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2019年6月18日火曜日

米国務省の凄腕女性局長が「中国封じ込め宣言」 新冷戦時代の対中戦略を策定中―【私の論評】日本も文明論の次元で中国をとらえるべき時がやってきた(゚д゚)!


キロン・スキナー氏

米国務省のキロン・スキナー政策企画局長の名前を知っている読者は、ほとんどいないと思う。

 シカゴ出身の黒人女性58歳。生粋の共和党員である。米ハーバード大学で国際政治学博士号取得。昨年8月に現在のポストに就くまでは、私立の名門、カーネギー・メロン大学教授(国際関係論)を務めた。

 スタンフォード大学フーバー研究所主任研究員、ニュート・ギングリッチ元下院議長の外交アドバイザー、ブッシュ政権(子)の国家安全保障教育委員会(NSEB)メンバーなどを歴任。同ブッシュ政権のコンドリーザ・ライス国務長官との共著『レーガン大統領に学ぶキャンペーン戦略』は、共和党選挙関係者の間でバイブルとされている。

 このような大物を単なる局長であるが、長官直轄の政策企画局長に任命したのはマイク・ポンペオ国務長官だ。

マイク・ポンペオ国務長官

 この人事は、同氏の慧眼に負う。その証しといえるのが、4月29日にワシントンで開催されたニュー・アメリカ(新米国研究機構)主催の「安全保障セミナー」でのスキナー氏の基調講演である。

 「中国はわれわれにとって、長期にわたる民主主義に立ちはだかる根本的脅威である。中国は経済的にもイデオロギー的にも、われわれのライバルであるのみか、数十年前まで予想もしなかったグローバル覇権国とみることができる」

 ドナルド・トランプ米政権が、中国を覇権抗争の相手国と見なしていることを明確にしたのだ。

 一方、「今後、米国史上初めて、白人国家ではない相手(中国)との偉大なる対決に備えていく」と発言、「非白人国家」という人種の違いに言及したことで物議を醸した。

 同発言への批判は別にして、筆者が注目したのは「米国務省は現在、中国を念頭に置いた『X書簡』のような、深遠で広範囲にまたがる対中取り組みを検討中」と語ったことである。

 言うまでもなくこれは、米ソ冷戦時代に対ソ連封じ込め戦略を打ち出した初代政策企画局長のジョージ・ケナン氏の『X論文』を念頭に置いたものだ。

ジョージ・ケナン氏

 要は、新冷戦時代のための対中戦略を策定中と宣言したのである。

 想起すべきは、昨年10月4日のマイク・ペンス副大統領による対中“宣戦布告的”講演である。

 再びペンス氏は24日、ウッドロー・ウィルソン国際センターで講演する。米中和解からほど遠い内容になるはずだ。

 ちなみに、スキナー発言を紹介した新聞は、「産経新聞」(5月31日付)と、英紙フィナンシャル・タイムズ(6月5日付)の2紙だけだった。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】日本も文明論の次元で中国をとらえるべき時がやってきた(゚д゚)!

冒頭の記事にもあるように、4月29日にワシントンで開催されたニュー・アメリカ(新米国研究機構)主催の「安全保障セミナー」の基調講演において、スキナー氏は米中間の競争を「全く異なる文明同士の、異なるイデオロギーの戦いだ」と発言しました。

スキナー局長によれば、冒頭の記事にもあるように、中国は米国にとって初めての「非白人大国の競争相手(a great power competitor that is not Caucasian)」です。

スキナー局長は、こうした見方が、一定程度は、サミュエル・ハンティントンの「文明の衝突」の見方と重なるところがあるとも述べました。

サミュエル・ハンティントン氏 

この発言は人種差別的だと人権NGOからの批判を浴びました。また、5月中旬に北京で開かれた「アジア文明対話大会」の開会式で、中国の習近平国家主席が、人種の優位性を説いて文明間の衝突を説くことは「ばかげている」と一蹴したのは、スキナー発言を意識したものだとも言われています。

ちなみにスキナー局長は、アフリカ系の女性です。日本人からすれば、アフリカ系米国人の女性が、保守的思想を持って、米国と中国との間の文明的な基盤の違いを語るというのは、違和感を持つところかもしれないです。

ところが、米国が体現しているとされる「西洋文明」は、現在では人種的な純血性にもとづくものではない文明です。(第二次世界大戦前は、西欧文明は白人のものという考えが幅を効かせていた)

