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2017年1月3日火曜日

ヴェネツィアの海が、支那の海になる日―【私の論評】権力闘争に手詰まりの習近平は間もなく失脚か?

ヴェネツィアの海が、支那の海になる日

ヴェネツィアの港が、インドやケニアを通る新しい通商ルート「海のシルクロード」の発着点だ。ギリシャのピレウス港のケースに続いて、支那の地中海に対する関心をあらためて裏付けている。

2012年に竣工した世界最大のコンテナ船「CMA CGM Marco Polo」。
支那〜欧州ルートで活躍が期待されている。
かつて何世紀もの間にわたり、アドリア海はセレニッシマ(訳注:ヴェネツィア共和国の称号。「晴朗きわまるところ」の意)の「湾」であった。長さは800km、イタリアの沿岸とバルカン半島沿岸の間の広さは平均150km。そこにはサン・マルコのライオン(訳注:ヴェネツィア共和国旗)の旗がはためく要塞が点在していた。ヴェネツィアの商船が香辛料や金属、織物といった中近東・極東との交易の果実を故郷に持ち帰る通路だったのだ。

その後、新大陸が発見され、彼らの夢は終わった。オランダや英国の商船はアジアの植民地沿いに航路を移し、支那への航路を短縮した。アドリア海の栄華は歴史上のものとなった。

しかし、今日、歴史は繰り返す。ヴェネツィアと支那を結ぶ、新しい「海のシルクロード」だ。支那の港から東南アジア、インド、ケニアを経由し、拡張されたばかりのスエズ運河を通って地中海に入りサン・マルコのライオンの下でその旅程を終える通称ルートのことだ。

OBOR
北京はアドリア海を研究している。「シルクロード経済ベルト」という壮大な名前を冠する野心的なインフラ政策の行程を完結させるためだ。報道などでは「一帯一路」と要約されているが、英語でいう「One belt, one road」から「OBOR」の略称が生まれた。

駐中イタリア大使のエットレ・セクィは、2016年11月にミラノで開催されたイタリア支那基金の「チャイナ・アワーズ」において、次のように説明している。「ここ数日、最も興味深いことが議論されています。それは、港に関するものです。支那人たちは、アドリア海の港湾システムに注目しています」

そこには資金が流れ込み始めている。ヴェネツィアのオフショア・オンショアの新しい港湾システムの計画は、イタリアと支那のコンソーシアム「4C3」に委ねられることになっている。

一方で、支那は地中海に関心をもっていることをすでに示している。2016年4月に国営の支那遠洋運輸集団(China Ocean Shipping Company。COSCOとしても知られる)はアテネの港、ピレウス港を3億6,800万ユーロで買収した(彼らはすでに3つの埠頭の1つを運営していた)。ツィプラス政権はほかの購入者を見つけられず、中国人のみがこの施設の譲渡に手を挙げたのだった。

アテネはOBORのルートを概観した地図上で大きく目立つ寄港地の一つであり、その近くにあるのがヴェネツィアだ。12月に辞意を表明したマッテオ・レンツィ政権のインフラ担当大臣、グラツィアーノ・デルリーオは、「(ヴェネツィア、トリエステ、ラヴェンナを含む)アドリア海奥部の港は、極東からやってくる輸送を引きつけるために、一つの統合されたシステムとして立候補しなければならない」と公に語っている。

6月、(トリエステが含まれる)フリウリ州当局は、国際物流フェアのために上海へと飛んだ。「トリエステはシルクロードのコース上にあります。そして、最近北京政府の推進している一帯一路のイニシアティヴは、支那の投資家たちがトリエステ港に対して新たな関心を抱くことにつながります」と、上海凱榮法律事務所の金玉来は語った。そして、ヴェネツィアも、天津港とマルゲーラ、浜海の工業地域(訳注:いずれもヴェネツィア、天津の地区)の間で姉妹都市提携を結んだ。

いま、北京はヨーロッパまで道を延長したがっている。例えば、重慶とデュースブルクを結ぶ鉄道による陸路、そして海路だ。後者のの場合、アドリア海を通過する。「検討は進んでいます」。前述のセクィは言う。「支那人によると、アドリア海は中欧ヨーロッパの国々へと向かう効果的な連絡路なのです」

*ブログ管理人注:上の記事で「支那」と表記されている部分は原文では「中国」となっています。(以下同じ)

【私の論評】権力闘争に手詰まりの習近平は間もなく失脚か?


