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2012年9月8日土曜日

【きょうの名言】お涙ちょうだい映画で世の中良くならない―【私の論評】虚構と現実は異なる!!ましてや、ゲームや映画・テレビと現実は異なる!!

【きょうの名言】お涙ちょうだい映画で世の中良くならない:


映像作品やゲームなどの中で、暴力シーンなど残虐なシーンが内容に含まれているものが、往々にして問題にされることがある。現実への悪影響がどの程度あるのか、実際のところわからない。しかし、まったく別の見方がある。
@kouno0521さんがツイートする。

「北野武が記者に『暴力映画の影響で実際に暴力行為に出る人間も居ると思いますが、その点についてどう思われますか?』と聞かれた時に『じゃあ、何でおなみだ頂戴の良い話だらけなのに、一向に世の中は良くならねえんだよ』と聞き返したそうです」

北野武監督らしいと言えばそうだが、まったくその通り。ハッピーエンドの映画はこの世にあふれているにも関わらず、なぜみんなが幸せになることができないのか? それは、説明するまでもなく、映画と現実の世界は、全然違う世界だからだ。

いい加減、同列視はやめてはどうか。

【私の論評】虚構と現実は異なる!!ましてや、ゲームや映画・テレビと現実は異なる!!
まさしく、北野武氏のいわれることも、このツイートの主も、正しいことを言っていると思います。そもそも、映画やゲームは、現実ではありません。虚構の世界です。暴力的なゲームなゲームは、犯罪数を減少させるという研究レポートもあるくらいで、このブログにも掲載したことがあります。つい、先日北野武が出演していた"Outrage"を見たばかりでしたので、本日はこの話題を掲載することにしました。



『アウトレイジ』(OUTRAGE)は、2010年6月12日に公開された日本映画。北野武の15本目の監督作品。丸の内ルーブル、渋谷東急ほか全国東急系にて公開されました。

キャッチコピーは「全員悪人」。

過激なバイオレンスシーンや拷問シーンが数多く含まれるため、映倫でR15+指定を受けました。

この映画見ていない人ため、あらすじだけ掲載しておきます。
関東一円を支配する巨大暴力団・山王会の関内会長は、傘下の池元組が麻薬を扱う村瀬組と兄弟杯を交わして親密になっていることを快く思っていませんでした。そこで関内の右腕・加藤はこの2つの組を仲違いさせようと企て、池元に対して「村瀬を締めろ(軽い制裁を与えろ)」と無理な命令をします。兄弟分の村瀬に手を出せない池元は、配下の大友組に村瀬組を締めることを命令すします。池元の二枚舌、山王会の思惑に翻弄されながらも、大友組は村瀬組を締めることに成功し、村瀬組は解散しました。 
池元の行動に不愉快を覚えつつ、大友は村瀬のシマを事実上継承し、大使館の闇カジノで成功を収めます。一方、村瀬が隠れて麻薬を売っていることが発覚し、池元に唆された大友は村瀬を殺害します。ところが、このことを口実に池元は大友に破門を言い渡し、大友は怒りを露わにします。大友は復帰のため、関内の元を訪れ許しを請いますが、逆に関内は池元の殺害を唆します。そこで大友は悪びれず闇カジノを訪れていた池元を殺害します。闇カジノを狙っていた関内は、今度は池元組若頭の小沢に、組を継ぎたければ親の仇を討てと煽り、大友組と池元組の抗争を仕掛けてます。本家の手助けも得た小沢は、次々と大友組の組員を殺害し、彼らを追い詰めていきます。
下にキャストをあげておきます。以下のキャストを見れば、普段は悪役などやっていない人でも、悪役をやっいることに驚かれることでしょう。
大友(大友組組長) - ビートたけし
水野(大友組若頭) - 椎名桔平
石原(大友組組員) - 加瀬亮
片岡(刑事) - 小日向文世
関内(山王会会長) - 北村総一朗
岡崎(大友組組員) - 坂田聡
安倍(大友組組員) - 森永健司
上田(大友組組員) - 三浦誠己
江本(大友組組員) - 柄本時生
大友組組員 - 新田純一
大友組組員 - 渡来敏之
大友組組員 - 岩寺真志
大友組組員 - 小村裕次郎
大友組組員 - 大原研二
大友組組員 - 田崎敏路
村瀬組組員 - 内野智
村瀬組組員 - 鈴木雄一郎
ぼったくりBARの店員(村瀬組組員) - 瀧川英次
ぼったくりBARの店員(村瀬組組員) - 井澤崇行
ぼったくりBARの店員(村瀬組組員) - 金原泰成
佐山(村瀬組組員) - 芹沢礼多
小沢の手下 - 外川貴博
小沢の手下 - 江藤純
刑事 - 辻つとむ 
刑事 - 貴山侑哉 
ラーメン屋の客 - 太田浩介
ラーメン屋店長 - マキタスポーツ
ラーメン屋店員 - ケンタエリザベス3世
ジュン - しいなえいひ
ぼったくりBARのママ - こばやしあきこ
水野の女 - 渡辺奈緒子
歯科女医 - 中村純子
グバナン共和国在日大使館大使 - ハーシェル・ペッパース
飯塚(村瀬組組員) - 塚本高史
大友の女 - 板谷由夏
木村(村瀬組若頭) - 中野英雄
小沢(池元組若頭) - 杉本哲太
村瀬(村瀬組組長) - 石橋蓮司
池元(池元組組長) - 國村隼
加藤(山王会若頭) - 三浦友和
この映画、第63回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式参加しました。プレス限定上映会ではブーイングや退席者が出ましたが]、公式上映ではブーイングや退席者はでず、恒例である上映後のスタンディングオベーションのほかに、入場してきた北野監督に観客から長時間拍手が送られるという異例の歓迎を受けました。これは従来暴力中心映画をあまりノミネートしないカンヌ映画祭において、暴力表現に敏感なプレスに対し、一般客も含まれる公式上映では歓迎されたということを意味します。



