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2011年1月12日水曜日

【日経ビジネス】中国の高度成長は始まったばかりだ―【私の論評】はびこる日本国内での中国幻想?

【日経ビジネス】中国の高度成長は始まったばかりだ


最近日経ビジネスに、『中国の高度成長は始まったばかりだ』という記事が掲載されていました。そうして、以下のような趣旨で三菱商事などの中国事業トップのインタビューの内容を掲載していました。
2010年に日本を抜いて世界第2位の経済大国となった中国は今後どこまで成長を維持できるのか。2011年から始まる「第12次5カ年計画」では、量的拡大から質的向上へ政策の軸足を移した。世界で最も巨大で最も競争の激しい中国市場で日本企業はどのように戦っていくべきか。中国事業を取り仕切る各社の中国事業トップの言葉に、そのヒントを探った。
要するに、中国はこれからも経済成長を継続し、10年以内には2~3倍になるとか、とにかく良いことづくめの内容です。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110106/217828/

本日は、この内容に対する反論と、日本にはどうしてこのような中国幻想がはびこってしまうのか、掲載していきたいと思います。

【私の論評】はびこる日本国内での中国幻想?
まずは、中国が第二の経済大国になったという幻想についてですが、これに関しては、当の中国国内でも疑問の声があがっています。下に、その代表格ともいえる新唐人の動画と、動画の要約を掲載します。


【新唐人2010年8月9日付ニュース】7月30日、中国当局は「中国は日本を超え、アメリカに次ぐ世界第2の経済大国になった」と発表。しかし、専門家からはこれを疑問視する声が出ました。特に、中央政府が発表するGDPと地方政府が発表するGDPのギャップは大きく、水増しの疑いを指摘されています。 
2009年の中国の国内総生産―GDPは約460兆円。一方、日本は約476兆円。中­国は猛スピードで接近しています。 
また国連のアジア太平洋経済委員会と国際通貨基金(IMF)は、今年の中国の成長率を­9.5%以上で、世界第二の経済大国になると予測。イギリスのある研究所も、「中国は­購買力において、日本を超え世界第2の経済大国になった」と指摘しました。 
しかし一方で、中国・国家外国為替管理局の易局長は、7月30日、雑誌『中国改革』に­、「30数年の高度成長で中国人は貧困から脱却したが、中国はまだ発展途上国である」­と述べました。
北京理工大学の胡(こ)教授もラジオ・フリー・アジアに対し 
 北京理工大学 胡星斗・教授 RFAより 
「中国はGDPが高くても、一人当たりの平均所得は依然低い、しかも中国の労働者と農­民の所得は世界平均にはるか及びません。つまり中国は今国民ではなく、国家が金持ちに­なっているのです」 
中国政府の今年の財政収入は8兆元と見込まれており、世界第2位。しかし一人当たりの­平均GDPはわずか約3,800ドル、およそ32万円です。そのうえ、中国の最低年間­所得は世界183の国や地域のうち第158位となっています。 
中国社会科学院の易憲容研究員はボイス・オブ・アメリカに、「中国は高度成長の反面、­貧困率が非常に高く、北京など大都市の8 割以上は低所得者だ」と明かします。また、近年の経済成長は不動産によるものなので、­人々の豊かさを示してはいないと指摘します。易さんによると現在の問題は、不動産市場­を経済成長の道具としている点です。GDPを官僚の実績と結びつけているのが、根本的­な問題だといいます。 
7月31日現在、地方政府が公表した上半期のGDP総額は約18兆元で、国家統計局の­発表をはるかに超えます。それに、未公開の上海と貴州省を入れると、発表された数字よ­りも1兆5300億元も多いのです。 
中国人民大学・経済学院の劉副院長によれば、経済だけを重要視する体制が、地方の水増­しの横行を招いていると指摘します。 
アメリカ・サウスカロライナ大学の謝教授は我々の取材に対し
米・サウスカロライナ大学 謝田・教授 
「中国政府の成長率のノルマは政治的なものです。地方も同じで社会全体が
これに慣れてしまい、嘘をついても罰を受けません」 
中国の有名な経済学者・劉さんによると、地方政府のGDP のノルマ達成に最も役立つのが、投資を増やすこと。これは結局、政府の考え方と関係し­ます。また「GDPに占める国民の消費の割合は右肩下がり。多くの産業はすでに過剰生­産でも、成長率アップのため、大量に資金を投じる。結果、効率は下がるばかり。このよ­うな発展は続かない」と指摘します。 
国際エネルギー機関の最新の数字によると、中国はアメリカを抜き、世界一のエネルギー­消費国となりました。しかし、中国はこれを認めません。ただし、中国経済は質と効率に­問題があるので、経済の構造と発展方式の転換が必要だと認めました。成長率が徐々に下­がるのは必至で、中国の資源と環境はもう限界に来ているといいます。 
温家宝首相は今年7月、金融危機の深刻さは予想以上で、中国の金融政策も兼ね合いを取­りづらいと表明。中国経済には6つのジレンマがあるといわれます。つまり、「成長維持­と構造改革」、「インフレ安定と物価上昇の圧力」、「不動産価格のコントロールと経済­の維持」、「賃上げと製造業の不振」、「人民元切り上げと輸出不安定」。 
世界第2位の経済大国になったと胸を張る中国ですが、前途には数々の試練が待ち受けま­す。その言葉が本当なのか、世界は固唾をのんで見守ります。
新唐人記者がお送りしました。
私のブログでは、数年前から中国の異質性について、掲載してきました。まずは、中国中央政府による、GDPの発表は虚偽であることを何回も掲載してきました。さらに、中国社会の異質性などについても、数年前からことあるごとに掲載してきてきました。

