作業記憶(ワーキングメモリー)の容量、もしくは一度に記憶できる情報量というのは脳内で簡単にアクセスできる場所にある量だけ、というわけではないようです。 心理学者のArt Markman博士が「Psychology Today」に書いていた記事によると、作業記憶が良くなればなるほどクリエイティブなアイデアが生まれる容量も増えるとありました。
さて、この記事の結論、以下のようなものです。
では、作業記憶の容量を増やすにはどうすればいいのでしょう? 確実な方法というのはありませんが、効果があると言われている方法はいくつかあります。たとえば読書量を増やしたり、頻繁に本を読むようにしたり、読んでいるものに関する理解を深めて読解力を身につけるというのも一つの方法です。一時的な記憶でもいいので、すべての文章をあとで思い出せるようにしてみましょう。この練習をすれば違いが表れます。
サイコロジー・トゥディの表紙 |
研究はまだ継続中で明確な答えというのはありませんが、作業記憶の容量を増やして鍛えることはどんなことを考えるにおいても重要になります。練習を何度か繰り返せば、良いアイデアが浮かびやすくなるかもしれません。アイデアが出ずに行き詰まりがちな人は、ぜひ試してみてください。
【私の論評】ワーキングメモリを増やすには、記憶そのものを増やすことだ!!しかも、若いうちに!!
皆さん、上の記事をどう思われますか。このような心理学実験、わざわざやらなくても、ほとんど結論が出ているような気がするのは、私だけでしょうか。ワーキング・メモリがどうのこうのと言っていますが、結局のところ、創造性のことだと思います。創造性は、どこから出てくるのかといえば、日本の愚かな教育学者や、多くの人が語るように、個性の尊重などからは生まれるものではありません。
上の結果では、結局、ゲーム以外のことでは、読書ということを語っています。読書といえば、結局は、何のためにやるかといえば、体系的にかかれた文章を読んで、記憶にとどめるということだと思います。そうなんです。結局人間の頭は、コンピュータのメモリのように、機会的に増やすということはできませんが、いわゆる、記憶がより多ければ記憶容量や、いわゆる、ワーキングメモリが増えるということだと思います。
こんなことは、昔からいわれていて、それを実際に査証するようなことは、心理学実験などしなくても、以前から多くの人に知られているところです。本日は、まずは、その査証となる事柄をあげておきます。
ボンクラ養成学校? |
その事例として、昨日のスパイ事件でも、スパイが入り込んでいたといわれる、松下政経塾と、海外の優秀なリーダー養成校の比較をしてみたいと思います。無論、松下政経塾は、昨日の「松下政経塾出身の主な政府与党幹部」というリストに、12人もの人間が名前を連ねているにもかかわらず、一人の例外もなく全員ボンクラであるということから、この塾はリーダー養成には、完全に失敗しています。
松下幸之助氏を囲む松下政経塾塾生たち |
しかし、昔から、西欧では、優秀なリーダー養成学校があります。こんなことを言うと、皆さん、MBSや、ハーバード・ビジネススクールなどを思い浮かべるかもしれませんが、そうではありません。大学院で、本当の意味でのリーダーを育てているわけではありません。リーダーたる器は、その前に形作られます。大学院などでは、手遅れです。大学院では、器は形成しませんが、実際に社会で活躍するために、必要な行動様式などを教えているわけであり、リーダーを養成しているわけではありません。こんなことでは、すでに手遅れなのです。
では、西欧のリーダー養成学校とはどのようなものか、掲載します。これについては、私自身は、以前から良く知っていたことなのですが、実際に、これらの学校に行ったことのない私よりも、それを良く知り抜いている人の記事などが参照になると思い、探してみたところ、ぴったりの記事がありましたので、以下に紹介します。
現代イギリスのボーディングスクールの寮 |
詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、以下に一部分をコピペしておきます。
アメリカでいえば、エリート教育は中高一貫のボーディングスクール(全寮制・寄宿制学校)から始まる。ボーディングスクールの特徴は、とにかく中高一貫教育、全寮制というところが、世界のエリート養成学校に共通しているとろです。この記事を書いた人は、たまたま、アメリカを例に出していますが、私は、おそらく、アメリカのボーディンクスクールの原型になっているのは、イギリスのパブリックスクールだと思います。
・進学の準備校ではない
・全寮制
・少人数
・留学生も1~2割
・田舎にある
・教師も住み込み
・図書館から体育施設まで充実
というものです。
イートンスクールのユニフォーム |
さて、boarding とは、本来は「寄宿、下宿生活」のことで、寄宿学校が原義。両親の家を離れての団体生活の中で心身ともに鍛えられ、学業のみならず、生活も指導されることで、規則と自分に対する克己の態度が育まれるといわれています。
イギリスの寄宿教育は19世紀末にドイツに影響を与え、ヘルマン・リーツが田園教育舎と呼ばれる数多くの寄宿学校を立ち上げた。第二次大戦後、ソ連軍により、その多くは廃校に追い込まれたが、オーデンヴァルトシューレやスイスエコール・ド・ユマニテなどは現在も存続しています。
こうした実践を範とした学校がアメリカやオーストラリアなどにもいくつかあります。中でも伝統と実績のある世界各地の学校が、共通の教育理念で連帯したものに、クルト・ハーンがその設立を推進した「ラウンドスクエア」と呼ばれる団体があります。盟主となるイギリスのゴードン・ストウン校の建物が、ローマ風の円形競技場と四角い建物からなるのにちなんだものです。
同じ寄宿学校でもフィニッシングスクールは、良家の女子が社交界デビューに備える行儀作法のための学校で、これとは区別しなくてはならないです。
女の子のフィニシッングスクール |
ボーディングスクールは王侯貴族が通う学校でもあり、スウェーデン王室のプリンスたちが卒業名簿に載るスウェーデンの「Lundsbergs skola」、ベルギー王室やルクセンブルク公国やモナコ公国のプリンスたちが卒業名簿に載るスイスの「ル・ロゼ校」、イギリス王室のプリンスたちが卒業名簿に載るイギリスのイートン校などがあります。
中高一貫とはいえ、ボーディングスクールの敷地は東大キャンパスの5倍から15倍くらいある。東大の10分の1くらいの生徒数でそうなのだ。そこには陸上トラック、プールはもちろん、ゴルフコース、アイスホッケーリンク、テニス・スカッシュのコート、ジムまである。立派な音楽堂や美術館もある。勉強の合間はスポーツや芸術活動を徹底的にやる。その合間にボランティア活動。超多忙な中で子供たちは時間管理術を学び、自らの適性を知っていく。こういう詰め込みの中でこそ本当の個性や適性がわかってくるのだ。
アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズは「創造とは結びつけること」と話しているが、創造力とはつながっていない知識をつなげることで違う考えを発見することだ。アイシュタインも「創造的思考とは組み合わせ遊び」と言っていた。世界的な発見は知識の出合いから始まっている。それを歴史家はメディチ効果という。ルネサンス期のフィレンツェ、そしてメディチ家。ここに世界を探検する最高の学者が集まり、斬新なアイデアが合体してイノベーションを引き起こした。生まれたのが、口紅、日焼け止めローション、温度計、デオドラント、歯の漂白、魚雷、防火服、慈善信託など。
メディチ家礼拝堂 |
多様な人材に幅広い教養を詰め込み共同生活させることでメディチ効果も生まれるのだ。世界中の古典から始まる多様な知識を詰め込まれ、運動から音楽からボランティア活動まで徹底的にやらされ、24時間他人と暮らす。若いうちから、いろんな知識をつなげる思考ができていくだろう。さて、筆者は、ここで、松下政経塾の大失敗と、ゆとり教育の間違いを語ります。
