多くの学生を苦しませる「就職活動」、いわゆる「就活」。あるシーズンになると学生たちが一斉にスーツに身を通し、企業説明会へと足を運ぶこの就活は、日本独自の一種の文化であり、世界的に見ても他ではなかなか見られないスタイルである。
その日本らしさがいっぱい詰まった就活を見事に描き切った映像作品が、現在ネット上で注目を集めている。「就活狂想曲」というタイトルのその映像作品は、吉田まほさんという方を中心に制作されたものであり、全編アニメーションとなっている。
作品の主人公は、これまで普通に大学生活を送ってきた一人の女子学生。彼女は周りの友人たちが就職活動を始めていくのに影響され、自分も就活という名の荒波に飲み込まれていく。そしてその荒波のなかで、彼女はある変化を遂げるのだが、それが実に滑稽に、かつ虚しく描かれているのだ。
これには多くのネットユーザーが共感の声を上げており、YouTubeにアップされたその動画には次のようなコメントが続々と寄せられている。
・ネットユーザーの声
「息苦しいほどに絶望的」
「全て経験しているので、よくわかります」
「いかにも日本らしい…」
「怖いわ。あと何年かしたらこの世界に入らなきゃいけないのか」
「本当の自分隠して就職するのって辛い」
「正気の沙汰ではない」
「『内定』を得るための就活なんて意味ない。この女性のような就活をしている人が何人いることか….」
「よく制作してくれました。すっごくわかりやすい心境の変化。何のためにやってるのか凄く醜く映してれていて、自分の将来をその場しのぎでやってしまう危うさを伝えてくれていてとても感謝です」
みなさんは、今回の「就活狂想曲」からどんなメッセージを受け取っただろうか? 「就活」とは一体何のためにあるのかを考える上でも、ぜひとも一人でも多くの人に観てほしいアニメーション作品である。
参照元:YouTube/youmahotube
執筆:田代大一朗
【私の論評】就活をめぐる二つの違和感、この違和感はいずれ解消されるだろうが、その時々で柔軟に変身を遂げる人にとっては怖いことは何もない!!
上の動画と記事、何やら私はかなり違和感を感じてしまいます。それも、二つの側面から違和感を感じてしまいます。こんなことを書くと、非判されそうな気もしますが、この違和感何ともしがたいので、本日は敢えて掲載します。
まず、一つ目は、個々人や、個々の会社がどうのこうのという前に、マクロ的に見て、なぜこのように若者が就活に苦労するのか、その責任は誰にあったのか、全くスルーしているということです。その責任が誰にあるのかといえば、無論、マクロ的に見れば、就活生でも、企業でもありません。ましてや、大学の責任でもありません。
それは、一言でいえば、日銀の責任です。こんなことをいうと、日本では常識外れのように思われまずか、これは世界の常識だと思います。
デフレであれば、就職難になるのは当たり前です。日銀の金融政策と、就活には大きな関係があります。
これは、このブログの以前の記事にも掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!
詳細は、上の記事そのものをご覧いただくものとして、 この記事の一部を以下にコピペさせていただきます。
アメリカでは、雇用問題というと、まずは、FRBの舵取りにより、大きく影響を受けるということは、あたりまえの常識として受け取られていますし。雇用対策は、FRBの数ある大きな仕事のうちの一つであることははっきり認識されており、雇用が悪化すれば、FRBの金融政策の失敗であるとみなされます。改善すれば、成功とみなされます。そういう私も実は自分が就職するときには、このようなことを知りませんでしたが、あの頃といえば、リクルートあたりに、登録しておくと、会社案内の資料がうちに送られてきて、まずは雑誌のような書籍が何冊も送られてきて、それをみるといろいろな会社が掲載されていて、その会社あてのハガキがあって、そのハガキを何枚か書くと、試験や面接の案内がきて、それで何社か受けてみて、受かればそれで良しとし、駄目であっても、大学の就職関係のところに相談にいけば、それなりに何とかなりました。だから、現在の学生のように就活で苦労などということはしたことがありません。
この中央銀行の金融政策による雇用調整は、世界ではあたりまえの事実と受け取られていますが、日本だけが、違うようです。日本で雇用というと、最初に論じられるのは、冒頭の記事のように、なぜか厚生労働省です。
このブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。
日銀が、やるつもりもないインフレ目処1%など無視して、インフレ率を本当に2〜3%上昇させたとします。そうすれば、日本でも、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これは、マクロ経済学上で昔から知られているし、経験則としても成り立っている法則です。
