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2018年6月20日水曜日

華為技術(ファウエイ)の「スマートシティ」システムに潜む妖怪―【私の論評】このままでは、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な独裁国家と成り果てる中国(゚д゚)!

華為技術(ファウエイ)の「スマートシティ」システムに潜む妖怪

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

平成30年(2018年)6月21日(木曜日)
         通巻第5729号  <前日発行>


中国の多くの地域でトラック運転手が一斉ストライキを敢行している

 日本ではまったく伝わらなかった。いや、中国の主要メディアも報道せず、ネットに流れたストライキのニュースは当局がさっさと削除した。だから中国の国民も大規模なトラック業者のストライキがあったことを知らない。

    中国ではトラック運転手が連絡を取り合い、拠点は安徽省の合肥と四川省の成都だったが、全国一斉のストライキとなり、波紋が広がった。

    これは6月8日の事件で、原因は「ウーバー」への不満が爆発したからである。

    何故か?

 ウーバーはタクシーの空車が近くにいれば、スマホで呼び出せる新しいネットシステムで、日本のように空車が多い国では普及しないが、中国で急成長した。その結果、バイク、レンタサイクルにも及び、ついにはトラック業界にも影響が拡がる。


 たとえば荷物がある。出入りのトラック輸送業者より、近くに空車のトラックがあれば、簡単に呼び出して輸送を頼める。つまりダンピングも起こり、業界の秩序と取引慣行までが攪乱される。

 悲鳴を挙げたトラック運転手たちが、ネットで連絡を取り合って一斉に同盟罷業を提案し。実際に未曾有のストライキが行われた。

 ところがネットを監視している全体主義国家の中国においては、「社会の安定」と「経済発展」が優先され、いかなるストライキも禁止されている。

 ただちに当局が介入し、弾圧し、指導者を逮捕する。ストライキ参加者も罰金刑か、あるいは解雇という悲運が待ち受けている。中国共産党というビッグブラザーが禁止していることに刃向かったからだ。

 こうした弾圧の先兵として、大活躍し、委細漏らさずに、その監視をおこなう装置がファウェイの通信機器と施設なのである。

 だから「スマートシティ」だ。「共産党独裁にとって安全な装置」を張り巡らせた功績がある。監視カメラなどでストライキ参加のトラックを特定し、顔面認識システムは、運転手の顔を割り出す。

 弾圧から逃れる手だては望み薄だろう。

 ▲ウーバー・ビジネスの殆どを中国共産党系企業が抑え込んだ

 トラックのウーバー・ビジネスは当初、ふたつの私企業が運営していた。
2017年四月に突如、ファンドが買収し、これら二社を合併させて「ムンバン」という会社に統合された。

 つまりこの合併は共産党系列ファンドが表向き実行したことになっているが、自転車のウーバーを買収した手口と同じであり、すべてのネットビジネスも国家の監視下におく措置である。

 国民に勝手な行動を取らせ、ストライキなど起これば、そのエネルギーは突然、反政府暴動に発展することになり、中国共産党は不安で仕方がないのである。

 独裁システムとは、つねに過剰な監視を行うものであり、嘗ての密告制度と寸毫の変化はない。新兵器を用い、ネットシステムさえも、独裁政治の武器化しておこうという思惑からなされているのである。

 かくてネットシステムは、中国においては中国共産党の安全のために酷使されるが、国民の安全のためではないことがわかった。

 中国ばかりか、ファウェイの通信機器は「スマートシティ・ソルーション・システム」と銘打たれて、ロシア、アンゴラ、ラオス、ベネズエラに輸出されている。

 西側は公務員の無駄を削減し、効率を上げるための「e政府」を謳っており、ドイツなどでは一部試験的にファウエイのシステムを導入しているが、米国とオーストラリアは、厳密にファウエイの通信設備、機器、システムの導入を禁止している。

【私の論評】このままでは、図体がでかいだけの、アジアの凡庸な独裁国家と成り果てる中国(゚д゚)!

