2023年6月16日金曜日

社会に禍根残すLGBT法案 公約にないのに成立急いだ背景、米国や公明党への配慮か 女性用浴場に女装した男が侵入する事件も―【私の論評】米国でも、評価の定まっていない法律を導入してしまった日本では必ず一波乱ある(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

LGBT法案成立を日本に求めているエマニュエル駐日米大使

 LGBTなど性的少数者への理解増進を目的とした法案が16日にも成立する見通しだ。

 LGBT法案は、自民党の公約の変遷から見ると、2016年参院選から21年衆院選まで公約に含まれていたが、最近の公約ではその記述がなく、政策集でも記述がトーンダウンしていた。しかし、今年2月に岸田首相が国会提出に向けた準備を指示し、法案が急速に進展した。

 法案成立を急いだ理由としては、岸田首相が取り組みたい政策であり、元首相秘書官の差別的な発言を奇貨として利用したと考えられている。法案成立には米国や公明党への配慮も影響していると言われている。

 法案成立によって社会には様々な影響が生じるだろう。例えば、性的少数者の権利や差別の防止が強化されることで、社会全体の理解と受容が進む可能性がある。しかし、賛否は価値観に依存し、保守層からは反発も予想される。また、逮捕された女性用浴場への男性の侵入事件など、法案成立後の具体的な事例によって、議論が起こるだろう。

 LGBT法案は解散風を後押しし、左派の立憲民主党や共産党なども反対している。これにより内閣不信任案が提起される可能性もあり、解散に繋がるかもしれない。ただし、解散は国民にとって良いこととは限らないとの意見もある。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】米国でも、評価の定まっていない法律を導入してしまった日本では必ず一波乱ある(゚д゚)!

現在米国を含めて世界で巻き起こっているLGBT運動は、左翼運動の一環でもあることは否めないです。

まず、米国においては、LGBTの人々は、保守的または右翼よりもリベラルまたは左翼であると認識する傾向があります。2017年のピュー・リサーチ・センターの調査によると、米国のLGBT成人の72%がリベラルまたは左寄りと認識しているのに対し、保守的または右寄りと認識しているのは24%でした。

LGBTの権利は、しばしば左派の問題とみなされます。左派は一般的に、性的指向や性自認にかかわらず、すべての人々の社会正義と平等を支持する傾向が強いからです。

多くの左翼団体が、LGBTの権利のための戦いの最前線に立ってきました。例えば、全米のLGBT擁護団体であるヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)は、民主党の候補者や活動に対する主要な寄付者です。

LGBT運動は、左派系政府の支援からも恩恵を受けています。例えば、オバマ政権は、ゲイやレズビアンを公言する人の兵役を禁止していた「Don't Ask, Don't Tell」政策を撤廃しました。

注意すべきは、すべてのLGBTが左翼であるわけではなく、すべての左翼がLGBTの権利を支持しているわけでもないことです。しかし、LGBTのアイデンティティと左翼的な政治的見解には強い相関があります。これは、一般的に左派が社会正義やすべての人の平等を支持する傾向が強いためと思われます。

米国のLGBT運動

ただ、社会正義や万人の平等への支持が極端になれば、かえって社会正義を破壊し、人々を分裂させる可能性があります。

自分のアイデンティティが攻撃されていると感じると、人は防衛的になり、変化に対して抵抗するようになります。これは、二極化と分裂の激化につながります。

人々は、自分が不当に扱われていると感じると、暴言を吐いたり、有害な行動をとったりしやすくなります。これは、紛争や暴力の増加につながる可能性があります。

人々は、自分が排除されている、あるいは疎外されていると感じると、孤立や孤独を感じやすくなります。これは、うつ病や不安症などの精神衛生上の問題を引き起こす可能性があります。

これらは、社会正義と平等を極端に支持することで起こりうるマイナスの結果の一部に過ぎないということに注意することが重要です。社会問題に対する意識の向上、差別の減少、社会的結束の向上など、ポジティブな結果も多くあります。しかし、過激主義の潜在的な危険性を認識し、それを回避するための努力をすることは重要です。

これらの主張を裏付ける資料をいくつか紹介します。

"The Psychology of Social Justice and Intergroup Relations." By John T. Jost and Mahzarin R. Banaji.
"The Social Psychology of Inclusion and Exclusion." By Rupert Brown.
"The Handbook of Social Justice." Edited by Ilja J.M. van den Bos and Tom R. Tyler.

これらの情報源は、社会正義と過激主義というテーマで行われた研究のほんの一例に過ぎないということに注意することが重要です。引用できる研究はもっとたくさんありますが、これらの資料は、社会正義への極端な支持がもたらす潜在的な悪影響について、わかりやすく概要を提供しています。

さて、下の写真は6月14日ホワイトハウスのLGBTプライドイベントでのものです。左が女性、右が男性で、左の傷跡を見てください。これが本当に、LGBT運動全体が望み、祝福するものなのでしょうか?これが本当に子供たちの模範となるべき人たちなのでしょうか?

米ホワイトハウスは13日、LGBTなど性的少数者の権利擁護を呼びかける「プライド月間」のイベントで活動家が上半身裸の動画(下写真)を撮影し、公開したのは不適切だとして、この人物を今後は招待しないと明らかにしています。

活動家はローズ・モントーヤら。ホワイトハウスが10日開いたイベントで上半身裸になって両胸を手で包んで揺らす動画をソーシャルメディア上で公開しました。バイデン大統領夫妻と会話する姿も投稿していました。

モントーヤはツイッターで「わいせつなことをする意図は全くなかった」とし、性的少数者の権利擁護を祝う「喜び」を表現しようとしただけだと弁明しました。


さて、米国では、連邦政府レベルでは日本の「LGBT理解増進法」に相当する法律はありません。州レベルでは、LGBT法を定めてい州もあれば、反LGBT法を定めている州もあります。

ここでは、米国でLGBT関連の州レベルでの法律をあげます。

LGBTに配慮した法律
  • 差別禁止法: 住宅、雇用、公共施設などにおいて、性的指向や性自認に基づく差別を禁止する法律です。2023年3月現在、29の州とコロンビア特別区が性的指向と性自認を含む差別禁止法を制定しています。
  • 同性婚の実現 2015年、米連邦最高裁は「オベルゲフェル対ホッジス裁判」において、米国憲法修正第14条のデュープロセス条項および平等保護条項により、同性カップルに結婚する基本的権利が保証されるとの判決を下した。2023年3月現在、50州すべてで同性婚が合法化されています。
  • 養子縁組: 全50州で同性カップルの養子縁組が認められています。
  • 健康管理: 50州すべてで、同性カップルがパートナーのために医療上の決定を下すことが認められています。
反LGBT法
  • 信教の自由に関する法律: 企業や個人が宗教上の信念に基づいてLGBTの人々へのサービスを拒否することを認める法律です。2023年3月現在、19の州で宗教の自由に関する法律が制定されており、LGBTの人々への差別に利用される可能性もあると指摘されています。
信教の自由に関する法律の成立には、賛否両論があります。宗教者の権利を守るために必要だと考える人もいます。また、LGBTやその他の少数派を差別するための手段であると考える人もいます。信教の自由に関する法律をめぐる議論は、今後もずっと続くと思われます。

米国憲法修正第1条は、信教の自由の権利を保証しています。この権利は、政府からの干渉を受けずに、自由に宗教を実践する権利を含むと、裁判所によって解釈されてきました。

20世紀初頭、最高裁判所は、宗教の自由には、自分の宗教的信念に反する政府主催の活動への参加を拒否する権利も含まれるとの判決を下しました。この判決は、宗教家が兵役や納税を拒否し、特定の政府プログラムに参加する権利を正当化するために使われたこともありました。
  • コンバージョンセラピー(転換療法): これは、人の性的指向や性自認を変えようとする有害な行為です。2023年3月現在、20の州とコロンビア特別区が未成年者への転換療法を禁止しています。
http://en.wikipedia.org/wiki/2004_Kentucky_Amendment_1

反LGBT法に関しては、日本ではあまり紹介されないので、その他具体的な事例をあげます。

2022年3月、フロリダ州で「Don't Say Gay」法案とも呼ばれるHB1557が可決されました。この法案は、幼稚園から3年生までの性的指向と性自認に関する指導を禁止しています。また、自分の子どもが法律に違反してこれらのテーマについて教えられていると考える場合、保護者が学区を訴えることもできるようになります。

この法案は、LGBTQの擁護者や教育関係者から、LGBTQの生徒や家族に害を及ぼすと批判されています。彼らは、この法案が学校内に恐怖と不安の風潮を作り出し、LGBTQの生徒が必要なサポートを受けることをより困難にすると主張しています。

法案の支持者は、幼い頃に性的なコンテンツにさらされることから子どもたちを守るために必要なことだと述べています。このような話題について、いつ、どのように子どもに話すかを決めるのは親であるべきだと主張しています。

この法案は現在、法廷で争われています。

その他、米国における反LGBT法の例をいくつか紹介します。

テネシー州のHB 1184は、トランスジェンダーの選手が、自分の性自認に沿ったチームで競技することを禁止するものです。

アイダホ州のSB1309は、医師が宗教的または道徳的な異議に基づき、LGBTQ患者への治療を拒否することを可能にするものです。

アーカンソー州のHB 1570は、トランスジェンダーの青少年に対するジェンダーアファメーションケアを禁止するものです。

これらの法律は、近年米国で提案または可決された多くの反LGBT法のほんの一例にすぎません。これらの法律が作られた理由はさまざまです。LGBTの人々の権利を守りたいという動機のものもあれば、過激なLGBT運動を避ける動機のものもあります。

ここで、誤解を避けるために、一つ付け加えておきます。LGBTの人々にも当然人権はあります。しかし、私はそれは一般的に人権ということで捉えられるものであるべきと考えます。それには、日本をはじめ米国でも、EU諸国も、憲法や法律に定めがあります。

LGBTの人々に特定して、法律を定めることは、そうではない人を差別することにつながりかねません。それがひいては、LGBTの人たちを差別することにもつながりかねません。

人権侵害を防ぐために、法律を定めるなら、特定の人や集団を対象にしたものではなく、当該国の国民全体を対象にすべきです。それは、男に関する法律、女に関する法律を定めてしまえば、ことさら男女差別を助長することになりかねないのと同じです。これは、中国における、人民と国民の違いをみてもわかることです。

周恩来首相はよりは、「人民と国民には区別がある。人民は労働者階級、農民階級、反動階級から目覚めた一部の愛国民主分子である」としています。そして、人民に含まれない人たちについては「中国の一国民ではあるので当面、彼らには人民の権利を享受させないが、国民の義務は遵守させなければならない」と説明しています。

国民の権利を守ることは当然のことであり、その対象は男限定でも、女限定でもなく、LGBT限定であってはならないと思います。全国民を対象であるべきなのです。そのため私は、LGBTの権利を守ることと、いわゆるLGBT運動とを混同すべきではないと考えています。ただ、Tについては医学的にも証明されていないので、なんともいえません。