無論、雇用対策のため、のべつまくなく、インフレにするというわけにはいきません。ある程度以上、インフレになれば、ハイパーインフレとなり大変なことになる場合もあります。そういうときは、中央銀行は、すぐにはインフレ率を高めるわけにはいきませんから、これは、打ち出の小槌のようにいつもできるというわけではありません。雇用枠が増えても、ハイパーインフレということにでもなれば、雇用が増えたという経済に対するブラス要因が、ハイパーインフレというマイナス要因によってかき消されるどころか、経済が悪化してしまいます。
それに、経済のその時々の状況で、インフレ率を高める方法もいろいろあります。いろいろある方策のうち、雇用に悪影響を及ぼす方策もあります。同じ二つ三つの金融政策を実施するにしても、順番があります。順番を間違えると、かえって、雇用に悪影響を与える場合もあります。こうしたことを認識しながら、雇用調整を行うことは、本当に難しいことです。だからこそ、アメリカではFRBの金融政策の専門家が専門家的立場から、これを調整して、雇用対策を行います。
雇用を直接生み出すのは、日本でも、本来日銀であるはずです。しかし、日本では雇用対策といえば、厚生労働省の管轄とかたく信じて疑わない人が多いようです。しかし、厚生労働省は、雇用枠を増やすことはできません。一定の雇用枠の中で、雇用対策ができるのみです。できることは限られていて、雇用のミスマッチを改善することくらいのものです。
日銀と、厚生労働省の二つの雇用対策がマッチしてはじめて、若者の雇用なども含むまともな雇用対策ができます。日銀が、金融政策で雇用枠を増やしたとしても、それは、枠を増やしたというだけであって、現実には、雇用のミスマッチがあれば、雇用問題は解消しないわけです。ここで、厚生労働省が、実効的な雇用のミスマッチを是正する政策を行えば、雇用問題が解消するわけです。
しかしながら、現在日本で行われているような、厚生労働省が行う、雇用対策は、帯に短くタスキに長しという対策がほとんどのようです。まさに、このブログの冒頭の記事に書かれてあるようなことが、実態であると考えられます。このようなことを防ぐため、アメリカなどでは、地域に密着したNPOが、地域の雇用のミスマッチを解消するために、求職者に住宅から、職業教育、職場斡旋を含む包括的なブログラムを提供するということが行われています。このような、NPOの中には、地方銀行や、建築会社までメンバーとして含まれていたりします。NPOとはいっても、日本とは全く意味合いや、規模が違います。おそらく、こちらのほうが、政府が直接手を下すよりもはるかに、効果があると思います。こういうことも、大方の日本人は知らないようです。NPOというと、奇特な人たちが、手弁当で奇特なことをするものという認識だと思います。
その先端的な試みの一つとして、たとえば、COUSERAがあります。これは、最近できた、オンラインでアメリカのいくつもの大学の授業を無料で受けられる、というブログラムです。私もさっそくいくつかの講義に登録したことは、以前のこのブログにも掲載したことがあります。従来、こうしたプログラムは、いくつかありましたが、このブログラムが他のものとは明らかに異なる点があります。それは、大学の講義が受けられるだけではなく、仕事を探すというブログラムも含まれているということです。
後でふりかえってみると、こんな感じて、学生も、大学院生もそれなりのところに全員受かっていて、何も心配することはありませんでした。それに、就職できないことの恐怖よりは、いわゆる社会人、企業人、組織人になることが恐怖の対象で、自分は組織人としてちゃんとやっていけるのだろうかというという事が不安でした。
そうして、今から振り返ってみると、その当時は今のようなデフレではありませんでした。その頃の日銀の動きなどみてみると、まともに働いており、金融緩和もまともにやっていました。政府のほうも、緊縮財政一辺倒ではなく、まともな財政政策をやっていました。これが、現在と当時の大きな違いです。 そもそも物価上昇率と、雇用との間には、明確に生の相関関係があり、それは、フリップス曲線として、経済学では良く知られている事実です。
就活当時の私もこれについては、あまり知らなかったので、偉そうなことはいえませんが、およそ、就活生の人は、このようなことを知っておくべきと思います。これを知らないで、デフレのときに就活をして何社にも断られてしまえば、精神的にめげるのは当然のことです。多くの人は、自分非があると思い込んだり。何度挑戦しても、合格しなければ、自分は世の中に必要とされていないと思い込んでしまうのではないかと思います。
まずは、そんなことはない、大括りでは、自分のせいでもなく、企業のせいでもなく、経済が悪いことが就活が厳しい原因であることを理解できれば、精神衛生上非常に良いのではないかと思います。人間、何か不幸なことがあって、その不幸の原因がまったくわからないでいることほど、不安で不気味に感じることはないと思います。それに、これからアベノミクスで、物価上昇を目指していますが、これから雇用関係は改善されるのは間違いないと思います。
それから、もう一つの違和感ですが、これは、上の記事にも若干触れられています。上の記事では、「就活は、日本独自の一種の文化であり、世界的に見ても他ではなかなか見られないスタイルである」と掲載していますが、これは本当です。というより、新卒を大量採用するという雇用慣行があるのは日本だけです。他の国ではありません。
