13日、台北の台湾総統府で会談した蔡英文総統(右)とホンジュラスのエルナンデス大統領 |
ホンジュラスでは今月28日に大統領選挙が行われますが、野党の有力候補の一人が「当選した場合、台湾と断交し、即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と主張していて、台湾は強い危機感を示しています。
エルナンデス大統領は今回、立候補していませんが、「大統領選挙の結果、国民が台湾との交流を選択することを願う」と後継候補への支持を表明しています。
【私の論評】経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱い国や地域に浸透し意のままに動かそうとするのが中国の常套手段(゚д゚)!
ホンジュラスの位置関係を以下に示します。
また汚職による政治腐敗が著しく政府はその責務を果たさず、更に麻薬犯罪組織の暗躍と警察組織の退廃により極めて治安が悪く、日々暴力と犯罪が絶えません。社会福祉はほとんど提供されず医療レベルも極めて低く、また教育システムも必要な機能を果たしていません。
これらの現実を生きるホンジュラス国民は、明日への希望を持つことが極めて困難です。
中南米カリブ海地域には台湾と外交関係を持つ15カ国中9カ国が集中。長年、中台の「外交戦争」の最前線となってきた。台湾は最近、欧州連合(EU)欧州議会の代表団や米議員団の訪問を相次いで受け入れており、台湾と中国との駆け引きが活発化しています。
ホンジュラス大統領選で最有力候補に浮上した最大野党LIBREのシオマラ・カストロ氏は、当選した場合「即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と繰り返す。ホンジュラスは台湾と外交関係を維持しているが、カストロ氏は中国に乗り換える方針です。
大統領選は当初、首都の市長で与党・国民党のナスリー・アスフラ氏が先行し、テレビ司会者のサルバドル・ナスララ氏、カストロ氏が追う構図だとされた。だが、ナスララ氏が出馬を取りやめてカストロ氏を支持すると表明し、同氏とアスフラ氏の一騎打ちの様相になりました。
ホンジュラスの民間団体CESPADの直近の世論調査で支持率は、カストロ氏が38%に伸び、アスフラ氏の21%を引き離しました。
断交を明言するカストロ氏の伸長に、台湾は強い危機感を示しました。台湾とホンジュラスは21年、外交関係の樹立から80年を迎えました。台湾外交部(外務省)はカストロ氏の発言について「中国は私たちの外交関係が不安定だとの誤った印象を与えるため民主的な選挙を利用している」と訴え、カストロ氏の背後に中国が存在すると示唆しました。
台湾は、こうした中国の工作に手を拱いているばかりではありません。
ラテンアメリカ及びカリブ海地域の親台湾派議員たちによる国際的な交流プラットフォーム「フォルモサクラブ」は26日午前、オンライン方式で初の合同会員大会を開催しました。この大会では、台湾が「専門、実務、貢献」を原則に、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)、国際刑事警察機構(インターポール)、環太平洋経済連携協定(CPTPP)等の国際組織に参与することの必要性を国際社会が直視し、また支持するよう呼びかける共同声明を採択しました。
親台湾派議員たちによる国際的な交流プラットフォーム「フォルモサクラブ」は2019年10月、まずヨーロッパで誕生しました。同年12月には南米諸国とメキシコが参加する中南米版「フォルモサクラブ」が発足し、2020年11月には中南米の親台湾派議員を取り込み、ラテンアメリカ版「フォルモサクラブ」に名称を変更しました。
今年5月にはカリブ海地域でも「フォルモサクラブ」が誕生。ラテンアメリカとカリブ海地域の「フォルモサクラブ」には現在、合計21か国、300人近いメンバーが参加しています。
それにしても、なぜ中南米の小さな国をめぐって台湾と中国の駆け引きが活発に行われるのでしょうか。
国連における国際会議は、国の大小、強弱や委員の多少に関係なく、一国に一票の投票権を与える一国一票主義で運用されているということがあるからです。人口が1万6,000人と、国連加盟国.の中で最も小さいパラオも、1票の投票権があります。
ホンジュラスのような小さな国は経済・軍時的にも弱くさらに市民社会も比較的弱い傾向があります。中国にとってはこれらの国々は介入しやすく、こうした国に介入して、国連における国際会議において中国の意向に沿った一票を投じるようにさせることを狙っているのです。
