学内のメールシステムに、グーグルなどの民間企業が無償で提供するクラウド型サービスを採用する大学が増えている。
読売新聞の調べでは、少なくとも全国の78大学が導入。経費を節減したい大学側と、自社サイトの利用率アップを狙う企業側の思惑が一致した結果だが、データを管理するサーバーが海外に置かれるケースもあるとみられ、専門家からは情報管理の安全性について疑問視する声も出ている。
読売新聞が全国の主要大学に聞き取り調査をしたところ、国公立大14校、私大64校がシステムの保守管理を一部または全部、企業に委託していると回答した。これは全国で800近くある大学の約1割を占める。
2007年に日大がグーグルのシステムを採用したのが最初で、その後急増。導入すると、教職員や在学生、卒業生らにメールアドレスが付与され、スケジュール管理機能や、ネット上での文書共有機能も利用できる。アドレス表記は大学で独自運用していた時と同じで、部外者には企業が管理するものとは分からない。
(2011年1月17日03時08分 読売新聞)
【私の論評】情報や知識が盗まれたことによって、すぐに競争力を失う企業は最早まともな企業とは言いがたい?!
このことについては、これをクラウドを用いないで実現するとしたら、とてつもない規模のシステムと労力が必要になることは、以前このブログにも掲載しました。
その内容の一部を下に掲載します。
多くの会社では、Google Apps(一人5000円/年)程度の契約をしています。これで得られる容量は、メールで25Gバイトである。ダウンタイム基準で99.9%のサービスレベルを保証しています。れは、最近さらに改善されました。
これを従来のように、インターネットやクラウドを使わずに、ベンダーからサーバーを仕入れて、メールサーバー、ファイルサーバー、認証サーバーなどを設定し、社員1名にこれだけの保管領域とサービスレベルを提供するとなれば、膨大な投資を必要とします。
これが、他のシステムの場合どういうことになるでしょうか?経理のシステムであろうが、CRMであろうが、今では、大人数の人が入力したり、多方面から情報が入ってくるようになっています。そんなとき、上のように自らサーバーを持って実施するということになれば、それこそ、気が遠くなりそうです。
まさに、クラウドを用いなければ、どこの企業でも、とてつもないことになります。しかし、情報資産を一度インターネット上のクラウドに「出してしまえば」、どこからでもアクセスできます。わざわざ、LANとか、WANなどを組む必要性はありません。
それに、Mail、Calendar、ファイルサーバー(ファイル共有)といった、基本的なグループウェアが、今ではまさに、クラウドから超低コストで提供されているのです。
大学に限らず、企業でも、レガシー資産(主に、昨今のようにWeb化が進められる以前に、メインフレームを介してネットワークを構築していたシステムなどの資産)を抱えていたり、グローバルな環境に対応する必要があります。世界の多くの国ではインターネットの利用環境が整っているとは言い難いので、その対応には、多くの労力と時間がかかったりします。これに関しては、あのペンタゴンが9.11の時に使用していた情報機器が相当古かった(7、8年前のパソコンなど使っていた)ことでも、明るみに出たことがありました。
しかし、世の中はすでに、インターネットを前提として進んでいます。以前にも、このブログで掲載したように、Googleは、Chrome OSを搭載した超低価格パソコンにより、貧困層の人々にも自分たちのクラウドを活用できるような体制を整えることを目論んでいます。インターネットそのものは、そもそもデーターが他者のシステムを通過することを前提としているため、ご存じのように最初から情報漏洩に関しては、脆弱性があることははっきりしています。ただし、もともとは、軍事用に作られていて、世界中の拠点(ノード)のほとんどが消滅してしまっても、残っているノードを経由すれば、かなり広範な通信を行うことができるという利点もあります。従来の通信方式ではとてもできないことです。
やはり、こうした危険性がある事を前提とすべきですが、かといって危険に対して過度に神経質になれば、とても使える代物ではありません。
それから、はっきり言えば、大学の情報管理、それに日本の企業などの情報管理も、意外とゆるゆるなところがあります。それは、例の尖閣ビデオが流出した海上保安庁の組織などをみればおわかりになると思います。
あのように、ゆるゆるの組織であれば、かえって、たとえばGoogleのクラウドなどを利用した情報管理システムをもちいたほうがはるかに安全だと思います。
それから、現在は知識社会であるということがあります。あの経営学の大家ドラッカー氏は、知識社会においては、競争力の源泉は情報でも知識でもないとしています。高度の知識社会においては、知識は、いずれ簡単に伝わってしまうので、これを競争力の源泉とすることはできないとしています。では、源泉は何かといえば、それは知識労働者そのものであるとしています。
要するに、知識労働者が生み出した、情報や知識などインターネットを通じて、他社に漏洩したとしても、その事自体は、本質的なことではないというのです。この事例として解りやすいのは、トヨタです。トヨタは、見学に行く人に対しては、聴かれれば、何でも開示するそうです。要するに、トヨタの強みは、情報や知識ではなく、トヨタで働いている人そのもの、トヨタの企業文化そのものにあるということです。