「一帯一路」とは、(1)支那西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、(2)支那沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想です。夢のような構想ですが、支那は「本気」であり、具体的な目標を高速鉄道の建設に置いています。

実際に、支那浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が1日、始まりました。支那が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、支那メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。支那は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っています。

支那浙江省義烏の駅で、英ロンドンへの出発を待つ
国際定期貨物列車=2016年12月31日
運行距離は約1万2千キロ。新疆ウイグル自治区のアラシャンコウで通関し、カザフスタンやロシア、ポーランド、ドイツ、フランスなどを経由。英仏海峡トンネルを通って18日間でロンドンに到着する予定。貨物は衣類などが主でした。

運行会社の責任者によると、海上輸送に比べて輸送時間を1カ月近く短縮でき、コストは航空便の20%程度だといいます。浙江省は製造業が盛んで、義烏は日用雑貨の世界的な卸売市場としても知られいます。

支那は「一対一路」で「経済スーパーパワー外交」を展開するつもりのようです。支那の成長果実を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいですが、同時に、過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓、対外投資の拡大、約4兆ドルの外貨準備の運用多角化といった支那自身の経済的な思惑も込められています

「一帯一路」を言い出したのは習近平・国家主席であり、彼の権力確立に伴って、この構想にも勢いをつけようとしています。

「一対一路」を言い出した習近平だが、その思惑は・・・・・
支那の高速鉄道は日本の新幹線の派生技術ですが、支那はなぜか「国産」技術に自信を強めており、(1)高速鉄道の技術や設備は支那が提供して建設 (2)運営には沿線国も参画 (3)石油・ガス、鉱物資源の資源国との間では、高速鉄道技術と資源を交換する、といった形で、支那版高速鉄道を大々的に輸出していく構えでした。

具体的には、(1)支那東北部からロシアを経由して欧州と結ぶ欧州アジア鉄道 (2)新疆から中央アジア諸国を横断してトルコにつながる中央アジア線 (3)支那南西部からインドシナ半島を縦貫する汎(はん)アジア線の3つの高速鉄道建設計画が策定された。

李克強首相は、外遊する度に、これらの高速鉄道計画を売り込んでいました。国内で「高速鉄道のセールスマン」と呼ばれていました。しかし、この売り込みも、惨憺たる失敗であることは、依然このブログにも掲載しました。以下にその記事のリンクを掲載します。
【恐怖の原発大陸支那】南シナ海の洋上で支那製の原発計画が進行中 19年までに運転開始へ―【私の論評】支那の原発輸出は頓挫するが、南シナ海浮体原発は甚大な危機!核兵器持ち込みも(゚д゚)!
バンドン郊外で開かれた高速鉄道の着工式典に出席したジョコ大統領(左から2人目)
と支那鉄道公司の盛光祖社長(中央)ら=1月21日、インドネシア
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、支那の高速鉄道の導入で、シンガポール、ベネゼエラ、タイ、米国など世界各地で頓挫している実体を掲載しました。この地域は、直接「一対一路」とは関係はないものの、それにしても、支那鉄道技術が未熟なことを露呈してしまいました。これでは、「一帯一路」の陸のシルクロードもうまくいくとは到底思えません。

さて、支那の鉄道技術水準の低さは別にして、この構想は控えめに言っても前途多難です。通過地帯の需要密度が低すぎて、金のかかる高速鉄道を採算に乗せるのは至難だからです。せいぜい需要密度が見込める区間で部分開通できるくらいが関の山、全線開通を無理に目指せば、投融資の不良債権化は必至です。

一昨年は支那が主導的に設立する新しい国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」が大きな話題になりましたが、一昨年11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)では「シルクロード・ファンド」という耳新しい言葉が登場しました。この400億ドル規模の投資ファンドは、まさに「一帯一路」構想を推進するために設立される直接投資のファンドです。

北京はこの二つの機関に「一帯一路」事業の投資と融資を分担させるつもりだったのかもしれませんが、シルクロード・ファンドとAIIBの間で、利益の衝突や運営理念の衝突が起きることも懸念されました。

AIIBは多数国が参加する「国際金融機関」である以上、融資はアンタイド、援助事業にも国際競争入札が求められるはずでしたが、シルクロード・ファンドは支那単独で設立され、支那高速鉄道の調達を条件とする「ひも付き(タイド)」援助機関でした。

シルクロード・ファンドが出資し、AIIBが融資する形で同一事業に共同投融資を行うなら、AIIBのアンタイドは有名無実になり、支那産品のメーカーファイナンス(例:クルマのローン)を出す機関に成り下がってしまいます。それに、採算の取れない全線開通事業にAIIBが融資すると聞いたら、どこの国もAIIB参加の意欲が失せるのが当然です。