スキナー局長は学者出身で、やはり学者出身でジョージ・W・ブッシュ政権時代にタカ派として活躍した黒人女性のコンドリーザ・ライスの教え子だったというのだから、なかなか毛並みが良いです。

1990年代にサミュエル・ハンティントンが『文明の衝突』を著した際、中国はすでに一つの文明圏として数えられていました。

ハンティントンによれば、その文明圏は「華人」の人種的なつながりにもとづく国境を越えたネットワークによって、中国大陸を超えて東南アジアの隅々にまで及んでいるものでした。

「文明の衝突」論は、2001年の9・11テロに起因する「対テロ戦争」の時代においては、もっぱら西洋文明とイスラム文明の対立を語るものとして意識されてきました。

ところがトランプ政権下で急速に対中国強硬論が高まる中、ついに米中の間の対立についても、「文明の衝突」が参照されるようになってきたのです。

現在アメリカは、苛酷な宗教・人権弾圧、法の支配の欠如、米企業が強いられた技術移転や知財の窃盗、債務のワナによる「一帯一路」沿線諸国の軍事拠点化、南シナ海の軍事拠点化など、さまざまな"戦線″で戦いを強いられているのですが、文明論の次元で中国をとらえなくては、その脅威の全貌を把握できないと考え始めたと言えます。

昨年10月にペンス副大統領がハドソン研究所で行った演説は、その強硬な反中国の内容から、「新冷戦」の開始を告げるものと言われるようになりました。その後のトランプ大統領が主導する度重なる関税引き上げ合戦は、「貿易戦争」とも称されています。

中国の習近平国家主席は15日、北京で始まった「アジア文明対話大会」の開幕式で演説し「アジアの人民はともに繁栄する一つのアジアを期待している」、「文明間の交流は対等で平等、多元的であるべきで、強制的で一方的なものであってはならない」とトランプ政権に釘を刺しました。

ところが、表向きの主張とは裏腹に、中国が行っているのは「国内での全体主義的体制の確立とその輸出」です。

中国は、2020年までに14億のすべての国民を対象とする「社会信用システム」構築に向けて準備を進めています。

このシステムは、政府が国民の信用情報・行動を点数化して管理し、点数に応じて個人を処遇するもの。評価の対象となる信用情報は、SNS、インターネット、Eメール、銀行口座、クレジットカード、交友状況、信仰生活など、あらゆるものです。

評価の高低は、不動産の売買、飛行機などの利用に影響が及びます。すでに政府に批判的な人が、飛行機の利用や土地の購入を禁止されたり、子どもを良い学校に通わせることができなかったりするという事態が起こっています。

つまり、当局に好ましい行動をする者は優遇され、好ましくない行動をする者には不利益を課されるのです。とりわけ信仰心を持つ者に対するスコアは低いです。何が正しいかは、党が決めるのであり、習近平氏以外に決定権があってはならないからです。このため神の意志を考えて自律的な判断を行う者は危険視されるのです。

この自律的な判断こそが、西洋文明の基礎にあるものといえます。人間には造物主によって造られているため、神性を持ち、神の御心や正義や真実のありかを探究できるのです。

こうした考えは、東洋文明では「仏性」を説く仏教のなかにも共通して流れています。それ流れを受け継いだのは日本であり、中国ではありません。実際、日本はかつて人種差別撤廃を国際連盟で主張したのですが、受け入れられませんでした。これは、後の大東亜戦争の遠因ともなっています。

世界から人種差別が撤廃されたのは、第二次世界大戦後のことです。

この「神仏の子」の思想に正面から挑み、「対宗教戦争」を仕掛けているのが習近平氏です。その意味では、日本と中国は元々文明が衝突するのはやむを得ないところがあるのです。

古代の中国からは、日本は多くを学びました。だから、中国に親近感を感じる日本児も多いです。しかし、ある時点からはこれは逆転したともいえます。現在の中国の科学・哲学・文学・経済その他ありとあらゆる西欧から輸入した言葉は実は日本から導入したものです。読みは中国語の読みですが、文字は日本が創作した漢字を用いています。

しかし中国は、西欧の言葉を日本から移入しましたが、その他日本の文化的側面を取り入れることはありませんでした。現代中国と日本の価値観は、水と油であり混じり合うことはないのです。

