氏が訪問したICC加盟国が協力するかは見通せない。ただ、拘束される可能性がある以上、ICC加盟国への外遊に慎重にならざるを得なくなることも想定される。国際司法が戦犯としての責任追及の姿勢を明確にしたことで、「各国の指導者はプーチン氏との握手や会談を熟慮する」(ウクライナのコスチン検事総長)との効果を期待する声も出ている。


 国際刑事裁判所 ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略罪を犯した個人を訴追、処罰する常設の国際刑事裁判機関。2003年にオランダ・ハーグに設置された。日本を含む123カ国・地域が加盟。国連安全保障理事会の5常任理事国のうち、米国、ロシア、中国は加盟していない。

 ICCは各国の国内刑事・司法制度を「補完」するもの。関係国が被疑者を捜査・訴追する能力や意思がない場合に管轄権が認められる。管轄権を行使するためには、犯罪行為が行われた国または被疑者の国籍国が加盟国であるか、管轄権を認めていることが必要。ウクライナは非加盟だが、管轄権を受け入れている。

【私の論評】今回の「子供連れ去り」の件での逮捕状は国内法でいえば別件逮捕のようなもの、本命は"武力行使そのもの"の判断(゚д゚)!

上の記事では、「子供連れ去りの責任」について述べられていますが、そもそも、侵略戦争に関してはどうなのでしょうか。それについては、以前このブログで述べています。その記事のリンクを以下に掲載します。
ロシア軍「ジェノサイド」確実 耳切り取り歯を抜かれ…子供にも拷問か 西側諸国による制裁長期化 「ロシアはICCで裁かれる」識者―【私の論評】プーチンとロシアの戦争犯罪は、裁かれてしかるべき(゚д゚)!

この記事は、昨年4月4日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を引用します。特に、他国への侵攻ということになれば、国際法に関係してくるので、その部分を中心に引用します。
際社会は、プーチンを「露骨に国際法を破った無法者」と非難しています。国際法とは、法律のように誰かに強制される法ではありません。国際社会の合意として成立している慣習です。この慣習は掟でもあり、従えない国は文明国として扱われないのが普通です。

国際法には、大きく二種類あります。一つがユスアドベルム(戦争のための法)、戦いの正当性に関する掟です。もう一つがユスインベロ(戦争における法)、戦い方の正当性に関する掟です。
ユスアドベルムには、以下の5つの条件があります。
  1. 正しい理由(攻撃に対する防衛・攻撃者に対する処罰・攻撃者によって不正に奪われた財産の回復)の存在
  2. 正統な政治的権威による戦争の発動
  3. 正統な意図や目的の存在
  4. 最後の手段としての軍事力の行使
  5. 達成すべき目的や除去すべき悪との釣り合い
ユスインベロには、以下に条件があります
  1. 戦闘員と非戦闘員の区別(差別原則)
  2. 戦争手段と目標との釣り合い(釣り合い原則=不必要な暴力の禁止)
テレビ、特にワイドショーなどでは、このあたりを曖昧にして論議をしていて、結果として米国批判、ロシア擁護のようになっている論調が見受けられることには驚くことがあります。

国際法ついては、詳細は以下の記事をご覧下さい。非常にわかりやす行く解説されています。
敵基地攻撃の装備を検討 脅威高まり「専守防衛」拡大
プーチンはユスアドベルムとユスインベロの双方に違反しています。

さらに、この記事から一部を引用します。

ユスアドベルム(戦争のための法)において、その戦いの正当性が証明されなかった場合は、単なる違法です。負ければ、国が領土や賠償金を払って償わなければならないです。逆にユスインベロ(戦争における法)を犯した者は、戦争犯罪人として牢屋行きです。

スロボダン・ミロシェビッチやサダム・フセインは容疑の証明が曖昧だったにもかかわらず、牢屋に送られて死にました。 日本人はプーチンを甘やかしてきましたが、奴は日本とって味方でも何でもないことを認識すべきでしょう。
ウクライナの占領地から子供を連れ去るなどは、明らかに「ユス・イン・ベロ」に違反する行為です。これは誰がみても理解しやすいです。

ICCとしては、まずは誰にでも理解出来る「子供連れ去り」に関しては、「戦争行為」違反ということで、逮捕状を出したのでしょう。これによって、仮に逮捕できたとしたら、余罪として「武力行使そのもの合法性」へ侵犯の疑いでも裁く意図があるのでしょう。

国際法は、国内法とは違いまずか、これは国内法でいえば「別件逮捕」のようなものです。

上の記事で、ICC加盟国の協力が不可欠ということが言われおり、いますぐ、あるいは戦争が終了した段階で、すぐにプーチンを拘束して裁判というわけにはいきませんが、今回逮捕状が出されたことにより、その道は開けたといえます。

プーチン氏への逮捕状について、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は17日夜のビデオ演説で、「歴史的な決定だ。テロ国家の指導者らが公式に戦争犯罪の容疑者となった」と述べました。これは、武力行使そのものに関する裁判への道がひらけたことに対する発言であると考えられます。

ウクライナ政府の集計によると、ロシアによる1万6226人の子供の強制移送が確認され、このうちウクライナに戻ったのは308人だけとなっています。ゼレンスキー氏は「最高指導者の指示なしに、このような犯罪行為は不可能だ」と指摘しました。

米国のバイデン大統領は17日、記者団に対し「妥当だ。とても力強い指摘だと思う」と述べました。

一方、タス通信は、ロシアの大統領報道官が「言語道断で容認できない」と激しく反発したと伝えました。


プーチン大統領は先月16日、子どもの権利担当相ベロワ氏との会談で、「ドネツク州やヘルソン州などで現地の住民から子どもの養子縁組の申請が増えている」と述べ、ロシア国内への移送の正当性を強調しました。ただ、これはロシア側の一方的な主張であって、ウクライナ側にしてみれば、連れ去られたとの主張になるのは当然です。ロシア側の独善的な態度が、この戦争の実態を表しています。

中露北等はいまでも、「必要とあらば人を殺しても構わない」という価値観を有している国です、このような国と我が国のような「人を殺してはならない」という価値観の国とは理解し合えるはずもありません。日本は同じ価値観の国々と生きるしかないのです。

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2023年3月18日土曜日

習近平政権3期目のサプライズ人事―【私の論評】中国が効き目のある金融・財政政策ができないのは、米国等の制裁ではなく国内の構造問題に要因があることを習近平は理解すべき(゚д゚)!

