2021年11月20日土曜日

中国軍艦が領海侵入 4年ぶり、爆撃機周辺飛行も―防衛省―【私の論評】中国測量船の領海侵入は、日米対中国の対潜水艦戦闘の一環として行われている(゚д゚)!

中国軍艦が領海侵入 4年ぶり、爆撃機周辺飛行も―防衛省

2014年我が国EZZ(経済的履いた水域)に侵入した中国の測量艦 今回は艦艇の種類までは公表されていない

 防衛省は19日、鹿児島県・屋久島南方を航行していた中国海軍の測量艦1隻が、日本の領海に侵入したと発表した。同省によると、中国軍艦の領海侵入は2017年7月以来で、4度目。日本政府は外交ルートを通じて中国側に懸念を伝えた。

 同日には中国、ロシア両空軍の爆撃機が共同で日本周辺を飛行したことも確認され、同省は警戒を強めるとともに、目的などを分析している。

 同省統合幕僚監部によると、17日午後8時40分ごろ、屋久島南方の接続水域を日本領海に向けて西進する中国海軍の「シュパン」級測量艦1隻を、海上自衛隊のP1哨戒機が発見。同艦はその後、18日午前1時20分ごろには同県の口永良部島西方の接続水域まで移動していた。このため同省は、17日夜に両島周辺の領海に侵入したと判断した。同艦はその後、中国本土方向に進み、海上警備行動の発令はなかった。

 沖縄県の尖閣諸島沖では中国海警局の公船が領海侵入を繰り返しているが、中国軍艦は4年ぶり。17年には津軽海峡を航行していた情報収集艦が、北海道松前町沖で領海を侵した。

【私の論評】中国測量船の領海侵入は、日米対中国の対潜水艦戦闘の一環として行われている(゚д゚)!

中国海軍の測量艦が我が国領海内に入って何をしていたかといえば、当然のことながら、「地理空間情報」(GEOINT : Geospatial Intelligence)を収集です。「地理的空間情報」というと、陸の上のことをイメージしがちですが、海にも関わりがあります。

海底の地形には起伏があり、地質の違い(岩とか砂とか)などもあります。しかも海では潮の満ち干がある、同じ場所なら水深が常に同じというわけでありません。

そこで、船舶の安全な航行のために、海図が必要になります。海図には、水深、底質、海底の危険物、航路標識などといった情報が描かれています。この海図の作成のための測量が測量艦の役割です。

日本では、海図の作成と、それに必要なデータの収集を海上保安庁が担当しており、海図を作成するためのデータ収集に必要な機材を搭載した「測量船」を運用しています。例えば水深の測定であれば、音響測深儀を用います。海中では電波は使えないので音響センサーを使うのですが、これは潜水艦を捜索するのに、レーダーではなくソナーを使うのと同じ原理です。

音響測深儀は海底に向けて音波を発信して、それが戻ってくるまでの時間を使って水深を調べます。基本的には真下に向けて音波を出すから「点」あるいは「線」のデータしかとれません。

ところが、マルチビーム音響測深儀という測深儀もあり、これは左右方向に広がりを持つ扇形の音波を出します。これを作動させながら船を前進させれば、前後・左右を同時に走査できて海底地形の調査が迅速になります。

海上自衛隊の艦艇一般公開で艦橋に立ち入ったことがある人なら、艦橋の片隅に海図台があるのを見たことがあるかもしれません。

艦船が航行している時は、海図を常に参照しているし、そこに現在位置を書き込んでいく作業もあります。そのため海図台がある一角には、GPS(Global Positioning System)を初めとする測位機材の表示器も置かれています。

「おやしお型潜水艦」の海図台

水上艦の場合は、座礁するかどうかが問題ですから、水深が吃水よりも大きい分には、水深が50mだろうが5,000mだろうが大差はありません。しかし潜水艦の場合、水深は「どこまで潜航できるか」に関わる大問題です。だから、正確な海底地形情報がないと、潜水艦の運用に差し障りがでてきます。

また、潜水艦にとっても水上艦にとっても、ソナーの動作に影響する海底からのソナー音波の反射、海中でのソナー音波の偏向・湾曲・反射といったことがあるため、海底地形だけでなく水温や塩分濃度のデータが重要になります。

そのため、潜水艦を運用する国なら、大抵は海洋観測艦を配備して独自にデータ収集に当たらせています。海上保安庁(日本の場合)が収集しているデータだけでは足りないですし、情報の管理・保全という問題もあるので、内輪で情報を集める必要があります。

海自の海洋観測船「にちなん」

米軍は、海洋観測艦と測量艦を別々に保有・運用しています。海水そのものを相手にするか、海底や周囲の陸地を相手にするか、という違いがあります。それに対して、我が海上自衛隊は海洋観測艦だけで、その両方を兼ねています。

ただし、海上保安庁は現在8隻の測量船を有しています。平成28年12月に関係閣僚会議で決定した「海上保安体制強化に関する方針」に基づき、海洋調査体制の強化の一環として整備を進めてきた大型測量船「光洋」が、令和3年3月16日に就役します。

「光洋」は、昨年1月に就役した「平洋」の同型船であり、「平洋」と同じく海上保安庁最大の測量船です。

海保の測量船「平洋」

日本では、領海に限っては海上保安庁が測量を、海自が海洋観測をするという役割分担になっているのだと考えらます。領海外は、米国の情報に頼るとともに、海自が測量と海洋観測の両方を行っていると考えられます。

そしてこの分野では近年、無人潜水艇(UUV : Unmanned Underwater Vehicle)、あるいはAUV : Autonomous Underwater Vehicle)の利用事例が増えています。ソナーや測深儀などのセンサー機器を搭載した無人艇を目標海域に放ち、自動的に走り回らせてデータを収集、最後に無人艇を揚収してデータを取り出すという原理です。

海底の地形を知っておくべき理由はまだあります。潜水艦を探知するために、海底にパッシブ・ソナー・アレイ、いわゆるSOSUS(Sound Surveillance System)を設置しようとしても、当然ながら設置する場所の海底地形がわかっていないとできません。

浅くて平らなつもりでいたら、実は深い落ち込みがありました、ということになれば、SOSUSの敷設そのものがやりづらくなりますし、SOSUSで探知できる範囲にも影響があります。この辺は、民間で実施する海底ケーブルの敷設と共通するところかもしれません。

海洋観測艦や測量艦を平時から走り回らせて収集したデータは、「基本資料」になります。海底地形は、大地震や海底火山の大噴火でもない限り、そうコロコロ変動するものではないだろうから、それでも用が足ります。

しかしそれとは別に、「いま現在」のデータが欲しい場合もあります。その一例が水温です。そこで、ソナーを扱う艦艇や航空機は、海中に投入する温度計を備え付けています。

つまり、海面から下に温度計を降ろしていって、深度に応じて水温がどう変化するかをその場で調べるのです。

そういう機材の一例が、AN/SSQ-36 BT(Bathythermograph)ブイです。着水したブイから水温計をケーブルで海中に降ろして、そのデータを無線で送るというものです。これも一種の海洋観測です。

もしも広い外洋でBTを投下して、たとえば「深度○○メートルで急に温度が変化する」ということになれば、「その変温層の下に敵潜が隠れているかもしれない」と推測できるわけです。

なぜそのようなことが必要になるかといえば、潜水艦がスクリューなどの推進器を止めて、海中潜んだり、潮流によって移動している場合通常は発見する手段がないわけですが、海水温の変化があれば、潜んでいるかもしれないと推測できます。

特に、日本の潜水艦、その中でも最新鋭の潜水艦は、リチウムイオンバッテリーで駆動し、ほとんど無音であり、発見するのは難しいですが、水温の変化があれば、潜んでいるかもしれないと推測できるわけです。

ただ、実際中国がどの程度まで、発見できるかということは未知数です。そうして一ついえるのは、日本の潜水艦探知能力はかなり中国の上をいっているのは間違いないということです。

たとえば、防衛省は6月20日に中国潜水艦の接続水域通過を発表した。「奄美群島において太平洋から東シナ海に潜航潜水艦が通過した。日本領海には入らなかった」という内容からそれを推し量ることができます。

この発見は音響探知の結果と推測されています。南西諸島線に配置した水中聴音機で中国潜水艦の騒音を聴取したと、一般的にはそう考えられています。

しかし、そうではない可能性も否定できません。温度変化に基づくものかもしれないでし、電磁波による観測によるものかもしれません。

これについては、述べていると長くなってしまうので、興味のある方は、是非以下の記事を参照してください。
海自は対潜戦に力を注いでいるのは間違いありません。また他国でもこの手のセンサー利用は進められています。ところが海自はその研究や整備について一言も公表していません。