ただ、そのような人が存在するとすれば、犯罪者で無い限りは、その人の人権も認めるべきでしょう。無論T特有の人権を認めるというのではなく、国民として、多くの人が守られている権利を認め、人権を尊重するという意味におて、認めるのは当然のことと思います。そうして、権利が認められるなら、義務も応分に果たさなければならないことは、いうまでもありません。

米国の反LGBT運動

さて、2024年の大統領選挙の結果が、米国におけるLGBT運動の未来に大きな影響を与える可能性が高いです。民主党は長い間、LGBTの権利を支持してきた歴史がありますが、共和党はもっと複雑な記録を持っています。近年、共和党はLGBT運動に対する危機感を強めており、共和党が支配する州議会ではLGBT運動を否定する法律が可決されることもあります。

近年、反LGBTの法律を可決する州が増えているのは事実です。LGBTの権利を擁護する全米の団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」によると、2022年に州議会に提出された反LGBTの法案は245件にのぼります。このうち、75の法案が法制化されました。これは、ヒューマン・ライツ・キャンペーンが2010年にこのデータの追跡を開始して以来、単年度に提出・成立した反LGBT法案の数としては最多となります。

しかし、反LGBT法に対する反対運動も活発化しています。近年、反LGBT法を支持する企業や個人に対する抗議やボイコット運動が行われています。また、これらの法律に対する法的な異議申し立てが行われています。

最終的に裁判所がこれらの法律のいくつかを打ち消す可能性もあります。しかし、共和党が議会を支配する州では、これらの法律が引き続き新たなに制定される可能性もあります。

米国におけるLGBT運動の将来は不確実です。2024年の大統領選挙の結果や、LGBTの人々やそのアライの継続的な活動によってかなり左右されるでしょう。

米国においては、LGBT運動の将来は不確実であるにもかかわらず、日本では、慎重な議論もされないまま、国レベルでの「LGBT理解増進法」が制定されてしまったのです。

米国では、評価の定まっていない法律を導入してしまったのですから、これは日本でも一波乱ありそうです。

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2023年6月15日木曜日

産総研の中国籍研究員を逮捕 中国企業への技術漏洩容疑―【私の論評】LGBT理解増進法よりも、スパイ防止法を早急に成立させるべき(゚д゚)!

産総研の中国籍研究員を逮捕 中国企業への技術漏洩容疑

産総研

 国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(茨城県つくば市)の中国籍の主任研究員の男(59)が、フッ素化合物に関連する技術を中国企業に漏洩(ろうえい)したとして、警視庁公安部は15日、不正競争防止法違反(営業秘密の開示)容疑で逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。公安部は流出の経緯や男と中国企業の関係について調べを進める。

 捜査関係者によると、男は平成30年4月、自身が研究に関わっているフッ素化合物の合成技術情報について、中国の企業にメールで送信し、産総研の営業秘密を漏洩した疑いがもたれている。

 男は平成14年4月から産総研の研究員として勤務。同時に北京理工大学の教授を務めていた時期もあった。

 経済安全保障の重要性が高まる中で、警視庁は、最先端技術の流出防止のため、企業に呼び掛けるなど対策を強化している。

【私の論評】LGBT理解増進法よりも、スパイ防止法を早急に成立させるべき(゚д゚)!


この研究員の名前は権恒道といい、2022年上の記事にもあるように、技術に関する機密情報を含む電子メールを中国企業に送信したとされています。情報には、化合物の製造工程の詳細や、その応用の可能性などが含まれていました。

この中国企業は産総研の競合企業であり、流出した技術は貴重な知的財産とされます。権研究者の行為は、中国企業に市場での大きなアドバンテージを与える可能性がありました。


権研究者は保釈を拒否され、現在勾留されています。有罪判決を受けた場合、最高で5年の懲役刑に処されます。

産総研の研究者の逮捕は深刻な問題であり、企業が知的財産を保護するための措置を講じる必要性を浮き彫りにしています。企業は、機密情報の不正な開示を防止するための方針と手順を確立する必要があります。また、企業秘密を保護することの重要性について従業員を教育する必要があります。

産総研の研究者の逮捕は、中国からの経済スパイの脅威が高まっていることを思い起こさせるものでもあります。中国は、世界中の企業から知的財産を盗むために、さまざまな活動を行っていると非難されています。これらの活動には、ハッキング、贈収賄、スパイの利用などが含まれます。

中国と取引する企業は、経済スパイのリスクを認識する必要があります。知的財産を保護するための対策を講じるとともに、疑わしい活動があれば当局に報告する態勢を整える必要があります。

ただ、企業努力だけでは限界があることも事実です。日本にはスパイ防止法がないため、スパイを摘発しても起訴することが難しいです。そのため、外国が日本をスパイしやすく、また、日本が自国の機密を守ることも難しくなっています。

今回は、中国人が不正競争防止法違反の容疑で逮捕されましたが、これれだけでは十分ではありません。日本はスパイをより効果的に訴追できるよう、スパイ防止法を成立させる必要があります。それを示す過去の事例をあげます。

国内電子機器メーカーに勤務していた中国人男性技術者が昨年、スマート農業の情報を日本から不正に持ち出したとして、警察当局が不正競争防止法違反容疑で捜査していたことが報じられました。
スマート農業の技術も中国スパイの標的に・・・・

報道によれば、同中国人男性は、中国共産党員かつ中国人民解放軍と接点があり、SNSを通じて、中国にある企業の知人2人に情報を送信していたといいます。

この男性は別の事件で浮上し、捜査側から国内電子機器メーカーに連絡が入り発覚。その中で事情聴取などするなどの捜査を進めていたそうです。

この中国人男性は既に出国済みであり、今後の捜査は極めて難しく、中国に渡った技術はもう日本に戻ってきません。捜査機関も当然尽力したと思われ、極めて無念の思いでしょう。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの約200の団体・組織が2016年6月から大規模なサイバー攻撃を受け、その一連のサイバー攻撃に使用された日本国内のレンタルサーバーを偽名で契約・使用していたとして、2021年12月、捜査機関が2人の中国人を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検しました。

この書類送検された中国人の一人は中国人の元留学生「王建彬」容疑者であり、彼はレンタルサーバーの契約を人民解放軍のサイバー攻撃部隊「61419部隊(第3部技術偵察第4局)」所属の軍人の女から頼まれたといいます。

なんと、王容疑者が以前勤めていた中国国営企業の元上司が王容疑者とその女をつないだといいます。

この事件の恐ろしいところは、善意の中国人男性が、中国共産党に利用されたということです。中国国内の日本企業と中国企業の合弁企業でも、日本企業の情報が危機にさらされています。

中国企業との合弁では、日本企業が最新の技術は合弁先に共有しないという立場を取る場合が多いです。

しかし、日本企業のガバナンスが弱いため、現地への技術指導を目的に日本人社員が機微情報(図面等)を持ち出してしまい、その結果、現地に技術情報が共有されてしまい、合弁解消後も技術情報は現地に残ったままという事例もあります。

これらの事例は、日本の現在の法律がスパイ行為から日本を守るのに十分でないことを示しています。日本はスパイをより効果的に訴追できるよう、スパイ防止法を成立させる必要があります。

スパイ防止法を制定することの利点は以下の通りです。

外国が日本をスパイすることを抑止することができます。スパイを摘発した場合、日本が訴追することが容易になります。日本の機密を保護するのに役立ちます。

私は、日本がスパイ防止法を早く成立させることを望んでいます。日本をスパイ行為から守るのに役立つ重要なステップだからです。

LGBT理解増進法等より、スパイ防止法を成立させるべきだと思います。こちらのほうが、余程緊急を要します。

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2023年6月14日水曜日

ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏―【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!

 ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏


 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は13日、同国の侵攻を受けるウクライナが開始した反転攻勢について、ウクライナ側は多大な損失を強いられており、死傷者数はロシア側の10倍に上るとの見方を示した。 

 首都モスクワの大統領府で、ウクライナ侵攻について報じている記者やブロガーと懇談したプーチン氏は、「彼ら(ウクライナ)の損耗人員は破滅的と形容できる水準に近づいている」と主張。「われわれの損耗はウクライナ軍の10分の1だ」と述べた。 

 プーチン氏の発言が事実かどうかは検証できていない。

【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!

ウクライナでは、ダム決壊から1週間が経過しました 。 「 反転攻勢が本格化か 」 などと言われていますし 、 ありとあらゆる情報が 、 「 始まっている 」 ことを指し示しています 。 相当激しい戦いが展開している模様です 。

ダムの破壊は 、 第二次世界大戦のときも似たような出来事があり 、 旧ソ連がダム破壊を実行しました 。 このようなことは、戦争の際にはよく起きることですが、 無論明確な国際法違反です。

当時もソ連は 「 ナチスの進軍を止めるため 」 に行いました 。 今ロシアはウクライナをナチスに見立てています 。 さもありなんという感じがします 。

いまのところ 、 どちらが実行したのか明確な証拠はありませんが 、 ノルウェーの地震計でも大規模な爆発が検出されていますし 、 米軍の早期警戒衛星も赤外線で爆発を捉えています 。

状況証拠を見て 「 どちらが得したか 」 を考えると 、 「 ロシアなのでは ? 」 とは考えるほうが妥当であると考えられます 。

ダムなどの大きな構造物を破壊するためには、かなり大きな爆発を起こす必要があり 、 多数の爆薬を仕掛ける必要があります 。 多数の爆薬を仕掛けられるのはダムを管理している方ですから 、 いまとなっては 、 やはりロシアが仕掛けたと考えるのが妥当です 。

ダム決壊で発生した水害

ドニエプル川の下流では浸水被害が広がっています 。 ダム破壊による反転攻勢への影響はどの程度のものなのでしょうか 。 まず 、 ウクライナ軍がドニエプル川を渡れなくなったことがポイントです 。 ウクライナ軍が川を渡る作戦を準備したとすれば 、 それができなくなっているので 、 大きな影響があるかもしれません 。

ただし 、 準備をしていなければ 、 実はウクライナ側にとってはさほど大きな変化はないでしょう 。

ロシア側からすれば 、 ウクライナ軍が川を渡る可能性を考えないわけにはいかないです 。 この洪水によって可能性がなくなれば 、 「 洪水の間は攻めてこられない 」 と考えられ 、 ロシア側の作戦が単純になるというメリットがあります 。

しかし 、 洪水はもう引き始めています 。 決壊から約2週間後の6月21日ぐらいになれば 、 川は渡れるようになります 。 もしウクライナ軍が川を渡る作戦をあらかじめ準備していたのであれば 、 その時期には作戦を実行できるでしょう 。 そのためダムの決壊による戦況に及ぼす影響は 、 いずれにせよ一時的なものにすぎません 。

日本の新聞各社は 、 ウクライナ軍が 「 上流域を渡る形で攻めていこうとしている 」 という報道しています 。 現在の戦いは 、 お互いがお互いを攻め合っているのではなく 、 ロシア側は陣地をつくって待ち受け 、 ウクライナ側がそこに向かって攻め込んでいるような形式になっています 。最前線の陣地では 、 激しい戦いになっていることでしょう 。

無論いまのところ 、 最初の陣地だけですが 、 一部ではウクライナが突破しつつあり 、 一部ではロシア側が意図的に撤退したという形なので 、 まだ今後の戦況がどうなるかはわかりません。