習近平政権3期目のサプライズ人事


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・中国で全人代が北京で開催され、習近平政権第3期目が正式に発足した。

・「李克強派」である人民銀行総裁易綱と財政相劉昆が留任。習主席が金融危機を恐れているのは明らか

・李尚福国防相就任は、今後の米中関係に大きな影響を与える可能性が高い


今年(2023年)、中国では全国人民代表大会(全人代)が3月5日から13日まで北京で開催された。そして、習近平政権第3期目が正式に発足した。新政権は、ほとんどが習主席の忠実なる部下で構成されている。

だが、各種メディアで既報の通り、中国人民銀行総裁の易綱(65歳)と財政相の劉昆(66歳)が留任した。これまでは、65歳になると、定年退職しなければならなかった(新政権には易綱と劉昆以外にも定年を超えた人事が行われている)。

今回、この件が驚きをもって迎えられたのは、李克強前首相派閥の人間が残留した(a)からである。習主席としては、国務院(内閣)から「李克強派」をすべて一掃したかったに違いない。

けれども、国務院トップの李強・新首相は地方(上海市等)政府出身のため、中央政府で務めた経験がない。習主席としては、金融・財政政策に不安を抱いたのだろう。そこで、易綱と劉昆という人材を残したと考えられる。

易綱は米イリノイ大学で博士号を習得し、インディアナ大学で教鞭を執っていた(b)。その後、帰国して北京大学の教授となっている。

易綱は、2017年の党大会で中央委員候補に選出されていた。ところが、昨2022年の党大会では、中央委員はおろか、中央委員候補にも名を連ねていなかったのである。その易綱が人民中央銀行総裁に留任した。異例の人事だろう。

習政権としては、易綱ならば、米国と金融関係の話ができるので、バイデン政権と金融面で話し合う用意があるというメッセージを米国へ送ったのではないだろうか。米国側も、その点を評価し、歓迎しているかもしれない(ただ、今秋、易綱は更迭されるのではないかという噂がある)。

他方、劉昆は、厦門大学経済学部で財政・金融を学んだ。1982年、広東省人民政府に入省し、2010年、広東省人民政府副省長にまで昇進(c)している。2013年5月、財政部副部長(副大臣)に抜擢された。その後、2018年3月、李克強首相(当時)の下、財政部長(財政相)に就任している。この2人の人事を見れば、習主席が金融危機を恐れているのは明らかではないだろうか。

実は、もう1人、新政権でのサプライズ人事があった。それは、魏鳳和を引き継いだ李尚福(65歳)新国防相(d)である。李尚福は、人民解放軍総装備部副部長、戦略支援部隊副司令官兼参謀長、中央軍事委員会装備開発部長等を歴任した後、2019年7月に上将に昇格(e)した。

李尚福は航空宇宙分野にも精通しており、西昌衛星発射センターで長年勤務している。そして、同センター司令官、月探査プロジェクト発射場システム最高指揮官、嫦娥二号発射場エリア司令官等を務めた。

2018年9月、米国務省は「米国の敵を制裁するための法案」(2017年8月に成立)に基づき、ロシアの大手武器輸出企業、ロシア防衛産品輸出公社(Rosoboronexport)との「重要な取引」について、中国共産党中央委員会に制裁を科したと発表した。

米国務省によると、この制裁は、中国共産党が2017年にSu-35戦闘機10機を、2018年にS-400地対空ミサイルシステムを購入したことに関連するものだという。その結果、李尚福は、ロシアの戦闘機・ミサイルを購入したという理由で、米政府から制裁を受けている

ところで、3月6日、習近平は中国実業家の前でワシントンを名指しで批判し、「米国を中心とする西側諸国による対中封じ込めと抹殺は、我が国の発展に前例のない挑戦をもたらす」と述べた(f)。

また、翌7日、秦剛外相は、最初の記者会見で、米国の中国への政策方針が変わらなければ、「間違いなく対立があるだろう」とワシントンに警告している。

おそらく、習主席は3期目が米国との“競争”によって特徴づけられると確信しているのかもしれない。習政権が敢えて李尚福を国防相に任命したのは、米国に対する一種の「デモンストレーション」ではないかと、香港メディアは報じている。

しかし、国防相の最も重要な責務は「軍事交流」である。李尚福国防相就任は、今後の米中関係に大きな影響を与える可能性が高いのではないか。また、米中両国国防相が会談する場合、「非常にデリケート」になると予想される。

もしかすると、習政権は、李国防相を通じて、米国の中国共産党に対する“忍耐力”をテストするつもりではあるまいか。その後、北京は対米軍事戦略を決定するのかもしれない。今後、習政権は米国との対決姿勢を鮮明にしていく公算が大きい

〔注〕

(a)『万維ビデオ』「李強では安心できない この2人の李克強派が予想外の留任となる」(2023年3月12日付)


(b)『China Vitae』易綱



(d)『中国中央人民政府』李尚福


(e)『万維ビデオ』「この閣僚の任命は奇妙だ 習近平は彼に米国をテストするように頼んだ」(2023年3月12日付)


(f)『中国瞭望』「習主席の覇権掌握に不安はない。だが、新政府にサプライズがないわけではない」(2023年3月13日付)


【私の論評】中国が効き目のある金融・財政政策ができないは、米国等の制裁ではなく国内の構造問題に要因があることを習近平は理解すべき(゚д゚)!