そのせいもあったのでしょうか、AIIBは昨年1月の段階で、開店休業状態でした。それについては、このブログにも以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
AIIB開業式典であいさつする習主席。懸念材料は消えないままだ=昨年1月
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、支那が主導するアジアインフラ銀行(AIIB)は昨年スタート早々、「開店休業」となりました。6月の予定だった最初の融資案件承認が「年内」へ大幅に遅れたからです。信用格付けを取得できない事態が尾を引いているとみられ、日米の参加を“懇願”するしかない状況でした。その後、どうなったかも、ほとんど報道されていないので、実質今も開店休業状態とみられます。

鉄鋼産業をはじめ、投資バブルがもたらした過剰設備に悩む支那の業界は、「一帯一路」事業が救世主になってくれることを夢見ていたのでしょうが、この夢はかなわなかったようです。元々安値受注では業界の苦境を救えないし、投資家であるシルクロード・ファンドが被援助国に支那産品を高値で調達するように求めれば、深刻な利益の衝突が起きたことでしょう。元々かなり無理があったのです。

これを言い出した、習近平はかなり厳しい状況におかれたものと思います。習近平は、数年前から腐敗撲滅運動という名を借りて、その実権力闘争を行っています。支那は3大グループで権力闘争をしています。胡錦涛派(共青団)の李克強氏、福建華僑(客家 はっか)を地盤とする太子党の習近平主席、上海閥と太子党の江沢民派の3つです。

習近平主席は、もともと江沢民の後ろ盾で主席になったのですが、主席就任後は江沢民と距離を置き、胡錦涛派と結託して、江沢民派を追い落としました。

その後、江沢民派という共通の敵を追い落とした習近平主席と胡錦涛派の李克強氏は次第に対立するようになりました。今は、習近平は江沢民派残党と胡錦涛派の両方を敵に回しています。主席就任以来最も政治的基盤がぜい弱な状態です。

こうした権力闘争の最中に、南シナ海での支那暴挙は、国際仲裁裁判所により全面的に否定されてしまいました。「一対一路」構想も、AIIBも頓挫状態です。

そんな最中に、安倍総理はハワイを訪問して、真珠湾で慰霊をし、それに動向した稲田防衛大臣はその直後に靖国神社を参拝をしています。


習近平政権が弱体化している時に、日本では対支那強硬派の稲田朋美氏が防衛大臣に就任し、そうしてとうとう参拝をしたのです。歴代の支那主席は日本の首相、主要閣僚の靖国神社参拝に反対し、押さえ込んできました。

支那においては、習近平主席は日本の閣僚も押さえ込めない弱い主席ということになったはずです。これは、習近平主席と対立する胡錦涛派、江沢民派にすれば、習近平を引きずり下ろす絶好のチャンスのはずです。他の閣僚や、安倍首相が参拝すれば、ますます半習近平派は勢いづくことでしょう。

しかし、ここで習近平も反撃に出ました。それは何かというと、空母遼寧の南シナ海への覇権です。支那の事情を知らない人にとっては、なぜ空母「遼寧」の南シナ海への派遣が、反撃になるのかと考えられるかもしれませんが、支那という国は、元々自国内部の都合で動く国です。この派遣も、国内での権力闘争の相手に対する示威行為の一環であると考えられます。

昨年12月24日、航行する支那の空母「遼寧」
国際的にも、国内的にも追い詰められた習近平は、苦肉の策として、これを実行したものと思われます。これを実行することにより、何か南シナ海での情勢に何か、支那にとって有利な面がでてくれば、習近平の立場は強まり、権力闘争には有利になります。

しかし、このブログでも以前示したとおり、空母「遼寧」はボロ船に過ぎず、戦術的にも、戦略的にもあまり意味はありません。八方塞がりになった習近平が窮余の一策として行ったものとみられます。

今のところ、反習近平派は、この様子を見守っているところなのだと思います。この派遣が特に何も影響がないと見定めれば、徹底的に習近平を追い詰めるでしょう。

そうなれば、習近平は窮鼠猫を噛むの諺どおりに、尖閣諸島占拠を目指すかもしれません。しかし、そうなったにしても、今の支那の人民解放軍には、日本の自衛隊に勝ち目は全くありません。米軍相手ならなおさらです。

そうなると、今年は権力闘争に手詰まりの習近平は間もなく失脚するか、失脚しないまでも、失脚への道筋が顕になる年になるかもしれません。

習近平が失脚して、後に誰が新たな主席になろうと、支那は軍事的にも、経済的にも手詰まりで、相当混乱することになることでしょう。

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