地図によれは、 東部ドンバスから南部クリミアまで 、 三日月状にロシアが支配している状況です 。 ウクライナ軍としては、その真ん中ぐらいで支配地域を断ち切ってしまいたいのです 。 ある程度の幅を持って断ち切ることで 、 ロシアを東部と南部に分断するのがウクライナ軍の狙いであると考えられます 。

ウクライナには 、 ここまで半年ぐらい 、 西側から戦車などさまざまな兵器の支援がありました 。 ウクライナ軍は 、ロシア軍が待ち受けている陣地から、攻撃を受けながら戦車で突破しようと試みているとみられます。

おそらくロシア軍の陣地の前には地雷があるので 、地雷を避けて通れる道を確保しようとしているのでしょう。 そうなると 、 道は当然細くなります 。 その細い道を突破しようとして 、 何両かの戦車が撃破されているのがテレビ映像に映し出されていました( 写真下) 。


損害としては大きいと思いますが 、 戦えば損害は出るものです 。 通常 、 日本海海戦のような完璧一方的な大勝利はありません 。 損害が出るのはやむを得ないところがあります。 

ウクライナの反転攻勢は最低で1ヵ月 、夏まで続く可能性もあります 。 フランスの 「 マクロン大統領が長期化を示唆 」 していますが、おそらくその通りになるでしょう。

陸上戦闘においては 、 最後は人間である歩兵が地面を歩くので 、 例えば戦場の奥行きが100キロあると 、 2日 ~ 3日で終わることはありません 。 目安としては最低1ヵ月です 。 もしかすると夏ぐらいまでは続く可能性があります 。

ウクライナ経済に関しては 、 洪水が起きたことで穀倉地帯に影響があり 、 灌漑施設が破壊されたといううわさもあり、 穀物価格にも影響がでそうです 。

そもそも 、 水がなければ 、灌漑ができないです 。 ダムがあったから灌漑できるわけで 、 ダムがなくなってしまったのですから 、水が全部流れてしまい灌漑ができません 。

小麦価格の先物は既に上がっています 。 戦争開始の直後は急激に上がりましたが 、その後ウクラライナが輸出できるように取り決めができて 、 徐々に下がってきたのですが 、「 また前の状態に戻ってしまった 」 という見方により、値上がりしています 。

これには 、 トルコの仲介で 、黒海を通してウクライナ産の穀物輸出が一部できるように 「 なる 、ならない 」 という話もありました 。 こういうことに小麦相場は 、 過敏に反応します 。

市場が 「 灌漑用水がうまくいかない 」 と判断してしまうと 、 先物相場などはすぐに上がってしまいます 。

さて 、 ダム破壊の戦争犯罪に関して言うと 、 国際刑事裁判所の代表者らが水浸しになった地域に入りました 。 ロシアは 「 安全を保証しない 」 と言っていますが 、 こうした捜査の積み重ねは重要です。

これまでもロシア軍の100件以上 の 戦争犯罪が立件されていますが 、誰を訴追するのかというと 、国際刑事裁判所は 、 国ではなく個々人を訴追します 。 プーチン大統領は、子どもの連れ去りで訴追されていますが 、今回のダム破壊に関して、個人レベルまで落とせる証拠が集まるかどうかは別の問題です 。

誰が命令したかなどが重要になります 。 ただ 、 ダム結界被害については 、まず事実を確認するという方向なのでしょう 。 別の証拠により 、誰が命令の責任者なのかがわかれば訴追できるでしょう 。

ウクライナ戦争では 、 様々な情報が乱れ飛んでおり 、「 ロシア国内で仲間割れが起こっているのではないか 」 というようなニュースが流れ 、 フェイクではないかと言う専門家もいます。 「 ワグネルの要員を殺す命令を出した 」 というような情報も出ていますが 、 これはフェイクニュースだと思います 。

たとえば 、5月上旬にワグネルのプリゴジン氏がバフムトから撤退すると言いましたが 、 結局、 そのときは撤退していませんでした 。

今回のケースで言うと 、ロシアとしては 、 ワグネルを強制的に連邦軍に編入させたいのでしょうが 、これはプリゴジン氏が反対しています 。 そんなことから  「 そんなことをしたら射殺するぞ 」 というようなフェイクニュースにつながったのだと思います 。

全般的にワグネルと軍の勢力争いのような状況なので 、 それはそれとして織り込み済みではありませんが 、 以前からずっと起こっていることではあります 。

一方 、 先月 ( 5月 ) にあったモスクワへのドローン攻撃の影響が出ています 。 実はドローンがエリート層のマンションに着弾しているのです 。

ドローンを飛ばすウクライナ兵

それによって 、 これまで漠然とプーチン氏を支持し 、 戦争など他人事だと思っていた層のなかに 、「 この戦争は本当に大丈夫なのか ? 」 という考えが広がってきたという報道が出ています 。

報道などを見ると 、 ロシア国民は戦争そのものよりも 、「 自分も動員されるのではないか 」 ということを恐れているということもあるようです 。

自分が動員されない限り 、 基本的には戦争は他人事なのです 。 それが自分ごとになりそうになったのが 、 去年 ( 2022年 ) 9月の動員令がだされたときです 。 このとき多くの国民が動揺したのと 、 動員したとしても武器弾薬が不足しているとみられ 、 プーチン大統領としては 、 少なくとも来年 ( 2024年 ) の選挙までは追加動員できないと考えられます 。

多くのロシア国民も 、 当事者意識 、「 戦争の近さ 」 を感じるようになると 、 動揺するのではないでしょうか 。

他方 、 国際社会は経済制裁を行っているわけですが 、 制裁逃れ 、 あるいは裏で原油の取引を行っているという話も出ています 。

ロシアへの制裁は 、 何もしないよりは効いているのは確かです 。 どのような制裁も 、 そうですが 、 100%完璧に効く制裁はありません 。 さらに 、 制裁に参加している国は 、 主に西側の先進国です 。 制裁に参加しない国もあります 。

だから 、 ロシアが西側諸国の制裁を迂回することは可能です 。 ただし 、「 普通とは違う 」 という意味で 、 制裁は効いているのです 。 実際に西側先進国とロシアの取引は完全に遮断されています 。

実際 、ルーブルの取引はほとんどできないわけです 。 そういう意味では 、 誰も宣言しないから破綻には見えませんが 、 相当ダメージがあり 、 実際には破綻していると言っても良い状況です 。

今後の見通しとしては 、 今回の反転攻勢によりロシアの占領地の分断に成功すれば 、かなり有利になります 。

ただ 、分断すると 、今度は突破した部分が挟み撃ちに遭うので 、逆にウクライナ側は挟み撃ちから守りきる陣地をつくらなければなりません 。

これを秋冬の地面がぬかるむ時期にまでに できれば 、 分断されたロシア軍の弱い方を来年 ( 2024年 ) 攻めることになるでしょう 。 つまり 、 ドンバス地方かクリミアのどちらか弱い方を攻めて 、 再来年にもう片方残った方を攻める形になるでしょう 。

今回の反転攻勢が成功すると 、 2 ~ 3年以内には占領された土地を奪還できるかも知れないです 。 無論奪還しても戦争が終わるとは限りませんが 、 少なくとも見通しは立ちます 。

一方で反転攻勢に失敗し 、 投入された12旅団が磨り潰されるようなことになると 、 組織的な反転攻勢は今後 、 難しくなります 。 そうなると5年以上 、 下手をすると10年ぐらい膠着状態が続くかもしれません。いずれにせよ、現在の反転攻勢が成功したとしても、すぐに戦争が終わるとはみるべきではないです。

ウクライナ軍は、これまでは主に防衛行動をしてきたわけですが、今回からははじめの大反攻であり、攻撃を仕掛ける側に回ったので、当初は失敗することともあるでしょう。それでもロシア軍よりは、その失敗を糧に、スムーズに攻撃できるようになるでしょう。

なぜなら、ロシア軍と、ウクライナ軍には根本的な違いがあるからです。ロシア軍は政治的目的や目標を達成するために動員されたが、ウクライナ軍は純粋に軍事目的を達成するために動員されています。

軍事行動において、軍事目標よりも政治目標が優先されると、軍事的には不利なことや不可解なことが、頻繁に起こってしまいます。

そもそも、プーチンのウクライナ侵攻は、ゼレンスキーを追い出し、ロシアに傀儡政権をつくだすことが目標であったとみられます。

この政治目標を実行するために、ウクライナの東では陽動作戦を行い、キーウに侵攻してこれを攻め落とす構えを見せれば、ゼレンスキーは海外逃亡をするだろうから、ゼレンスキーが逃亡した後に、ロシア軍はキーウに入り、無血占領できるとプーチンは目論んでいたのでしょう。

この政治目標を達成するには、数週間ですむとプーチンは考えたのでしょう。

しかし、軍事的に判断すれば、戦争には常に予想できないことが起きるのが普通であるどころか、それが常態であるので、このべストシナリオがうまくいかない場合にも備えて、A案だけではなく、B案、C案も備えるのが普通です。

しかし、プーチンはそれを用意していないようでした。ロシア軍は、それに備えたかったのだとは思いますが、プーチンの政治目標は絶対だったので、従うしかなかったのでしょう。

B案、C案まで備える(形はどうであれ、もっと長期戦になるという複数案)ということになれば、弾薬などをはじめとする兵站が続かなくなるのは、目に見えていたでしょう。結論は、はっきりしていたのです。政治目標を達成するか、否かしかなかったのでしょう。

妥当な案としては、ロシアがウクライナに侵攻するのではなく、侵攻の構えをみせつつ、貿易や投資を遮断したり、エネルギー輸出の価格を引き上げたり、偽情報やプロパガンダを用いて、ウクライナの住民の間に不和や不信感を植え付ける等の措置を取るなどのことが考えられます。

これに加えて、ロシアのメディア、教育、スポーツを利用を利用して文化的影響力を行使することもできます。

これらの手段を手を変え品を変え、実行し、軍事的には東側だけに限定し、それもロシアに親和的な勢力を利用しつつ、ゆっくりと支配地域を増やすなどを実行し、ゼレンスキーを弱体化させて、ウクライナに親露派を増やしていき、最後の詰めの段階で、たとえばゼレンスキーを捉える等のときに軍事力を限定的に行使するなどのやりかたが、ロシアが本来実施すべきことだったと思います。

実際、ロシアはこれに近いことをウクライナ対して長年行ってきました。これをさらに継続し、さらに精緻化させるべきでした。

このようなことは、あと付けてでは何とでもいえると思われるかもしれませんが、ロシアの経済力(開戦前でもインドや人口がロシアの1/3の韓国より下)を考えれば、軍事力を行使しウクライナに侵攻したのは、身の丈知らずの無謀な試みであったと言わざるを得ません。

ウクライナ軍は、ロシア軍のように政治的目的を実行する責務を負っているわけではないので、軍事的に正しい行動を取れます。反攻においても、軍事的に妥当な行動がとれるので、当初はある程度犠牲を出しつつも有利に戦いをすすめやすいのは間違いないです。

無論ウクライナにも政治目標はあるでしょう。しかし、軍事作戦においては、政治目標より軍事目標が優先されているようです。すくなくとも、ロシアよりは、軍事目標が優先されているとはいえるると思います。

ただ、先に述べたように、今回の反転攻勢が成功したとしても、すぐに戦争が終わるわけではありません。 2 ~ 3年以内には占領された土地を奪還できるかも知れないくらいのことはいえますか、 無論奪還しても戦争が終わるとは限りません。

気の短い人は、この現状にいらつくかもしれませんが、しかし、そんなことでは何も成就できません。目の前に、それで大失敗した人がいるではありませんか。それが、他ならぬプーチンその人です。

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2023年6月13日火曜日

LGBTの野党〝丸飲み〟法案を拙速可決へ 13日に衆院通過 読売新聞、名指しで岸田首相を批判 島田洋一氏、修正案は「改悪だ」―【私の論評】LGBT法案の成立には、バイデン政権の積極的な働きかけがあった(゚д゚)!