上の記事では、習主席としては、金融・財政政策に不安を抱いたのだろう。そこで、易綱と劉昆という人材を残したと考えられるとしています。しかし、現在の中国の金融政策や財政政策がうまくいかないのは、米国のせいではありません。それは、中国の内部の事情によるものです。

仮に、米国が制裁を行っていなかったとしても、中国の金融政策は機能不全に至っていたとみられます。それは、国際金融のトリレンマによるものです。これによれば、金融政策が機能不全に陥れば、財政政策も機能不全に陥ります。これについては、このブログでも何度か指摘してきました。

以下にその記事の典型的なもののリンクを掲載します。
姑息な〝GDP隠し〟習政権が異例の3期目 経済の足引っ張る「ゼロコロナ」自画自賛も 威信を傷つけかねない「粉飾できないほど落ち込んだ数値に」石平氏―【私の論評】習近平が何をしようが中国経済は、2つの構造的要因で発展しなくなる(゚д゚)!
詳細は、粉の記事をご覧いただくものとして、以下に国際金融のトリレンマに関わる部分を掲載します。この内容をご存知の方は、これを読み飛ばしてください。
中国の経済の停滞の原因は、ゼロコロナ、不動産バブルだけではありません。これだけであれば、この2つの不況原因を取り除けは、中国経済は再び発展することになりますが、そうではないのです。

この他に2つの構造的な要因があります。一つは、国際金融のトリレンマによるものであり、もう一つは、ごく最近新たに付け加わった、ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」です。
まずは、国際金融のトリレンマによる構造的要因です。この理論によれば、独立した国内金融政策、安定した為替相場(固定為替相場制)、 自由な資本移動、の三つは同時に実現できません。実際、日米を含め殆どの国は上記三 つのいずれかを放棄しています。

これに対して中国は、金利・為替・資本移動の自由化を極 めて漸進的に進める過程において、国内金融政策の自由度を優先しつつ、状況に応じ て為替と資本移動に関る規制の強弱を調整することで、海外の資本・技術を取り入れて 成長し、グローバルな通貨危機等の波及を阻止できました。 

しかし、資本移動を段階的に自由化した結果、最近では人民元相場と内外金利差の相 互影響が強まっています。これにより、国内金融政策が制約を受けたり、資本移動の自由 化が一部後退するなど、三兎を追う政策運営は難しくなりつつあります。

中国は、グローバル経済に組み込まれた今や世界第2位の経済大国であり、こうした 国は最終的に日米など主要国と同様の変動相場制に移行することで、国内金融政策の 高い自由度を保持しつつ、自由な資本移動を許容することが避けられません。

移 行が後手に回れば国際競争力が阻害されたり、国内バブルが膨らむ恐れがあります。一方で、 拙速に過ぎれば、大規模資本逃避や急激な人民元安が懸念されます。中国は今後一層難 しい舵取りを迫られることになります。

ただ、はっきりいえば、段階的にでも変動相場制にするか、自由な資本移動を禁止して、すべての国際金融の流れを政府が一元的に管理するかいずれかを選択しなければならないです。

前者にすれば、中国による独立した金融政策、資本自由な移動はできます。

後者にすれば、自由な資本移動はできなくなるものの、固定相場制、独立した金融政策は実施できます。

後者にすれば、中国はほぼ国際金融から切り離されることになります。ほとんど資本移動がなかった一昔前の中国に戻るしかなくなります。ただ、これでは中国の経済発展は望めません。

中国がこれからも経済発展をするつもりなら、やはり日本をはじめとする先進国のほとんどがそうしているように、変動相場制に移行するしかないのです。すぐに移行するのが無理でも、少しずつそちらのほうに舵を切るしかないのです。

独立した金融政策とは、日本のようなもともと独立した金融政策を行っている国にいる人達にはりかいしにくいかもしれません。特に日本では、独立した金融緩和を実施することができるにも関わらず、長年日銀はこれを行って来なかったので、さらにわかりにくくしている部分があります。

これは、たとえば、日銀は雇用が悪化していれば、雇用を改善するため金融緩和を実施し、失業率がNAIRU(インフレ率を上昇させない失業率 :non-increasing inflation rate of unemployment)をに達すれば、緩和をやめる等のことを行うことができます。

日本や米国などでは、インフレ率を数%高めることができれば、他に何もしなくても、数百万人の雇用が生まれます。中国では、数千万人の雇用が生まれます。これは、マクロ経済学上の常識です。下にこれを示すグラフを掲載します。

日本等の先進国では、これは通常の金融政策であり、日銀はこのようなことを行うことができます。ただ、日本においては黒田総裁前までの総裁はこのような政策を取らなかったため、雇用は改善されず、日本人の賃金は30年も上がらずじまいでした。

しかし、本来ならば先に上げた金融政策を実行して、雇用を改善すべきでした。しかし、このようなことをしなかったのが、過去の日銀です。

ところが、現在の中国においては、このようなことができないのです。なぜなら、雇用改善のため金融緩和をすると、インフレが亢進したり、キャピタルフライト(資本の海外逃避)などが起こってしまうからです。

このようなことは、李克強が首相のときにすでに発生していました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国・李首相が「バラマキ型量的緩和」を控える発言、その本当の意味―【私の論評】中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせい(゚д゚)!

この記事は、2019年の記事3月31日のものです。この頃は、まだコロナ禍は深刻な影響を与えていないはずです。この記事より一部を引用します。

2019年に入り、中国の景気減速がしきりに報じられるようになった。今年1~2月の小売売上高の伸び率は前年比8・2%となり、'03年並みの水準に逆戻りしたという。

こうしたなか、李克強首相は「量的緩和(QE)や公共投資の大幅な拡大などの措置を講じようという誘惑に抵抗する」と発言した。緩やかな減税は継続するが、景気拡大を狙った量的緩和は控える、という判断である。 

この記事の【私の論評】において、当時私は、中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせいとしてますが、それはより具体的にミクロ的にみれば、そうだということであり、マクロ的にはやはり国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策が実施できないことが原因です。

中国においては、最近でも雇用が悪化していることが指摘されていますが、日本の多くマスコミは、コロナ前からの構造的なものとは捉えず、コロナ禍の影響とみているようであり、そうであれば、コロナ禍から回復すれば、そうして米国等が制裁をやめれば、中国経済はまた以前のように成長するという見方になるのでしょうが、それは間違いです。

中国経済は、コロナ禍とは無関係に、国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策ができない状態にあり、これを改善するために、固定相場制から変動相場制に移行するか、自由な資本移動ができるようにするか、あるいは両方を実施するなどの抜本的な改革ができるかどうかにかかっています。米国の制裁は国際金融のトリレンマにより惹き起こされる不都合よりは、はるかに軽いものです。

問題は、このことを習近平が理解するかどうかです。上の記事では、中国人民銀行総裁の易綱は米イリノイ大学で博士号を習得し、インディアナ大学で教鞭を執っていて、その後帰国して北京大学の教授となっているので、国際金融のトリレンマについては熟知しているでしょう。財政相劉昆は、厦門大学経済学部で財政・金融を学んでいますから、これも基本的なことは理解していると思います。

