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2011年1月21日金曜日

政治主導、反省・行き過ぎ… 菅首相「脱・脱官僚宣言」―【私の論評】おしゃべり空き菅に明日はない?!

政治主導、反省・行き過ぎ… 菅首相「脱・脱官僚宣言」



菅直人首相は21日午前、内閣改造を受け各省事務次官らを首相官邸に集めて訓示し、民主党が掲げる政治主導について「現実の政治運営の中で反省なり、行き過ぎなり、不十分なり、いろいろな問題があった」「いい形の協力関係をお願いしたい」と述べた。

事務次官会議の廃止や政務三役中心の政策決定といった政権運営のスタイルは変更しないものの、政策決定などで官僚を排除するのでなく、協力や協調を求める「脱・脱官僚」宣言と言える。

首相は訓示で「(官僚と)政治家との関係は試行錯誤があった。政治家も、『自分たちだけで大丈夫』では物事が進まないことを理解してきている」と発言。首相の言葉に、うなずく次官もいた。

菅政権は鳩山前政権に比べて官僚と共存する姿勢を強めており、昨年末には仙谷由人前官房長官が、政務三役会議に次官や官房長が同席するよう求めている。

【私の論評】おしゃべり空き菅に明日はない?!
民主党の政治主導は、最初から頓挫していました、やはり、思った通りになりました。菅さんは、財務大臣になったときから、もう完璧に財務官僚に取り込まれていたと思います。あの頃から、自らの方針などがないため、何でも財務官僚にいわれたことを、さも自分が考えたかのように語っているだけです。

いろいろと、学者などもアドバイスしているようですが、何人もの学者などの意見で、良いと思ったことをつまみ食いして何やらやってみたり、発言してみたりして、結局失敗や、失言に終わっているようなので、結局は、財務官僚考えが最も強く反映されているに違いありません。

その最たるものは、参議院議員選挙で敗因の一つにもなった、唐突な「消費税増税発言」だと思いす。これに関しては、マクロ経済的な観点からすれば、デフレ・ギャップの最中に実施すべき筋合いのものではありません。これは、以前にもこのブログの記事で掲載しました。

このことに関して、昨日WSJについて掲載しましたが、このWSJが消費税に関して面白い記事を掲載していたので、その部分を下にコピペしておきます。
財政再建のタカ派だが、デフレではハト派-。簡単に言えば、菅直人首相が14日の内閣改造で経済財政担当相に任命した与謝野馨氏はそういう考え方の持ち主だ。
経済拡大もまた大切だ。経済拡大なき財政再建は、抜本的な支出削減と増税なしにはほとんど不可能だ。それが与謝野氏には欠けるところだ。同氏は財政という国の問題の一部に集中しているだけで、もう一つの決定的な課題を無視しているからだ。それは名目成長率を金利以上に押し上げる必要があるというものだ。 
これにはデフレを終息させることが決定的に重要だ。与謝野氏の任命の結果、政府と協調して物価下落を克服するためもっと行動すべき日銀に対する圧力が弱まる可能性がある。2006年の経済担当相時代、与謝野氏は政府の月例経済報告から「デフレ」という言葉を早々と削除し、日銀に対する行動の圧力を弱めた経緯がある。
このデフレの最中に、財政再建だけに注力するのは、明らかに間違いです。このことは、私もこのブログに掲載しましたが、さすが、一流紙WSJだけあって、明瞭に簡潔に、スタイリュにまとめています。与謝野氏は、結局は、マクロ経済的な見方ができず、経済のほんの一側面であるプライマリー・バランスに拘泥している、年寄りにすぎません。

菅さんは、与謝野さんはもともと自民党の人間であり、財政改革は自民党の谷垣総裁も自民党の政策として掲げているものであり、与謝野さんを入閣させれば、自民党が歩み寄ってくる可能性が高いと判断したのだと思います。しかし、これは大きな誤算です。なぜなら、自民党も民主党と同じ寄り合い所帯であり、現行のデフレの最中に、財政再建を優先すれば景気が大きく落ち込むという、マクロ経済的にいえば、当たり前のことを懸念する人も数多くいます。

政権末期になると、与謝野氏は過去においては、いつも当該政権に入閣するということを繰り返しています。政権末期になると、政権内での主導権争いもあり、またさらに泥舟なので、閣僚というエサをまいてもなかなか政治家は寄ってこなくなります。その一方で、政権側は、末期であることを糊塗するために、それなりの人物をそろえなくてはいけません。こういうときに、与謝野氏もあわよくば政権を乗っ取りたいという思惑があるのだろうか、過去においては何とかして政権にもぐりこみ閣僚の席を獲得しました。しかしいままでのところ、その直後に政権は崩壊しています。