そうして、私自身は日米の潜水艦は当然のことながら、東シナ海、南シナ海、北朝鮮の近海、黄海などを潜航して航行していると思っていますし、中国がそれを発見すれば、激しく非難するようなところも航行していると思うのですが、現在までのところでは、中国はこれを非難したことはありません。

日本は発見の事実を公表することがあるのですが、中国はそのようなことを過去にしたことがありません。したことがないというよりは、できないのでしょう。これらを考慮すれば、現状では日米の対潜水艦戦闘力(ASW)は、中国のそれを凌駕しているのは間違いないといえると思います。

そうして、すでに日米と中国は様々な海域で、一般には知られることもなく、対潜水艦戦闘を前提として様々な行動をして、相手の能力を探ったり、牽制をしたりしてしのぎを削っていることでしょう。

今回の中国海軍の測量艦の日本の領海に侵入は、日米対中国の対潜水艦戦の一環として行われていることを忘れるべきではありません。そうして、ASWは現代海戦の決定打であることも忘れるべきではありません。もはや、空母打撃群や強襲揚陸艦などは海戦の主役ではないないのです。ASWこそ主役なのです。

実際に魚雷やミサイルは飛び交っていませんが、ASWに劣る中国は、いまのところ台湾侵攻や尖閣侵攻などできないことを認識しているでしょう。この優位性はしばらくはゆるがないでしょう。この海戦における絶対優位性を日米はこれからも保持しつづけるべきです。

この絶対優位性が崩れれば、中国は現在行っているような、海上や空での示威行動など一切おこなわず、すぐさま日米潜水艦隊を駆逐し、その後に台湾を武力侵攻します。尖閣にも侵攻するでしょう。沖縄もすぐです。その後は日本本土にも侵攻するでしょう。それに呼応してロシアも北海道にも侵攻するでしょう。

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2021年11月19日金曜日

米大統領「外交ボイコット」検討 北京五輪で、中国は反発―【私の論評】岸田総理が、財政・対中国政策を間違え続ければ三ヶ月後にはバイデン政権の後を追うように支持率が落ち参院選に突入することになる(゚д゚)!

米大統領「外交ボイコット」検討 北京五輪で、中国は反発


 バイデン米大統領は18日、ホワイトハウスで記者団に、来年2月の北京冬季五輪に政府高官らを派遣しない「外交ボイコット」を検討していることを明かした。中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害への対抗措置とみられる。カナダのトルドー首相との会談冒頭で語った。

 バイデン氏は15日、中国の習近平国家主席とオンライン形式で初めて会談し、米中の衝突回避で一致したばかり。米選手団の派遣には影響しない見通しだが、日本や欧州など各国の北京五輪への対応を左右する可能性もあり、中国は反発している。

 中国外務省の趙立堅副報道局長は19日の記者会見で、「新疆問題は純粋に中国の内政であり、外国勢力の干渉は決して許せない。米国は新疆でジェノサイド(集団虐殺)や強制労働があると顔に泥を塗ろうとしているが、中国人民からすれば笑い話だ」と主張した。

 その上で「北京冬季五輪の主役は世界各国の選手だ。スポーツの政治化は五輪精神に反し、各国選手の利益を損ねる」と、米国の動きをけん制した。中国政府にとって、習氏の異例の3期目入りが確実視される来年秋の共産党大会を控え、北京五輪の成功は至上命令だ。

 サキ大統領報道官は18日の記者会見で、ウイグル族迫害に懸念を表明したが、「追加する情報はない」と述べるにとどめ、ボイコットの具体的な内容などには触れなかった。米紙ワシントン・ポストは、中国政府の人権侵害への対抗措置として、バイデン政権が近く「外交ボイコット」を発表すると報道していた。

【私の論評】岸田総理が、財政政策・対中国政策を間違え続ければ三ヶ月後にはバイデン政権の後を追うように支持率が落ち参院選に突入することになる(゚д゚)!

バイデン大統領が、北京五輪の外交的ボイコットを決めるのは当然です。このブログにも述べているように、バイデン大統領の支持がかなり落ちているからです。

この状況で、バイデン政権が北京五輪に何もせずに、通常どおりに参加ということになれば、国民からの批判がさらに高まり、支持率がさらに低下して、とんでもないことになりかねないからです。以下に支持率の推移を掲載します。

バイデン大統領野支持率と不支持率の推移 日次、期間:2021年1月27日~2021年11月17日、ポリティコの日次平均出所

米バイデン政権は財政政策としてインフラ投資法案(1兆2000ドル)と民主党単独法案を看板政策としてきました。インフラ投資法案は成立しましたが、育児や教育を支援する3.5兆ドル規模の計画を実施するとされた民主党単独法案は民主党内からの抵抗で規模縮小を余儀なくされたうえ、法案成立の見通しも不透明です。バイデン大統領の支持率も右肩下がりで、バイデン政権の政策運営に気迷いも見られます。

バイデン政権の2つの政権運営の最近の動向を振り返ります。2つの看板政策のうち、新規財源が5500億ドル規模のインフラ投資法案は超党派の合意により既に成立しました。 一方、当初は3.5兆ドル規模とより大型の民主党単独法案は、ビルド・バック・ベター(よりよき再建)法案に置き換え、規模を半減させ成立を目指していますが、採決の時期も不透明です。

特に上院の先行きが不透明です。上院は民主党と共和党が議席数で拮抗しており、民主党内から1人でも反対が出れば、それを上回る共和党からの支持が必要となります。しかし、インフラ投資法案と異なり、分配の色合いが濃いビルド・バック・ベター(よりよき再建)法案で共和党の協力が得られる可能性は低いと思われます。

 共和党の協力はそもそも期待できないとして、問題なのは民主党が一枚岩になれないことです。民主党内で分配政策を支持するグループと、これに強硬に反対する穏健派(少数ながら)が対立しています。

穏健派の代表的議員はウェストバージニア州選出のマンチン上院議員です。ウェストバージニア州は伝統的に共和党の地盤だけに、巨額の財政政策に否定的です。また最近では巨額の財政政策がインフレをさらに加速させると主張しています。

ある意味、正当な主張にバイデン政権は説得に苦慮しています。 そうしてもバイデン政権の支持率を見ると低下が止まりません。下落のきっかけは、何と言ってもちくはぐな移民政策でしょう。そうして、それに続くアフガン撤退の不手際でしたが、最近の世論調査ではインフレへの不満が背景の一因となっているようです。

また、バイデン大統領の後継者として期待がかかるハリス副大統領の支持率も30%前後と、バイデン大統領より低迷しています。ハリス副大統領も、移民問題で大失言したことがひびいているようです。

バイデン大統領は、移民2世のハリス副大統領を対策の責任者に任命。ハリス副大統領は6月7日メキシコとグアテマラを訪問し移民増加の背景にある貧困問題などへの支援を表明しました。

ハリス副大統領

ところが、グアテマラの記者会見での以下の発言が波紋を呼びました。
「国境を越えようと考えている人たちにはっきりと言っておきたい。来ないでほしい。来ないでほしい」
これはいかにも矛盾した発言です。受け入れるような受け入れないような、発言などすべきてではありませんでした。受け入れるなら受け入れるで、上限はどのくらいなのかはっきりすべきでした。あいまいな発言が一番困ります。

この状況で、バイデン政権が中国に対して甘い態度をとれば、ますます支持率が低下する可能性が高いです。

なぜなら、日米など先進諸国で中国に対する否定的評価が最高水準にあることが米調査機関ピュー・リサーチセンターが実施した国際世論調査で明らかになったからです。

同センターが2~5月に実施した先進17カ国・地域の成人約1万8900人を対象に実施した調査によると、15カ国・地域で過半数の人々が中国を「好ましくない」とみていました。

特に否定的な評価が多かったのが日本で、88%が「好ましくない」と回答しました。スウェーデン80%、オーストラリア78%、韓国77%。米国76%がこれに続きました。また、韓国と米国、カナダ(73%)、ドイツ(71%)では「好ましくない」がこれまでの調査で最高となったのです。

中国を「好ましい」とする回答の方が多かったのは、シンガポールとギリシャだけでした。

また、「中国は国民の自由を尊重していない」との回答は、17カ国中15カ国で80%を超えた。

米中のどちらと強い経済関係を望むかについては、シンガポールを除く16カ国・地域が米国を選んだ。

中国の習近平国家主席への信頼度は、シンガポール(70%)を除く16カ国・地域で10~36%の低水準でした。最低は日本で10%でした。

また、中国との経済関係を犠牲にしてでも人権問題を重要視する回答が70%以上を占めたのは米国、オーストラリア、ニュージーランド。日本は54%、台湾は45%。一方「経済関係を優先する」との回答が上回ったのは韓国(57%)とシンガポール(55%)でした。