問題は、この二人が李強首相や習近平にこれを正しく伝え、二人が、特に習近平がこれを理解するかどうかです。理解しないととんでもないことなりかねません。

上の記事は、以下の文で締めくくられています。

もしかすると、習政権は、李国防相を通じて、米国の中国共産党に対する“忍耐力”をテストするつもりではあるまいか。その後、北京は対米軍事戦略を決定するのかもしれない。今後、習政権は米国との対決姿勢を鮮明にしていく公算が大きい

習近平が国際金融のトリレンマを理解せず、独立した金融政策ができないのは、米国等の制裁によるものと曲解して、米国の制裁等を理不尽と受け止めれば、かなり危険な状況になると考えられます。

米国下院に最近設置された「中国委員会」のギャラガー委員長は、米中の戦略的競争において長期的には米国が有利だが、10年の短期では危険な状態にあると述べています。中国は人口減少が生む経済問題などから「無謀さを増す」とし、中国に対し米国は対策を誤っていると具体的指摘もしています。

人口減少自体は、マクロ経済学における「装置化」により、日中ともにこれを改善し、人口減少しても経済を拡大することはできるでしょう。「装置化」とは、平たくいうと「機械化」のことであり、現在でいえば、ロボット化やAIの活用です。

日本では、日銀が金融政策さえ間違えなければ、「装置化」によって、人口減少しても十分経済発展は可能であり、むしろこれを機会と捉えることさえ可能です。

しかし、独立した金融政策が取れない現状の中国はそうではありません。独立した金融政策ができなければ、「装置化」によって、生産性が飛躍的に高まっても、それに対応した緩和ができず、それを満たすだけの需要が見込めず、結局デフレになるだけです。それでも、中国が構造的な要因をとりのぞかなければ、デフレがさらに深化するだけです。

このままの状況であれば、10年後には確実に経済もかなり落ち込み、中国はかなり弱体化することになります。そうなる前に、何とかしようと、習近平は何らかの冒険に打ってでる可能性は高まったといえます。

そうならないように、日米などの民主主義国家は、対中国政策を強化し、対中国に関する軍事力強化、中国の国内への浸透を防止する法律を整備、中国が台湾に侵攻した場合の制裁の規定や法律を強化などをすべきです。さらに、同盟国、同士国との結束を固めていくべきです。

それとともに、中国が独立した金融政策ができなくなったのは、米国等による制裁によるものというよりは、中国の国内の問題であり、何よりも国際金融のトリレンマという構造的な要因によるものであり、それを解消するには、変動相場制に移行するか、自由な資本の移動をできるようにし、国際社会に復帰するしか方法がないことを説得していくべきでしょう。

そのためには、ある程度の、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は、避けられないことも説得していくべきでしょう。特に、軍事行動を起こしたとしても、何も変えられず、国際金融のトリレンマからは逃れられず、ますます悪くなることを説得すべきでしよう。

それによって、中国が考えを変えなかったにしても、10年もたてば、中国は確実に弱体化し、他国に影響力を及ぼすことはできなくなり、国内の問題に対処するだけで精一杯で、一昔前の他国との関係が希薄な元の中国に戻るだけです。その時まで、とにかく、中国が他国に対して武力を行使させることを思いとどまらせるべきです。ウクライナの二の舞いを演じることだけは避けるべきです。

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2023年3月17日金曜日

バイドゥの「中国版ChatGPT」は期待外れ、株価10%急落―【私の論評】社会変革は二の次で、技術革新を追いかける中国は、今後経済成長できない(゚д゚)!

 バイドゥの「中国版ChatGPT」は期待外れ、株価10%急落

ロビン・リー(李彦宏)、2018年5月26日

中国のビリオネアであるロビン・リー(李彦宏)が率いる検索大手バイドゥは3月16日、ChatGPTの競合となることを目指す、独自のチャットボットの「Ernie Bot(アーニーボット)」を公開した。

バイドゥの北京本社で開催されたイベントで、54歳のリーはErnie Botの機能を説明した。しかし、この発表はライブデモではなく、あらかじめ用意されたさまざまなタスクをこなすボットの映像が流されただけだった。

そのため、参加者がその場でErnie Botと対話する機会はなかったが、バイドゥはこのサービスを16日から一部のユーザー向けに提供すると述べている。投資家はこの発表に感銘を受けなかった模様で、バイドゥの香港上場株は午後の取引で10%急落した後、6.4%安で日中の取引を終えた。

「当社のボットはまだ完璧とはいえないが、市場の需要を見た結果、リリースを決定した」とリーは語った。

香港のEverbright Securitiesの証券ストラテジストのKenny Ngによると、バイドゥがChatGPTを意識したプロダクトに取り組んでいることが最初に報じられたときに、市場の期待は非常に高く株価も上昇したという。2月のアナリスト向け電話会議でリーは、Ernie Botが検索エンジンだけでなく、動画サービスのiQiyi(愛奇芸)など、バイドゥのさまざまなサービスに徐々に統合されていくと述べていた。

近年は市場の影響力においてライバルに遅れをとっているバイドゥは、人工知能(AI)領域に注力して事業の多様化を図り、活力を取り戻そうとしている。同社の昨年第4四半期の売上高は予想を上回る48億ドル(約6400億円)を記録したが、売上の半分以上はオンラインマーケティングによるものだった。中国の経済成長が鈍化するなか、テンセントやTikTokの親会社のバイトダンスは、ブランドを自社のプラットフォームに誘致しようとしており、この分野の競争は激化している。

中国のチャットボットの限界

バイドゥはプレスリリースで、Ernie Botがビジネス文書や中国語の理解などの分野で優れていると述べている。同社のボットは、OpenAIが初期モデルのChatGPTをさらに進化させたChatGPT-4を発表したわずか2日後に発表された。マイクロソフトの支援を受けたOpenAIは、最新版のボットの安全性を高め、誤解を招いたり不適切と判断されるような回答をしないようにトレーニングしたと述べている。

しかし、中国ではChatGPTが利用できず、バイドゥやテンセント、アリババなどの大手がこぞってChatGPTを模倣したプロダクトを開発している。

リーは、Ernie Botのサービスの法的側面には触れなかったが、中国発のチャットボットは、デリケートな話題を避け、厳しい国内ルールに準拠することが求められる。ウォール・ストリート・ジャーナルが最近実施した調査によると、中国のチャットボットの多くは、すでに中国の指導者についての質問に答えることを拒否している。

【私の論評】社会変革は二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、今後経済成長できない(゚д゚)!