それに関しては、いまさら再度詳細をここに掲載はしません、下の【関連記事】のところに掲載しますので、まだ読んでいないかたは、是非ご覧になってください。

上に記事に中国の経済の効率の低さなど掲載されていましたが、もともとGDPなど、どんな無駄なことをしていても、計上されます。日本でいえば、たとえ、過去においては日本では、バブルの時代に全く役にもたたない、道路、建物などが沢山つくられましたが、これもGDPの中に含まれます。極端なことをいえば、大きな山を一つ崩して、また元に戻すというような行為だって、実際に土木関係の会社が人を雇って実際にやったとすれば、GDPに計上されます。だから、GDPだけを持って、一国の豊かさを測ることはできません。

これに関しては、中国のサイトですら、疑問の声をあげています。China7というサイトに『「GDPで日本を超える」への安易な喜びに疑問』このことが掲載されていましたので、その要約を以下に掲載しておきます。
世界銀行は06年、中国では人口の4%が財産の70%を握っているとの統計を発表した。米国では人口の5%が財産の60%を握っている。深刻な貧富の差は、「一人当たりGDP」という指標もむなしいものとしている。中国のほとんどの人がこの指標の下に位置している以上、この指標には、大多数の貧困を隠す意味しかない。人々は、国家のGDPというむなしい幸福感も、一人当たりGDPというむなしい幸福感も必要としてはいない。必要なのは、本当の幸福感だ。 
中国は強大化しているのではなく、肥大化しているにすぎない。肥大化した体には本当の力はなく、そこにはさまざまな病のもとが隠されている。中国経済の実質的な価値は低く、科学技術の革新能力は不足している。高い経済成長率は、労働力を安価で売り、環境破壊を犠牲にして手に入れたものだ。肥大化のために払った代価は数知れない。環境の深刻な汚染、奇病の多発、商品の安全問題。国は富みても民は富まず。弱者たちは生存のための苦しみにうめいている。中国政府もこの問題を意識し、改善に努力している。だがどのような変革もすぐに成功するというわけにはいかない。 
このように、「中国のGDPが日本を超える」というだけで安易に喜ぶことは決してできない。 
中国のGDPが日本を超えるのは初めてではない。清朝の頃、中国のGDPは世界で一、二を争う水準にあり、日本をはるかに上回っていた。それにもかかわらず、清国は甲午戦争(日清戦争)で日本に惨敗したのだ。この原因はいろいろと考えられるが、当時の中国はGDPこそ高かったものの、茶葉や磁器などのローエンド商品で儲ける貧国だったということが挙げられる。一方、当時の日本はGDPこそ低かったものの、その実質的な価値は高く、大砲や船舶で儲ける富国だった。 
中国のGDPは1949年にも日本を上回っていたという。第二次世界大戦で日本は敗戦国となった。だが日本には科学技術が残っており、進んだ制度も残っており、優れた人材も残っていた。戦後20年の短い間で日本が復興したのはそのためだ。 
「一流の制度、一流の技術、一流の人材」という土台のないGDPは、肥大化することはできても強大化することはできず、困難な状況を乗り切る力があるとは言えない。
詳細をご覧になりたい方は、以下のURLを参照してください。
http://www.china7.jp/bbs/board.php?bo_table=1_6&wr_id=77

