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2018年8月20日月曜日

日銀、緩和策で国債大量購入 総資産、戦後初の「直近年度GDP超え」548兆円―【私の論評】何かにかこつけて、「緩和出口論」を語る連中には気をつけろ(゚д゚)!



日本銀行の総資産が2017年度の名目国内総生産(GDP)を上回る水準に達したことが19日、分かった。直近年度のGDPを超えたのは戦後初めて。日銀は13年に開始した大規模な金融緩和で国債などを大量に買い続けている。物価低迷に伴う緩和長期化で保有額は今後も膨らむため、来年にも世界最大の資産を持つ中央銀行になる可能性がある。

 今月10日時点の日銀総資産は548兆9408億円に上り、17年度の名目GDPの548兆6648億円を2760億円上回った。

 大規模緩和が始まる直前(12年度末)の総資産は約164兆円で、5年余りで3.3倍に膨らんだ。大半を占めるのは国債の466兆973億円。株価を下支えするため購入している上場投資信託(ETF)は21兆741億円だった。

 日銀は13年に“異次元緩和”を開始し、大量の国債購入などで世の中に出回るお金の量を2倍、3倍と増やしてきた。ただ、物価上昇率は目標の2%に遠く及ばず、先月の金融政策決定会合で20年度の予想値を1.6%に下方修正するなど持久戦を余儀なくされた。

 今年3月末時点の総資産を比べると、約528兆円の日銀は485兆円の米連邦準備制度理事会(FRB)を既に上回り、572兆円の欧州中央銀行(ECB)にも迫る。ECBは金融緩和の正常化で国債買い入れ額を減らしており、日銀がこれまで同様の規模で買い入れを増やせば、ECBを抜き総資産で世界一になるとの指摘がある。

【私の論評】何かにかこつけて、「緩和出口論」を語る連中には気をつけろ(゚д゚)!

日銀の総資産が増えたことについて、産経新聞も含めて大手新聞が懸念を表明しています。典型的なものを以下にあげておきます。以下はSANKEI BIZのものです。
日銀資産膨張、利上げなら債務超過懸念 GDP超え548兆円、上がる対策のハードルどこまで
以下に一部だけ引用します。
 日銀の総資産が膨張したことで、将来的に大規模金融緩和を手じまいする「出口」戦略を開始した際に財務体質が悪化する懸念が強まっている。日銀が国債購入で放出したお金は金融機関が日銀に預ける当座預金に入る仕組みで、金利水準を引き上げればその利払い費が増加するからだ。最悪の場合、日銀の自己資本8兆円が消失して債務超過に陥る恐れもあり、出口を検討する際の障害になる。 
 三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「もし総資産の規模を保ったまま利上げに踏み切れば、債務超過もあり得る」と指摘する。 
 問題は日銀の収入となる保有国債の利息と、支出となる当座預金の利払い費の差額だ。2017年度末の国債保有額は448兆円で、利息は1兆2211億円に上る。対する当座預金は378兆円で、利払い費は1836億円。差額の1兆円余りが日銀の収益となる。 
 当座預金の金利はマイナス金利政策下で0.1~マイナス0.1%に抑えられている。ただ、出口戦略で金利を引き上げれば保有国債の金利(17年度は0.28%)を超え、利息の受け取り分を支払い分が上回る“逆ざや”になりかねない。仮に1%利上げすれば単純計算で3兆7000億円規模の利払い費が追加発生するため、数年で日銀の自己資本を食い潰してしまう。
なにやら、ゴテゴテ書いていますが、これ以上引用するのは、バカバカしいのでやめます。結論からいうとこのような懸念はありません。

 日銀の異次元金融緩和について、「見えない国民負担」が隠されているなどとして、日銀が高値で国債を大量購入しているが、景気がよくなれば国債価格は下落し、その局面での金融引き締めは日銀には逆ざやとなって巨額損失が見込まれなどの議論です。

実はこの種の議論は、15年以上前から行われています。かつてローレンス・サマーズ元米財務長官が来日したとき、日銀関係者から同様の質問が出たことがありますが、サマーズ氏は一言、「So what?」でした。それがどうかしたのか、とあきれて返答したのです。