中国との経済関係を犠牲にしてでも人権問題を重要視する回答が70%以上を占めたのは米国という数字をみれば、バイデン政権が北京五輪に対して、何もしなければ、支持率が落ちるだろうと見るのは当然のことだと思います。

まだ実際のボイコットの詳細は決まっていませんが、バイデン政権は何らかの形でボイコットをせざるを得ないでしょう。

一方日本はどうなのかといえば、昨日もこのブログで指摘したように、10月31日の衆院総選挙で、自民党が身分不相応に勝ってしまったため、というか分不相応に負けなかったために、岸田政権が国民から信任を受けたと、岸田総理が勘違いしてしまったという可能性が大きいです。

そうして、この勘違いにより、二つの大きな錯誤をした可能性が大きいです。一つは、経済対策です。もう一つは対中国政策です。

現状ではコロナからの復活のため、大型補正予算を組みすぐにも実行すべきなのですが、給付金一つとってもトロトロしており、しかもチマチマしています。

米国では上の記事にもあるように確かにインフレ傾向です。

米労働省が10日発表した10月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前月比0.9%上昇。前年同月比の上昇率は6.2%に達しました。食料品とエネルギー品目を除いたコアインフレ率も前年同月比4.6%上昇し、年間上昇率はどちらも30年以上ぶりの高い伸びとなりました。


一方、日本はどうなのかといえば、物価目標は1%にも達しておらず、インフレ懸念からは程遠い状況にあります。バイデン政権はインフレをものともせず、財政政策としてインフラ投資法案と(1兆2000億ドル)民主党単独法案(3.5兆ドル)を実施しようとしていたのと比較すると、どこか頭のネジが緩んだような対策をやろうとしているのではと、疑念を持ってしまいます。(なお、円・ドル換算には、ドルのほうを100倍すれば概要がつかめます、わたしはてっとりばやくそうしています。それでみると米国の対策がいかに巨額かわかります)

バイデンとしては、需要が供給を上回り、消費や投資が活発化するような「高圧経済」を早期に実現して、いちはやく米国を成長軌道にのせ、それをもって支持率の上昇を狙っただと思います。

いま必要な政策は、日米ともに政府が総需要を創出することです。それは失業を回避するための政府の大きな役割です。日本では、総裁選、衆院選を経て経済対策の機運がせっかく高まったのですが、先にも述べたように最近の給付金での政府与党のやり方は「トロトロ」「チマチマ」で本当に情けない限りです。

バイデンが狙ったように、補正予算でGDPギャップを埋めるほどの有効需要をまず創出しなと問題外で。その中身については、いろいろな政治家が語ってくれればいいが、総額が足りないというのでは論外です。

日本でも、需要が供給を上回り、消費や投資が活発化するような「高圧経済」を実現すべきであり、これには真水でいえば50兆円程度が必要です。昨年の経済対策などの使い残しが何と20兆円程度もあります。それを含め50兆円程度であれば、今後の雇用悪化は回避できるでしょうが、それを渋ると失業が増え、経済が悪化に加えて失業対策や生活保護費などの経費が増えることになります。

そうなる前に、経済を回復させるべきです。政府・与党は、新たな経済対策と2021年度補正予算案を固めました。国と地方の負担を含む財政支出は55・7兆円程度、民間などの支出を含めた事業規模は78・9兆円程度になるそうです。19日に閣議決定するそうです。しかし、真水でどの程度の規模になるのかはわかりません。

バイデン政権はしばらく前から支持率が落ちているので、何とかこれを打開しようと、大規模経済対策を打とうとしたり、北京五輪の政治的ボイコットをしようとしています。

しかし、昨日もこのブログに掲載したように、自民党では、中国当局による香港やウイグルなどでの人権弾圧を念頭に、海外での人権侵害行為に制裁を科す「日本版マグニツキー法」の整備が検討されてきたのですが、岸田首相が当面見送る方針を固めたと報じられました。

岸田総理が、財政政策と、対中国政策を間違え続ければ、少なくとも三ヶ月後には、バイデン政権の後を追うように支持率が落ちて、それを取り返すのに苦慮することになります。そうして、その状態で参院選に突入することになりかねません。

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2021年11月18日木曜日

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岸田首相、安倍元首相と初会談 マレーシア特使派遣を伝達 「有意義な意見交換ができた」


 岸田文雄首相は17日夕、衆院議員会館の安倍晋三元首相の事務所を訪れ、約30分間会談した。関係者によると、マレーシアに特使として安倍氏を派遣する方針を伝達。新型コロナウイルス対応を盛り込んだ2021年度補正予算案やロシアとの関係など外交が話題に上ったという。両氏の会談は首相就任後初めて。

 岸田首相は会談後、官邸で記者団に「これからの政治の動きの中で話題になる課題について、有意義な意見交換ができた」と語った。

 自民党総裁選で、安倍氏が高市早苗政調会長を全面支援したため、岸田首相と安倍氏に距離が生じたとの指摘がある。

【私の論評】マレーシアの帰りに安倍特使が台湾に寄れば、岸田政権は二つの大きな錯誤を是正することに(゚д゚)!

上の記事、最後の結論部分は間違っていると思います。自民党総裁選で安倍氏が高市氏を応援したのは、河野氏を総裁にはしたくなかったので、高市氏を応援したとみるのが、妥当だと思います。もし安倍氏が高市氏を応援していなければ、河野総裁ということもあり得たかもしれません。

総裁選決選投票へ向けて岸田・高市両陣営は前日9月28日午後からトップレベルの調整を進めました。岸田氏が決選投票に駒を進め、高市氏が敗れた場合に決選投票で高市陣営は岸田氏支持で合意し、本選で高市氏が獲得した議員票114の大半は岸田氏に流れたとされています。

そこに、自民党最大派閥旧細田派(現安倍派)の意思が働いていたのは間違いありません。

総裁選では、岸田派と旧細田派の共通の利益でもある河野総裁阻止と、当初は泡沫候補ともみられていた高市氏の初の女性総理への可能生を切り開いたということで、安倍氏の目論見は成功したと思います。

高市早苗政調会長

そういうこともあり、岸田氏は安倍氏や自民党最大派閥旧細田派(現安倍派)に一定の配慮を示していました。ただ、昨日もこのブログで示したように、10月31日の衆院総選挙で、自民党が身分不相応に勝ってしまったため、というか分不相応に負けなかったために、岸田政権が国民から信任を受けたと、岸田総理が勘違いしてしまったという可能性が大きいです。

それに関しては、昨日は財政面での「ショボさ、とろさ」について掲載しました。財政面での岸田首相の勘違いについては昨日の記事でまとめましたので、それを参照してください。

岸田首相のもう一つの勘違いとしては、外交上の勘違いです。

自民党では、中国当局による香港やウイグルなどでの人権弾圧を念頭に、海外での人権侵害行為に制裁を科す「日本版マグニツキー法」の整備が検討されてきたのですが、岸田首相が当面見送る方針を固めたと報じられました。

第2次岸田内閣では、政界屈指の「親中派」である林芳正外相を起用した一方、法整備に積極的な中谷元(げん)元防衛相を「国際人権問題担当の首相補佐官」に登用してバランスをとったとされたのですが、このバランスはすでに崩れつつあります。

中谷元・首相補佐官(国際人権問題担当)は15日夜のBS日テレ番組で、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港での人権状況について「看過できないような状況がある。日本としてどう対応していくか政府で検討する必要がある」と語りました。

 一方、重大な人権侵害行為に制裁を科すための日本版マグニツキー法の制定については「簡単にいかない」と慎重な姿勢を示しました。

「一方的に価値観を押し付けて制裁するやり方も一つだが、寄り添って問題を解決する役割を日本は期待されている。紛争を助長したり、事を荒立てたりするのがすべてではない」と述べ、「対話と協力」を人権外交の基本とする日本政府の立場を説明しました。 中谷氏は「人権外交を超党派で考える議員連盟」の共同会長として、日本版マグニツキー法の制定を訴えていました。

これら二つの錯誤を起こしている可能性が高い岸田総理ですが、これに対する是正の動きが自民党内で必ずでてくるはずです。

なぜなら、まずはくてショボくてとろい経済対策では、コロナ禍からの経済の回復が遅れ、国民の不満が高まるからです。

外交面での錯誤、特に中国に配慮するような政策をとれば、以前このブログにも示したように、米国ピュー・リサーチ・センターの調査では、反中感情を持つ人の割合は、日本では86%にものぼるわけですから、国民の不満は高まることになります。以下に昨年10月のピュー・リサーチ・センターの調査結果のグラフを掲載します。