LGBTの野党〝丸飲み〟法案を拙速可決へ 13日に衆院通過 読売新聞、名指しで岸田首相を批判 島田洋一氏、修正案は「改悪だ」


LGBT法案の成立を急ぐ岸田首相

 自民党などの与党は、LGBTなど性的少数者への理解増進を目的とした法案の修正案を可決し、衆議院を通過させました。

保守派や女性団体、LGBT当事者団体などは法案の拙速な法制化に反対しています。

 読売新聞は社説で、法案の内容が女性の安全を守れるのか、教育現場は混乱しないのかという懸念を残し、拙速に法整備を図ることは許されないと批判しました。

 与党修正案は参議院でも審議・採決が行われ、成立する見通しです。修正案には賛否があり、自民党内でも雰囲気は重苦しいです。

 自民党議員は修正案の受けが悪くなっているとし、慎重な審議を約束したにもかかわらず、日程ありきの強行採決は大打撃と述べています。また、修正案自体にも問題点があり、一部の専門家は改悪と指摘しています。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は是非元記事をご覧になってください。

【私の論評】LGBT法案の成立には、バイデン政権の積極的な働きかけがあった(゚д゚)!

今回の日本でのLGBT法案の成立しそうな状況は、以前から予想されていたことです。それについしては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
LGBT外交の復活、異質な価値観を押し付け―【私の論評】LGBT外交で中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれる(゚д゚)!

この記事は、2021年3月19日のものです。この記事の元記事より、以下に一部を引用します。

 バイデン米大統領は2月4日に国務省で行った就任後初の外交政策演説で高らかに訴えた。

 「米国が戻って来たと世界に伝えたい」

 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。

 別の意味とは何か。オバマ元政権が推し進めたLGBT(性的少数者)の国際的な権利向上、いわゆる「LGBT外交」の復活である。外交演説は中国やロシアに関する発言に注目が集まったため、大手メディアはほとんど報じなかったが、バイデン氏は次のように宣言している。 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。

さらに以下にこの記事の結論部分から引用します。

中国政府のLGBTに対する態度は「合理的」です。ゲイは社会の安定や経済発展のために「使える」ので支持し、レズビアンなどは放置されるか、意見の違いを公にすれば弾圧されます。多様な個人が集合体として社会をつくるという考えはなく、権力者がつくりたい社会の部品として有用かどうかという、いわば自分の都合で峻別しているにすぎないです。

セクシュアリティーだけではありません。現在の中国社会は合理性や生産性のみを優先して設計され、その枠に当てはまらない少数民族、宗教者、障がい者などのマイノリティーに対しては一貫して冷たい態度を取っています。これをやめない限り中国はまともにならないでしょう。

ただ、現状においては、LGBT外交で、結果として中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれることになりかねません。実際、そのようになりつつあります。日本でも自民党が、これを推進すれば、そうなりかねません。

今日この予測が見事にあたったと思います。 当の米国では、民主党が包括的なLGBT差別禁止法案(名称は平等法)を提出したものの、共和党が一致して反対する姿勢を崩しておらず、予見しうる将来、成立の見込みはありません。

無論、州レベルでは包括的なLGBT差別禁止法案を定めているところもありますが、反LGBT法案を定めている州も増えてきています。

それにしても、バイデン政権がLGBT法案の成立に熱心だったことは間違いありません。

バイデン大統領は就任初日に、国務省にLGBTの権利に関する特使を設置するよう指示する大統領令に署名しました。

また、政権は、世界中のLGBTの権利団体を支援する「グローバル・イコリティ・ファンド」の資金を回復させました。

2021年6月には、政権の主催で、LGBTの権利に焦点を当てた初の「米国・ASEAN人権サミット」を開催しました。

また、政権は世界各国で反LGBTの法律や差別に対して発言しています。

これらは、バイデン政権がLGBTの権利と外交を推進するための取り組みのほんの一例にすぎません。政権は、性的指向や性自認にかかわらず、すべての人が尊厳と尊敬をもって扱われるよう取り組むことを明確にしています。

以下、それぞれの取り組みについて、さらに詳しくご紹介します。

LGBTの権利のための特使: LGBTの権利のための特使は、世界中のLGBTの人々の人権を促進し保護する責任を負う国務省の高官です。特使は、外国政府、市民社会組織、その他の関係者と協力し、LGBTの権利問題に関する認識を高め、変化を提唱しています。

エマニュエル大使とジェシカ・スターンLGBTQI+特使は、2月8日に公明党の山口那津男氏と会談

グローバル・イコリティー・ファンド (Global Equality Fund):これは、世界中のLGBTの権利団体を支援する数百万ドルの基金です。基金は、アドボカシー活動、法的活動、サービス提供など、LGBTの人々の平等を促進するために活動している団体に助成金を提供しています。

人権に関する米国・ASEANサミット: 米国・ASEAN人権サミットは、米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の政府高官による会議でした。このサミットでは、LGBTの権利に焦点が当てられ、参加者はASEAN地域におけるLGBTの人々の平等を促進する方法について議論しました。

反LGBTの法律や差別への反対: バイデン政権は、世界各国の反LGBT法や差別に反対を表明しています。また、LGBTの人たちの人権を侵害する国に対して制裁を課してきました。

バイデン政権のLGBTの権利向上と外交への取り組みは、オバマ政権のLGBTの権利に関する取り組みの多くを後退させたトランプ政権とは大きく異なるものです。

バイデン政権による日本のLGBT法案への支援は、世界中でLGBTの権利を促進するためのより広範な取り組みの一部でした。2021年、バイデン政権は、トランスジェンダーを軍務から排除するトランプ政権の方針を撤回すると発表しました。バイデン政権はまた、初のオープンリー・ゲイ(社会に対して自身が同性愛者であることをカムアウトしている男性を指す言葉)の駐ドイツ米国大使を任命しました。

バイデン政権そのものが、LGBT法案に関して積極的なのですから、エマニュエル駐日大使も積極的になるのは、当然といえば当然のことです。

エマニュエル駐日米国大使が日本のLGBT法案の成立にかなり積極的だったという点を裏付ける事実があり、それがバイデン政権の方針に基づくものであると考えられるので紹介します。

2023年2月、エマニュエル大使は岸田文雄首相と会談し、同性婚を合法化する法案を可決するよう促しました。

2023年3月、エマニュエル大使は、日本におけるLGBTの権利に関するフォーラムで講演し、日本がまだ同性婚を合法化していないことにバイデン政権は「深く失望している」と述べました。

2023年5月、エマニュエル大使は日本の国会議員に会い、雇用や住宅などにおけるLGBTへの差別を禁止する法律の成立を促しました。

こうしたエマニュエル大使の行動から、日本のLGBTの権利に強い姿勢で臨んでいることがうかがえます。これは、LGBTの権利を最優先事項としているバイデン政権の方針と合致していると思われます。

エマニュエル大使の行動以外にも、バイデン政権は日本におけるLGBTの権利を促進するための措置を講じています。例えば、同政権はLGBTの権利に関する特使を任命し、外国政府と協力してLGBTの平等を推進する責任を負っています。

バイデン政権がLGBTの権利に重点を置いていることは、オバマ政権時代のLGBTに対する多くの保護を後退させたトランプ政権とは大きく異なる点です。バイデン政権の行動は、米国が世界中でLGBTの平等を推進することにコミットしていることを示すものです。

現在、日本でLGBT法案が成立しそうなことの背景には、バイデン政権による積極的な働きかけがあったことは、忘れるべきではありません。さらに自民党内のLGBT利権に群がる政治家の存在もこれを後押したことを忘れるべきではありません。

米国の民主党政権の積極的な働きかけに関しては、米国内でも評価が定まっていない事柄に関する、日本への押しつけであり、内政干渉であると考えられます。このようなことを日本以外の国々でも行えば、反発必至です。

米国における反LGBT法案の最新状況は、過去最高を記録しているとのことです。ヒューマン・ライツ・キャンペーンによると、今年に入ってから全国の州議会で145以上の反LGBTQ+法案が提出されています。そのうち、24件が法律として成立しています。

これらの法案の大半は、トランスジェンダーの若者をターゲットにしており、特にジェンダーを確認するための医療へのアクセスを対象にしています。また、LGBTQ+の人々が養子を迎える権利、軍務に就く権利、性自認に沿った公衆トイレを利用する権利を制限する法案もあります。

これらの法案は、近年、全米を席巻している反LGBTQ+の大きなトレンドの一部です。2021年には、州議会に240以上の反LGBTQ+法案が提出され、100以上が法律として制定されました。

このような揺り返しが米国でもあるのです。日本でも、LGBT法案が成立してしまえば、必ず揺り返しがきます。この揺り返しが、LGBTの人々に対するさらなる差別につながらないように祈るばかりです。

私自身は、LGBの人たちを差別するつもりなど全くありません。こういうひとた人たちが、差別されることがあってはならないのです。ただ、Tに関しては正直わかりません。実際医学的にも明らかにはされていません。わからないものに関しては、わからないというしかありません。

ただ、トランスジェンダーの女性とされる人(実際にはそうではなくて、単なる犯罪者)が、女性への脅威となることだけは避けていただきたいです。LGBT法案推進派、様々な屁理屈でそのようなことはないと主張しますが、とてもそのようなことは信じることはできません。

たとえ、LGBT理解増進法が、理念上は犯罪を犯罪でなくする法律ではないとしても、そんなことは犯罪者に関係ありません。公衆浴場などに入り込み、つかまったら「私は女だ」と主張されたらどうするのでしょう。
それと、利権の源である、学校での外部講師を依頼しての教育活動には反対です。特に、低学年の児童にはそのようなことはしてもらいたくありません。そのような教育はもっと大人になってから、しかも、それを自発的に求める人に限って行うべきであり、多くの人に施す筋合いのものではないと思います。間違っても、利権などにすべきではありません。

私は、多くの人はそう思っているか、LGBT法案について様々なことを知ることによって、そのように思うようになるのではないかと思います。

LGBT法案は16日にも成立しそうですが、成立したとしても、これから懸念は他の法律や、都道府県など条例などでも払拭できると思います。

ただ、心配なのは、LGBT法が成立したことを機に、条例などで、さらにこれを拡張しようとする勢力がいることも忘れるべきではないです。あるいは、これを利用しようとする犯罪者の存在を忘れるべきではありません。多数派である普通の女性や男性の権利が侵害されることがないように、私達が監視を続けていくべきと思います。

