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2016年1月26日火曜日

やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い ―【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?

やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い 

グラフ、動画、写真は、ブログ管理人挿入 以下同じ

中国は2015年の実質国内総生産(GDP)成長率が前年比6・9%になったと発表した。中国の統計で成長率が7%を割り込むのは25年ぶり。不動産投資などが伸び悩んだのが原因だと説明している。

資本主義国であれば、目標が7%で実績が6・9%なら何の問題もない。目標達成であり、この程度の差は統計誤差の範囲だといえる。

ただし、社会主義国では経済統計の「捏造(ねつぞう)」は日常茶飯事である。中国のほか、日本、香港、韓国、シンガポール、台湾における最近20年間の経済成長率を統計分析すると、中国の統計数字は突出して動きが少ない。

中国の統計の問題を指摘するのは、中国政府と何ら関わりのない独立系の人たちだ。どこの国の金融機関であっても、政府ににらまれると、中国国内での金融活動に支障が出るので、中国の経済統計が怪しいとはめったにいわない。

ただし、最近ではあまりの統計数字と実態の乖離(かいり)が激しくなっているので、統計問題は徐々に表面化しつつある。

中国の経済統計は実体経済の正しい姿と言うより、政治的なメッセージと受け止めるべきものだ。中国政府の意図は、対外的には「中国経済は良くないが心配しないでほしい」という願望、対内的には「7%成長は政治的な強い意志だ」との表明である。


中国の経済統計は、軍事パレードと同じような、政治的メッセージと同列とみるべき

GDP発表の1週間ほど前に発表された貿易統計は、外国との関係があるので、捏造しにくい。それによれば、15年の輸入は14・1%の減少である。輸入減の原因は資源価格の低下によるものと説明されているが、中国が発表した経済成長率が正しいなら、猛烈なデフレ経済になっていないとおかしい。

要するに、貿易統計が正しい場合、経済成長率が正しくないか、デフレ経済かということになってしまう。どちらにしても、中国経済は正常ではないというわけだ。

中国当局は、これまでの投資中心の成長から消費中心へソフトランディング(軟着陸)していくと説明しているが、経済成長論から見れば、まさに1人当たりGDPが1万ドル近辺で停滞する「中進国の壁」にぶち当たっている感じだ。

この壁を破るのはかなり難しく、政治体制も含めた構造改革のようなものが必要だろう。特に社会主義国が中進国の壁を破るのは並大抵ではない。目先を考えても、資本の自由化や国有企業改革が必要であるが、これらは中国の一党独裁主義の政治体制を揺るがすものだ。

最終的には、民主化して一党独裁を打ち破る政治的な自由が必要になるが、それがどこまでできるだろうか。最近の中国政府は逆に、人権活動に対する締め付けを強化している。

習近平指導部は体制維持に必死であるので、経済的自由につながる政治的な自由を許すような環境にはない。中国の株式市場は、社会主義の中での資本主義という「木に竹を接ぐ」ようなもので、そこにひずみが生じているようだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?

ブログ冒頭の、高橋洋一氏の記事には、中国の貿易統計が正しい場合、経済成長率が正しくないか、デフレ経済かということになってしまう。どちらにしても、中国経済は正常ではないと述べています。

まさに、その通りです、ブログ冒頭に掲げたグラフは、マネックス証券が作成したものです。輸出入の統計は、中国政府が出す統計などを参照しなくても、中国以外の各国の対中国輸出・輸入統計を調べてそれを合計すれば、おおよそ正しい数字が出ます。

このグラフをみると、高橋洋一氏が指摘したように、昨年はマイナスです。貿易収支は、プラスですが、それは輸出に比較すると輸入が相対的に減少しているので、プラスになっているだけです。

このグラフは、日本のマスコミの記者の方々も良く勉強されると良いと思います。何やら、日本の新聞の経済記事を読むと、貿易収支はプラスであることが無条件でその国の経済にとって良いことの良いような記事を良く見かけます。しかし、そうではないことをこのグラフは見事に示しています。

貿易収支が真っ赤であっても、その国の経済にとって悪いどころか、良いこともあります。たとえば、ある国がそれまで景気が良くなくてデフレだったのが、緩やかなインフレに転じて良くなった場合、一時的に輸入が突出して増えて、貿易収支が赤になることがあります。