このまま岸田政権がこれらの錯誤を続けた場合、岸田政権の支持率は確実に下がることになるでしょう。

これに対する是正の動きが、自民党内から出てくるのは当然のことです。それでもこれに岸田政権がこれ対して何もしなければ、それこそ昨日もこのブログで指摘したように、岸田おろしの嵐が吹き荒れ、来年また総裁選ということになりかねません。

このような動きがどうなるか、見定めるための一つの目印があります。それは、安倍晋三台湾に電撃訪問のタイミングはいつごろになるかで推し量ることができます。

以前このブログでも述べたように、安倍晋三元首相が、首相経験者として初めて台湾を訪問する計画が持ち上がっています。安倍氏は超党派で作る親台議連「日華議員懇談会」の顧問を務めており、その動きは、中国との距離が近いとされる岸田文雄首相や林芳正外相、党内では茂木幹事長へのけん制と指摘する声も少なくないです。


岸田首相は、どのようなつもりで、これらの人事を決めたのかわかりませんが、外相、幹事長ともに中国との距離が近いとされる人を任命するのは、明らかにバランスを欠いています。これは、中国に誤ったメッセージを与えかねません。

バランスを保つ意味でも、安倍元総理は台湾訪問を考えたのでしょう。冒頭の記事にもあるように、マレーシア特使に任命された安倍晋三元首相は来月12月にマレーシア訪問が予定されています。その帰りに台湾訪問をするにはマレーシア帰りに、台湾に寄るのではないかという憶測があります。

もしこれが成就すれば、岸田・安倍会談においても、このことが話し合われ、岸田総理には安倍元総理や安倍派に対して一定の配慮をするつもりがあると考えられます。

もし、これが成就せず、安倍元総理が台湾を訪問することがなけれは、岸田総理には先にあげた二つの錯誤を訂正するつもりはないと考えられます。さすがに安倍元総理も、岸田現総理にはっきりと反対されれば、台湾に自己判断でいくことはできないでしょう。

果たしてどうなるのでしょう。私としては、無論来月是非とも安倍元総理の台湾訪問を実現していただきたものと思います。

そうして、これを皮切りに以前このブログでも提唱したように、岸田総理はマレーシア以外にも、特使として安倍総理を派遣すべきと思います。

このブログでは、米国バイデン政権では、ジョン・ケリー氏が、気候変動問題担当特使を担っていることから、日本でも、安倍晋三氏を日仏関係担当特使に任命して、日仏関係の強化ならびに、米豪とフランスの関係修復を推進していただいてはどうかという主張をしたことがあります。

マレーシアを皮切りに、米・仏・豪などに特使として派遣し、過去に安倍氏が成したように、大きな方向性や枠組みを構築してもらうようにすべきです。このような役割は、林外務大臣はもとより、岸田総理にも荷が重すぎです。

当面は岸田政権は、安倍元総理に外交の道筋をつけてもらうべきです。そのようなことになれば、無論財政面でも、岸田政権は安倍派に一定の配慮を示し、緊縮財政に走ることもなくなるでしょう。

何よりも、岸田総理は、安倍元総理の言うことに耳を傾けるべきです。そうしなければ、自分では人のことを良く聞いているつもりであっても結果として、唯我独尊に陥ってしまいかねません。


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2021年11月17日水曜日

高橋洋一氏 岸田政権ぶった切り「ショボい!とろい!」給付金もGOTOも遅すぎ―【私の論評】今のままだと、自民党内で岸田おろしがはじまり、来年総裁選ということになりかねない(゚д゚)!

高橋洋一氏 岸田政権ぶった切り「ショボい!とろい!」給付金もGOTOも遅すぎ


 元財務官僚で嘉悦大教授の高橋洋一氏が16日に更新した自身のYouTubeチャンネルで「ショボい!とろこい!グダグダ岸田内閣」と岸田政権をぶった切った。

 高橋氏は、10月31日の衆院総選挙で、自民党が「身分不相応に勝っちゃった」と話し、その結果、「結果的に変わるチャンスがなくなっちゃった」「あまりにも負けなかったから信任を受けたんだと、岸田さんが勘違いしちゃったのかもしれない。勘違いしない方がよかった」と述べた。

 選挙前から岸田政権は、スピード感がなくグダグダだという高橋氏は、18歳以下に現金5万円クーポンで支給するという特別給付金についても「今月に補正予算出して、来月に国会で審議するから、そのあと、すぐ年末年始の休みになっちゃう。

 その年明けくらいから実務作業が始まるから、うまくいって3月くらいに給付できればいい。クーポンはまた時間かかるから、もたもたしてると参院選になるから、5万円の話なんて雲散霧消しちゃうかもしれない。あんだけ遅いとね」。「あそこまで来るとお笑いだね」と絶望的な遅さを非難した。

 GOTOキャンペーンも来年2月からを予定するなど、岸田政権の政策を「とろこい」とぶった切った高橋氏。新型コロナウイルスからの経済回復も「日本だけが出遅れている」と指摘し「どうしようもないこのスピード感のなさ。こんなんで参院選戦える?無理だよ。参院選にしっぺがえしがくるかもしれない」とも。

「でも相手が立憲共産党やってくれるから、またラッキーになっちゃうんだよね。どんどん両方が足の引っ張り合いで沈み込んでいく、底辺への競争というパターン」と自民・立憲双方が共倒れすると予想した。

 一方で、衆院選で躍進し、現在、文書通信交通滞在費問題を指摘して注目を集めている日本維新の会について「維新と国民(民主党)の方がまともに見える。期待するところがないから」と再躍進する可能性を想像していた。

【私の論評】今のままだと、自民党内で岸田おろしがはじまり、来年総裁選ということになりかねない(゚д゚)!

このブログでは、自民党総裁選に先立ち、8月にまだ候補が本決まりになっていない時期に各候補となることが目されると考えられる人々の動向を掲載しました。その中に岸氏のことで気になることがありました。その内容を以下に再掲します。
自民党の岸田文雄前政調会長は19日、東京都内で開かれた岸田派の会合であいさつし、菅義偉首相の任期満了に伴う党総裁選について「自民党は幅広い選択肢を持つ政党だと示す貴重な場だ。しっかりとした選挙をやらなければならない」と述べました。首相の無投票再選に異論を唱え、自身の出馬に意欲をにじませた発言です。岸田派内では、岸田氏以外に首相の対抗馬が出れば、立候補すべきだとの声が出ています。

古賀誠氏

自民党岸田派の名誉会長を務めていた古賀誠元幹事長は19日、TBSのCS番組収録で、同派会長の岸田文雄前政調会長の党総裁選への対応について「利口な岸田会長だから、こういう状況で出馬まで踏み切る決断には至らないのではないか」と述べ、自制を促しました。

古賀氏のこの発言は、今回岸田氏が総裁選に立候補して、落選した場合、修復が不可能な位の大きな傷がつくことを恐れた、親心によるものとみられます。確かに、その可能性は否定できないです。

 総裁選候補がはっきりと決まっていないかった、この時期は、様々な憶測が飛んでいました。その中で自民党岸田派の名誉会長を務めていた古賀氏は上のような発言をしたのです。古賀氏のような人物が故なく、このような発言をするはずはありません。

確かにに現状の岸田総理の行動をみていると、古賀氏の諫言はあたっていたのかもしれません。それに、確かにこの時点では、岸田に目がでることは考えにくい状況でした。

ただ、安倍元総理や麻生氏、それに甘利氏などの当時の党内実力者が、石破氏、河野氏などが総理大臣になることを完璧に阻止すべく、岸田派と手を組み、高市氏を応援するという形で、岸田氏が総裁選に勝つように仕向けたというのが、事実でしょう。

そうして、岸田総理大臣が生まれたわけですが、その後の10月31日の衆院総選挙で分不相応に勝ってしまったのです。これは、立憲共産党とも揶揄されたように、共産党と立民の共闘が、多くの有権者に受け入れられず、これに有権者が反対するという意味で、自民党、維新に票が流れたというのが実体です。

様々な幸運が重なり、岸田氏は総裁選と衆院選に連続して勝利してしまったのです。特に衆院選では、「あまりにも負けなかったから信任を受けたんだと、岸田さんが勘違いしちゃったのかもしれない。勘違いしない方がよかった」と高橋洋一氏が語っているような状態になってしまったようです。

