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2020年7月2日木曜日

【有本香の以読制毒】「千万人と雖も吾往かん」 高須院長の愛知県・大村知事リコール運動、成立すれば日本の戦後政治に風穴を開ける一大事―【私の論評】この戦いまだ、始まってもいない、戦いの火蓋は8月1日に切っておとされる(゚д゚)!

【有本香の以読制毒】「千万人と雖も吾往かん」 高須院長の愛知県・大村知事リコール運動、成立すれば日本の戦後政治に風穴を開ける一大事

    高須院長(左)と、名古屋市の河村たかし市長は繁華街で「知事リコール」を
    呼びかけた=6月28日、名古屋市中区

 始まりは6月1日(月曜日)の夕方近く、一本の電話からだった。着信画面を見ると作家の百田尚樹さんだ。

 「急な話なんやけど、明日の午後、高須先生が名古屋で大村知事リコールの記者会見するんやて。有本さん、現地、行かれへんよな」

 夕刊フジでもおなじみの高須克弥院長(=連載『Yes!高須のこれはNo!だぜ』)が、昨年夏の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」の件で、愛知県の大村秀章知事に怒り心頭、リコール(解職請求)を考えておられることは、院長のツイートなどから察していた。

 それにしても急な展開だ。今日の明日。少し調整の時間を…と答えようとすると、それを見透かしたように受話器の向こうから、「(評論家の)竹田恒泰さんは『行く』と即答してくれたで」

 と百田さんが一言。思わず、「わかりました。『私も参ります』と高須先生にお伝えください」と答えていた。

 翌日、会見場に着いてみると、科学者の武田邦彦氏もおられた。高須院長の応援団として、インターネット番組「真相深入り 虎ノ門ニュース」のレギュラー出演者が期せずして顔をそろえた。

 私は会見を取材するつもりで出かけたのだったが、その場の雰囲気に圧され、高須院長と並んでメディアの質問を受ける側に座ることになってしまった。

 会見の様子と、その後1カ月間の高須院長の見事な闘いぶりは夕刊フジでも折に触れ報じられているので、ここではなぞらない。ただ、肝心ないくつかのみ、あえて強調しておきたい。

 まず、都道府県知事のリコールは、過去に例がない。数百万の有権者に「イエス・ノー」を問う知事のリコールは、その運動が惹起(じゃっき)されたことすら例がないのだ。もし成立すれば、史上初、日本の戦後政治に風穴を開ける一大事である。が、その重大性にメディアの皆さまが、いまひとつピンときておられないように見える。

 第2のポイントは、今回の「争点」だ。

 高須院長や私たちが問題視しているのは、端的に言えば、極めて不適切な公共事業であり、税金の使途である。前代未聞のとんでもない公共事業をゴリ押しした大村知事の行政手法を「許せん」と、高須院長は一貫して主張している。

 ところがこれを、あたかも「表現の自由」を認めない偏狭な考えの人々が騒いでいるかのようにミスリードするメディアがあるのは甚だ残念である。

 日本国憲法第一条で、「日本国と日本国民統合の象徴」とされている天皇陛下であられた昭和天皇の写真をバーナーで燃やし、灰を足で踏みつける。良識のある日本国民なら正視に耐えないこの表現でも、私的に行う分には強制的にやめさせることはできない。

 しかし、公金を注ぎ込む公共の場に展示するものとして、ふさわしいと言えるのか。それを改めて愛知県民に問おうというわけだ。

 加えて、昨年10月3日発行の本コラムで書いたとおり、この企画展のプロセスには重大な疑惑がつきまとっている。慰安婦像など、不適切とされそうな作品の存在を「隠して」文化庁に補助金申請したのではないかとの疑惑が完全に払拭されたとは言い難い。一部関係者の証言どおりなら、補助金詐取かとも思えてしまう。

 ところで、高須院長はがんの闘病中でもある。その体でまさか、蒸し暑い名古屋の街頭に自ら立ってハガキ配りまでするとは思わなかった。文字通り命を削って、「日本のため」「郷土・愛知県の尊厳のために」闘っているのだが、院長に悲壮感はない。

 「戦いの火蓋は8月1日に切っておとされます。(中略)(署名受任者のハガキに署名して)身内となった皆さん、僕の総攻撃の合図を待ってください。僕は一瞬でリコールを成立させ、勝負をつけるつもりです。歴史に残ります」

 院長のこのツイートにしびれたのは私だけではないだろう。風は少しずつ、しかし着実に変わってきている。

 高須院長は2日、県議会での陳述に立つ。まさに「千万人と雖(いえど)も吾(われ)往かん」の気概を示されるに違いない。とかく群れるのが好きな永田町の皆さまよ、よく目を開いて高須院長の闘いぶりをご覧あれ。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】この戦いまだ、始まってもいない、戦いの火蓋は8月1日に切っておとされる(゚д゚)!