松下政経塾もこれを狙ったのだろうが、間違っている。一つは時期。大学を出た者では遅い。実務経験の期間が無くなり頭でっかちになるだけ。先生のレベルも違う。世界のエリート教育を受けた人でないとエリート教育はできない。いまどき日本語でやっているから多様性もない。松下さんの最大の失敗策であることは今の内閣をみれば一目瞭然。
今の日本の若者の多くは日本の教育制度の犠牲者である。ゆとり教育と大学全入時代のせいで、“極度の詰め込みによる受験戦争”を勝ち抜くという経験をした者が、昔に比べて極端に少ない。知識が詰め込まれていないところに創造力も個性もない。芸術や音楽やスポーツだって知識の詰め込みが脳や肉体にないといいパフォーマンスはできないし、いいものかどうかの評価さえできない。さて、以上のようなことから、本題に戻ります。このような、詰め込み教育をされた人たちの頭の中は、どうなっているかといえば、それこそ、本日の本題となる、ウォーキング・メモリが増えているのだと思います。この状態で、さらに、新たな知識や経験をつめば、かなりクリエーティブな思考の持ち主になれるのだと思います。
吉田松陰肖像 |
室町時代の武家の教育について、参考になる記述がお伽草子の『筆結物語』にあります。
この内容がどの程度一般化できるのかわからないのですが、簡単に以下に掲載しておきます。
【読書】
1)孝経…忠臣は孝門から出るので
2)四書五経…孝経の後に読んで、仁義道徳を学ぶ
3)武七書…兵法を学ぶ
4)東坡・山谷詩・三体詩・詩学大成…詩・聯句の座での詩作のため
5)三代集・源氏物語・伊勢物語…歌・連歌の便りに
1)2)は修身道徳、3)は専門、4)5)は教養といったところでしょうか。
しかし、読書=学文(学問)だけではだめで、しっかり体を使うことも必要だといいます。こういった、伝統は、無論江戸時代にも引き継がれ、江戸時代には、藩校というものが各地につくられました。内容や規模は多様ですが、藩士の子弟は皆強制的に入学させ、庶民の子弟は入学できませんでした。後に、庶民に開放された藩校もあります。広義では医学校・洋学校・皇学校(国学校)・郷学校・女学校など、藩が設立したあらゆる教育機関を含みます。
いわば【体育】ですね。
飛越・早技・力技・荒馬・強弓・山を走る・水練
これが具体的な内容です。
面白いのは、山を走って鍛錬するのに鷹を使うこと、それから水練(水泳)をするのに鵜を使うことです。
全国的な傾向として、藩校では「文武兼備」を掲げ、7〜8歳で入学して第一に文を習い、後に武芸を学び、14〜15歳から20歳くらいで卒業する。教育内容は、四書五経の素読と習字を中心として、江戸後期には蘭学や、武芸として剣術・槍術・柔術・射術・砲術・馬術などが加わりました。
会津藩藩校 日新館 |
とにかく、いわゆる、リーダーを育てるような学校は、古今東西をとわず、若い時期に詰め込みをするということでは共通点があります。そうして、日本では、近代的ないわゆる大学や、大学院という教育機関がなかったにもかかわらず、幕末、明治維新には、多くの傑出した人物が現れました。やはり、日本では、伝統的な若い時代の詰め込み教育が、藩校などにも引き継がれていて、だからこそ、未曾有の転換期にも対応できたのだと思います。だからこそ、明治の先達は、世界でも稀有ともいわれる、無血大革命に成功し、日露戦争に勝利するという大偉業を達成できたのだと思います。
萩藩校 明倫館跡 |
日新館での学習風景(再現) |
そうして、松下政経塾もその例外ではないということです。どうして、こんなことになったのか、本当に理解に苦しみます。
今からでも、遅くはないので、詰め込み教育を再開すべきです。松下政経塾も、やり方を改めるべきと思います。
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