本来ならば、岸田氏は勘違いせずに、麻生派や安倍派のことも考慮しながら、国政に取り組むべきでした。そうして、政治は派閥の力学だけで動くわけではありません。

15日に出された「四半期別の実質成長率」をみると以下のよう状況です。

クリックすると拡大します

この状況を高橋洋一氏は、「派手にマイナスばかり。景気対策は真水50兆円ないと立ち直りは難しいな」とツイートしています。

この状況を認識していれば、派閥の力学などは脇に置いても、特に経済対策においては、高橋洋一が指摘するような「ショボい!とろこい!グダグダ岸田内閣」であってはいけないはずです。大規模で、素早い経済対策が必要なはずです。

そもそも給付金における所得制限は事前に行うのは不味く、あるとしても課税所得にして事後課税が筋です。そうすることにより、給付を素早くできます。しかも、事前所得制限で世帯主所得基準にしたのは間抜けと言わざるを得ません。

これでは昨年岸田政調会長が持ちだした給付金の愚を繰り返していると言わざるを得ません。昨年は当時の安倍総理がひっくり返して全世帯一律にしました。どうして同じ間違いを繰り返すのか本当に理解できません。

「聞く力」をキャッチフレーズに掲げる岸田文雄総理が「文藝春秋」のインタビューに応じ、同誌11月号に掲載された財務事務次官・矢野康治氏の論文「 財務次官、モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』 」について、「いろんな議論があっていい」と言及しました。 

巨額の財政出動を求める安倍晋三元総理や高市早苗政調会長らが矢野次官の主張に猛反発し、更迭を求める声も上がる中、岸田総理は矢野次官の処分は「全く考えていません」と明言しました。

財務事務次官・矢野康治氏

このままだと、岸田首相は今後のコロナ経済対策のための補正予算も「ショボい!とろこい!グダグダ」を繰り返すのは必定であると考えられます。

そうなれば、経済の回復も遅れて、岸田政権の支持率はかなり落ち込むことが考えられます。これでは、来年夏の参院選は岸田政権にとってかなり厳しいものになるでしょう。

そうなると、維新や国民民主党が躍進することになるでしょう。立民はさらに凋落するかもしれません。それどころか、維新、国民の躍進で、自民と公明の連立解消という動きができるかもしれません。

それとともに、岸田総理では参院選は戦えないとして自民党内で岸田おろしがはじまり、再度総裁選ということになりかねません。これでは、古賀誠氏の発言からうかがえるように、岸田氏に今後総理になる目はでることなく、今年出馬していないかったほうが良かったということになりかねません。政治の世界は一寸先は闇です。

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2021年11月16日火曜日

インフレがトランプ氏の返り咲きもたらす可能性-サマーズ氏が警告―【私の論評】2024年の米大統領選挙でトランプ氏が返り咲くか、大きな影響力を行使するのは間違いない情勢に(゚д゚)!

インフレがトランプ氏の返り咲きもたらす可能性-サマーズ氏が警告

ローレンス・サマーズ氏

ブルームバーグ): サマーズ元米財務長官は15日、過度なインフレへの対処に失敗すればトランプ前米大統領の返り咲きをもたらす可能性があると警告した。

1999年から2001年まで財務長官を務めたサマーズ氏は、「過度のインフレとそれが制御されていないという感覚が、リチャード・ニクソンロナルド・レーガンの当選を後押しした。ドナルド・トランプ氏が権力を取り戻すリスクもある」とした。同氏はブルームバーグへの寄稿者でもある。

一連のツイートは以下の通り。

原題:Larry Summers Says Inflation Risks Bringing Trump Back to Power(抜粋)

この記事の詳細は以下のリンクを御覧ください。


【私の論評】2024年の米大統領選挙でトランプ氏が返り咲くか、大きな影響力を行使するのは間違いない情勢に(゚д゚)!

ローレンス・サマーズ氏とはどのような人物なのか、Wikipediaから一部を引用します。
1982年から1983年にかけてロナルド・レーガン政権の大統領経済諮問委員会スタッフを務めた。また1988年アメリカ合衆国大統領選挙では民主党のマイケル・デュカキス候補の経済アドバイザーとなった。1991年にハーバード大学教授を辞任し、世界銀行上級副総裁(世界銀行チーフエコノミスト)に就任する。 
1993年にビル・クリントン政権が成立すると財務省に移って財務次官を務め、また1995年に財務副長官も務めた。日本でも榊原英資との円高是正の協調介入で知られている。 
1999年7月にロバート・ルービンの辞任に伴い、後任の財務長官に就任する。アメリカ合衆国財務長官として国内の経済・財政政策や日本などの対外経済関係と通貨危機などの国際経済を担当した。

詳細を知りたいかたは、 Wikipediaをご覧になってください。上の記述をみれば、サマーズ氏は政治的には民主党の立場から、そうして経済サイドからトランプ氏の大統領の復帰がありえることを示唆していることがわかります。

トランプ氏の大統領復帰がありえることは、以前このブログでも指摘したことがあります。

トランプ氏が独自SNS立ち上げ、合併相手のSPAC350%超急騰―【私の論評】2024年に、大統領に返り咲くこともあり得るトランプ氏(゚д゚)!


この記事では、トランプ氏が独自SNS立ち上げることなどを掲載しました。詳細はこの記事をご覧いただくものとして以下に一部を引用します。

ラスムセン社が先月下旬(9月下旬)に実施した世論調査によると、仮に今、大統領選が行われた場合、トランプ氏に投票するとした人が51%だったのに対し、バイデン氏は41%。民主党支持者の約5人に1人がトランプ氏に投票するとしました。
世論調査専門家のジョン・ゾグビー氏は、10ポイント差という結果は実態よりも「少し大きい」との見解を示しつつも、「就任からわずか9カ月で、(バイデン氏への)投票に後悔している人が多くいる」と指摘しています。

 以上のことのほかにも、トランプ氏が有利になりつつ報道もいくつかあります。

サマー・ザーボス(中央)

マンハッタン地区判事は12日夜、「アプレンティス」の元出演者であるサマー・ザーボスが主張を退けたのを受け、ドナルド・トランプ前大統領に対する名誉棄損訴訟を取り下げました。

棄却によってトランプは宣誓証言に出席する必要がなくなくなりました。

ニューヨーク・ポストによるとザーボスは、2007年の「アプレンティス」出演時に、自分の意思に反してトランプが自分の体を触りキスをしたとして2016年に訴えていました。

裁判官は訴訟を確定力のある決定として棄却し、彼女が再度訴えることはできなくなりました。

ところがこれだけが12日夜のトランプの法的勝利ではありませんでした。別のニューヨーク裁判官は、前大統領の関わる別の訴訟を棄却しました。こちらはトランプの元顧問弁護士・マイケル・コーエンが過去の弁護士費用のことで訴えていたものでした。

トランプ・オーガニゼーションの広報担当者は、コーエンの訴訟の棄却を称賛し、コーエンは前大統領との関係を利用して私腹を肥やそうとしていると非難しました。

12日には、他にもトランプ氏にとって有利なことが起きました。

ワシントン・ポスト紙は12日、スティール文書に関する2つの記事の一部を削除・訂正したと報告した。同紙は「記事のそうした要素の正確さをもはや堅持できない」と判断しました。同紙は、「ベラルーシ系米国人ビジネスマンを『スティール文書』の主要情報源として特定した」、2017年3月2019年2月に発表の「2つの記事の大部分を訂正・削除するという異例の措置を取った」のです。

2016年初め、米共和党の反トランプ勢力が関連する調査会社「フュージョンGPS」は、元スパイのスティール氏に対し、トランプ氏とロシアとのつながりについて調査を委託しました。

こちらが、怪しい調査書の一部。バズフィードが一部伏せ字で全文書を公開した

スティール氏は海外での情報活動をする「MI6」にかつて勤務しており、ロシア事情に詳しいです。同氏の会社「オービス・ビジネス・インテリジェンス」が、早速調査を開始しました。

当初は共和党内の反トランプ勢力が資金を提供していたものの、予備選挙が終わりトランプ氏が大統領選の共和党候補となると、ある民主党支持者が調査資金を出すようになった。つまり、反トランプ派の要請による調査報告書ということです。

報道によると、スティール氏が作成したとされる文書には、ロシア情報当局がトランプ氏に対する恐喝材料となるような事業関係の情報と、モスクワのホテルで複数の売春婦といる様子の映像を所有していると書かれていました。

この「スティール文書」は以前から、フェイクだとされていましたが、今回のワシントン・ポスト紙のスティール文書に関する2つの記事の一部を削除・訂正により、フェイクであることが確定したと言って良いです。

12日だけでも、トランプ氏に有利な展開が3つもあり、15日にはサマーズ氏が、民主党支持の立場から、トランプ氏の返り咲きもたらす可能性を指摘しているのです。

これらを見ると、2024年の大統領選挙でトランプ氏が返り咲くか、大統領選に大きな影響力を持つのは間違い情勢になってきたといえます。

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2021年11月15日月曜日

「北京証券取引所」が開業 中国本土で3カ所目―【私の論評】独立した金融緩和を実施できない中国が何をしても、国全体としては何も変わらない(゚д゚)!

