2021年11月5日金曜日

戦闘機導入問題で揺れるトルコと欧米露の関係―【私の論評】日本人は親日国トルコの情勢を客観的にみるべき(゚д゚)!

戦闘機導入問題で揺れるトルコと欧米露の関係

岡崎研究所

 トルコは戦闘機をどのように近代化させるのかという問題に直面している。トルコは本来、米国の第5世代戦闘機F-35を導入する予定であったが、2019年にロシアの防空システムS-400を導入したことに米国が反発し、トルコはF-35共同開発計画から締め出された。その結果、トルコ空軍はF-16戦闘機に頼らざるを得なくなり、最近、米国に対し、40機の新型F-16と現有の80機のF-16をアップグレードする近代化キットへの要請を出した。


 トルコへのF-35の供与が凍結されたのは、米国の主張によれば、ロシアの防空システムS-400導入により、F-35の脆弱性がロシア側に明らかになる可能性が出てきたためである。トルコが同盟の精神をないがしろにしたと批判されても当然であろう。

 米国がF-35のトルコへの供与をやめたことは根拠のある判断である。その結果、トルコの戦闘機がF-16頼りになったことは、いわばトルコの自業自得というべきものではあろう。そういう状況の中で、トルコがF-16戦闘機の新型、および現有F-16戦闘機のアップグレードのための協力を求めているわけである。

 しかし、10月14日付けフィナンシャル・タイムズ紙の解説記事‘Turkey’s search for fighter jets puts Biden in a bind’によれば、F-16はF-35と異なり、S-400の導入により脆弱性を増すという事情はないとのことである。そういうことであれば、トルコのF-16に関する要求は厚かましいところがあるが、米は同盟国としてトルコの要請にこたえてしかるべきであろう。議会は反対かもしれないが、バイデン政権としてトルコの要請を認めるように働きかけるべきであろう。

 NATOは、同条約5条が、加盟国は一カ国への攻撃は全ての加盟国に対する攻撃とみなし全加盟国が攻撃された国を守るとしている、と規定している通り、強固な同盟である。各国の防衛努力はNATO全体にとっても重要であり、腹立ち紛れで対応すべき問題ではない。トルコが同盟国である限り、それなりの敬意を払うべきであろう。

トルコで積もり始めているロシアへの不満

 トルコ・ロシア関係について言えば、トルコのロシアに対する不満はかなり大きく、トルコをロシア側に追いやらないかぎり、ロシア・トルコ間において同盟類似の関係はありえない。黒海をはさんでトルコとロシアは対峙しているが、ロシアのクリミア併合をトルコは認めておらず、ウクライナの立場を支持している。ウクライナには無人航空機をトルコが出すという話もある。

 シリアでは、イドリブでトルコ兵士が20人ほど死亡する衝突事件があったが、ロシア軍の関与が疑われている。さらにコーカサスでのアルメニア・アゼルバイジャン戦争ではロシアがアルメニア側につき、トルコがアゼルバイジャン側につき、アゼルバイジャンが勝利したこともあった。

 トルコ・ロシア関係はトルコと欧米の関係よりもっと難しい関係と見ておいてよい。トルコのF-16に関する要求に応えることで、トルコを欧米側に引き付けて置けるし、そのことは欧米側にとっても利益になると思われる。

【私の論評】日本人は親日国トルコの情勢を客観的にみるべき(゚д゚)!

3月24日人権NGO(非政府組織)ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領が先週、女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約からトルコを脱退させたことを受け、トルコが「前例のない」規模で「人権保護を破壊している」と非難しました。

エルドアン・トルコ大統領

この動きは、トルコの検察長官が、野党である親クルド派の人民民主党(HDP)を、「国家と国との不可分の一体性に反する行為」をしたとして活動停止にする計画を発表したことを受けたもので、全国の都市で党員の逮捕が相次いる中での出来事です。

エルドアン大統領は国民民主主義党(HDP)について、テロ組織指定されているクルディスタン労働者党(PKK)を支援しているとして非合法化を要求、3月17日には最高検 察庁が憲法裁判所にHDPの解党を申請していました。

トルコでは、クルド人が約2割を占めるとされています。PKKは1984年から武装闘争を続け、トルコや米国、EUがテロ組織に指定。政府は、PKKによる攻撃で、これまでに4万人以上が犠牲になったとしています。トルコ軍は現在も、同国南東部やイラク北部で空爆などを含めたPKK掃討作戦を続けています。

PKKの女性民兵

HRWのケネス・ロス事務局長は、エルドアン大統領が「トルコ社会の再構築に向けた幅広い取り組みを妨げるあらゆる機関や社会の部分を標的にしています」と述べています。

「議会の反対勢力、クルド人、女性に対する最近の動きは、人権と民主主義の保護に違反して、大統領が権力を維持するためのものです」

HRWは、エルドアン大統領が宗教的に保守的な層にアピールするために、イスタンブール条約として知られる「画期的な」欧州評議会の条約を「武器」にしていると非難した。

イスタンブール条約は、女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約、通称イスタンブール条約は、2011年5月11日にトルコのイスタンブールで署名された女性に対する暴力と家庭内暴力に反対するための欧州評議会の国際人権条約です。 この条約は、暴力の防止、被害者の保護、加害者の免責の撤廃を目的とします。

