長野県など中部地方を中心にラブホテルを経営する宗教法人が関東信越国税局から約14億円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。ホテルの休憩料などの収入は本来、課税対象だが、国税局はこの宗教法人が休憩料の一部を非課税のお布施と偽っていたなどと認定した模様だ。
公益法人の一種の宗教法人は実質的な税率が低いため、同法人への追徴税額は重加算税を含めて約3億円。同法人は指摘を不服として異議申し立てをしている。これらのホテルは同県千曲市のキノコ・野菜類加工販売会社の前社長(71)が実質的経営者とみられ、同社の現社長(46)は「実際に国内の恵まれない子にお金を送っている。国税当局とは争う」と話している。
この宗教法人は「宇宙真理学会」。香川県多度津町の10階建てマンションの一室が主な事務所となっているが、朝日新聞が調べたところ、宗教施設は見当たらず、信者などの存在も確認できなかった。ドアノブには四国電力からの「電気の契約を廃止」という通知が下がっていた。近所の人によると、20年ほど前から人の出入りはないという。
同じ系列のホテルは長野をはじめ静岡、岐阜、群馬、新潟の計5県に少なくとも23軒ある。このうち長野市内のホテルには玄関に観音像と「宇宙真理学会」の看板が掲げられ、部屋には「世界の恵まれない子どもたちに喜捨をお願いします」「少しでも多くの幼い命を救うために」などと書かれた張り紙があった。
ホテルは、客から得た休憩料や宿泊料の6割ほどを課税対象の売り上げとして計上し、残りは客からのお布施(喜捨)扱いにしていた模様だ。フロントに問い合わせると、宿泊料の5500円のうち「2千円を喜捨に充てる」と説明した。
宗教法人に対するお布施などは非課税。このため国税局は、同法人がお布施を装って休憩料など収入の一部を税務申告から除外したうえ、法人税を免れたと判断したとみられる。また、同法人は94年ごろまで休眠状態だったとされ、宗教法人を隠れみのにするため買収された可能性もあるとみられる。
国税局は、同法人がホテルの土地建物の大半を所有しているほか、同法人の看板を掲げていることなどから、申告義務は同法人にあるとして、08年2月期までの7年間で総額約14億円の所得を隠したと判断した模様だ。
香川県によると宇宙真理学会は83年設立。登記簿の法人の目的欄には「大宇宙生命光元神を本尊として、宇宙の真理の教義をひろめ、儀式行事を行う」と記載されている。
日本のNPOのお粗末さはつい最近までの日本の貧困からか?
上のような記事など読んでいると、日本人のNPOに対する正しい認識が遠のいたり、ゆがめられたりするのではないかと危惧してしまいます。日本では、法律上の分類もあって、宗教法人をNPOと認識する人は少ないかもしれませんが、欧米ではその各々の組織の使命は別として、それが国の機関ではなくかつ営利組織なければすべてNPOとみなします。
病院、学校、宗教関係その他特殊なNPOなどすべてNPOという認識です。そういった意味では、この宗教法人もまさしくNPOです。この組織、はっきりいって宗教など最初からどうでも良く、税金対策として宗教法人を装っていただけなのだと思います。
最近、日本で報道されるNPOというと、グリーン・ピースや、 10人が亡くなった群馬県渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」を運営するNPO法人(特定非営利活動法人)「彩経会(さいけいかい)」などであり、あまり明るい話題を提供したり、前向きとか、社会変革などの話題はありません。
彩経会は、10人もの死者を出しながらも、存続されます。結局あの施設に入っていたご老人達のうちで生き残った人たちの行き場がないということもありますし、さらには、これからも入居したがる人も多いからです。それに、生活保護費をまきあげる悪質なNPOまがいの業者なども多くでてきています。地方自治体の縦割り行政などを活用して私服を肥やしている悪徳業者が増えてきています。
一般に日本のNPOなどは、この彩経会のように、経済的にも恵まれず、世の中のゆがみを一身に引き受けて生かさず、殺さずというような具合でようやっと存続できているものとか、それこそ、「和太鼓の会」などとか、趣味的なものが多く、若者にも興味を惹きそうな革新的なものはほとんど存在しません。
ここでいう革新的というのは、何もきらびやかなことを言うわけではありません。先日もテレビで見ていたら、ケニアで、農民達を養蜂家にするプロジェクトがありました。ケニアでは従来、ケニア産の蜂蜜は、流通していませんでした。これに目をつけた社会事業家が蜂の巣箱を割賦で販売して、そこでできた蜂蜜をケニア国内で流通させるという事業を展開しています。いまでは、ケニアの蜂蜜の4割を占めるまでになっています。養蜂家になった農民達は以前の比較するとかなり経済的に余裕がでて、子供達の教育もできるようになったとして喜んでいます。
アフリカなどの貧困社会では、何とか貧困を是正しようとして、社会事業家たちが活躍しています。豊かな社会である先進国でも、いろいろな社会問題に果敢に挑戦しているNPOがたくさんあります。そうして、実際に社会問題を改革し、人々は社会問題は解決できるものであり、しなければいけないものと考えるようになっています。
しかし、日本だけは、世界の中でも例外的です。ほとんど、NPOによる社会変革など誰も注目しないし、関心が薄いようです。これはどうしてなのか?
