防衛省は12日、海上自衛隊の護衛艦「いなづま」がオーストラリア海軍のフリゲート艦「ワラマンガ」と共同訓練を行った際、安全保障関連法に基づく「武器等防護」を実施したと発表した。米軍以外を対象とした実施は初めて。
共同訓練は10~12日に四国南方で実施し、武器を使用する事態は生じなかった。武器等防護は平時から他国の艦艇や航空機を守る活動で、平成28年の安保法施行で自衛隊の新たな任務となったが、これまでは同盟国の米軍を対象に行ったケースしかなかった。
日豪両政府は今年6月の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)で、武器等防護の実施に向けた準備が整ったことを確認していた。今後も豪軍から要請があれば行うという。防衛省は「部隊間の相互運用性が向上した。日豪防衛協力にとって極めて重要な進展だ」としている。
共同訓練は10~12日に四国南方で実施し、武器を使用する事態は生じなかった。武器等防護は平時から他国の艦艇や航空機を守る活動で、平成28年の安保法施行で自衛隊の新たな任務となったが、これまでは同盟国の米軍を対象に行ったケースしかなかった。
日豪両政府は今年6月の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)で、武器等防護の実施に向けた準備が整ったことを確認していた。今後も豪軍から要請があれば行うという。防衛省は「部隊間の相互運用性が向上した。日豪防衛協力にとって極めて重要な進展だ」としている。
【私の論評】2015年の安保改正がなければ、今日日豪の関係も、他の国々との関係も、現在よりはるかに希薄なものになっていた(゚д゚)!
以下に12日、共同訓練を行った海上自衛隊の護衛艦「いなづま」がオーストラリア海軍のフリゲート艦「ワラマンガ」の写真を掲載します。手前が「ワラマンガ」、奥が「いなづま」です。防衛省・自衛隊のツイッターから引用しました。
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もともと、この「外国軍隊等の武器等防護」は、自衛隊法第95条「自衛隊の武器等の防護のための武器の使用」という規定がベースになっています。これは、おもに平時に、自衛隊が装備する「武器等(武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備または液体燃料)」が奪われたり破壊されたりすることを防ぐために、その武器等を守る役割を与えられた自衛官が、武器を使用してこれを防護する、という規定です。
ただし、武器を使用することができるのは、武器等を退避させてもなおこれを防護することができないなど、やむを得ない場合に限定され、また人に危害を加えることが許されるのは正当防衛または緊急避難の場合に限られるなど、武器の使用には非常に厳しい制約が設けられています。
その「武器等防護」の範囲が外国軍隊にまで拡大されたのが、先ほどの自衛隊法第95条の2の規定ですが、これは2015(平成27)年に成立したいわゆる「平和安全法制」で追加されたものです。
ただし、この規定に基づけばどんな国の軍隊の武器等であっても自衛隊が防護できるというわけではありません。自衛隊が防護できるのは「自衛隊と連携して日本の防衛に資する活動に現に従事している」外国軍隊の武器等に限られています。
これには「外国軍隊等の武器等防護」のベースである、「95条に基づく武器等防護の目的」が大きく関係しています。
「95条に基づく武器等防護の目的」は、自衛隊が装備する武器等が奪われたり破壊されたりして、自衛隊の能力が低下し、ひいては日本の防衛力そのものが低下するのを防ぐことにあります。そのため、「外国軍隊等の武器等防護」であっても、それが破壊されるなどすると日本の防衛力が低下してしまうような場合にのみ、外国軍隊の武器等を防護できるように限定を付しているわけです。
ちなみに、ここでいう「日本の防衛に資する活動」とは、(1)共同訓練、(2)情報収集および警戒監視活動、(3)重要影響事態(そのまま放置すれば日本の安全に重要な影響を及ぼす事態)における輸送や補給活動などがこれにあたるとされています。
「外国軍等の武器等防護」には、上記の防護対象に関する制約以外に、防護を実施できる場合に関する制約も存在します。
まず、外国軍に対して武器等防護に基づく「警護」を実施できるのは、その相手国から警護の要請を受け、かつ防衛大臣が必要と認める場合に限られます。また、武器使用についても、先ほど説明した「95条に基づく武器等防護」に関する制約に加えて、攻撃をしてきている相手方がテロリストや不審船といった、どこかの国の軍隊以外である場合にのみ武器を使用することができるという制約が付されています。
なぜこのような制約が付されているかというと、もしどこかの国の軍隊が意図的に警護対象の国の軍隊の武器等を攻撃したとなると、それはその国に対する武力攻撃に該当し、これを防護するためには「武器等防護」ではなく「集団的自衛権の行使」が必要となるためです。
集団的自衛権の行使は戦争リスクを減らす |
集団的自衛権の行使となると、これは自衛隊法第76条の「防衛出動」と、同じく第88条の「防衛出動時の武力行使」という規定に基づいて行動することになるため、「武器等防護」の場合と根拠法が全く異なります。そのため、武器等防護で実際に警護を実施できるのは、基本的にはテロリストなどによる攻撃に対する場合に限られるというわけです。
ただし、たとえば奇襲的に攻撃されて、誰が攻撃してきたのか判然としない場合や、相手がたとえどこかの国の軍用機などであっても、その攻撃が意図的かどうか判明しない場合には、例外的に防護を実施できることもあり得るという国会答弁も、過去にはなされています。
第9回日豪外務・防衛閣僚に出席した茂木敏充外務大臣及び岸信夫防衛大臣 |
2014年4月日本を公賓として訪問した当時のオーストラリア首相のアボット氏と当時の安倍総理大臣の間でかわされた、共同声明がもとになっています。
2020年11月には、将来的なオーストラリア軍の日本での活動増加に備えて、オーストラリア軍の日本国内での扱いなどについて定める「日豪円滑化協定」が大筋合意に至るなど、その関係はより一層強固なものになりつつあります。今回の「武器等防護」も、こうした日豪間の安全保障協力関係のより一層の深化を象徴するできごとといえるでしょう。
2014年7月1日、安倍政権は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定しました。2015年(平成27年)5月14日、国家安全保障会議及び閣議において、平和安全法制関連2法案を決定し翌日、衆議院及び参議院に提出しました。
安保法制の改正など、政権の維持だけを考えた場合、実施しないほうが良いに決まっていますが、それでも当時の安倍総理はこれを実行しました。このことがなければ、当然のことながら、今日のオーストラリアと日本との関係等もなかったものと思います。無論、現在同盟国や準同盟国などの他の国々との関係も、現在よりはるかに希薄なものになっていたでしょう。
それを考えると、安倍元総理の決断はまさに時宜を得たものでした。岸田総理には、安倍元総理のように政権支持率を下げても、実施すべきことはするという決断力があるのでしょうか。岸田総理にも安倍元総理のような政治家としての矜持をみせてほしいものです。
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