「北京証券取引所」が開業 中国本土で3カ所目


  中国本土で3カ所目となる北京の証券取引所が15日に開業しました。

 午前に取引を始めた北京証券取引所には、現時点で81銘柄が登録を完了しています。

 中国本土の証券取引所としては上海、深センに続く3カ所目で設立にあたり、習近平国家主席は「革新的な中小企業の主要な陣地を作る」と強調していました。

 投資家:「新エネルギーや環境保護関連の企業に興味を持っている」

 アメリカとの対立が続くなか、先進的な中小企業が国内で資金を確保できる体制を強化する狙いもあるとみられます。

【私の論評】独立した金融緩和を実施できない中国が何をしても、国全体としては何も変わらない(゚д゚)!

中国共産党政権は企業の事業運営への関与に加えて、金融市場への介入もより重視するでしょう。北京証券市場の開設はその一環と見るべきでしょう。

独禁法などを理由とする企業への圧力強化によって海外投資家は中国株へのリスク回避姿勢を強め、中国株式市場は不安定化しやすいです。それが、A株市場(上海・深センの株式市場の種別)で80%程度を占める個人投資家をはじめ、中国の社会心理に与える影響は軽視できないです。株価の下落は「負の資産効果」を及ぼし、中国の社会心理を不安定化させることになります。

その影響を抑えるために、「国家隊」と呼ばれる政府系機関投資家による本土株(上海・深セン市場)の買い支えは増える可能性があります。在来分野での雇用維持のためにインフラ投資も強化されるでしょう。

共産党政権は中小企業への資金繰り支援も重視しています。つまり、企業の事業運営、資産価格、および経済政策の三つの点から共産党政権による経済と社会への統制は強化されるでしょう。それは短期的に中国経済を下支えする可能性があります。そうした見方から、中国株への投資を重視する投資家はいます。

しかし、長期視点で中国経済の展開を考えると、経済全体での資本効率性が低下する中で、経済と社会への統制強化が人々のアニマルスピリットを高め、イノベーションを支えるかは見通しにくいです。

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中国経済では生産年齢人口の減少、不動産バブルの膨張、経済格差による社会心理の不安定化、コロナ禍による人々の予備的動機の高まりといった課題も増えています。また、半導体製造技術などの先端分野に加えて人権問題でも米中の対立は先鋭化する可能性が高いです。

どこかのタイミングで中国の債務問題や社会心理の悪化が株価の調整リスクを高め、本土からの資金流出圧力が高まる可能性があります。中国人民銀行が「デジタル人民元」の実用を目指しているのは、中長期的な経済への不安が高まっているからでしょう。

北京証券取引所の設立は、中国の金融監督強化の一環としてみるべきでしょう。中国の場合、大手銀行20行で約7割のシェアを持っています。信用情報の実質国有化、デジタル人民元の直接決済などを考えると、人民銀行が直接企業個人向けの金融を行う形になるかもしれません。銀行は単なる取次会社化する。その上で全て計画経済化してしまうつもりかもしれません。

ただ、いくら北京証券取引所などの金融機関を設立しようとも、政府が金融監視をしようと、中国の金融政策には根本的問題があります。結論からいうと、現在の中国人民銀行(中国の中央銀行、日本の日銀にあたる)は独立した金融政策がとれないのです。

先進国ではマクロ経済政策として財政政策と金融政策がありますが、両者の関係を示すものとして、ノーベル経済学賞の受賞者であるロバート・マンデル教授によるマンデル・フレミング理論があります。

経済学の教科書等では「固定相場制では金融政策が無効で財政政策が有効」「変動相場制では金融政策が有効で財政政策無効」と単純化されていますが、その真意は、変動相場制では金融政策を十分緩和していないと、財政政策の効果が阻害されるという意味です。つまり、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先する方が、マクロ経済政策は効果的になるのです。

これを発展させたものとして、国際金融のトリレンマ(三すくみ)があります。この結論をざっくりいうと、(1)自由な資本移動(2)固定相場制(3)独立した金融政策-の全てを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べないというものです。


これらの理論から、先進国は2つのタイプに分かれます。1つは日本や米国のような変動相場制です。自由な資本移動は必須なので、固定相場制をとるか独立した金融政策をとるかの選択になりますが、金融政策を選択し、固定相場制を放棄となります。

もう1つはユーロ圏のように域内は固定相場制で、域外に対して変動相場制というタイプです。自由な資本移動は必要ですが域内では固定相場制のメリットを生かし、独立した金融政策を放棄します。域外に対しては変動相場制なので、域内を1つの国と思えば、やはり変動相場制ともいえます。

中国は、そうした先進国タイプになれません。共産党による一党独裁の社会主義であるので、自由な資本移動は基本的に採用できません。例えば土地など生産手段は国有が社会主義の建前です。中国の社会主義では、外資が中国国内に完全な民間会社を持つことができません。中国に出資しても、中国政府の息のかかった中国企業との合弁までで、外資が会社の支配権を持つことはありません。

一方、先進国は、これまでのところ、基本的に民主主義国家です。これは、自由な政治体制がなければ自由な経済体制が作れず、その結果としての成長がないからです。

もっとも、ある程度中国への投資は中国政府としても必要なので、政府に管理されているとはいえ、完全に資本移動を禁止できません。完全な資本移動禁止なら固定相場制と独立した金融政策を採用できるのですが、そうではないので、固定相場制を優先するために、金融政策を放棄せざるを得ないのです。

要するに、固定相場制を優先しつつ、ある程度の資本移動があると、金融政策によるマネー調整を固定相場の維持に合わせる必要が生じるため、独立した金融政策が行えなくなります。そのため、中国は量的緩和を使えないのです。

このような状況にある中国が、北京証券取引所を設立しようが、金融監督を強化しようが、独立した金融政策が行えないのですから、結局無意味なのです。

北京証券取引所

先進的な中小企業が国内で資金を確保できる体制を整えたつもりであっても、結局金融政策によってマネーストックを思い通りに増やすことができないですから、結局先進的な中小企業が国内で資金を確保できるようにすれば、国内で他の産業などを犠牲にして、そこからお金を調達するしかないのです。

そうなると、先進的な中小企業に様々な手当をして、伸ばすことができたにしても、他の産業が駄目になり、国全体ではマネーストックが増えないのは無論のこと、経済発展はできないのです。

この八方塞がりの状況を打開するためには、中国共産党が完全な資本移動禁止をするか、固定相場制をやめるしかないのですが、それに中国共産党は気づいているのか、気づかないのか、現状でも八方塞がりの状況を続けているというのが現状です。

この状況について、何やら中国も日本のバブル崩壊後の状況に似てきたと指摘する識者もいるようですが、これは全くおかしな議論です。

日本のバブル崩壊は、当時一般物価は上昇していないにもかかわらず、株価がかなり上昇したり、土地価格が上昇していたのを日銀が一般物価が上昇していると勘違いして、金融引締に走ったことが原因です。それでも景気が落ちこめば、すぐに緩和して景気を立て直すことができました。

にもかかかわらず、その後も日銀は金融引締を続けたために、「失われた20年」という経済の落ち込みを体験することになったのです。緩和をしようと思えばできたのです。

ただ、中国の場合はバブル崩壊しても、金融緩和できないのです。日本も中国も「バブル崩壊」という表に出てくる事象は似ていますが、これらは全く似て非なるものなのです。

日本は安倍晋三氏が総理に就任してから、金融緩和に転じましたが、二度も消費税をあげることになり、その後のコロナ禍もあり、未だデフレから完全に抜けきっていない状態ですが、雇用はかなり回復しましたし、コロナ禍でも先進国中で、失業率はもっと低い状況にありました。

金融緩和できない中国は北京証券所を開設したにせよ、政府が金融監督を強化しても、今後経済が落ち込むのは目に見えています。

中国共産党からみれば、日銀がやろうと思えばすぐに、そうし大規模に金融緩和できる日本の状況は、さぞかし羨ましいでしょう。

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2021年11月14日日曜日

習近平熱望の「歴史決議」、党内抵抗で毛沢東・鄧小平と並び立てず―【私の論評】今回の6中全会でも、習近平は独裁という野望の成就のため未だ権力掌握の途上にあることが明らかに(゚д゚)!