「今回の(条約からの)離脱決定は、トルコにおける女性の権利を守るための闘いを大いに後退させるものであり、政治的スペクトラムを問わず、すべての女性にとって大きな打撃となります」とロス事務局長は述べました。。

HRWは、HDPの活動停止計画は、何百万人ものクルド人の民主的権利に対する攻撃であると言います。また、トルコでは過去30年間に他の5つのクルド人政党が閉鎖されていると彼は付け加えました。

「2018年の総選挙で全国的に11.7%の票を獲得し、55人の選出議員を擁する政党を閉鎖するための訴訟を開始することは、政治的結社と表現の権利に対する大きな攻撃です」とロス事務局長は述べました。

「この動きは、600万人近くの有権者が選んだ代表者を否定し、投票権を侵害することになりかねません」

HRWによると、トルコの検察長官は、HDPに対する広範な弾圧の一環として、687人のHDPメンバーを政治活動から追放することも求めているといいます。

人権重視をうたう米バイデン政権は、国務省が3月17日、「(解党は)有権者の意思を不当に覆し、民主主義を阻害する」との声明を発表しました。欧州からも懸念が表明されたのですが、トルコ外務省は同月18日、名指しは避けつつ、「無節操に行動し、我々の内政に干渉するものに対し、トルコの独立した司法による法手続きを尊重するように求める」と主張しました。

トルコがテロ組織とみなしているクルド系武装組織を、米国が過激派組織「イスラム国」(IS)掃討のため支援している問題でも強い不満を抱えています。エルドアン氏は9月下旬、米トルコ関係が「健全ではない」と不満をあらわにしました。

トランプ前政権に比べてバイデン大統領はエルドアン大統領に厳しい姿勢で知られています。
トルコ側はいらだちを強めています。チャブシオール外相は10月28日の地元テレビで、米国が売却に応じなければロシアからの導入を検討する考えを示しました。ロシア製への切り替えは軍制全体に影響するため現実的でないですが、米側を揺さぶる狙いが透けてみえます。

エルドアン大統領は、10月には、トルコに対して人権活動家の釈放を要求した米欧など10人の駐トルコ大使を追放すると宣言しました。

ただし、後にエルドアン大統領は、各国の大使館が内政に干渉しないとする声明を発表したことを受けて処分を見送る方針を示しました。ようやく開催された10月31日のバイデン、エルドアンによる首脳会談では協議の継続を確認するのみで、具体的な進展はみられませんでした。

バイデン(左)、エルドアン(右) 首脳会談

「バイデン大統領は前向きだった」。トルコのエルドアン大統領は20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に際してバイデン氏と会談し、その後に開いた記者会見で、トルコが米国に売却を求めている戦闘機F16についてこう語りました。

もっとも、両国の声明などによると、合意事項は貿易量の増加に向けた協議の枠組み設置にとどまりました。米高官は記者団に対し「(バイデン氏は)トルコの要求を理解している」などと述べるにとどめ、微妙な温度差ものぞかせました。

米トルコ関係が専門のイルハン・ウズゲル元アンカラ大教授は「両者は互いに主張を伝え、継続協議としただけでF16を巡る実質的な進展はなかった」とみています。

トルコは兵員規模でNATO2位を占め、米国や欧州にとっては中東や旧ソ連圏に接する戦略的に重要な同盟国です。その同盟国への武器売却が円滑に進まないのは、両国間に近年生じた深刻な相互不信のためです。

ホワイトハウスの声明によると、バイデン氏は会談でS400への懸念のほか、人権や民主主義、法の支配の重要性を訴えたといいます。米国ではエルドアン政権の強権ぶりに対する懸念が高まっています。仮にバイデン政権が戦闘機売却を認めても、米議会が承認する見通しは立たない状況です。

双方が譲歩し、同盟関係を根本から揺るがしかねない追放劇は回避されたが、溝の深さは改めて浮き彫りになりました。

一方トルコ国内に目を転じると、2019年に国外へ移住したトルコ人は前年比2%増加しました。トルコ統計局が発表した公式統計によると、国外へ移住したトルコ人は合計330,289人に達し、そのうち40.8%は20~34歳でした。トルコの人口は、8,434万人 (2020年)ですから、これは決して無視できない数字です。

イスタンブール政治研究所のセレン・セルビン・コルクマズ常任理事によると、この調査結果は、若者たちがトルコを離れる理由が、主に労働条件や生活水準、仕事の機会、そして自由のためであることを示しているといいます。

「移住は日常の苦闘からの出口戦略になります。国内では若者の失業率が25%以上に達しており、若者の多くが、依然として家族の経済的支援を受けているか、低賃金で働いている状況です」とコルクマズ氏は語りました。

これでは、バイデン政権がトルコの要請をなかなか、受け付けられないのも無理はありません。

トルコは日本国内では、親日国といわれますが、日本人はそれはそれとして、現在のトルコの状況を客観的にみていく必要があります。

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