本日、愛知県議会の委員会で、大村知事の「不信任決議」をするよう、議員に直接訴えました。それについては、朝日デジタルが以下のように伝えていました。
「すごく悲しい」高須院長が議員に直接訴えるも…愛知県知事のトリエンナーレ巡る不信任決議求める請願は“不採択”
高須氏、2日、愛知県議会の委員会にて
愛知県の大村知事に対するリコール運動を進めている高須クリニックの高須院長。2日、愛知県議会の委員会で、大村知事の「不信任決議」をするよう、議員に直接訴えました。
高須院長はあいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」の内容や運営を巡り、大村知事の対応に問題があったとして6月、「不信任決議」を求める請願を県議会に提出していました。
2日開かれた議会運営委員会ではその請願が取り扱われ、高須院長は「大村知事はあいちトリエンナーレの開催で日本を愛する人々を深く傷つけた」として、不信任決議をするよう求めました。
これに対し出席した議員からは、「トリエンナーレには多くの問題があったが、この案件だけで信任・不信任を決めるべきではない」という意見が出され、全員一致で請願は不採択となりました。
高須院長:「初めからこういう結果になるだろうということは思っていたんですけど、活発な討論が少しは行われるかと思ったら全くなしで。これが民主主義かなと思うとすごく悲しい」
何やら、この記事を読んでいると、尻切れとんぼで、あたかも高須院長のリコール運動そのものが終わってしまったかの印象を受けます。そうではありません。高須氏は委員会終了後、報道陣に「悲しい思いになった。(県議会も)一緒にリコールを働きかけようかな」と話したことが他のメディアで報道されています。

県議会が不採択をしたという 事実が報道されたということは、 テレビ局の思惑はどうあれ、 県議会のスタンスを世に、特に愛知県民に広めてくれたと思います。 リコールが成功すれば、 県議会のスタンスが正しいのかどうかも 問われる事になるでしょう。 新知事の脇を固める県会議員の準備は すでに始まっているのかもしれません。

ブログ冒頭の記事の有本氏のいうとおり、現在まで都道府県知事のリコールは、過去に例がありません。ただし、市町村長のリコールなら過去に何度かあります。

特に、鹿児島県阿久根市のリコール運動については、覚えていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

2008年8月31日、竹原氏が阿久根市議会議員を辞職して、阿久根市長選挙に立候補し、初当選。

2009年2月6日、阿久根市議会が市長不信任決議案を全会一致で可決し、同月10日、竹原は市議会を解散しました。2009年4月17日、出直し市議会議員選挙後初めての市議会臨時会において、再び市長不信任決議案が提出され、賛成11、反対5の賛成多数で可決し、失職しました。これに伴い、同年5月31日に投開票が行われた出直し市長選挙に出馬し、再選を果たしました。

2010年には、阿久根市で養鶏業を営む西平良将ら、「反竹原」を掲げる市民グループにより市長解職請求が行われ、2010年12月5日に投開票が行われた解職の是非を問う住民投票において、解職賛成票が過半数を占めたため、市長を再度失職。復職を狙い、2011年1月16日執行の出直し市長選挙に立候補したが、約850票差で西平良将に敗北しました。

失職した竹原氏
2008年に竹原氏が市長に当選して以来、迷走を続けていた阿久根市議会にとって大きな転機となる出来事でした。

同年もう一つの顕著な例が名古屋市でした。名古屋市でもリコール、住民投票、再選という同様のサイクルが繰り返さました。ただし、こちらの場合、河村たかし市長は、議論を呼んでいる自らの政策について住民の意思を問うため辞任し、2011年初めに70%という圧倒的得票率で再選を果たしました。

当時の河村市長

また、同日行われた市議会解散の是非を問う住民投票では、賛成が過半数に達し、解散が決定しました。出直し選は3月13日に行われました。河村市長が議会と対立する原因となった主な政策は、市民税の10%削減と市議報酬の800万円への半減案でした。

河村氏と共に勝利を祝ったのが、同日行われた任期満了に伴う愛知県知事選で、やはり住民税減税を公約に掲げて当選を果たした大村秀章氏でした。両氏の勝利は、当時米国の茶会党に似た、既存体制を敬遠する新たな地域政党の台頭を示すものとされました。

元民主党議員の河村氏は、昨年4月、太平洋の向こう側で興隆していた茶会党の動きに呼応するかのように、自ら地域政党「減税日本」を立ち上げ、選挙に臨みました。元自民党議員の大村氏も、選挙にあたって自らの政党「日本一愛知の会」を結成しました。

このような、河村氏と、大村氏ですが、今回はリコールする側の河村氏と、リコールされる側の大村氏ということで、なんとも皮肉な話です。

それにしても、元々は国会議員だった二人ですが、片方はリコールを受けても、再当選し、市民から愛される市長になり、片方は、とんでもない知事になってしまいました。

この戦いまだ、始まってもいません。戦いの火蓋は8月1日に切っておとされるのです。

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