たとえ小さくても、中国に親和的な国が多ければ、国際会議を中国にとって有利に運ばせることができます。
そうして、国際会議や国際機構から台湾を排除することができます。このようなことをあらゆる局面で実行し、台湾を自ら中国に帰属するように仕向けることが、中国の最終目標です。
巷では、中国の軍事力、特に海戦能力を過大評価し、中国が台湾にすぐにも侵攻するように煽る論調も多いですが、このブログでも何度か述べてきたように、日米等に海戦能力、特にその中でもASW(対潜戦闘能力)に著しく劣る中国は、日米には海戦で勝つことはできません。
海戦ということに限っていえば、日本単独でも、戦えば負けます。日本が単独で、台湾を潜水艦隊で包囲してしまえば、中国の艦艇はことごとく撃沈され、台湾に侵攻できません。尖閣も同じことです。尖閣を日本に潜水艦隊が包囲してしまえば、中国は手出しできません。
無論米軍単独でも同じことですし、もし日米が手を組めば、中国には全く歯がたちません。このようなことを言うと、「そんなはずはない」と考える人は、中国のブロパガンダに相当影響を受けていると言わざるを得ません。
もし、中国が台湾に侵攻できる能力があるなら、中南米のホンジュラスを取り込もうというような、回りくどいことはせず、すぐに台湾に侵攻するはずです。そのつもりなら、わざわざ台湾領海、領空等を侵犯するなどのことは一切せず、ある日突然侵攻するはずです。チベット、ウイグル侵攻はまさにそのように実施されました。
中国は、軍事力では勝てる見込みがないから、中南米諸国を取り込んだり、台湾等に示威行動をしたりするのです。
ただし、中国を決して侮るべきではありません。軍事力で到底勝ち目のない中国は、軍事力以外で何とか台湾を中国の意のままにしようと、様々な工作を行っています。中南米諸国工作もその一環です。
中国は中南米だけを取り込もうとしているわけではありません。カンボジア等のインド太平洋地域や近隣の貧困国等の独立を一段と脅かしています。これらの国々は経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱く、中国が介入しやすいからです。それこそがインド太平洋地域における大きな危機です。
また、中国は小国だけではなく、先進国にも工作をしかけていることを忘れるべきではありません。たとえば、オーストラリア社会が様々な中国の浸透を受けていたことを忘れるべきではありません。
オーストラリアは、国としては先進国に分類されていて、経済・軍事的にも弱くはなく、市民社会も決して弱いとはいえません。国全体としては、決して弱くはないのですが、地域としては、これらが脆弱な地域もありますし、様々な組織の中には弱いものもありますし、社会階層の中には弱いところもあります。そうした弱いところを中国につけこまれて浸透されてしまったのです。
日本も例外ではありません。北海道をはじめとする、全国各地での中国による土地の買い占めなどの動きがあります。
もし、この条例が施行され、さらには「外国人参政権」が認められれば、中国は武蔵野市に大勢の中国人を送り込むとともに、地域住民も取り込み、中国人議員が数多く誕生するどころか、中国人市長が誕生することになるかもしれません。それが、日本中の地方で起これば、日本は中国の意のままに、操られることになります。
先程ものべたように、経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱い国や地域に工作して浸透し中国の意のままに動かそうとするのが中国の常套手段です。
中国の軍事力をひたすら煽るではなく、こうした中国の常套手段に対抗する術を日本も持つべきです。
安倍晋三元首相が、首相経験者として初めて台湾を訪問する計画が持ち上がっています。安倍氏は超党派で作る親台議連「日華議員懇談会」の顧問を務めており、その動きは、中国との距離が近いとされる岸田文雄首相や林芳正外相、党内では茂木幹事長へのけん制と指摘する声も少なくないです。
岸田首相は、どのようなつもりで、これらの人事を決めたのかわかりませんが、外相、幹事長ともに中国との距離が近いとされる人を任命するのは、明らかにバランスを欠いています。これは、中国に誤ったメッセージを与えかねません。
バランスを保つ意味でも、安倍元総理は台湾訪問を考えたのでしょう。私としては、安倍元総理に是非とも台湾を訪問していただき、台湾ならびに日本が中国の浸透を防ぐための新たな仕組みを提唱していただきたいと思います。
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