この実績では無理筋、だから台湾併合

中国共産党創建100年を記念する祝賀大会で演説し、拳を突き上げる習近平国家主席

この記事から一部を引用します。

昨日閉幕の6中全会のコミュニケによって披露された「歴史決議」の骨子であるが、ここで注目すべき1つたいへん重要なポイントは、「歴史決議」は今までの中国共産党の歴史を「6段階」に分けて総括し、その中では毛沢東・鄧小平・江沢民・胡錦濤・習近平という5人の指導者を同列に並べて評価した点である。

つまり、当初からの大方の予想と違って、この「歴史決議」においては、習近平氏が毛沢東・鄧小平と並んだのではなく、むしろその前々任と前任の江沢民・胡錦濤両氏と並んで、この2人の先輩指導者とほぼ同格の扱いを受けている。習近平は結局、この2人の先輩を飛び越えて毛沢東・鄧小平と直接に繋がって肩を並べることができなかったのである。

習近平氏が今回の「歴史決議」を採択させた狙いがもし、中国共産党史上二大指導者の毛沢東・鄧小平と並ぶ自分自身の地位の確立にあるのであれば、少なくとも6中全会コミュニケの内容を見る限りにおいては、彼の企みは半ば失敗に終わったと思わざるを得ない。今の習近平氏はせいぜい、先輩の江沢民・胡錦濤とは同格の「一指導者」であって、それ以上でもなければそれ以下でもない。

もう1つ注目すべきなのは、中国共産党が今後において「堅持すべき」政策理念として、上述の6中全会コミュニケは毛沢東思想、鄧小平理論、江沢民政権一枚看板の「三つの代表の思想」、胡錦濤政権の政策理念である「科学的発展観」と並んで、「習近平思想」を持ち出した点である。つまり、思想理念の面においても、「習近平思想」は上述の4名の指導者の「思想」や「理念」と並列しているので、それらを超えた特別の地位を与えられたわけでもない。

さらに言えば、6中全会コミュニケは習近平氏の「党の核心」としての地位を強調したものの、習近平氏個人に対する賛美の言葉は一切出ていない。毛沢東時代にあったような「習近平万歳」とは程遠い内容である。

この記事の詳細は、以下のリンクから御覧ください。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89293?imp=0

【私の論評】今回の6中全会でも、習近平は独裁という野望の成就のため未だ権力掌握の途上にあることが明らかに(゚д゚)!

私自身は、前から習近平の野望がかなったときには、目印があることを以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国で進められる「習近平思想」の確立と普及―【私の論評】党規約に「習近平思想」と平易に記載されたとき、習近平の野望は成就する(゚д゚)!

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。これは、9月16日の記事です。

2016年の党大会では、長たらしい「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という文言が党規約に組み込まれました。日本のマスコミなどは、これをもって習近平の独裁体制が定着したかのような報道ぶりでしたが、誤りです。

この記事では、これはむしろ習近平が独裁体制掌握の途上を示すものであることを主張しました。以下にその部分をこの記事から引用します。
党規約入は、習近平氏にとって大成功でしたが、①曖昧で長い思想名、②党主席制復活(習近平は国家主席)に失敗、③腹心王岐山の留任に失敗ということで、まさに2016年の党大会は、習近平にとては不本意なものであったに違いありません。

このときの失敗を取り返し、党規約に盛り込まれた「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を「習近平思想」に変えてしまうことが、習近平の野望のようです。

それを目指して、「習近平思想」なるものを小学校から必修科目として、「習近平氏の思想」が導入されたのです。小学校から高校まで教本は4冊あるとされ、大学や社会人になっても中国共産党の思想教育は継続されるようです。

これは、一つの目印になると思います。もし、党規約の中の習近平の思想が「習近平思想」と書かれるようになれば、そうして習近平が現役のうちにそうなれば、この野望は成功したとみなせるでしょう。そうして、習近平の独裁体制が成立したとみるべきです。

いくら「習近平思想」を学校などで普及させたようにみえても、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」のままであれば、成功したとはいえないでしょう。そうして、習近平の独裁体制は成立していないとみるべきです。

今後どうなるか、注目したいです。特に、今後の党大会で、どうなるのかが、見ものです。
そうして今回の6中全会でも、「習近平思想」が党規約に盛り込まれることはありませんでした。これからみれば、習近平の野望は未だ獲得の過程にあると結論づけることでができると思います。

朝日新聞デジタル版では、2017年10月15日に以下の記事を掲載しています。
習氏の名冠した政治理念、党規約に明記へ 中国共産党
そうして、この記事では以下のような表が掲載されています。


ただ、私自身は、「習近平思想」という文言が、党規約に盛り込まれれば、習近平の野望は成就したものとみなすべきで、行動指針にもすぐにに盛り込まれことになると思います。

結局、今回の6中全会でも、習近平は独裁という野望の成就のために、未だ権力掌握の途上にあることが明らかにされたと思います。

上の石平氏の記事の結論において「問題は、習近平氏が一体どこで、どうやってそれ(歴史的偉業)を作るのかであるが、考えてみれば1つしかない。台湾を併合してみせることだ。それこそは、毛沢東も鄧小平も成し遂げることのできなかった、中国共産党にとっての「偉業」なのである」としています

これを持って中国による「台湾侵攻」を既成事実のように煽るメディアもありますが、昨日もこのブログで述べたように、海戦能力に劣る中国が台湾に侵攻した場合、海戦能力特に(ASW:対潜水艦戦闘能力)にはるかにまさる日米等と海戦になるのは明らかで、そうなると中国の大敗は免れません。無論中国側に多数の犠牲者もでます。

多くのマスコミなどは台湾有事の戦いは時代遅れな空母打撃軍による戦いをイメージしている

そうなると、「歴史的偉業」どころか、「歴史的汚点」ということになり、習近平は野望を成就するどころか、失脚することになるでしょう。中国共産党の権威は一気に国内外で崩れることになります。

そのような愚かな真似を習近平はしないでしょう。ただし、米国等は習近平がそれをすれば、速く決着がつくので、してほしいと望んでいるかもしれません。

しかし、習近平はそれほどまでは愚かではないようです。台湾に軍事侵攻するのではなく、昨日も述べたように、中国の常套手段である、例えば中米のホンジュラスのような、経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱い国や地域に工作して浸透し多くの国々を中国の意のままに動かし、国際会議等で、中国に親和的な方向に票を投じさせることにより、台湾を孤立させるようなやり方をさらに強化すると考えられらます。

そうして、台湾を国際社会から孤立させ、最終的に台湾を屈服させ、組み入れるというやり方を、強化させる方向に打って出るでしょう。

日本も含めて、国際社会は、こうした動きを封じるように互いに協力し合うべきです。

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2021年11月13日土曜日

ホンジュラス大統領が台湾訪問 蔡英文総統と会談―【私の論評】経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱い国や地域に浸透し意のままに動かそうとするのが中国の常套手段(゚д゚)!

ホンジュラス大統領が台湾訪問 蔡英文総統と会談

13日、台北の台湾総統府で会談した蔡英文総統(右)とホンジュラスのエルナンデス大統領

 中米ホンジュラスの大統領が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談しました。中国と台湾の外交上の綱引きは中米の政治にも影響を与えています。  13日午前、台湾と正式に国交を結んでいる中米ホンジュラスのエルナンデス大統領が台湾の蔡英文総統と会談し、これまでの交流の成果を称え合いました。

  ホンジュラスでは今月28日に大統領選挙が行われますが、野党の有力候補の一人が「当選した場合、台湾と断交し、即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と主張していて、台湾は強い危機感を示しています。 

 エルナンデス大統領は今回、立候補していませんが、「大統領選挙の結果、国民が台湾との交流を選択することを願う」と後継候補への支持を表明しています。

【私の論評】経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱い国や地域に浸透し意のままに動かそうとするのが中国の常套手段(゚д゚)!