米国では、来年大統領選挙があります。日本のマスコミでは、トランプ氏優勢が伝えられてはいませんが、トランプ氏圧勝と予測する人もいます。仮にトランプ氏が大統領にならなくても、共和党政権になる確率は高そうです。

そうなれば、LGBT法案をなし崩しにできるかもしれません。その日に備えて準備しておきたいものです。特に地方自治体レベルでは、それは私達の責任で、LGBT法案が拡張されることがないように監視を続けるべきと思います。

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2023年6月12日月曜日

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「16日解散説」急浮上 岸田自民党は〝大惨敗〟か 小林吉弥氏「過半数割れ危機も」 有馬晴海氏「今しか勝てるタイミングない」


 岸田首相は、6月21日までの国会会期末を前に、衆院解散を検討している。立憲民主党は、首相不信任案を提出する構えで、与野党間で駆け引きが続いている。

 岸田首相は、防衛力強化や少子化対策などの重要課題に取り組んでいるが、財務省の影響が色濃い安易な増税路線には批判が根強い。さらに、党内外に批判が噴出したLGBT法案や、自衛隊機への韓国軍艦船のレーダー照射事件を棚上げした日韓防衛協力など、国益を逸脱するような外交・内政に世論の不信感が増している。

 政治評論家の伊藤達美氏は「自民党は議席を減らす。単独過半数を確保するかが焦点だ。立憲民主党は、それ以上に議席を減らすだろう。馬場伸幸代表の日本維新の会は伸ばすだろうが、急速な勢力拡大で〝飽和状態〟だ。そもそも、統一地方選の年は、地方議員は動かない。自民党には公明党との連携の課題があり、明確な争点もない。理想的な選挙時期は9月あたりではないか」と語った。

 政治評論家の小林吉弥氏も「自民党の『惨敗』『過半数割れ危機』もあり得る。現状では、岸田自民党には『消極的な支持』しかない。東京選挙区での公明党との選挙協力の調整がつかず、全国に波及して、公明支持者の間で『自主投票』になるリスクもある。最悪の場合、大物数名を含む50~60人が危機に立つ」と指摘した。

 ある自民党議員も「G7広島サミットで上昇した支持率は、首相の長男、翔太郎元秘書官の不適切行動や、LGBT法案をめぐる右往左往で霧散した。予想外の惨敗になりかねない」と語る。

 少し違う見方もある。

 政治評論家の有馬晴海氏は「今しか、岸田自民党が勝てるタイミングはない。岸田首相は前回衆院選で勝利した経験からも前倒しで、16日に『奇襲作戦』に出るかもしれない。自民党は現有の議席から若干落とすだろう。立憲民主党は伸びない。日本維新の会や参政党などの躍進も考えられる」と分析する。

 さまざまな情勢分析があるなか、岸田首相は決断するのか。小林氏は「焦って解散を打ち、敗北すれば、党内で『岸田降ろし』が加速する可能性もある。岸田首相は慎重だろう。『秋口の臨時国会冒頭解散』の方が、公明党との調整期間もあり、増税や、財源の議論が本格化していないため、惨敗は免れる」と語っているが…。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】LGBT法案成立で、百田保守新党ができあがる(゚д゚)!

LGBT法案成立が16日らしいとされていることと、天皇、皇后両陛下が17〜23日にインドネシアを訪問されるので、6月16日解散がうわさされているようです。


陛下が外国訪問中、国事行為である解散を臨時で代行することは可能ですが、現行憲法下で天皇陛下の外国訪問の間に解散された例はないです。先例で今国会中に解散するなら16日という見方があるようです。

私自身は、上の誰の発言かは知りませんが、「G7広島サミットで上昇した支持率は、首相の長男、翔太郎元秘書官の不適切行動や、LGBT法案をめぐる右往左往で霧散した。予想外の惨敗になりかねない」という意見に賛成です。

さてこうした中、面白い動きがでてきました。ベストセラー作家で保守論客としても知られる百田尚樹氏(67)が、LGBTなど性的少数者への理解増進法案が成立すれば、「保守政党を新たに立ち上げる」と宣言したのです。

自身のユーチューブチャンネルで10日、明らかにしました。LGBT法案が成立すれば社会の根幹をなす家庭や、皇室制度が崩壊し、日本が徹底的に破壊される恐れがあると指摘し。同法案を推進する岸田文雄首相(総裁)率いる自民党はもはや支持できないと訴えました。


百田尚樹氏が保守政党の立ち上げを宣言することで、政治にいくつかの影響が生じる可能性があります。以下にいくつかの推論を示します。

1. 政治的対立の深化: 百田氏が新たな保守政党を立ち上げる場合、これは既存の政党との競争関係を生み出すことになるでしょう。保守派の有権者の中には、百田氏のように性的少数者への理解増進法案に反対する人々もいるかもしれません。その結果、既存の保守政党と新党の間で政治的対立が深まる可能性があります。

2. 保守政治の意識形態の変化: 百田氏が新たな政党を立ち上げることで、保守派の意識形態に変化が生じる可能性もあります。現代の政治環境では、LGBTなどの性的少数者の権利や社会的包摂がますます重要視されてきたものの、それに反対する勢力もあります。

特に、性自認に関しては、科学的に明らかにされておらず、本人がその時々で、「自分は女」「自分は男」とする場合もあり、これが社会に大混乱をもたらす可能性もあります。実際に、海外では、そのような事例があります。LGBに関しては、許容できても、これだけは許容できない保守層も大勢います。以下にこの危険性について、わかりやすいツイートがあるので、以下に掲載します。

また、LGBT法案にそのような危険が潜んでいることを理解していない人も、選挙などでこれらが明らかになれば、これを忌避する人が増える可能性もあります。

もし保守政党がこの問題に対して進歩的であるとして、これを許容するようなスタンスを取るようになれば、保守派のイメージや政策立案に変化が生じる可能性があります。これだけは、絶対に許容できないという保守派も多いです。これらの人々が、百田新党を待望する可能性もあります。

3. 保守勢力の分裂: 百田氏が保守政党を立ち上げると、既存の保守政党の支持者の中には、彼に賛同する人々が新党に移る可能性があります。これによって既存の保守政党の支持基盤が分断され、保守勢力が分裂する可能性があります。この場合、保守派の票が分散されることで、他の政治勢力の有利に働く可能性もあります。

確かにそういう危険性はありますが、自民党にせよ、立憲民主党にせよ、政治信条が異なる者同士が、選挙のためだけに、政党を選挙互助会のように使い、政治信条は二の次という現状はいずれ打破しなければならないでしょう。

4. 政治的競争の激化: 新たな保守政党の出現は、政治的競争を激化させるでしょう。これにより、選挙において保守派の票が分散され、与党や他の野党勢力との争いが激しくなる可能性があります。また、保守派内の競争も激化し、政策や選挙戦略の違いが浮き彫りになるでしょう。

ただ、そうなれば、自民党などをはじめ、多くの政党で、保守並びそれ以外の勢力との違いがはっきりし、離散集合が始まることが期待できます。中短期的には、混乱するかもしれませんが、離散集合により、まともな政党政治が始まるかもしれません。

ただ、政治的には多少混乱しても、政治の継続性の観点から、どの政党が政権につこうとも、重要な政策に関しては、継続する姿勢を貫いていただきたいです。

そうして、安定した政権ができあがれば、独自色を出せば良いと思います。特に、外交関係においては、岸田政権のように安倍路線を継承すべきです。外交関係をコロコロ変えれば、せっかくこれまで築いてきた、日本の国際的な存在感が毀損されかねません。

これらの影響は、百田氏が本当に新たな保守政党を立ち上げるかどうかや、その党がどれだけの支持を獲得するかによって異なるでしょう。また、政治の動向は予測困難なものであり、様々な要因や出来事が絡み合って結果が生まれるため、具体的な影響は予測するのが難しいです。

この件に関して、百田尚樹氏と、そのお仲間の有森香氏は、以下のようなツイートをしています。

新党をつくるにしても、彼らは慎重にすすめるでしょう。今回の解散総選挙がどうのこうのというより、息の長い活動を想定し、日本の政治を変えていくことを目指しているでしょう。

 私としては、大歓迎です。いつも選挙のとき、投票したい候補者がいない場合も多く、迷いながらも自民党の議員に票を投じてきましたが、今後そのようなことはなくなるかもしれません。本当にそうなれば、良いと思います。

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2023年6月11日日曜日

墜落事故から40日 子ども4人無事発見 アマゾン密林でどうやって生存?―【私の論評】ウイトト兄妹のサバイバルは、生存と回復力、そして家族の力の物語(゚д゚)!

 墜落事故から40日 子ども4人無事発見 アマゾン密林でどうやって生存?

アマゾンの熱帯雨林

 先月、コロンビアで起きた小型機の墜落事故で、1歳から13歳のきょうだい7人が行方不明となりました。

 しかし、約40日後にコロンビア軍が彼らを南米アマゾンのジャングルで発見し、救助しました。

 この奇跡的な救出劇では、子どもたちのうち4人が無事であることが確認されました。彼らは猛獣の生息するジャングルで40日間も生き延びたのです。

 コロンビア軍は救助犬や捜索隊を投入し、子どもたちの存在を示す足跡やシェルターを見つけました。

 この地域は危険な存在も潜んでおり、生存するために子どもたちは煙を上げるなどの方法で助けを求めました。

 40日以上の捜索活動の末、子どもたちは無事に見つかりました。彼らの生存は驚異的であり、彼らの祖父母やコロンビアのペトロ大統領も喜びと感謝の気持ちを表明しました。

 子どもたちは先住民のウイトト族の知識を活かして生き延び、果物などの自然の資源を利用したと報じられています。

 これは、元記事の要約です。詳細をご覧になりたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】ウイトト兄妹のサバイバルは、生存と回復力、そして家族の力の物語(゚д゚)!