結局貧しい国では、貧困は切実な問題なので、今目の前にある人たちを何とかしようと頑張る人たちがいるということだと思います。西欧諸国においては、日本などとは違い、少なくとも数百年の時間をかけて、徐々に豊かになっていったため、先進国になってからも100年以上の歴史を有しており、いわゆる貧富の差などに対する対処が自然発生的に生まれていき、現状のNPOのようなものが形作られていったのだと思います。それに比較すると、日本は、いわゆる、先進国とはっきり言えるようになったのは、おそらく1960年代あたりからであって、先進国になってからわずか40年の歴史しかありません。
西欧では、NPOの歴史は日本と比較するとかなり古いです。日本の場合は、こうしたNPOが醸成される前に、経済大国になったしまったということが、現在のこの状況を生み出したのだと思います。無論、以前このブログにも書いたように、ソビエトの台頭によって、西欧諸国もその影響で一時NPOの仕事も政府がやるようになって、一時NPOの力が衰えたこともありました(これについて、過去の記事を参照してください)。しかし、ソビエト崩壊を境目に、国がすべて国民の面倒をみるなどということは幻想にすぎないことがはっきりしたため、西欧諸国でも、またNPOの活動を見直し、活動しやすく国が支援などもするようになりました。
そもそも、日本のように社会問題を解決するセクターは政府でだけであると思い込んでいる国は、先進国では日本以外にありません。社会問題を政府が直接実施するとどういうことになるかは、ソ連の崩壊と、先進国の福祉国家の運営の失敗で明らかです。政府ができるのは、社会問題のインフラを整備(NPOの財源などに関する法律、その他の法律、補助金、その他)することです。そのインフラの上で、営利企業が実施すると良いものは、営利企業がやれば良いし、そうではないものはNPOが実施するのです。
先日「たけしのテレビタックル」を見ていたら、年金問題、医療の問題、教育の問題などが話されいて、ある民主党の議員が、社会変革に関して、話をしだし、その中で「NPO」という言葉が出てきたので、何を言い出すかと期待して聞いていましたが、NPOという言葉がでてきただけで、結局それ以上のことはありませんでした。結局、こうした若手議員ですら、NPOの意味するところや歴史的背景など、ほとんど知らず、受け売りで話をしているだけなのだと思います。このままでは、日本ではいわゆる社会問題はいつまでも放置され改善・改革をする機会を失ってしまうかもしれません。
私は、今がこうしたNPOの活動を日本にも醸成すべき時だと思います。アメリカでは、何十年も前から、NPOが低所得者向けの住宅を提供して、過去においても、今でも成功を収め続けています。こうした、NPOでは、その構成員の中に最初から銀行や、建設会社がいます。NPOも、善意だけではな何もできません。社会変革をしようとしたら、大きな投資を、大勢の人々を一定の方向に向かって動員しなければなりません。NPOでは、民間営利企業が行った、サブ・プライム・ローンのような問題は起こしていません。サブ・プライム・ローンは、営利企業が本来非営利企業の分野に踏み込むと大失敗するという格好の事例になったと思います。
あの経営学の大家ドラッカー氏も20世紀は、政府や企業などの組織の時代だったが、21世紀はNPOの時代になると予言しています。
一方日本では、NPOが話題になるのは、上記の宗教法人の不始末など後ろ向きのものばかりです。ここで、マスコミなどもNPOに関して勉強して、正しい報道をしてもらいたいです。それに、何よりも、一般の人にもNPOに関してもっと知見を広めていただきたいです。
外国にいけば、お金をもらってのボランティア活動は当たり前にあります。給料をもらいながら、NPOで働く正規職員もかなりいます。電話帳では、NPOが独立した項目として扱われています。ボランティア活動とはいっても、管理は厳しく、所定の成果を得られないとクビになったりします。民間企業の優秀な人が、NPOのCEO(日本でいえば、社長)に転進する人はアメリカでは珍しいことではありません。アメリカの全NPOの歳入は、アメリカの国家予算に匹敵するほどです。
アメリカなどの国にいって、まともな人から「NPOとは何か?」問われて、「熱意にあふれた人たちが手弁当で行う奇特な事業」などと答えたら、きっと馬鹿だと思われます。
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