ホンジュラスの位置関係を以下に示します。


ホンジュラスは北米大陸と南米大陸を結ぶ中米地峡に位置する日本の約3分の1ほど、人口は990.5万 (2020年)の小さな国で(周辺国はグアテマラ、エルサルバドル、ニカラグア)、この地域の最も貧しい国のひとつに数えられています。国を支える主要産業(主にコーヒーとバナナ)が脆弱な上、数世紀に渡って展開された欧州列強による植民地支配に端を発する搾取的社会と文化の形成により激しい貧富の格差が存在し、多くの国民が深刻な貧困に喘いでいます。

また汚職による政治腐敗が著しく政府はその責務を果たさず、更に麻薬犯罪組織の暗躍と警察組織の退廃により極めて治安が悪く、日々暴力と犯罪が絶えません。社会福祉はほとんど提供されず医療レベルも極めて低く、また教育システムも必要な機能を果たしていません。

これらの現実を生きるホンジュラス国民は、明日への希望を持つことが極めて困難です。

2017年11月26日にホンジュラス大統領選挙が実施され、現職で中道右派のフアン・エルナンデス大統領が事実上再選されました。再選を禁じる憲法の無効で臨んだ選挙で、最終的には国民の信任を得られたかたちとなったものの、薄氷の勝利でしたた。同国は中米地域においても殺人など凶悪犯罪が多く、治安維持や貧困解決が政策課題の中心となっていました。

中南米カリブ海地域には台湾と外交関係を持つ15カ国中9カ国が集中。長年、中台の「外交戦争」の最前線となってきた。台湾は最近、欧州連合(EU)欧州議会の代表団や米議員団の訪問を相次いで受け入れており、台湾と中国との駆け引きが活発化しています。


ホンジュラス大統領選で最有力候補に浮上した最大野党LIBREのシオマラ・カストロ氏は、当選した場合「即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と繰り返す。ホンジュラスは台湾と外交関係を維持しているが、カストロ氏は中国に乗り換える方針です。

大統領選は当初、首都の市長で与党・国民党のナスリー・アスフラ氏が先行し、テレビ司会者のサルバドル・ナスララ氏、カストロ氏が追う構図だとされた。だが、ナスララ氏が出馬を取りやめてカストロ氏を支持すると表明し、同氏とアスフラ氏の一騎打ちの様相になりました。

ホンジュラスの民間団体CESPADの直近の世論調査で支持率は、カストロ氏が38%に伸び、アスフラ氏の21%を引き離しました。

断交を明言するカストロ氏の伸長に、台湾は強い危機感を示しました。台湾とホンジュラスは21年、外交関係の樹立から80年を迎えました。台湾外交部(外務省)はカストロ氏の発言について「中国は私たちの外交関係が不安定だとの誤った印象を与えるため民主的な選挙を利用している」と訴え、カストロ氏の背後に中国が存在すると示唆しました。

台湾は、こうした中国の工作に手を拱いているばかりではありません。

ラテンアメリカ及びカリブ海地域の親台湾派議員たちによる国際的な交流プラットフォーム「フォルモサクラブ」は26日午前、オンライン方式で初の合同会員大会を開催しました。この大会では、台湾が「専門、実務、貢献」を原則に、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)、国際刑事警察機構(インターポール)、環太平洋経済連携協定(CPTPP)等の国際組織に参与することの必要性を国際社会が直視し、また支持するよう呼びかける共同声明を採択しました。

親台湾派議員たちによる国際的な交流プラットフォーム「フォルモサクラブ」は2019年10月、まずヨーロッパで誕生しました。同年12月には南米諸国とメキシコが参加する中南米版「フォルモサクラブ」が発足し、2020年11月には中南米の親台湾派議員を取り込み、ラテンアメリカ版「フォルモサクラブ」に名称を変更しました。

今年5月にはカリブ海地域でも「フォルモサクラブ」が誕生。ラテンアメリカとカリブ海地域の「フォルモサクラブ」には現在、合計21か国、300人近いメンバーが参加しています。

それにしても、なぜ中南米の小さな国をめぐって台湾と中国の駆け引きが活発に行われるのでしょうか。

国連における国際会議は、国の大小、強弱や委員の多少に関係なく、一国に一票の投票権を与える一国一票主義で運用されているということがあるからです。人口が1万6,000人と、国連加盟国.の中で最も小さいパラオも、1票の投票権があります。

ホンジュラスのような小さな国は経済・軍時的にも弱くさらに市民社会も比較的弱い傾向があります。中国にとってはこれらの国々は介入しやすく、こうした国に介入して、国連における国際会議において中国の意向に沿った一票を投じるようにさせることを狙っているのです。

たとえ小さくても、中国に親和的な国が多ければ、国際会議を中国にとって有利に運ばせることができます。

そうして、国際会議や国際機構から台湾を排除することができます。このようなことをあらゆる局面で実行し、台湾を自ら中国に帰属するように仕向けることが、中国の最終目標です。

巷では、中国の軍事力、特に海戦能力を過大評価し、中国が台湾にすぐにも侵攻するように煽る論調も多いですが、このブログでも何度か述べてきたように、日米等に海戦能力、特にその中でもASW(対潜戦闘能力)に著しく劣る中国は、日米には海戦で勝つことはできません。

海戦ということに限っていえば、日本単独でも、戦えば負けます。日本が単独で、台湾を潜水艦隊で包囲してしまえば、中国の艦艇はことごとく撃沈され、台湾に侵攻できません。尖閣も同じことです。尖閣を日本に潜水艦隊が包囲してしまえば、中国は手出しできません。

無論米軍単独でも同じことですし、もし日米が手を組めば、中国には全く歯がたちません。このようなことを言うと、「そんなはずはない」と考える人は、中国のブロパガンダに相当影響を受けていると言わざるを得ません。

もし、中国が台湾に侵攻できる能力があるなら、中南米のホンジュラスを取り込もうというような、回りくどいことはせず、すぐに台湾に侵攻するはずです。そのつもりなら、わざわざ台湾領海、領空等を侵犯するなどのことは一切せず、ある日突然侵攻するはずです。チベット、ウイグル侵攻はまさにそのように実施されました。

中国は、軍事力では勝てる見込みがないから、中南米諸国を取り込んだり、台湾等に示威行動をしたりするのです。

ただし、中国を決して侮るべきではありません。軍事力で到底勝ち目のない中国は、軍事力以外で何とか台湾を中国の意のままにしようと、様々な工作を行っています。中南米諸国工作もその一環です。

中国は中南米だけを取り込もうとしているわけではありません。カンボジア等のインド太平洋地域や近隣の貧困国等の独立を一段と脅かしています。これらの国々は経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱く、中国が介入しやすいからです。それこそがインド太平洋地域における大きな危機です。

また、中国は小国だけではなく、先進国にも工作をしかけていることを忘れるべきではありません。たとえば、オーストラリア社会が様々な中国の浸透を受けていたことを忘れるべきではありません。

オーストラリアは、国としては先進国に分類されていて、経済・軍事的にも弱くはなく、市民社会も決して弱いとはいえません。国全体としては、決して弱くはないのですが、地域としては、これらが脆弱な地域もありますし、様々な組織の中には弱いものもありますし、社会階層の中には弱いところもあります。そうした弱いところを中国につけこまれて浸透されてしまったのです。

日本も例外ではありません。北海道をはじめとする、全国各地での中国による土地の買い占めなどの動きがあります。

そうして、つい最近東京都武蔵野市は、在留期間などの要件を付けずに外国人に住民投票の投票権を与える住民投票条例案を、19日開会の市議会に提案する方針を固めました。同条例案には、外国人と日本人を区別せずに投票権を与える内容が盛り込まれており、全国的にも極めて珍しい。「実質的な外国人参政権につながる」などと市民の反対の声は根強いですが、松下玲子市長にとっては10月の市長選で公約に掲げた肝いり施策の一つです。

もし、この条例が施行され、さらには「外国人参政権」が認められれば、中国は武蔵野市に大勢の中国人を送り込むとともに、地域住民も取り込み、中国人議員が数多く誕生するどころか、中国人市長が誕生することになるかもしれません。それが、日本中の地方で起これば、日本は中国の意のままに、操られることになります。

先程ものべたように、経済・軍時的にも弱く、市民社会も比較的弱い国や地域に工作して浸透し中国の意のままに動かそうとするのが中国の常套手段です。

中国の軍事力をひたすら煽るではなく、こうした中国の常套手段に対抗する術を日本も持つべきです。

安倍晋三元首相が、首相経験者として初めて台湾を訪問する計画が持ち上がっています。安倍氏は超党派で作る親台議連「日華議員懇談会」の顧問を務めており、その動きは、中国との距離が近いとされる岸田文雄首相や林芳正外相、党内では茂木幹事長へのけん制と指摘する声も少なくないです。


岸田首相は、どのようなつもりで、これらの人事を決めたのかわかりませんが、外相、幹事長ともに中国との距離が近いとされる人を任命するのは、明らかにバランスを欠いています。これは、中国に誤ったメッセージを与えかねません。

バランスを保つ意味でも、安倍元総理は台湾訪問を考えたのでしょう。私としては、安倍元総理に是非とも台湾を訪問していただき、台湾ならびに日本が中国の浸透を防ぐための新たな仕組みを提唱していただきたいと思います。

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