だから、貿易収支黒=経済が良い、貿易収支赤=経済が悪いなどということは、断定できません。赤字、黒字などというのはそれだけでは、何を表しているわけでもありません。その背景を知ることにより、はじめてその意味するところがわかります。

それては、さておき、上のグラフと、中国GDP統計を比較すれば、確かに中国のGDPの統計には問題があります。

上の記事でも指摘している通り、"中国の経済統計は実体経済の正しい姿と言うより、政治的なメッセージと受け止めるべきもの"なのです。

これに関しては、経済統計ばかりではありません。中国の主張する歴史もそのように解釈すべきです。抗日70周年記念軍事パレードもそのような「政治的メッセージ」の一環であると受け止めるべきです。

抗日70周年軍事パレードに参加した女性兵士は平均年齢20歳、
平均身長1メートル78センチのモデル並みのスタイルだった
中国の「政治的メッセージ」は、官僚(中国には選挙がないので政治家は存在しません、政治に関与するのはすべて官僚です)だけに及ばず、学者も発信します。

「諸君!」(2006年)2月号の大特集『もし中国にああ言われたらこう言い返せ』の中の櫻井よしこさんの論文に、「中国社会科学院」の研究所員であ学者が登場しますが、これがおよそ学者とは思えないとんでもない「政治的メッセージ」を発信しています。

戦後60年(ブログ管理人注:この記事の内容は戦後60年のものだった)の間に中国政府が日中戦争の犠牲者の数字をどんどん水増ししてきたことについて、櫻井さんと中国社会科学院の研究所員とのやりとりの箇所から引用します。

 中国人による“数字”について、私は2005年夏、興味深い体験をした。 
 「文藝春秋」の企画で杏林大学客員教授の田久保忠衛氏と共に北京を訪れ、中国を代表する学者2名と共に日中歴史問題について論じたときのことだ。 
 中国側の学者両氏は、歴史問題では日本が悪いとの主張を、表現を変えて繰り返した。 
 私は彼らに、320万人から570万人、2168万人、さらに3500万人へと被害者数が増加した根拠について問うた。 
 さらに、たった一種類しかない中国の国定教科書で、日中戦争の犠牲者は1960年までは1000万人と教えられ、85年には2100万人と改訂され、95年には3500万人と、なんの説明もなく増えていったのはなぜかとも問うた。 
 彼らは当初、右の問いには全く答えようとせず、話題を他の点に移そうとした。 
 しかし、中国流の事実の歪曲を知るにはどうしても答えてもらわなければならない。 
 三度目に問い質したとき、中国社会科学院研究所研究員の歩平氏が次のように答えたのだ。 
 「戦争の犠牲者についてですが、歴史の事実というのは孤立して存在するのではなく、それは感情というものに直接関係してくるということを申し上げたいと思います」 
 馬脚を露すとはまさにこうしたことだ。 
 日中戦争の犠牲者の数の理不尽な増加が国民感情に直結していると言うのであれば、その数は日本への恨みと憎しみの感情表現に他ならず、歴史事実とはなんの関係もない。 
 しかもその恨みと憎しみを愛国主義教育によって植えつけ、増幅させるのが中国の国策である限り、反日感情も、犠牲者数も、その主な部分は中国政府自らが創作したものだと言われても弁明できないだろう。 
 右のくだりで歩平氏はこうも述べた。 
「たとえば南京大虐殺の30万人という数字について、当然、根拠はありますが、これはたんに一人ひとりの犠牲者を足していった結果の数字ではありません。被害者の気持ちを考慮する必要もあります」 
 中国を代表する立場で、社会科学院の学者が、事実上、南京事件の犠牲者、30万人という数も、事実ではないと言っているのだ。 
 中国国民の感情の反映であれば、この数字もいつの日か、日中戦争全体の犠牲者の数が根拠もなく増加したのと同じく、増えていく可能性はゼロではないだろう。
要するに、一言で言ってしまえば、「中国の大東亜戦争時の犠牲者数は、人民の感情に比例する」ということであり、 これは政治的メッセージであるということです。