これら、中国のGDPの統計数値に関する、疑問、さらには中国のGDPを認めたとしても、その上での、中国国内ですら、このような声があがっているというのに、日本国内では、未だに中国礼賛、中国幻想がはびこっているのはどうしてなのでしょうか。

それは、やはり、中国の市場規模が壮大であるからです。何しろ、13億人以上もの人口があるわけですから、今経済が停滞していようが、なんであろうが、招来は莫大なものになるとの予測がたつからです。

次には、中国政府の意向もあるのでしょう、日本政府も、一部の企業も、将来の中国の膨大な市場を少しでも獲得したいので、中国政府の意向には敏感になるのだと思います。あるいは、中国政府の干渉などもあると思います。なにせ、あの尖閣での、事件に関する中国の対応ぶりをみていれば、たとえば、中国で事業を展開する企業などに対してどのような圧力をかけているか、想像に固くないです。

それに、日経ビジネスがインタビューをしているのが、中国事業トップとしていますが、実際に中国に進出している人ということも良くなかったと思います。実際に中国に住んだり、行ったりすればわかることですが、中国では明らかに情報閉鎖をおこなっています。だから、現地にいる人は、それ以外の人との間で圧倒的に情報量に差があります。事業トツプとはいえ、そうした情報閉鎖の環境にいることは間違いないです。さらに、実際に現地で事業を行っているわけですから、不用意な発言をすれば、自分が行っている事業にいつ中国政府が干渉してくるかわかったものではありません。こういう人の見方は偏っているとみるべきです。

しかし、これは日本の事を最優先に考えた場合、必ずしも良いことではありません。

まずは、中国の市場をあてにするということはどういうことでしょうか?確かに、中国の市場は膨大です。中国の市場を手に入れるということは一見良いことばかりに見えます。しかし、それは本当に良いことなのでしょうか?

私は、そうとうは思えません。現在の中国の市場は、煎じ詰めて言ってしまえば、先進国の50年前の市場のようなものです。こうした市場に製商品を提供することは、先進国にとっては非常に簡単で安易なことであり、何の工夫も必要がないです。過去にやってきたことを繰り返すだけです。新しい価値や、イノベーションを生み出すようなことは何もありません。要するに、何の発展性もないということです。

もし、日本をはじめとする先進国が、中国のような新興国の市場をすべて席巻したとして、それは本当に良いことでしょうか?そんなことはありません。そうすることによって、先進国は、新興国の需要増のみが、自国の経済発展の源泉ということになります。新興国の経済が伸びているうちは良いですが、経済が停滞したりしたらどうなるでしょうか。そのような場合は、自国の経済も伸びることができなくなります。要するに、新興国の経済次第ということになり、自律的な発展がなくなります。

あるいは、新興国が自力で、製商品をつくりだし、自国民に提供するようになったらどうなりますか?これは、かつて日本とアメリカの間でもあったような、繊維や、車の問題と同じことになると思います。最初は、繊維や、車両など日本では、国内向けに生産していたのが、アメリカに輸出するようになり貿易戦争といわれるまでになったのは多くの日本人が知るところです。

先進国が、中国の市場を席巻したと思っても、それはいずれは、中国の国内の企業にとって変わられるのです。それどころか、人件費が安いですから、もし技術力をあげてきた場合、先進国よりもはるかに品質の良いものが、逆に中国から輸出されるようになります。そんなことになれば、先進国はどうなりますか?