テレビで、コロンビアに何度も足を運び、現地の人たちとも交流しており、いわゆる現地通の人が、テレビでインタビューを受けていて、今回の子どもたちの発見に関して、答えていました。

食べものや、水の入手などに関して、様々な推論を述べていて、最後のほうにインタビューアーが「この子たちは、ウイトト族の子どもたちだそうです」というと、その人は、「ウイトト族の子どもですか。それなら大丈夫なわけです。水や食料の入手法も知っているし、乳児の面倒のみかたも知っているわけです」と力強く明るい顔で、答えていました。

最初にコロナワクチン接種を受けたとされるウイトト族の女性

やはり、今回の救出劇では、遭難したのがウイトト族であるということが大きなキーポイントであるあると考えられます。

では、ウイトト族とはどんな民族なのでしょうか。コロンビア南東部およびペルー北部の先住民族であるウイトト族。コロンビアに約6,000人、ペルーに約4,000人、合計約10,000人が住んでいると推定されています。ウイトト族は、南米の他の言語族とは無関係なウイトト語族の言語を話します。

ウイトト族は伝統的にアマゾン川とその支流に沿った小さな遊牧民の村に住んでいました。彼らは狩猟採集民であり、漁業や農業で食事を補っていました。また、ウイトト族は幻覚作用のある嗅ぎタバコを宗教的、薬事的な目的で使用していたことでも知られています。

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ウイトト族はヨーロッパからの入植者がもたらした病気(伝染病)によって壊滅状態に陥り、伝統的な生活様式を捨て、より定住的なライフスタイルを強いられることになりました。もともとウイトトト族は、定住民ではなかったのです。

現在、ウイトト族は、コロンビアやペルーの主流社会と同化し続ける中で、自分たちの文化やアイデンティティを維持するために奮闘しています。

ウイトト族は、何世紀にもわたって多くの困難に直面してきた魅力的で回復力のある人々です。彼らは、南米に存在する多様な文化の豊かさを思い起こさせる存在なのです。

ここでは、ウイトト族について、さらにいくつかの事実を紹介します。

彼らの、伝統的な衣服は樹皮の布から作られています。また、熟練した船大工であり、航海士でもあります。

ウイトト族の伝統的衣装

神話、伝説、歌など、豊かな口承伝承があります。精巧なボディペインティングと宝飾品で知られていますし、彼らは平和的な人々で、そのもてなしで知られています。

ウイトト族は、アマゾン地域の文化的・生物学的多様性の重要な一部です。彼らは、この地域の豊かな歴史と先住民の文化を保護することの重要性を、今に伝える存在なのです。

ウイトト族は、。アマゾンの熱帯雨林の天然資源をベースに、豊かで多様な食文化を持っています。

ウイトト族の食生活は、魚や鳥獣、野生の果物や野菜が主なものです。また、トウモロコシ、マニオク、プランテンなど、さまざまな作物も栽培しています。

魚はウイトトの主食で、ピラニア、ナマズ、カメなど、さまざまな種類の魚を捕ることができます。サル、シカ、バクなどの狩猟動物も重要なタンパク源です。

野生の果物や野菜もウイトトの食生活の重要な一部で、バナナ、プランテン、パパイヤ、アボカドなど、さまざまな種類のものを採取しています。また、トウモロコシ、マニオク、プランタンなど、さまざまな作物も栽培しています。

ウイトト族は、ロースト、ボイル、フライなど、さまざまな方法で食べ物を調理します。また、唐辛子、ニンニク、タマネギなど、さまざまなスパイスを使用します。

ウイトトの食文化は、アマゾンの熱帯雨林の豊かな自然資源を反映したものです。伝統的な知識と慣習に基づいた、健康的で持続可能な食事です。

ここでは、ウイトトの伝統的な食べ物の具体例をご紹介します。

ピカディージョ:魚や鳥獣、野菜などを使った煮込み料理で、唐辛子やニンニク、タマネギなどで味付けされることが多い。

カサベ:キャッサバの粉で作った平たいパンで、シチューやスープと一緒に食べることが多い。

チチャ:トウモロコシから作られる発酵飲料(酒)で、特別な日によく飲まれる。

チチャ

ウイトトの食文化は、彼らのアイデンティティと生活習慣の重要な一部です。自然界とのつながりや、伝統的な知識や習慣への依存を思い起こさせます。

子どもたちがウイトト族であったことが、彼らの生存に一役買っていた可能性は十分にあります。ウイトト族は、アマゾンの熱帯雨林で何世紀にもわたって暮らしてきた先住民族です。

熱帯雨林とその資源について深い知識を持ち、厳しい環境の中で生き抜く術を身につけています。子どもたちが40日間もジャングルで生き延びることができたのは、熱帯雨林に関する知識と、土地に根ざした生活を営む能力があったからだと思われます。

また、ウイトト族は、家族の絆が強いことで知られています。そのため、子どもたちは家族の絆に支えられながら、試練を乗り越えることができたのでしょう。

ここでは、ウイトト族が熱帯雨林を熟知し、その土地で生活する能力を備えていたことが、子どもたちの生存を助けたと考えられる理由をいくつかあげます。

彼らは、熱帯雨林のどこで食料や水が手に入るか知っていますし、狩猟や漁労に必要な道具や武器の作り方を知っています。

そうして、彼らは、毒のある植物や動物の見分け方を知っています。さらに、熱帯雨林を移動する方法を知っています。

さらに、これだけではなく、ウイトト族の強い家族の絆も、子どもたちが生き延びるための支えとなったかもしれません。子どもたちは、家族の支えによって力を得ることができ、愛する人と再会するために生き延びようとする意欲が高まったのかもしれません。

ウイトト兄妹の物語は、本当に驚くべきものです。それは、生存と回復力、そして家族の力の物語といえます。

彼らのサバイバルはこれから、徐々に明らかにされていくでしょう。私達も、真摯に彼らのサバイバル法を学ぶべきでしょう。

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2023年6月10日土曜日

「悪い円安論」がやはり下火に…株価は上昇、埋蔵金も増える マスコミも忖度、政府が儲かる「不都合な事実」―【私の論評】いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後信じるべきではない(゚д゚)!

 最近、円安が進行しているにもかかわらず、「悪い円安論」は影を潜めている。その理由は、そもそも「悪い円安論」が間違っていたのではないかということだ。

 本コラムでは、為替がマクロ経済に与える影響を繰り返し説明してきたが、円安(自国通貨安)は、輸出関連・対外投資関連企業にはプラス、輸入関連・対内投資関連企業にはマイナスだ。

営業利益が高い企業は軒並み、輸出関連企業 表はブログ管理人挿入

 企業の生産性などの地力を見ると、一般的に国際市場で競争する前者の方が後者より高いので、前者にメリットを与えて後者にはデメリットを与えた場合、全体としてはメリットが大きくなる。自国通貨安による経済成長は、ほぼどこの国でも成り立つので、「近隣窮乏化」として知られている。

 ところが、日経新聞など国内メディアの多くは、円安による輸出増が見られないことから、円安による輸入価格アップによるデメリットのほうが大きいと考え、悪い円安論を展開したようだ。古今東西ある近隣窮乏化理論に無謀にも挑んだわけだが、最近の株高を目の当たりにすると、さすがに悪い円安論は言いにくくなったとみられる。株価指数を構成している企業は、円安メリットを享受しやすい輸出関連・対外投資関連企業が多いからだ。

 もちろん筆者の近隣窮乏化理論は、自国通貨安が国内総生産(GDP)増につながると定量的に主張するもので、株価上昇に直接的に言及するものではないが、GDP動向と株価には一定の相関があるので、株価上昇で悪い円安論が下火になったのは想定内だ。

 悪い円安論を好意的にいえば、輸入原材料やエネルギーに大きく依存する企業ではコストアップ要因になるという、ミクロ的な話です。マスコミのミスリーディングなところは、そのミクロがまるで日本経済全体の話のように書くところだ。

 円安の最大の利益享受者は、純資産が100兆円以上もある日本政府だ。いうまでもなく外国為替資金特別会計(外為特会)です。評価益のみならず円貨換算の運用益も大きくなる。なので、円安で苦しむ企業への対策は容易なはずだが、なぜかメディアは悪い円安論一辺倒で、日本政府が最大の利益享受者として容易に対策財源を捻出できることを言わなかった。

 悪い円安論が出るたびに、筆者の意見を含めて日本政府が円安で最も儲けていることがテレビやネットでしばしば流れた。筆者の邪推だが、それを政府が嫌い、忖度(そんたく)したマスコミが悪い円安論をあまり言わなくなった可能性もあるのではないか。外為特会はいわゆる「埋蔵金」なので、とりわけ財務省は隠したがるものだ。

 もっとも、「為替は国力であり、円安は国力低下だ」という経済学的には意味不明の意見もいまだに少なくない。為替は長い目で見れば単に二国間の金融政策の差で決まるのであって国力の差を表すものでない。為替の短期変動を説明する理論はないので、誰でも独自見解を主張できる。そのため、時々で「ご都合主義」が横行しがちだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、是非元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後信じるべきではない(゚д゚)!


上の記事にでてくる「近隣窮乏化」とは、貿易相手国を犠牲にして自国の経済を改善することを目的とした経済政策です。通貨安、関税などの貿易障壁、国内産業への補助金など、さまざまな手法で行われます。英語では"Beggar thy neighbor(汝の隣人を乞え)"policyといいます。

ただ、「近隣窮乏化」策は、理念上の政策に過ぎず、これを実行し続ければ、超インフレを招くなどの状況を招くことになったり、あるいは当該国の通貨が基軸通貨出ない場合、基軸通貨のキャピタルフライトが起こったりするので、現実には実施できない政策です。

世界でこれに近い政策を取っているのは中国かもしれません。ただ、中国はこのブログで指摘したように、国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策が実行しにくい状況に至っています。

中国は「近隣窮乏化」策に近い政策をとっているが・・・・・

「近隣窮乏化」策の目的は、他国が自国の商品やサービスを輸出するのを難しくする一方で、国内の生産者が自国の商品やサービスを販売しやすくすることです。その結果、他国は輸出よりも輸入の方が多くなり、貿易赤字になることがあります。

ただし、「近隣窮乏化」策は、短期的には効果的ですが、長期的にはマイナスの結果をもたらす可能性があります。例えば、他国からの報復を招き、貿易戦争に発展する可能性があります。また、国内生産者が関税やその他の貿易障壁のコストを消費者に転嫁するため、物価の上昇につながることもあります。

一般的に、近隣窮乏化策は良い経済政策とは考えられていません。世界経済にとって不公平で有害であると見なされることが多いです。

以下は、「近隣窮乏化」策の例です。

通貨切り下げ: 自国の輸出品を安くし、輸入品を高くするために、通貨を切り下げることができます。これにより、他国が国内生産者と競争することが難しくなります。

関税: 輸入品に関税をかけることができます。これにより、輸入品がより高価になり、国内生産者の競争力を高めることができます。

クォータ(割当): ある国は、輸入品に割当を課すことができます。これにより、国内に入ることができる輸入品の量を制限することができ、国内生産者の競争力を高めることができます。

補助金: 国は、国内産業に補助金を出すことができます。これは、国内の生産者がコストを下げ、より効果的に競争するのを助けることができます。

しかし、隣人窮乏化策が常に有効であるとは限らないことに注意する必要があります。例えば、ある国が自国の通貨を切り下げると、他の国も自国の通貨を切り下げて報復することがあります。その結果、各国が通貨安を競い合う「底辺の競争」に陥る可能性があります。これは、消費者の物価上昇や経済成長の低下につながるため、世界経済にとって有害です。

ただ、「底辺の競争」にはならないというか、いずれの国でもできなくなる可能性が高いです。本気で通貨安を競うとすれば、相対的に自国通貨の量を他国通貨の量より上回るようにする必要があるからです。それをどこまでも続けていれば、いずれ必ず超インフレになり、この政策を続けられなくなるからです。

為替は長い目で見れば単に二国間の金融政策の差で決まるのであって国力の差を表すものではありません。為替の本質は、ドルと円で示すと、以下の式で表すことができます。

(全世界で流通している円の総計)÷(全世界で流通している円の総計)≒(円ドル為替)(¥/$)