このストライキは、かなりの大規模であり、空前絶後の規模だといわれていますが、確かに日本では報道されていません。中国国内のメディアもほとんど報道していないようです。

2018年6月10日、米華字メディア・多維新聞によると、安徽省や江西省、江蘇省、浙江省、貴州省、山東省、四川省、重慶市など、中国の多くの地域でトラック運転手が一斉ストライキを敢行しているそうです。

一斉ストを実施した目的は、当局による罰金徴収の多さや、通行料金、燃料費の高騰などへの抗議、政府と企業が結託していることへの不服申し立て、労働条件改善の要求などがあるといいます。

中国ではトラック運転手の多くが過積載しなければ赤字に陥ってしまう状況にあるにもかかわらず、交通警察や行政の道路管理部門は厳しい取り締まりを行っています。しかし、運転士たちには何の社会的保障もありません。

ストを始めたのは8日。トラック運転士たちは主要な国道や高速道路、パーキングなどに集まって全国のトラック3000万台に対してストへの参加を呼び掛けています。

中国政府はストに関する情報を封鎖。海外メディアやネット上の関連報道を排除するなどの対応を取っています。

さて、中国の監視システムが、テクノロジーの発展によって大きく進歩していることは、近年、メディアでも報道されるようになりました。中国の監視社会を支えるシステムについて、次の3つを取り上げたいです。

まず一つ目のシステムは、「信用中国(クレジット・チャイナ)」です。習近平政権が、百度(バイドゥ)の技術協力を得て、2015年に稼働を開始しました。


同システムは、個人情報に基づき、利用者がどれほど「信用」できるかを数値化しています。今月1日には、航空機や鉄道の利用を拒否された計169人のブラックリストを公開。一方で、信用が高ければ、中国当局から表彰される仕組みとなっています。

このシステムは、監視というネガティブな側面よりも、中国政府にとって望ましい人民をつくり出す方向に主眼を置いているのが特徴的です。

中国では、そうした信用力で人々をコントロールする考え方が広まっています。

その象徴が、アリババの関連会社である「芝麻信用」。同社がつくる信用度の指標と他社のサービスを連結することで、例えば、信用度が高ければ、優先的に予約できたり、金額の面で優遇されたりするサービスが始まっています。

二つ目は、「天網(スカイネット)」



これは、2012年に北京市から本格導入されたシステムであり、AIの監視カメラと犯罪者のデータをリンクさせ、「大衆監視」を効率的にしたものです。13億人の中から1人を特定するのに、約3秒しかかからないといいます。

中国の都市部には、2000万台を超える監視カメラが設置されているとされ、2020年までに、そのカバーエリアが全土に拡大されるとしています。

天網の監視画面

さらに香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、このシステムが、マレーシアの警察に提供されたと報じられており、監視網は、中国だけでなく、世界にまで広がりつつあるといいます。

三つ目は、インターネットを監視する「金盾(いわゆるグレートファイアウォール)」

中国は1993年に、情報化・電子政府化を目指す戦略を策定し、その中に「公安の情報化」を盛り込みました。このシステム開発には、多くの多国籍企業が協力。検索ワードやメールの送受信、人権活動、反政府活動などを「検閲」し、ネットのアクセスの自由を厳しく制限しています。


昨年、「くまのプーさん」が、習氏に似ているとの理由からネットで表示されなくなった騒動は記憶に新しいでしょう。当然、オンラインにおける自由度は、「世界最悪」と評価されています。

中国は、こうした"三種の神器"とも言える監視システムを駆使して、人民をコントロールしています。興味深いのは、一部のシステムは、海外に輸出されたり、多国籍企業が協力したりしていることです。

つまり、監視システムは国境を越え、世界に影響を与えており、日本としても対岸の火事ではないと言えます。

さて、これらの監視システムによる過度な管理社会は、ジョージ・オーエルが描いた"1984"のようでもあります。

ジョージ・オーウェルの"1984"の初版本の表紙

このような厳重な監視をしなければならない、中国は将来どうなるのでしょうか。テクノロジーがあまり発達していなかった19世紀あたりまでに近代化を図った先進国は、自国内ではある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現しました。たたじ、植民地においてはこれらは、守られていませんでした。

しかし、第二次世界大戦後は、先進国は植民地を手放さざるを得なくなり、手放した後は国内でさらに近代化をおしすすめ現在に至っています。

しかし、中国はこれを実行しないまま、経済的にある程度成長し、最新のテクノロジーを用いて本格的な監視社会に突入しようとしています。

先進国が他国と比較して、富を築けたのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現したため、一部の富裕層だけではなく、数多くの中間層が社会活動を活発化させ、それが経済にも良い影響を及ばしたためです。

先進国の富は植民地経営でさらに増えたなどという人もいますが、これも仔細に調べて見れば、そうではないことがわかります。植民地経営は、植民地となる国々にはそもそも富があまりないし、持ち出しもかなり多いのです。

しかし、中国はこのことを忘れています。このままでは、多数の中間層が輩出することなく、一対一路などで大失敗をして、中国社会はいずれ勢いを失うことでしょう。

そうして、いずれ中進国の罠にはまり、経済的にも発展せず、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な独裁国家と成り果てることでしょう。

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