トヨタで働いている人や、トヨタの企業文化のない他の企業がトヨタのやりかたを、文書や動画などや、中で働いている人から逐一、詳細に聴きだしたとしても、それらが存在しない企業では、トヨタのようにはできないということです。
また、最近ではアップルなどの企業で特に顕著なのですが、たとえば、あの超薄型ノートパソコンである、アップル・エアーを販売する1年以上も前から、アップル社は、エアーに関する情報を自社のサイトや、YouTubeに発表していました。それも結構な情報を公開していました。そのためですか、多くの人が販売されたときには、すでに形や、従来のものとの違いなど、ほとんど知っているような状態でした。そうして、販売の数ヶ月前には、すでにエアーの偽物が中国で発売されているというような状況でした。
このように、最近のIT企業はプロダクト情報に限らず、長期戦略までも、前もって発表してしまうということがしばしば行われています。そうして、こうした発表自体がプロモーションにもなっています。こういう発表をすることにより、黙っていても、ブロガーなどがサイトにこうした情報プラスアルファを掲載し、多くの人日度の関心を惹きこれに関係したプロダクトなどの販売初日は大盛況ということになります。そうして、前もって発表した戦略を着実に実行していく企業に人気が集まり、株価も上がるというわけです。
アップルのiPhone4や、iPadなどにも同じようなことがあてはまります。アップルは、iAdに関する長期的な戦略も発表しており、多くの企業の関心を呼び起こしています。旧来の企業のように、何でかんでも、隠蔽し、直前あるいは販売直後に明かすというようなところは、販売初日にお祭り騒ぎになるということはないです。最近の日本企業による新製品発表など、まさにそのような状況です。確かに、アップル製品の詳細を知ったから、あるいはアップルの戦略の詳細を知ったからといって、同じことを他の人や、他の企業ができるわけではありません。ジョブスのようにアップルで働いている人や、アップルの企業文化があるからこそ、アップルの事業ができるのであり、それ以外の企業が似たようなことをしても、それは単なる模倣でしかありません。
また、最近ではアップルなどの企業で特に顕著なのですが、たとえば、あの超薄型ノートパソコンである、アップル・エアーを販売する1年以上も前から、アップル社は、エアーに関する情報を自社のサイトや、YouTubeに発表していました。それも結構な情報を公開していました。そのためですか、多くの人が販売されたときには、すでに形や、従来のものとの違いなど、ほとんど知っているような状態でした。そうして、販売の数ヶ月前には、すでにエアーの偽物が中国で発売されているというような状況でした。
このように、最近のIT企業はプロダクト情報に限らず、長期戦略までも、前もって発表してしまうということがしばしば行われています。そうして、こうした発表自体がプロモーションにもなっています。こういう発表をすることにより、黙っていても、ブロガーなどがサイトにこうした情報プラスアルファを掲載し、多くの人日度の関心を惹きこれに関係したプロダクトなどの販売初日は大盛況ということになります。そうして、前もって発表した戦略を着実に実行していく企業に人気が集まり、株価も上がるというわけです。
アップルのiPhone4や、iPadなどにも同じようなことがあてはまります。アップルは、iAdに関する長期的な戦略も発表しており、多くの企業の関心を呼び起こしています。旧来の企業のように、何でかんでも、隠蔽し、直前あるいは販売直後に明かすというようなところは、販売初日にお祭り騒ぎになるということはないです。最近の日本企業による新製品発表など、まさにそのような状況です。確かに、アップル製品の詳細を知ったから、あるいはアップルの戦略の詳細を知ったからといって、同じことを他の人や、他の企業ができるわけではありません。ジョブスのようにアップルで働いている人や、アップルの企業文化があるからこそ、アップルの事業ができるのであり、それ以外の企業が似たようなことをしても、それは単なる模倣でしかありません。
現在の高度な知識社会において、情報や、知識が盗まれた事により、すぐに競争力を失ってしまうような企業や、有能な知識労働者を多数惹きつけなおかつ動機付けのできないような企業は、最早最初から競争力のない企業であるとみなすべきでしょう。
こうしたことを考えれば、コミュニケーション・コストや、投資コストを大幅に下げるために、クラウドを使うのは当然のことだと思います。それに、最近では、重要なものに対しては暗号使うとか、セールス・ドットコムのように、日本国内にサーバーを設置するところもでてきます。クラウドを使うことは、確かに諸刃の剣であることは否めませんし、個人情報などは大切に保管しなければならないことには変わりはありませんが、現在の世の中の移り変わりの激しさを考慮した場合、何らかの形で使うことを検討し、長期戦略に組み入れない企業に明日はないでしょう。
大学も、企業もおそれることなく、反面情報管理などへの備えは怠らず、クラウドを前提として情報戦略を組んでいくべきでしょう。そうしないところは、時代の趨勢から取り残されていくことになります。あまりに、情報漏洩防止などに過度に固執して、クラウドを使うことを検討もしない企業や個人も、知識社会の中では淘汰されていくことになることでしょう。
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