無論、中短期では、様々な要因があるので、このようにはならないですが、長期的にはこの方向で動いていくことになります。

全世界でたとえばA国が、通貨量を増やし、B国がそのままであれば、A国通貨、B国通貨に対して通貨安になります。

無論短期的には、為替介入である程度の操作はできますが、中期ではそろそろ効果がなくなり、長期では操作不能で、(円の総計/ドルの総計)の方向に動いていくことになります。為替介入は、せいぜい急激な変化を緩やかな変化にすることくらいしかできません。

通貨の価値は最終的にその通貨の需要と供給によって決まります。ある国の中央銀行が通貨の流通量を増やすと、その通貨の供給量が増え、通貨の価値が下がります。これは、通貨の流通量が増えたため、1単位あたりの通貨の価値が下がるからです。

一方、ある国の中央銀行が自国の通貨の供給を一定に保ち、別の国の中央銀行が自国の通貨の供給を増やした場合、最初の国の通貨の価値は2番目の国の通貨に対して高くなります。これは、最初の国の通貨が少なくなったため、その通貨の1単位の価値が高くなったためです。

そうして金融政策と為替レートの理論は、経験則に裏打ちされています。例えば、国際通貨基金(IMF)の調査では、マネーサプライが1%増加すると、為替レートは0.3%下落することが分かっています。

金融政策と為替レートの理論は、政策立案者にとって重要な意味を持っています。例えば、ある国の中央銀行が自国通貨の減価を防ぎたい場合、債券やその他の資産を売却することで通貨の供給量を減らすことができます。逆に、自国の通貨安を促したいのであれば、債券やその他の資産を購入することで、通貨の供給を増やすことができます。さらに、自国通貨を刷り増せば、さらに供給を増やすことができます。

しかし、先に述べたように、自国通貨安を促し続ければ、いずれインフレに、さらに促し続けれは、ハイパーインフレになります。そのため、通貨安競争にはおのずから限界があるのです。

通貨戦争は幻想に過ぎない

高橋洋一氏が「近隣窮乏化」策といったのは、無論日本がそのような政策意図的にとっているわけではなく、日本国内の都合で金融緩和策を行っているので結果として、そのような状況になっていることを言っているのです。

円安は、現状の日本にとってあたかも「近隣窮乏化」策を実施してGDPを増やす政策を実行しているようなものであり、これを「悪い円安」などと呼ぶのは間違いです。

これで、米国やEUさらに、日本の金融緩和策が多大な影響を及ぼす中国や韓国などが、日本の円安に関して、苦情を言うなら理解出来ますが、日本のメディアが円安を批判した理由が良くわかりません。

過去に日本の金融引締で、超円高になった日本で製造業が日本で部品を組み立てて輸出するより、韓国や中国で組み立てて輸出したほうがコスト安になったため、ぬるま湯に浸かったような状態になった中国や韓国ですらそのようなことをいわないのに、日本のメデイアが「悪い円安」などと批判するのは、私にはほとんど理解不能です。

最近は、さすがに「悪い円安論」はなりを潜めていますが、このような論を語る人々は、そもそも為替がどのように決まるのか、通貨安はどのような効果をもたらすのかを全く理解していないのでしょう。

そうして、高橋洋一氏が語るように、長期では為替は(円の総量/ドルの総量)できまり予測もできるのですが、中短期では多くの要素があり予測不能なので、これについては好き勝手なことがいえるので、これを利用して奇妙奇天烈、摩訶不思議な論を打ち出し、特定の意図への誘導をはかっているのでしょう。

いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後も信じるべきではありません。

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2023年6月9日金曜日

フランスの「本物の米国離れ」に中国は大歓喜、アメリカは大激怒している…!―【私の論評】10年経てば、中国の弱体化は誰の目にも明らかに!それまで日米は、他国を繋ぎ止める努力を(゚д゚)!

フランスの「本物の米国離れ」に中国は大歓喜、アメリカは大激怒している…!

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の東京事務所設置計画に反対しており、「中国を刺激したくない」という理由を挙げています。彼の反対姿勢は、NATOの活動範囲の拡大が大きな過ちになると述べた発言によって明らかにされました。マクロン氏は中国に配慮した発言をすることで物議を醸し、今回の反対も「マクロンの裏切り」第2弾とされています。

 NATOは、米国、カナダ、および欧州の30カ国が安全保障を約束する同盟であり、「攻撃されればすべての加盟国が共同して反撃する」という原則に基づいています。NATOの適用範囲は北大西洋の同盟国に限定されています。

 NATOは中国の脅威に対処するために、東京事務所の設置を検討しており、日本を含むアジア諸国との協力関係を強化する狙いがあります。しかし、マクロン氏は東京事務所の設置が「アジアへのNATO拡大につながる」とみなし、欧州の信頼性を損なう可能性があると主張しています。

 NATOの意思決定は全会一致が原則であり、フランスが反対すると東京事務所設置計画は頓挫する可能性があります。中国はマクロン氏の反対を喜んでおり、他のNATOメンバー国もフランスの立場に共感しているが、米国に逆らうことはできないとしています。

 マクロン氏は中国に配慮する姿勢を見せており、米国との距離を置こうとする姿勢は本物とされています。これに対し、米国ではフランスの地政学的なナイーブさや米国からの欧州への過度な関与に反発する声があります。

米中の対立が激しさを増す中、マクロン氏のような「米国離れ論」が広がっており、これらの意見は今後も強まる可能性があります。

【私の論評】10年経てば、中国の弱体化は誰の目にも明らかに!それまで日米は、他国を繋ぎ止める努力を(゚д゚)!


マクロンがNATO東京事務所開設に反対していることを伝えるロシアメデイア「スプートニク」

フランスは、伝統的に米国と距離を置く傾向があります。それは、以下のような理由によるものです。

フランスと米国は、米独立戦争までさかのぼる長い対立の歴史を持っています。フランスは米国を独立国として認めた最初の国の一つですが、両国は貿易、政治、軍事介入をめぐってしばしば対立してきました。

さらに、フランスと米国は、世界の多くの地域で異なる関心を持っています。例えば、フランスは欧州連合(EU)を強く支持し、米国は自国の国益を重視してきました。

そうして、フランスと米国は、死刑制度、移民、社会福祉など、多くの問題で異なる価値観を持っています。このような違いは、時に両国間の緊張につながることがあります。

以下は、フランスが米国と距離を置いた例です。

2003年、フランスは米国主導のイラク侵攻に反対しました。

2015年、フランスは米国主導のシリア空爆に参加することを拒否しました。

2019年、フランスは米国が主導する欧州でのミサイル防衛計画から離脱しました。

ただし、フランスが常に米国に反対しているわけではないことに注意することが重要です。両国は、テロとの戦いや民主主義の推進など、多くの問題で協力してきました。しかし、フランスと米国の歴史的な対立や利害の違いは、時に緊張や不一致を招くことがあります。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、中国に配慮したと見られる発言を繰り返しているのには、いくつかの理由があるようです。

まずは、経済的利益です。 フランスは中国と大きな経済的結びつきがあります。2021年、中国はフランスにとって、ドイツに次いで2番目に大きな貿易相手国でした。また、フランスは中国で事業を展開する企業を多く抱えています。マクロン氏は、中国と敵対することで、こうした経済的な結びつきが損なわれることを懸念しているのかもしれないです。

次に、フランスは、安全保障問題で中国と協力してきた長い歴史があります。例えば、両国はテロ対策や核不拡散で連携してきました。マクロン氏は、他の問題で中国により融和的なアプローチを取ることを意味しても、この協力関係を維持することが重要であると考えているのかもしれないです。

最後に地政学的な利益もあります。 フランスは、ヨーロッパとアフリカの主要国であります。マクロン氏は、これらの地域におけるフランスの利益を守るために、中国との良好な関係を維持することが重要であると考えるかもしれないです。

ただし、マクロン氏は、人権や知的財産の窃盗など、多くの問題で中国に批判的であることにも留意する必要があります。しかし、他の西側諸国の首脳に比べれば、一般的に中国に対してより融和的なアプローチをとってきました。

一部の人々は、マクロンの中国寄りの発言を批判し、中国に媚びへつらう姿勢が強すぎると主張しています。また、中国との付き合い方について現実的なアプローチをとっていると主張し、マクロンを擁護する人もいます。

マクロンの中国政策が長期的にどのような影響を及ぼすかについては、時期尚早と言わざるを得ないです。しかし、マクロンがフランスと中国の関係を形成する上で重要な役割を担っていることは明らかです。

確かに、「米国離れ」説が広がっているようではあります。それを裏付けるような左寄りの情報源もあります。

ガーディアン紙 "米中間の緊張が高まる中、欧州は独自の「戦略的自律性」の構築を目指す" (2023年3月8日)

ガーディアン紙 記事は、米中関係に懸念を示す欧州の高官を多数紹介しています。例えば、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、米国と中国のいずれとも「同盟の誘惑に負けない」ために、EUは「自らの主権を築く」必要があると述べています。

ニューヨーク・タイムズ紙 "ヨーロッパは中国の経済的影響力に対抗するために動く" (2023年2月25日)

ニューヨーク・タイムズ紙 記事は、EUが今後5年間で国防費を20%増加させる計画であることを伝えています。また、EUは独自の軍事指揮統制システムの開発を計画している。

フォーリン・ポリシー 「新冷戦は欧州を自国軍建設に駆り立てている」(2023年1月26日付)

フォーリン・ポリシー 記事は、米中貿易戦争が欧州諸国に "米国との経済関係の再考 "を迫っていると論じています。また、記事は、米国のアフガニスタンからの撤退が "米国の力の限界を浮き彫りにした "と論じています。

これらの記事はいずれも、欧州諸国が米国への依存を減らし、中国など他の国とのより強い関係を築こうとしている証拠を挙げています。この背景には、米中貿易戦争、米国のアフガニスタンからの撤退、米国の力の低下という認識など、さまざまな要因があります。

「米国離れ」論に批判がないわけではありません。新たな冷戦を招きかねない危険で無謀な行動であるという意見もあります。また、米国がもはや支配的でない世界において、欧州が自国の利益を守るために必要なことだとする意見もあります。

「米国離れ」理論が成功するかどうかは、時間が経ってみなければわからないです。しかし、欧州の外交政策において、その傾向が強まっていることは確かなようです。

これらは、"米国離れ "論が広がっていることを裏付ける証拠のほんの一例に過ぎないです。この傾向が続くかどうかはまだわからないですが、欧州の外交政策に大きな進展があることは確かなようです。

このような背景があるからこそ、マクロン氏は、「米国離れ論」を主張したのでしょう。

ただ、考えてみると、米国は現在でも唯一の超大国です。中国は、以前このブログでも示したように、国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策ができない状況になっています。雇用の改善な、景気の回復のために、金融緩和(利下げや、量的緩和)を実行すれば、超インフレに見舞われたり、資本の海外逃避が加速したりするため、なかなか実行できません。

これは日本のマスコミはほとんど報道しませんが、国際金融などを熟知したまともなエコノミストなら誰でも知っている厳然たる事実です。

これを解消するには、人民元の変動相場制への移行などの構造改革をすべきなのですが、習近平にはまったくその気はないようです。彼にとっては、中国経済よりも、中国を中国共産党が統治することのほうが重要なようです。