このブログでは、以前ChatGPTの話題も掲載したことがあります。そうして、その中で中国のAIには限界があることを指摘しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒―【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!

中国ChatGPTに類似のChatYuanの画面 クリックすると拡大します

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事より一部を引用します。
会話型AIが人間の友達になるか、うっとおしいセールスマンになるか、支配のツールになるか、全てはこれから決まっていくでしょう。ただ、西側諸国においては、これらのことは、一定の基準が設けられ、極端なことにはならないような仕組みが構築されるでしょう

ただ、中国のような国では、AIを監視システムに用いたりするという先例もありますから、技術的なもの等には利用していくかもしれませんが、社会に関するものには利用しないでしょう。

なぜなら、現在の中国は中国は遅れた社会のままであり、これを改革するためには、まずは何をさておいても、中国の現体制を変えなれければならないからです。それは、中国共産党の終焉を意味し、中共は絶対にそのようなことをしないでしょうから、中国社会は遅れたままになるでしょう。そうなると今後経済発展も期待できません。

以上、chatGPTは中国にとって、諸刃の剣であることを述べてきました。しかし、chatGPTだけが、中国にとって諸刃の剣というわけではありません。実はAIそのものが、諸刃の剣になり得ます。

たとえば、中国では監視カメラをAIで運用して、特定の個人を特定するシステムなども大々的に構築され、運用されていますが、これも諸刃の剣です。ただchatGPTのように、すぐに自分たちに危険が及ぶ可能性を認知しにくいだけです。

たとえば、このAI監視システムが反乱分子に乗っ取られたらどうなるでしょう。そこまでいかなくても、AI監視システムを運用できる人物が、その情報を反乱分子に伝えるようなことがあったらどうなるでしょうか。

この記事でも述べましたが、経営学の大家ドラッカー氏は、イノベーションとは技術革新ではなく、社会を変えるものでなければならない、社会を変えるものでなけば、それはイノベーションとは呼べないとしています。

その意味では、中国のいわゆるイノベーションと呼ばれているものは、すべてが、技術革新ということができるでしょう。

そうして、その技術革新の目的は、社会などどうでもよく、中国共産党の幹部とその走狗が、経済的に豊になることと、中国の全体主義体制を維持することです。中国社会などどうでも良いのです。


2021年、米国のGDPは23兆ドル、中国は17.7兆ドルでした。 1人当たりGDPは米国が6.94万ドル、中国が1.25万ドルで、総額でも米国が中国を上回り、1人当たりでも米国が中国の6倍近くになっています。

ただ、中国政府の出すGDP等の統計は、ほとんど出鱈目だといわれており、本当はもっと低いとも言われています。

それは、無視して、この数字が正しいものとしても、中国の一人あたりのGDPは米国の1/6程度に過ぎないのです。

なぜこのようなことになるかといえば、米国においては様々な社会問題があることは事実ですが、それにしても、真の意味でのイノベーションが実行され、社会が少しずつであっても良くってきたし、これからも良くなり続けるからでしょう。

米国においては、中国と比較すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などが進んでおり、それが多数の中間層を生み出し、それが活発に社会経済活動を行い、イノベーションを実施し、その結果として経済も発展してきたのです。

米国においては、あらゆる地域、あらゆる階層においてイノベーションがなされた結果、今日のような繁栄をみるようになったのです。無論、問題も多々ありますが、それでも多くの人は社会を良くすること、良くなるを前提として、日々生活しています。

これが時には行き過ぎて、社会に分断を招いたりしていますが、それでも中国と比較すれば、社会は日々進歩しています。これは、多かれ少なかれ、我が国の含めた自由主義陣営の国々に当てはまることです。だからこそ、米国に限らず、一人あたりのGDPでは多くの先進国が中国よりも、高いのです。ちなみに、中東欧諸国や台湾や韓国も中国よりは一人あたりのGDPは高いです。

ちなみに、日本は過去には金融政策を、過去も現在も財政政策を間違い続けており、そのため過去ほとんどGDPが伸びず、賃金も30年間も伸びませんでしたが、それでも一人あたりGDPでは中国よりは遥かに上です。

一方中国では、先程の述べたように、イノベーションはなされず、技術革新のみが行われ、一部の人間を経済的に豊にすることだけに注力し、社会はなおざりされたままです。中国の技術革新は、中共が掛け声をかけ、資金を投じて、一部の人間を経済的に豊にするだけで、社会はそのままです。そのため、中国では信じられないような拝金主義が横行しています。

それは、日本などの先進国でもある程度はありますが、程度問題であり、中国ほど酷くはありません。

ChatGPTのようなAIは、イノベーションによって社会変革をする環境が整っている、国や地域で、利用されて初めて真価を発揮するものと思います。中国のような、技術革新だけしようというところでは、真価は発揮し得ないでしょう。

中国のネット上では、「中国のAIは米国のAIよりも賢いに違いない。なぜなら私たちはAIに、話す方法だけでなく、話さない方法も教えなければならないからだ」と皮肉を言う人もいます。

確かに、言論の自由のない社会で、賢く、対話に長けたAIが生まれるとは想像がつかないです。

科学技術の発展によって、独裁国家の政治制度、少なくとも言論が自由を獲得する日が来る、と考えている人はいるかもしれないです。しかし、過去の中国はそうではありませんでした。


長い間、科学技術は誰にとっても公平で中立であると考えられてきました。確かに民主主義国家も、独裁国家も、技術があればミサイルやコンピューターなどを同じように生産できます。

しかし、科学技術が社会を良くすることに使われるのか、そうではないかで社会は随分違ってきたのです。科学技術でイノベーションを実現するか、そうではないかで、社会は随分異なるものになります。特に、イノベーションは二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、過去には経済成長できましたが、今後は成長できないでしょう。

チャットGPTのような自由な対話形式のAIが普及し始めたことで、この当たり前のことがも多くの人認識されるようになるでしょう。

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2023年3月16日木曜日

日韓首脳会談、岸田首相の姿勢が「おわび」と受け取られる懸念 韓国の「ホワイト国」復帰や通貨スワップ復帰など論外だ―【私の論評】日韓関係には韓国から日本に歩み寄るべき問題はあるが、それ以外は韓国の国内問題(゚д゚)!