ローレンス・サマーズ氏

経済学者等経済に詳しい人であれば、政府と中央銀行を合算する「統合政府」という考え方を知っています。その観点では、日銀の「資産」である保有国債の評価損は、政府の「負債」である国債の評価益となるため、合算してみれば問題ないのです。

中央銀行の国債購入は、カネを刷って行います。つまり、国債購入額は通貨発行益(シニョレッジ)の範囲内です。もちろん、実際の日銀会計で通貨発行益が一気に発生するわけではないですが、毎年の日銀の利益を合算すれば、基本的に通貨発行益となります。評価損が発生しても、それは通貨発行益の一部でしかなく、統合政府でみれば何の問題もありません。

ベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が来日した時にも、同じような質問がありました。バーナンキ氏はサマーズ氏より親切丁寧なので、「心配無用だが、どうしても心配なら政府と日銀の間で損失補填(ほてん)契約を結べばいい」と答えていました。


ベン・バーナンキ氏

そもそも日銀は時価会計ではないので、満期まで国債を保有していれば評価損など問題になりません。しかも金融緩和の「出口」戦略を取るからといって、日銀が保有国債を急減させるようなオペレーションを取ると考えるのは、かなりの素人です。

ただし、過去の日銀が緩和すべきときに引き締めを繰り返してきたという事実があるので、日銀は信用できず、「出口」においては、日銀が保有国債を急激に減らすということもありえるといって批判するならまだ理解もできなくはありませんが、大手新聞のどの記事を読んでいてもそのようなことは書いてはいません。

それに現在の状況で「出口戦略」というのも非常に疑問です。この手の記事には良く「出口戦略」という言葉がでてきますが、ほとんどの場合海外の例が全く言及されていません。

2008年9月のリーマン・ショック以降、英米など先進国の中央銀行は量的緩和を行いました。米連邦準備制度理事会(FRB)は14年10月に量的緩和を終了したのですが、マネタリーベース(中央銀行が供給する資金量)の残高を急激には減少させておらず、今でもリーマン・ショック前の4倍以上になっています。英イングランド銀行は、マネタリーベース残高を傾向として減少させないで今に至り、リーマン・ショック前の5倍以上です。

中央銀行のバランスシートの規模とは、まさに各国の中央銀行が
行っている金融緩和政策の“規模感”を如実に確認できるものである。

なお、日本では01年3月から量的緩和を実施していましたが、06年3月、インフレ率が事実上マイナスであったにもかかわらず量的緩和を解除し、さらに急激にマネタリーベースを減少させるという手痛いミスがありました。英米ともに、このミスを研究しており慎重に行動しています。

日銀は13年4月から再び量的緩和をするようになりました。その後1年でインフレ率は1・5%程度まで上昇したのですが、14年4月の消費増税によって再びインフレ率が低下してしまいました。

比較的うまくいった米国でも出口は6年、英国では9年以上経ってもまだ至っていません。

こうした英米の例をみれば、日本での出口の議論は時期尚早と言わざるを得ないです。しかも、議論するとしても、06年の二の舞にならないように、「残高は微減または現状維持」とならざるを得ないでしょう。

このように、サマーズ氏やバーナンキ氏ら世界の碩学(せきがく)がすでに答えを出しているのですが、この手の新聞記事を読む限り、15年ほど前に決着済みの問題を蒸し返したことになります。

この記事に限らず、多くの新聞記事が金融緩和に懸念を示していますが、現状の経済環境はさらなる量的追加緩和を必要としています。金融緩和の出口論を語るのは、未だ時期尚早と言わざるを得ません。

すでにこのブログでも過去に何度か述べているように2016年度あたりからは、国債が品不足の状態なので、買いオペ(市場からの国債購入)の増額は正直言えばやりにくいです。だからこそ、日銀当座預金の一部付利をマイナス金利にするなど、追加緩和の手段がとられたのです。

そうして、現状では、政府は地震・水害の復興のためにも、そうして日銀が買いオペをしやすくするためにも、国債を大量に発行すべきです。

いずれにしても、現在のような状況で日銀の金融緩和の出口論を語る人はこのような現実を知らなさすぎです。知っていてこのような主張をするのか、それとも馬鹿なのか、悪意があるのか、全く理解に苦しみます。

何かにかこつけて、「緩和出口論」を語る輩のいうことは信じるべきではありません。

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