中国人民銀行行長「周小川」

そうなると、中国は今後経済的には衰える一方であり、従来言われていたように、中国が米国のGDPを追い越す日は来ないとみるべきでしょう。独立した金融緩和ができなければ、かつての日本が官僚の誤謬により、金融政策を誤りとんでもない状態(GDPがほとんどのびなかったり、賃金が30年間あがらかったこと)になったのと同じような状態になるはずです。

しかも、誤謬については日本では安倍元総理の登場によって、正されたのですが、中国では独立した金融緩和ができないのですから、誤謬よりさらの始末が悪く、これは変えようがありません。

中国がコロナから完璧に立ち直ったとしても、また成長軌道に乗ることはありません。無論、中国が変動相場制に移行するなどの大胆な変革をすれば、別ですが、中国共産党はそれはできないでしょう。習近平は、そのようなことより、中共と自らの統治の正当性を強化することに血道を上げています。中国経済よりも、そちらのほうが優先順位がはるかに高いように見えます。

今後世界で唯一超大国になれるかもしれない国は、インドだけです。ただ、そのインドも、さすがに超大国になるまでの道のりは長くて、今後数十年は要するでしょう。ただ、数十年たってさえ超大国になれるかどうかはわかりません。しかし、いずれ人口だけではなく、経済でも軍事力でも中国を上回るようになる可能性は高いです。

そうなると、当面は超大国は米国一国ということになります。中国は、10年後以降には、誰の目からみても、国力が衰え、世界の主要なプレイヤーで居続けることはできないでしょう。

ただ、今後10年間は、それはなかなか見えず、中国がまた成長軌道に戻ると、幻想を持ち続ける人も多いことでしょう。そのため「米国離れ」が進展する可能性もあります。さらに、中国は10年後に弱体化が誰の目にもはっきりするのは目に見えているので、この10年のうちに大きな冒険に打ってでる可能性は否定できません。

これに関しては、米国下院の「中国委員会」委員長のマイクギャラガー氏もそのような主張をしています。

マイク・ギャラガー氏

米国として、この10年間をなんとかそのようにならないように、多くの国々を繋ぎ止めていく努力が求められるでしょうし、日本も協力していくべきです。

中国の猛威も10年で収まるとみるべきです。先程述べたように、この10年内に中国が大冒険に打って出たとすれば、多くの国が大きな被害を被るかもしれません。無論これは絶対に避けるべきです。ただ、そうなったとしても、中国の衰退は構造的なものであり、中国は確実に衰えていきます。中国共産党の大冒険は、それを早めるだけです。それは、現在のロシアをみれば理解できます。

10年といえば、長いようですが、過ぎ去ってみればそれほど長くもないと思います。10年後には、中国とロシアがかなり衰えたことを前提に新たな世界秩序が生まれることになるでしょう。日米はこのことを、いまから世界中の国々に啓蒙していくべきと思います。

ロシアに関しては、日米欧とも、ここ数年は別にして、5年から10年の長期では、確実に敗戦するとみています。

10年後以降には、中国は数十年前の中国のようになり、ほとんど世界に影響力を及ばす事ができない国になる可能性は高いです。この国がかつて、GDPで米国を追い越すと思われたいたとはとても思えないような国になるでしょう。

中国の体制が変わった場合は、支援しても良いかもしれませんが、現体制のままであれば、支援はすべきではないでしょう。なぜなら、支援すれば、また同じことの繰り返しになるからです。

民主化、政治と経済の分離、法の支配を追求しない中国は、たとえ統治者が誰に変わろうと、現在と変わりがなく、支援を受けて経済を回復すれば、同じことを繰り返すだけです。日本も、かつてのようにODAで中国を助けるなどのことはすべきではありません。

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2023年6月8日木曜日

中国・中央アジアサミットが示すロシアの影響力後退―【私の論評】ロシアが衰退した現状は、日本にとって中央アジア諸国との協力を拡大できる好機(゚д゚)!

中国・中央アジアサミットが示すロシアの影響力後退

岡崎研究所

習近平は中央アジア首脳会議を主催

 中国主席習近平は、中央アジアとの関係を強化し、中国の影響力を拡大するために中央アジアの首脳会議を主催しました。この動きは、ロシアの影響力が弱まり、ウクライナ戦争によって注意がそらされている中で行われました。中国は中央アジア諸国との経済的および政治的な関係を強化するための機会として、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンとの首脳会議を開催しました。

 中国は中央アジアにおける安全保障の重要性を認識しており、特に新疆ウイグルの西部地域の安全保障に関心を持っています。しかし、中央アジアの人々の中には中国への懐疑的な意見や債務増加への懸念もあります。ロシアはまだ中央アジアで支配的な役割を果たしており、好意的に受け入れられていますが、国際情勢が変化する中で中国の存在感が増大する可能性があります。

 中国は中央アジアとのエネルギー貿易やレアアースの開発などで協力を深めることができます。また、中国は地域の安全保障協力の強化を発表する可能性もあります。しかし、中国の立場は時に矛盾しており、ロシアのウクライナ侵攻を非難しつつも、各国の領土の一体性を支持しています。

 ロシアはウクライナ戦争によって中央アジアやコーカサス地域での影響力を失っていると言えます。中国は中央アジアでの存在感を高めており、中国との関係強化は続くでしょう。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ロシアが衰退した現状は、日本にとって中央アジア諸国との協力を拡大できる好機(゚д゚)!

ロシアがウクライナへの侵攻を始めてから2年目に入りましたが、侵攻はまだ終わりの兆しは見えません。最初の段階でロシアが早期に勝利する見込みがないことを認めざるを得なくなったロシアは、自国の天然資源を利用してウクライナと欧州を凍結させることを決めました。

ロシア軍に破壊されたウクライナの都市

しかし、この作戦は裏目に出ました。欧州がエネルギー戦争に勝利したことで、ロシアの影響力は減少し、財政的にも苦境に立たされるようになりました。欧州の成功と中国の超然とした態度は、中央アジアの抵抗を引き起こすことになりました。

欧州に対するロシアの抵抗は明らかですが、中央アジアの抵抗は微妙なものです。中央アジアはロシアと中国によって囲まれ、地理的に孤立しており、経済的な依存関係がロシアの植民地関係の上に成り立っています。

しかし、中央アジア諸国は現在、ロシアからの難民を受け入れ、欧州連合(EU)との経済協力を拡大し、対ロシア制裁に同調し、自由化することで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対抗しようとしています。

最大の問題は、中央アジアと欧州を結ぶ既存のエネルギー輸送設備やパイプラインが、ロシアを通っていることです。代替ルートは地政学的に受け入れがたく、カスピ海を越えて西方への中部回廊が最善の選択肢となっています。

中部回廊の実現には時間がかかりますが、西側諸国は慎重に考える必要があります。ロシアからの輸出が全面的に禁止されれば、中央アジア諸国の主要な貿易ルートが閉ざされ、欧州のエネルギー価格が上昇し、中央アジアの依存度が高まる可能性があります。

日本では、中央回路を通り、カスピ海を経由する「カスピ海ルート」が注目されている

中央アジア諸国はロシアのウクライナ侵攻に不満を表明し、西側の対ロシア制裁に同調し、欧米の影響力と投資を呼び込むことで、ロシアと中国の影響力を緩和し続けています。

欧米は中央アジア諸国に投資し、ロシアと中国のバランスを取り、中国の存在感に対抗しなければなりません。中央アジアは経済的な潜在力を持ち、民主化に対する熱意や反ロシア感情が高まっています。欧米はこの機会を逃さずに関与し、戦略的な関係を築くべきです。

そのためには、政界、金融界、産業界などの主要な主体が戦略的に関与する必要があります。西側諸国は自国の利益を明確にし、大国間の競争で敗北を認めることなく、地政学的かつ経済的な利益を守る柱を見つける必要があります。

今やロシアの衰退が顕在化した中、さまざまな形で安全保障上の保険をかけたい中央アジア諸国としては、たとえ中国のウイグル・カザフ等トルコ系民族に対する弾圧には不興を感じても、秩序維持という点では発想を共有し、「一帯一路」を通じて実利をもたらす中国との関係強化を考慮せざるを得ない、というのが実情でしょう。
中国はわずか30年で中央アジアにおいてロシアを圧倒し、しかもロシアには反対する余裕もない状態を実現したと言えます。穿った見方をすれば、昨年2月4日の中露「無限の協力」宣言と、ロシアのウクライナ侵略に対して歯止めをかけない中国の態度は、ロシアに先に侵攻させて国力と影響力を削ぎ、同時にウクライナを援助する米欧の国力も削ぎ、中国が安心してその後を埋めるための計だったのではないかとすら思えます。 

とはいいながら、中央アジア諸国の発想の根底にあるのは、なるべく多角的に協力者を求めて安全保障を図るという発想です。世界中が疫病禍からほぼ抜け出した昨今、もちろん日本をはじめ開かれた規範を尊ぶ諸外国にも、中央アジア諸国との協力を拡大する余地は多大にあると思われますし、ロシアが衰退した今はむしろその好機と言えるかも知れないです。

中央アジアの国々と、日本とをパイプラインで直接結ぶことは、中国とロシアが障壁となって無理ですが、もし中央アジアの石油が、西欧諸国に中部回廊を通じてとどけられるようになれば、日本もこれを利用できる可能性がでできます。これについては、日本も関心を示しています。

林芳正外務大臣は昨年12月24日、東京都内で中央アジア5カ国の外相との会談を行い、ロシアを経由しないエネルギー資源などの国際貿易路「カスピ海ルート」や両者の人材育成における協力などについて話し合いましたた。日本外務省が発表しました。(写真下)

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外務省によると、当時訪日したのは「中央アジア+日本」対話の枠組みに参加する旧ソ連のカザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、タジキスタンの5カ国の外相。

会談後の記者会見で林外相は、「厳しい国際情勢を踏まえ、ロシアを経由しない国際輸送路である『カスピ海ルート』について意見交換を行った」と述べました。

また、中央アジアの持続可能な発展に向け、「人への投資」や「成長の質」などに重点を置いた新たな発展モデルを推進していく考えを示しました。

日本は中央アジア諸国に対してこれからも、支援をしていくべきでしょう。

特にカザフスタンはポテンシャルの高い国です。 カザフスタンは中央アジアで最大の経済力を持ち、2021年のGDPは1740億ドルに達します。同国の経済は、石油、ガス、ウランなどの天然資源のほか、農業や製造業を基盤としています。カザフスタンは一人当たりのGDPが高く、経済は安定的に成長しています。

さらに、カザフスタンの軍事予算は中央アジアで最も多く、2021年には24億ドルに達します。同国の軍隊は装備と訓練が充実しており、国境を守り、侵略を抑止する能力があります。カザフスタンは、旧ソ連6共和国の軍事同盟である集団安全保障条約機構(CSTO)に加盟しています。

カザフスタンの経済的、軍事的潜在力は中央アジアにおける重要なプレーヤーにさせています。この地域の経済発展と安全保障において、主導的な役割を果たすことができる位置にあります。

日本としては、カザフスタンを支援し、カザフスタンが強国になれば、西と東で中国を挟む形になり、安全保障上も有利になります。

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