日本の解き方

日韓首脳会談に臨む韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(左)と岸田文雄首相=16日午後、首相官邸

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日し、岸田文雄首相と首脳会談を行うことが決まった。

 岸田首相は、新たな〝おわび〟を避け、歴史認識を継承することを表明するという。具体的には、1998年の日韓共同宣言など歴代内閣が示した立場の継承を表明するにとどめる意向と報じられている。この宣言には、植民地支配に対するおわびとともに「未来志向」を明記しており、日韓関係の基盤として適切だと判断したようだ。

 98年宣言は当時の小渕恵三首相と金大中(キム・デジュン)大統領が署名した。植民地支配について小渕氏が「痛切な反省と心からのおわび」を表明するとともに、金氏は「不幸な歴史を乗り越えて未来志向的な関係を発展させるため、互いに努力することが時代の要請だ」と応じた。歴史問題に終止符を打つのが狙いだった。

 日韓両国は65年の国交正常化時に締結した日韓請求権協定で、請求権問題の「完全かつ最終的な解決」を宣言した。それで、両国間の財産および請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みである。

 しかし、韓国側が歴史問題を蒸し返し、日本政府が応じてしまったのが間違いだ。元慰安婦の方々の現実的な救済を図るために、95年に「アジア女性基金」を設立した。その後も、歴史問題はくすぶり続け、2015年に慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した政府間合意に至った。しかし、文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で事実上白紙化された。解決済み問題を何度も問題とし「解決」してきたのに、再び問題化しているのだ。岸田首相は15年合意に外相として関わった。

 いわゆる元徴用工問題も同じだ。日本企業に賠償を命じる韓国最高裁判決が18年に確定したが、日韓請求権協定からみれば、そうした判決が出るのがおかしい。百歩譲ってもあくまで国内問題であり、日本との懸案とするほうがおかしい。安倍晋三・菅義偉政権では何も対応しなかったので、韓国の尹政権自らが解決せざるをえなくなった。これも国内問題なので、日本に迷惑をかけずに解決すべきものだ。本来なら日本は何も言わずに、韓国の解決策の報告を受けるだけでいい。

 報告を受けるだけから、何を加えるか。岸田政権では98年宣言を持ち出すが、これが韓国側から見れば、また日本が謝罪したといわれかねない。過去、解決済みを何度も蒸し返したので、98年宣言とはいえ、その轍を踏むことになりかねない。まして、輸出管理の「ホワイト国(グループA)」復帰や、日韓通貨スワップまで復活となるのは論外だ。

 北朝鮮問題で、日米韓の連携が必要であるので、多少の無理は仕方ないという見方もあるが、日韓は過去の蒸し返しをせずに北朝鮮対処への未来志向だけに専念すべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日韓関係には、韓国から日本に歩み寄るべき問題はあるが、それ以外は全部韓国の国内問題(゚д゚)!

7日、西村経産省西村大臣は、「韓国向け輸出管理強化は安全保障の観点で実施しており、労働者問題と次元が異なる。全く別問題。そもそも本件は日本国内の運用見直しであり協議の対象ではない。昨日に韓国がWTO紛争解決手続中断の意思を示したため、政策対話で韓国の輸出管理の実効性の確認を行う。今後韓国の姿勢を見極め判断する」と発言していました。


ただ、経済産業省は16日、韓国に対する半導体関連品目の輸出管理の厳格化措置を緩和すると発表しました。14~16日に開いた日韓の局長級による政策対話で、韓国の輸出管理体制の改善を確認したほか、韓国が世界貿易機関(WTO)への提訴を取り下げると発表したためです。

日本は2019年、半導体の洗浄に使う「フッ化水素」など3品目の輸出手続きを厳しくしました。軍事転用の恐れの低い物品や技術の輸出手続きが簡略になる優遇国「グループA(ホワイト国)」から韓国を外した措置については、今後も対話を継続するとしています。

日本の輸出管理に関しては、安全保障の観点から、日本が決定すべきものであり、韓国が決定に関与したり、影響を及ぼしたりする性格のものではありません。

2019年、日本から輸入した約4万キロの高純度フッ化水素が不良品であるとして返品を受けた際に120キロしか戻らなかったという事件がありました。残りがどこに行ったのかは不明なままで、これは韓国国内でも批判の的となりました。

日本が韓国をグループA(旧ホワイト国)から除外した理由は、「韓国の輸出管理制度が不十分で、安全保障上の懸念があるから」です。韓国の管理体制がずさんであるとして、日本だけでなくEUも韓国をグループA国には指定していません。


グループA (旧ホワイト国)から除外されると、実際に韓国への輸出についてどのような影響があるのでしょうかといえば、結論から言うと、さほど大きな影響はないと言えます。

グループAから外されたことで、日本から韓国へ輸出する際、大量破壊兵器の製造などに転用される可能性がある機械製品などの幅広い品目においては、原則として契約ごとに個別に経済産業省の許可が必要とはなりました。

こういったキャッチオール規制や包括許可など、輸出許可に対して書類などの量が増えるのは多少手間ではありますが、グループA国から除外されたことで、個別許可の品目が一気に増えるわけではありませんし、韓国への扱いが悪くなることもありません。

また、韓国という国自体へのグループA国に対する包括許可がなくなっても、社内規定を整え経産省の検査を受けることで取得できる特別一般包括制度を利用すれば、韓国企業はこれまでと変わらない取引が可能です。

ただ、韓国としては、日本からグループAに指定されていないということは、それだけ日本から信用されていないということを意味しており、他国からそういう国なのだと、みられることになり、韓国としては沽券に関わるというところがあります。

しかし、それは日本側が歩み寄るべきものではなく、韓国側が自国の輸出管理制度を整えて、日本政府の信頼を取り戻すべき問題です。

その他の問題も同じです。通貨スワップも、日本の哨戒機に対する、照射などは、韓国のほうから日本に歩み寄るべき問題であり。


慰安婦問題、徴用工問題は、日本にとっては何の問題でもなく、韓国が自国内で解決すべき国内問題です。

日韓関係には、韓国から日本に歩み寄るべき問題はありますが、それ以外は韓国の国内問題であるという立場を崩すべきではありません。

そうして、北朝鮮問題で、日米韓の連携は必要ですが、それにしても、現在の尹韓国大統領、中国依存脱却にまい進し対米輸出に注力すること等をして、親米的な態度を示してはいますが、今後韓国が再び中国寄りになるなら、日米としても、韓国は北や中国に対峙するために必要な軍事上の緩衝地帯(空き地)であるとみなし、それなりの扱いしかしないようにすべきです。

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2023年3月15日水曜日

ホンジュラス大統領、「中国との国交樹立を指示」と発表 外交部「わなにはまるな」/台湾―【私の論評】ホンジュラスの中国への寝返りがかすむ米国の台湾紛争抑制法(゚д゚)!