そうして、中国の社会信用システムが広がったとき、「自由」に考え、行動する場所が失われることになります。

来年の「社会信用システム」構築によって、中国は「全体主義国家」として完成を迎えるのです。

西側に逃れた中国や北朝鮮の信仰者や民主活動家は、口々に、「中国は人間の住むところではありません」と述べる一方で、「西側の統治システム」を切望します。その統治システムとは「法の支配」が存在する本当の法治国家です。

しかし、そもそも信教の自由がないところに「法の支配」は存在しません。人智を超えた神の法の制約下にあるのが、立法府がつくる「実体法」だからです。制約がなければ、統治者がやりたい放題にやることが「法」となります。

これが全体主義的な体制である。中国は、AIや監視カメラ、5Gの技術を「一帯一路」沿線国に提供し、監視国家の技術を共有しています。要するに全体主義的な体制の輸出です。

もし中国の全体主義体制が世界を覆えば、ギリシア・ローマ以降、人類が営々と受け継いできた自由な統治体制を失います。この「自由文明」対「全体主義的な文明」の対立構造において、自由を守る戦いに挑んでいるのがトランプ大統領です。

トランプ氏の政策は自国の企業や産業を傷つけるため米国でも批判が多いです。トランプ政権は先月15日、ファーウェイへの製品供給を事実上禁じる制裁措置に踏み切りました。これによって、米クアルコムなど、ファーウェイに製品を提供する米企業に逆風になるとの見方もあります。

ところがファーウェイが世界を覆えば、通信テロで他国の安全保障を脅かすことができるのみならず、諸外国を軍事力で支配せずとも、世界的監視体制を築けます。

貿易戦争では、米国の農家も打撃を受けます。トランプ氏も、ファーウェイ排除や貿易戦争をすれば自国の企業や農業に負担を強いることは重々承知でしょう。それを知りながら、米国が貿易戦争やファーウェイ排除に動くのは、このまま放置すれば中国が米国を抜いたときに、全く異なる文明下に人類を置くことが見えているからです。それは人類が築いてきた自由文明を否定する非人道的で抑圧的な体制です。

一連の中国への制裁は、「人間は『神の子』であり、神の子として扱われるべきである」という経験なプロテスタントでもあるトランプ氏の信仰心からきていると言えます。

米国はいま中国に対して「予防戦争」を仕掛けているのです。中国との国力や技術力の差が縮まっているからで、いま中国の野望を挫かなければ、いずれ自由文明が敗北する時がやってくるからです。

この局面で、日本は日和見的な立場を取ることを避けなければならないです。米国の北朝鮮問題専門家が「安倍首相は政権維持のためなら誰とでも会う」などと批判しています。

ファーウェイは今後5年で、日本企業からの製品の輸入を10倍の規模に増やす予定ですが、これにのるべきではないです。日本は自国企業を犠牲にしてでも、自由文明を守ろうとしているトランプ政権の意図を読み違えてはならないです。

中国は最近むしろ日本に抑制的な態度をとってきていますが、その実尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域の情勢が荒れ模様になっています。

中国海警局の公船が連続62日間も尖閣周辺の領海外側の接続水域を航行したり、領海に侵入したりしているためです。平成24年9月に政府が尖閣を国有化して以来、最長となっています。

6月10日、中国公船4隻が日本の領海に侵入

尖閣海域を徘徊(はいかい)する中国公船は4隻で、機関砲を搭載する船もあります。今月10日にも領海に侵入したが、5月の侵入は4回に及びました。月1、2回だった昨年よりも頻度が増しています。海上保安庁の巡視船が、領海に近づかないよう警告しても従わないです。

中国は、隙あらば尖閣諸島を奪い取ろうと狙っています。その姿勢が露骨である以上、日本は侵略への警戒を強め、固有の領土と領海を守り抜かなければならないです。

サミュエル・ハンティントンは、当初西洋文明にも、中華文明にも分類できない日本を、中華文明圏に入れようとしたのですが、それにはかなり無理があるということで、日本は一つの文明圏だとしました。

米国が、文明論の次元で中国をとらえなくては、その脅威の全貌を把握できないと考え始めた今、日本も文明論の次元で中国をとらえるべき時がやってきたといえます。そうしなければ、本当の中国の脅威は見えてきません。

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