私が、北野映画をみたのは、Borotherがはじめてでした。それから、あの話題になったHnabiもみました。この2作とも、暴力シーンは過激であるものの、Bortherに関しては、仲間に対する、Hnabiでは、妻や同僚・仲間に対するするそこはかとない、愛情が感じられました。愛情というか、思いやり、大義といったものを感じました。そうして、暴力シーンがあるからこそ、この大義が強調され、あるいみ人の心を打ったのだと思います。海外で高い評価を受けたのは、そのせいだと思います。



それと、北野映画に一環して表現される暴力なのですが、あれを見ていると、やはり、痛みを感じます。無論実際に痛いわけではありませんが、痛みを感じます。普段現実世界ではあり得ない、それこそ、シュール(非現実的、超現実的)な痛みを感じてしまいます。なぜ、感じるかといえば、やはり、昔人に殴られたり、殴られたりしたからだと思います。あるいは、言葉の暴力などでの痛みを感じてしまいます。そうして、少し年代が上の人たちは、本当の意味での飢えの感覚にもつながるものかもしれません。この痛みの感覚は、現実にはあり得ないようでありながら、映画のストーリーに奇妙な現実感を与えてることも否定できません。しかし、この奇妙な現実感を味わいながら、世界の現実を振り返ると、飢えや暴力は、この世界に蔓延している事実に戸惑いを覚えます。私達は、平和ニッポンにいて平和ボケしているのではと思ってしまいます。


飢えも暴力も世界に存在する現実だ!!
これらの映画を観ていると、現在の子供たちは、大人になってから私達と同じ感覚で見られるのかと、ふと疑念を持ってしまいます。なぜなら、現在は、家庭でも、学校でも、いわゆる体罰はないですし、暴力もいけないものとされ、子供によっては、親にも、学校の先生にも、他の子供たちからも、殴られたことも、殴ったこともなく育っている子供がいるからです。それに、本当の意味では、生まれてから、一度も飢えの感覚を味わっていないからです。しかし、ある程度大人になってから、こうした映画を大人と一緒にみて、大人がその意味を教えてあげれば、随分違うものと思います。