ホンジュラス大統領、「中国との国交樹立を指示」と発表 外交部「わなにはまるな」/台湾

ホンジュラスのカストロ大統領


中華民国(台湾)と外交関係を結ぶ中米ホンジュラスのカストロ大統領は14日、ツイッターで、中国との公式な関係の樹立を取り計らうようレイナ外相に指示したと発表した。これを受けて外交部(外務省)は15日、ホンジュラス政府に対して「厳正な関心」を表明したと報道資料で明らかにし、「中国のわなにはまってはならない」と慎重な判断を求めた。

中華民国とホンジュラスは1941年に国交を樹立した。外交部は、台湾が信頼できるパートナーであることをこれまでに繰り返しホンジュラスに伝えてきたことを明かした上で、能力の及ぶ範囲において国家建設の発展を支援してきたと言及。中国がホンジュラスとの関係の発展を狙う唯一の目的は、国際社会における台湾の空間を圧迫することにあると指摘し、ホンジュラス国民の福祉に有益な協力関係を推し進めていく心からの思いはないと訴えた。その上で、台湾との長年来の友好関係を損なう誤った決定を下さないよう呼び掛けた。

「ホンジュラスは中南米の重要な国交樹立国」だと強調し、ホンジュラス政府や社会の各界に対する説明や意思疎通を引き続き強化していく方針を示した。

これに関し、駐台ホンジュラス大使は現時点では中央社の質問に回答していない。

【私の論評】ホンジュラスの中国への寝返りがかすむ米国の台湾紛争抑制法(゚д゚)!

ホンジュラスといえば、前大統領のエルナンデス大統領は、親台派でした。2021年11月13日台湾を訪問し、蔡英文総統と会談しました。中国と台湾の外交上の綱引きは中米の政治にも影響を与えています。  

ホンジュラスでは同年11月28日に大統領選挙が行われましたが、無所属の有力候補の一人であった現大統領カストロ氏は「当選した場合、台湾と断交し、即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と主張していて、台湾は強い危機感を示していました。

エルナンデス全大統領は、立候補していませんでしたが、「大統領選挙の結果、国民が台湾との交流を選択することを願う」と後継候補への支持を表明していました。大統領選の結果は、無党派のカストロ氏が当選しました。

中南米カリブ海地域には台湾と外交関係を持つ15カ国中9カ国が集中。長年、中台の「外交戦争」の最前線となってきました。台湾は、欧州連合(EU)欧州議会の代表団や米議員団の訪問を相次いで受け入れており、台湾と中国との駆け引きが活発化しています。

今回は、長年台湾と外交関係を維持してきた、ホンジュラスが台湾と断交することを決めたのです。


当時、断交を明言するカストロ氏の伸長に、台湾は強い危機感を示しました。台湾とホンジュラスは21年、外交関係の樹立から80年を迎えました。台湾外交部(外務省)はカストロ氏の発言について「中国は私たちの外交関係が不安定だとの誤った印象を与えるため民主的な選挙を利用している」と訴え、カストロ氏の背後に中国が存在すると示唆しました。

ただカストロ大統領は、中華民国(台湾)から中華人民共和国に承認先を替える計画はないと述べた上で、台湾副総統の頼清徳氏に対し、台湾との関係強化を約束しました。また、カストロのスポークスパーソンは、彼女が「当面の間、一つの中国への支持を変更・転換する考えはない」と述べていました。

現在台湾を国と認めているのはバチカン市国を含め世界で14カ国しかありません。うち7カ国は南太平洋やアフリカ沖の小さな島国で、主軸は中南米だ。と言っても、南米はパラグアイ1国、中米はグアテマラ、ホンジュラスと、81年に英国から独立した小国ベリーズ、そしてカリブに浮かぶ島国、ハイチです。

今回ホンジュラスが中国に寝返ってしまったので、もはや中米は台湾にとって「拠点」とは呼べなくなってしまいました。

中国と台湾の国交レースが始まったのは1970年代初頭です。71年の米ニクソン政権による対中接近、毛沢東率いる中国の国連復帰と中華民国(台湾)の国連脱退を機に、78年までに日本を含めた80カ国近くが雪崩を打つように中国と国交を結びました。

この時期、台湾の承認国は22カ国で底を打ち、その後、上下を繰り返す。李登輝総統時代の98~2000年にかけて、台湾の攻勢が最も華々しく、外交関係にある国は95年、30カ国に達しました。

ところが、アフリカにおける台湾の牙城だった南アフリカは98年、中国と国交を結びました。マンデラ政権の与党、アフリカ民族会議が反アパルトヘイト運動の中、長く中国から支援されてきたためです。その後もアフリカで大規模な援助外交を繰り広げる中国は、03年にリベリア、05年にセネガル、06年にチャド、07年にマラウイと相次いでアフリカ諸国との国交を台湾から奪いました。

援助攻勢で小国をつなぎ留めておく意味はあるのか、という議論も台湾にはあり、08~16年の馬英九総統時代には「外交休兵」が提起され、このころ、レースはさして進みませんでした。

ところが、16年に始まる蔡英文政権下、中国の習近平体制からの圧力が強まり、台湾は17年にパナマを、18年にはドミニカ、エルサルバドルまで奪われました。そして昨年12月にはニカラグアも台湾から中国に乗り換えました。

そんな逆風の中、ホンジュラスがつい最近まで台湾を維持してきたのは、米国の存在があったからです。

従来、例えば98年に南アフリカが台湾を切る際、米クリントン政権からは特段の外交圧力はありませんでした。米国の影響力が最も強い中米の国で「絶対に台湾とは断交しない」と歴代大統領が公約してきたエルサルバドルが18年に台湾から離れたときも、米国の言い分は重視されませんでした。