たとえば、公衆衛生など例にとってみましょう。現在は、中国は公衆衛生に関してはまだまだ下水道や浄化設備など完備されていません。この下水道、浄化設備の需要はとてつもないことになると思います。しかし、これは、先進国ではとっくに完備してしまったものであり、中国で工事をしても、何ら新しい発展もないわけです。最初は、先進国がやったとしても、いずれ中国の企業が自前の技術でやるようになります。しかも、これを格安でできるということになれば、先進国でメンテナンスなど格安でやるようになるかもしれません。そうなれば、先進国の自治体も、これに乗り換えるようになるかもしれません。

先進国が、中国などの新興国の需要ばかりを当てにしていれば、いずれ、このようなことになります。そんなことより、日本などをはじめとする先進国は、先進国の進んだ社会で何が出来るかを真剣に考え、新たな製商品や、システムを考えるべきです。中国では全く必要性のない、先進国の進んだ社会の中でのイノベーションを実施すべきです。

先進国の社会にも、中国の社会と比較すれば、全く異なった社会の問題や、いろいろギャプなどがあるはずです。これらに着目して、これらを解決するイノベーションを起し、これらを解決する製商品、サービスを生み出すことが先進国のあるべき姿です。中国の市場にばかり目を奪われて、これをないがしろにすれば、先進国は既存の枠組から一歩も踏み出すことができず、いずれは、中国や新興国の後塵を拝するだけになります。

この事に関しては、何も私だけが主張しているわけではありません。最近『ハーバードの「世界を動かす授業」』がビジネス書として7万部以上と破格の売れ筋となった著者のリチャード・ヴィトー氏も似たような提言をしています。その彼が、WBSに出演していました。下にその時放映された動画を掲載します。


こに動画には、出ていませんが、WBSでは、この動画が放映された後に、コメンテーターが博士の日本への提言を以下のようにまとめていました。
日本国内の消費を拡大する。
海外の事例をみること。
これは、今の日本の実情をみていれば、明らかです。このブログでは、 日本の内需拡大の必要性を再三にわたって主張してきましたが、それは、結局日本の消費を拡大せよというリチャード・ヴィトー氏の提言と同じことです。デフレギャップが存在する日本では、まずは、このデフレを克服しなければ、どうにもならないことは、何も私だけでなく、多くの人がそう思うのは当然のことです。リチャード・ヴィトー氏も、日本は中国を初めとする、新興国の市場を当てにしなさいなどということは、一言も述べていません。

それから、経済などに関しても、日本国内だけではなく、海外の例もあげてきました。これも、リチャード・ヴィトー氏の提言と同じことです。日本国内だけみていては、基本的な過ちを犯してしまいす。海外には、それこそ、いろいろな成功事例や、失敗事例が沢山あります。これを学ばないというのは本当にもったいないことです。日本の民主党など、本当に海外の事例に学ばないという姿勢がありありで、ときおり本当にイライラすることがあります。というより、最近は諦めの境地に近いですが゛・・・・・・・・・。

政治家や、企業経営者などは、まずは、日本国内の消費を拡大することを第一義とすべきです。また、日本だけではなく、海外の事例など参照すべぎです。むろん、海外の事例がそのまま日本にあてはまるということはないですが、各国の全体像を学ぶこにより、基本的な経済・社会の動きなどを根本を学び、その根本に立脚して、日本の将来のことも考えられるようになるからです。

おそらく、この中には、当然時系列のものの見方も入っていると思います。そうです。日本や海外の歴史です。これらも必要になってくると思います。

とにかく、日本の消費を拡大することや、海外の事例を全く学ばなければ、今の日本の政治家のように、短期的な政局ばかり追いかけるようになり、真の成果をあげることはできなくなるでしょう。
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