"Outrage"は、まさに、キャッチフレーズ通りに、「悪人」ばかりで、同僚などに対するそこはかとない、思いやりなどもない世界でした。まさに、暴力だけが支配する異様な世界でした。これを通して、北野監督はどのような世界を見せたかったのか、なかなか理解できないところがあります。


しかし、この映画に登場する人物達、確かに全員悪人なのですが、どんなに悪いことをしている人間でも、妙に憎めないところがありました。やはり、痛みを通して、超現実的な世界であるにもかかわらず、現実に存在する人間よりも、生き生きしていて、圧倒的存在感があり、奇妙な現実感があり、その人間たちが次々と死んでいくことから、人間というもののはかなさを描くことに成功しているからかもしれません。それこそ、いつ死ぬかわからいなのに、生きている間は、かなりの現実感があります。


とにかく、出演者三浦友和など含めて、普段は、悪役などしない人まで徹底して悪訳です。三浦友和がやっていた加藤(山王会若頭)は、北村総一朗がやっていた関内(山王会会長)を殺し、みずから会長になります。この映画では、最後にわざと逮捕され、刑務所に入って、殺されることを免れたかにも見えた、大友(ビートたけし)まで、刑務所で殺されてしまいます。

私は、これらの映画を見て、痛みを感じ、奇妙な現実感とでも呼べるような痛みの感覚を持てる人はある意味正常なのだと思います。『暴力映画の影響で実際に暴力行為に出る人間も居ると思いますが、その点についてどう思われますか?』と北野に聴くような記者などは、このような感覚を持てないのだと思います。

あまり痛みや、飢えなど、体に物理的な強い感覚を持ったことのない人は、ある意味では、かわいそうな存在かもしれません。こういう人達こそ、現実と映画の区別がつきにくいのかもしれません。

それらか、私自身は、人間の根源には、誰しもが暴力的な性向を持っていると思います。だから、"Outrage"の中に出てくる悪人達が、圧倒的な存在感があるように見えるだと思います。そうして、私は、人間は、誰でもそのようなものであることを認めるべきだと思います。無論、それを"Outrage"に出てくる悪人達のように、日常的に表に出すべきではありません。

しかし、出すべきときには出すべきと思います。たとえば、スポーツの時に、ここぞというとき踏ん貼らなければならないときとか、仕事上でも、ここ一番、アグレッシップにならなければならないときとか、無論、誰彼かまわず殴れといっているわけではありません。やるべきことに、力を注ぐときに、その力を使うという意味です。



これに似たようなことは、そういわれでみれば、以前このブログでも書いたことがあります。それは、あの、スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』について書いたときです。この記事を書いたときに、このブログのアバター(自分の写真)をこの映画の主人公アレックス(主演男優マルコム・マクドウェル)の写真を掲載していました。このブログ記事には、なぜその写真にしたかを以下のように綴っています。
この映画結局は人間にとって性への関心や暴力的な性格は根源的なものであり、これを全くなくしてしまえば人間ではなくなるというものだと思います。事実大昔、ロボトミーという暴力的あるいは性犯罪を頻繁に起こす精神疾患者に対して前頭葉を一部切り取るという手術の手法があり、実際に行われた事例がありました。しかし、手術を受けた患者は確かに大人しくはなるが全く無気力になってしまうので、今では行われていません。 
なぜ私がこの写真をアバターにしたかというと、仕事を行うにしても社会人として振舞うにしても、良い意味での攻撃性は重要であると思っているからです。こうした感情がなければ、パワフルに物事を進められないからです。人間は気を抜けばつい安逸な方向に流れがちです。そんな自分を戒め何事にも積極的にあたっていけるようにと願いを込めてこの写真をアバターにしました。この映画、ご覧になっていない方是非ご覧になって下さい。
人間は、根源的なもの失えば、人間ではなくなるということです。だからこそ、現実世界ではあり得ないような、"Outrage"などのような悪人たちを見ると、妙な存在感を感じるのかもしれません。

私は、このような映画あっても良いと思います。そもそも、現実と映画やゲームの世界は異なるからです。それにしても、たとえ、本当の痛みを感じなくても、このような映画を見さいに、痛みを感じるように子供たちを育てていくべきと思います。



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