一方、22年1月のホンジュラス大統領カストロ氏の就任式にはバイデン政権のハリス副大統領が列席し、その存在感をアピールしました。両国は中米から米国への移民を抑えるプロジェクトで合意し、米国からの投資促進も約束さていました。

ホンジュラスと米国との緊密さに中台問題は本来関係がないですが、ここに来て、米国と中国の対立が微妙に影響し始めていたようです。「中南米における中国の影響を抑えるため」といった露骨なことをハリス氏は言いませんでした。

カルロス大統領就任式に出席するためホンジュラスに降り立つハリス米副大統領。就任式の際、同じく出席していた台湾の頼清徳副総統と異例の「直接会話」を行った。

しかしホンジュラスとしてはそれなりのそんたくを働かせたのか、早々に「台湾維持」を発表していました。

台湾が国交国を失うケースは近年頻発していますが、ここで特に記しておきたいのは、以上で「台湾と断交」と書いてきたのですが、正確にはこれらの国々は「中華民国」と断交したのです。

その背景にあるのが、中華人民共和国の唱える「ひとつの中国」政策です。中華人民共和国が南アフリカをはじめとする各国に対して迫ったのも「中華人民共和国を認めるか、中華民国を認めるか」という選択でした。

言い換えれば、台湾が国交国と断絶し、失っていく原因は、この中華人民共和国が唱える「ひとつの中国」政策といって良いです。台湾が1971年に国連を追放されたのも、中国を代表する正統政府は中華人民共和国だと認められたからであり、「台湾」という名義で国連に残るという選択肢がないわけではなかったと言われています。

台湾は現在にいたるまで国連に加盟出来ておらず、国連の関連組織である世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)への限定的なオブザーバー参加さえ、中国の圧力によって妨害されることが多いです。これもまた「中華民国」という名称が大きな要因となっているといえます。

とはいえ、台湾がその国名「中華民国」を名称変更するのはそう容易なことではありません。選挙のたびびに有権者が「台湾」か「中華民国」かで割れるうえ、総統が演説の中で「中華民国」を何回使ったか、が台湾ではニュースになるほど賛否が分かれる状況です。

であるならば、台湾を取り巻く日本をはじめとする国際社会はどのように台湾と接していくべきでしょうか。それに有効な解決方法がすでに日台や米台の政府間で進められている「積み木方式」による各種協定の締結です。

日本と台湾は国交がなく、他の国家のように条約を締結することが出来ません。例えばFTAを結ぶにしても、中国による妨害も考えられ現実的ではありません。

そこで、包括的な条約を結ぶのではなく、投資や租税、電子取引や漁業など、個別の協定を結ぶことを、あたかも積み木を積み上げていくことで、実質的にはほぼFTAを締結したのと等しいレベルにまで持っていくことです。。

現在、台湾は中国の圧力により、いっそう国際社会における外交空間を狭められています。しかし、知恵を絞ることによって外交関係がなくとも、実質的には国家間とほぼ同等レベルの密接な関係にまで作り上げられるというモデルが日台間で実現、その成功例を世界に発信していくべきです。

さらに、日本としては、台湾をTPPに参加してもらうことにより、積み木をさらに高く積み上げることができます。そうして、民主化され市場の自由度も高い台湾はTPPに加入することは可能です。全体主義国家の中国は、市場の自由度も低く、そもそも固定相場性ですから、最初からTPPに入ることはできません。

TPPと積み木方式での各種協定により、日台は実質的に外交関係にあるのと同じことになります。これをモデルとして世界に示すことこそ、日本の使命であり、これを実現し、G7の国々が似たようなことをすれば、ホンジュラスのような国が中国側に寝返ったとしても、あまり影響がなくなります。

一方、米国は台湾関連法案を新設したり、改定しています。2月28日、米連邦議会下院金融委員会は台湾に関する3つの法案を圧倒的な多数で可決、台湾紛争抑制法案、台湾保護法案、台湾差別禁止法案」の3つ、その中で特に注目すべき台湾紛争抑制法案です。

中国が台湾に侵攻すると中共幹部は乞食になる・・・・?

本案には、米国財務省に中国共産党幹部とその親族たちの在米資産の調査を求める条項と、米国金融機構に対し中共幹部と親族に金融サービスを提供することを禁じる条項が含まれているからです。

これは、中国共産党に対して大変な威力のある「戦争阻止法案」となるでしょう。共産党政権を支える高官たちの大半(もっといえばほとんど)が米国に隠し資産を持っていることは「公開の秘密」でもあります。

それが米国の法律によって凍結・没収される危険性が生じてくると、共産党幹部集団にとっての死活問題となるからです。ちなみに米国には、5200億米ドル(約70.2兆円)の中国の特権階級の資産があるとされています。

一方SNS上で再び「中国人100人がスイス銀行に7兆8000億元、預金している」という噂がネットユーザーの間で広まっていまい。福建省当局はその「デマ」を検証し、ネットの噂は事実ではないと打ち消しました。

スイス連邦経済事務局のイネイヘン・フライシュ局長が、仮に台湾海峡情勢が変化すれば、EUの制裁に従うと明言した事と関連があるのではないでしょうか。

米国やスイスの銀行口座に資産を置いている同党幹部らは、ロシア・ウクライナ戦争を目の当たりにし、背筋が寒くなっているのではないでしょうか。

このようなことは、法律があろうがなかろうが、戦争になれば、普通は資産が凍結されることは、最初から分かりきっていることなのに、中国としてはホンジュラスで意趣返しでもしたつもりかもしれませんが、それにしても、中共の幹部らは、自分たちがいかに脆弱の基盤の上に立っているのか思い知らされたことでしょう。

かといって、中共幹部らは、資産を中国の銀行に預けることも不安なのでしょう。ということは、中共幹部は中国の未来を信じていないということを意味するのですが・・・・。

そんなことはないという人もいるかもしれませんが、お金は正直です。日本や西側諸国には、自国の金融機関に資産を預けない人などいません、これは自国の未来を信じているからです。

今後も米国は台湾関連法をさらに強化し、日本は台湾との間で様々な条約などを積み木方式でさらに積み上げ同盟関係に近いところまで持っていくべきです。

そうして、日本は米国を見習い、台湾関連法案も改定、新設すべきですし、米国はTPPに復帰すべきでしょう。

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