どこの国でも、採用は不定期です。必要になったら採用するというのが一般的です。ですから、日本以外の国では、大学や大学院を卒業したからといって、必ず就職できるとは限りません。卒業してからも、しばらく就職できないということは多いにありえることで、そんなときは、バイトをしていて、募集している企業があれば、それをめがけて就活をするということになります。そんなことから、日本の学生などは非常に恵まれていると思います。
それから、これは知っておいていただきたいのですが、日本では何やら、企業に入って長い間努めているといずれ管理職になるのは当たり前という風潮がありまずが、これも日本独特のものです。通常日本以外の国では、管理職になれる人は、4割くらいです。後の6割は、一生平社員です。これも厳しいといえば、厳しいです。しかし、この一見厳しそうに見えるということが、そうではないということもあります。平社員であっても、所定の業務をきちんと遂行できるなら、何年でも勤めていられるということもあります。特にヨーロッパではそうです。
しかし、アメリカなどでは、景気が悪くなったり、新たな技術が生まれて、その技術によって、いらなくなった従業員を解雇できるということもあります。これも、日本からみるとかなり厳しいですが、逆に日本のように再就職の機会がなかなかないということはなく、日本よりは、再就職の機会に恵まれています。また、定年のことをいうと、アメリカでは州によって、定年制度も違います。平均すると、70歳が定年です。だからといって、全員が70歳まで務めるというわけではありません。年金などもらって、早く定年する人も大勢います。要するに、年齢だけをもって、解雇できるのは、70歳を過ぎてからということです。
こうしてみると、日本は海外と比較すると、雇用環境が一見良いようにもみえますが、そうとばかりはいえないようです。先日の日曜日に、「新報道2001」という番組があり、雇用問題について政治家の皆さんと、ゲスト出演していた作家の渡辺淳一さんが話をしていました。
そうして、なかなか話が咬み合っていないところとか、マクロ的な見方が誰もできていないことに違和感を覚えました。それに、日本の雇用環境が特殊であることもあまり理解されていないような気がしました。この番組を見て、記憶に残っているうちに、上の記事をみたものですから、さらに違和感を感じてしまいました。
そうして、最終的に現在の就活生、それに就活予備軍になる方に言いたいことは、まずは、就活と日銀の金融政策には密接な関係があることを理解していただき、特にデフレのときには、就活はなかなかうまくいかないのは、あなたのせいではなく、経済のせいであることを理解していれば、精神的には楽であること。それから、日本のような特殊な雇用環境はいつまでも続くことはないことを銘記していただきたいと思います。ただし、雇用環境が変わったからといって悪いことばかりではないことを記憶にとどめていただきたいです。
それから、最後に、当たり前のことを認識していただきいです。私のアメリカ人の知り合いで、シリコンバレーのIT企業に長年勤務していた人がいましたが、 その方は、60歳になったときに、引退しました。そうして、優雅な年金生活に入りました。しかし、1年くらいしてからでしょうか、他の企業から請われて、再就職しました。その方とは、SNSで連絡をとりあっていましたが、65歳に近くなってから、来年引退するからそうしたら、日本に行くので案内してくれというメッセージを受け取りました。
ところが、12月になると、クリスマスカードが届き、そのカードを見ると、来年はまだやめられそうにないので、来年の日本訪問はできないという旨が書かれていました。その次の年になると、また、SNSで、来年は引退するから、日本に行くので、案内してくれというメッセージが届きましたが、またクリスマスカードが届き、それには、来年引退は無理なので、残念ながら日本には行けないという旨が記載されていました。そんなことがもう、3年も続いています。
この方は、経営者ではありません。今でも純然たるIT技術者です。SNSでやりとりをしていてわかったのですが、この方は、若い時からIT技術者をしていましたが、その時々で、変身して、高い能力を身に着けてきたようです。その時々で、新たな能力を身に付け、次々に変身しています。最初は、それこそ、コーディングから初めて、SEをやり、今では一つのゲームをつくるために、ありとあらゆる分野の人々の間をとりもつコーディネーターの役割りを担っています。その能力が高いので、会社のほうが、彼を離したくないようです。給料もかなり良いようです。
結局いいたいのは、この方のように、常に自分の能力を高める努力をして自ら変身していれば、周りから必要とされるようになり、就活でも、何でも、雇用関係で思い悩む必要はなくなるということです。余計なことに思い悩んで何もしないということではなく、意図して意識して、変わり続けていくべきなのです。このことを認識して、現在就活生の皆さんや、これからの就活予備軍の皆さんには頑張っていだたきたいと思います。
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