中国政府による発表は、このように多くの場合、真実や歴史とは関係なく、「政治的メッセージ」と受け取るべきなのです。

南京虐殺記念館に掲げられた政治的メッセージ「犠牲者数30万人」

そうして、この「政治的メッセージ」は、対外的だけではなく、中国国内でも広く流布されています。

たとえば、中国の首相である李克強が、かつて「中国の統計はあてにならない」と自ら述べています。中国の幹部ですら、中国のGDPの本当の値を知らないようです。

このような状況で、彼らは中国経済をコントロールしなければならないのです。これをたとえると、まるで夜中のハイウェイを車のライトもつけず、スピードメーターなしで走っているようなものです。いつどこで、事故が起こるかわかったものではありません。

歴史に関しても、南京虐殺は本来ファンタジーに過ぎないのですが、中国では30万人も虐殺されたとて歴史教科書などに掲載し、それで多くの人民が教育を受けます。それで、多くの人民が怒りを覚えて、反日デモなども政府演出による官製デモ以外の人民による自発的なデモを繰り広げました。

しかし、最近ではそれも下火になっています。なぜなら、反日デモをそのまま放置しておくと、いつの間にか反政府デモにすりかわってしまうので、最近では中国政府が反日デモを規制しているという有様だからです。

経済でも、歴史でも、真実を公表しないで、いつも「政治的メッセージ」を発信するという繰り返しを行っていれば、経済も破綻し、歴史観も破綻し、いずれとんでないことになるのは明らかです。

何よりも、政府は真実を知ろうとする人民を愚弄しているということになります。政府の力量不足で、経済があまりパッとしなくても、人は何とか生活できれば、たとえ貧乏であっても、それには耐えます。しかし、どんなに豊かであろうが、なかろうが、「政治的メッセージ」などの真摯さの欠如には耐えられません。

中国では、建国以来選挙はありません。だから中国には、私達が想定するような政治家など存在しません。存在するのは、官僚だけです。しかし、そんな中国でも、リーダーは選出されます。そうして、その中国のリーダーたちが、真摯であるかどうかは人民は、1〜2年でわかります。リーダーたちの、無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、人民も寛大たりえます。しかし、真摯さの欠如は許しません。決して許しません。人民はそのような者をに選ぶことを許しません。

中国が発信するメッセージはほぼ「政治的メッセージ」とみなすべき、そこに人民の声はない
今のところ、人民が反発しても、中国のリーダーたちは人民を弾圧して、仮初(かりそめ)の平穏を演出しています。そうして、国内外に自分たちの「政治的メッセージ」を発信して、何とか中国共産党の正当性を保持しています。

「政治的メッセージ」とは、自分たちの正当性をアビールするために発信するものです。正当性がはっきりしていれば、このようなメッセージを発信する必要などありません。

日本でも無論「政治的メッセージ」が皆無とはいいません。しかし、もともと選挙という民主的手段で選ばれる日本の政治家は、中国のリーダーたちのように、「政治的メッセージ」をあまり必要とはしません。

とはいいながら、日本でも政治家ではない財務省の官僚による「政治的メッセージ」が新聞などでよく見られます。先に示した、貿易収支の意味をあまり理解しないようなマクロ経済に疎い経済記者が、財務省の「政治メッセージ」である観測記事など、あまり吟味もしないままそのまま掲載したりしています。

そうして、政治家や政党も、「政治的メッセージ」を発信することもあります。しかし、中国と比較すれば、日本などの先進国では「政治的メッセージ」はかなり少ないほうです。これは、政治的メッセージの有無というよりも程度問題であると思います。

私達も、中国のメッセージは多分に「政治的メッセージ」が含まれていることを理解すべきです。そうして、中国の「政治的メッセージ」とはあたかも中国人民の感情を表すように装いながら、中国政府の正当性を主張するものです。それを理解せずに、中国と接すれば、真の中国が理解できなくなります。

しかし、このようなことは長続きするはずがありません。いずれ、中国の現体制は崩壊するものとみなすべきです。なぜなら、「政治的メッセージ」を頻発しなければ、成り立たない政府とはかなり脆弱だからです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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