これは、小泉政権の末期から繰り返された光景なので、自民党関係者から与謝野氏は「墓堀人」と呼ばれています。

財務官僚など、本気で日本の経済のことなど考えていないと思います。自分たちの既得権益を守るためだけに、行動しているのです。だからこそ、財政再建を強力に推進しようとしているのです。これが、菅総理の目前の目標である、子ども手当の完全給付などマニフェストを実行するための財源探しなどと利害が一致しただけだと思います。それに、与謝野さんが入閣して、ますますこの路線を強化することになりました。

今度の改造内閣では、「増税すれば景気回復する」という菅総理、根っからの財政再建タカ派の与謝野財政担当大臣、「利上げすれば景気回復する」という枝野官房長官、「円高指向、財政再建指向」の藤井副長官と、デフレ・増税論者のそろい踏みです。もしそれが実行されたら、与謝野氏が昨年1月に書いた本の題名通り、「民主党が日本経済を破壊する」ことになるでしょう。

それと、菅さんは、日本の官僚の本質も判っていないと思います。ちなみに、経営学の大家ドラッカー氏は、最後の著書「ネクスト・ソサエティー」において、「日本の官僚に関する異説」を述べています。それを下に引用します。( )内は、ブログ管理人の注釈です。これに関しては、このブログに過去にも何回か引用したことがあります。
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第一が、日本の官僚の優位性はほとんどあらゆる先進国で見られるとの仮説である。アメリカといくつかのあまり人口の多くない英語圏の国、すなわち、オーストラリア、ニュージーランド、カナダのほうが例外である。日本の官僚の優位性は、他の先進国、特にフランスに比べるならまだまだ劣っている。(日本の官僚の数が多いという認識は全くの間違いです。確かにニュージーランドの役人数は少ないですが、ニュージーランドは人口そのものが数百万です。人口比で比較すれば、日本のほうが少ないです。英語圏以外の国では、フランスなどのように役人の権力は日本よりも強大です) 
第二が、日本の官僚は、われわれが考えるよりもはるかに耐久力があるというものである。日本の官僚は、長年の不祥事と無能の暴露にもかかわらず権力を維持してきた。(諸外国に例を見ない、特別会計が100年前から温存されてきたこと自体が、日本の官僚の権力維持能力が強固であることの査証です。民主党はこれを甘くみすぎている) 
第三が、先進国では、アメリカを別として、社会の維持にはエリートの指導力が必要されているというものである。後を継ぐべき者が現れないかぎり、既存の指導層に頼らざるを得ない。今日の日本には、官僚の後を継ぐものは現れそうにない。(残念ながら、今の民主党では、官僚のやっていることを統治することは困難である。政治主導とは幻想に過ぎず、現在の民主党は自らをあまりにも買いかぶりすぎている) 
第四が、日本では先送り戦略が有効であるというものである。日本は、この40年間、解決不能とされていた社会的な問題を、問題の解決よりもむしろ先送りによって二度までも解決してきた(前近代的農業人口の都市部への流入、前近代的な流通システムの改革)。もちろん今日の金融システムにおける構造上の脆弱さと資金的な余力を考えれば、今度ばかりは先送り戦略はうまくいかない(日本の金融機関は豊富な資金力が故に改革が困難である)。しかし経験的には、日本の先送り戦略には一概に不合理とはいえないものがある。(現在の民主党は、とにかく何かをやろうとする、それは、拙速で乱暴でさえある。しかし、今後も何もしないということのほうが、より合理的で、効果のあがる戦略である事案もある。たとえば、普天間問題など)
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このドラッカーの異説より、私は、民主党の政治主導、脱官僚は実際にはかなり難しいと思っていました。実際には、民主党は、政権交代をしてから、ただの一回も政治主導も、脱官僚もできなかったと思います。

それから、政治家と官僚の関係は、企業でいえば、トップ・マネジメントとミドル・マネジメントのような関係にあると思います。トップとミドルの間には、大きな溝があります。トップ・マネジメントは、無論経営者です。ミドル・マネジメントは、たとえ、大所帯のトップであったとしても、従業員であることには変わりありません。

トップ・マネジメントの仕事と、政治家の仕事を対比しつつ以下に掲載します。(  )内が政治家の仕事。

・会社(日本国)のミッション・ビジョン・ゴールの設定と実行

・組織(行政組織)を作り上げ、それを維持する役割‥明日のための人材を育成すること、トップの価値観を示し組織の基準とすること、組織構造を設計すること

・渉外の役割、顧客、取引先、金融機関、政府機関などとの関係を取り結ぶこと。(国内、外国との渉外)

・儀礼的役割、規模の小さい企業ほど逃れることのできない時間のかかる仕事となる。(国や世界の儀礼的役割)

・重大な危険に際して自ら出動する役割(これは政治家もトップマネジメントも同じこと、最近では、口蹄疫での政治家の役割が注目された)

ドラッカーは、これらの仕事は、それぞれ全く性格が異なるので、会社の規模が大きくなれば、経営者が一人で行うのは、不可能としています。そのため、トップ・マネジメント・チームをつくることが重要であるとしています。政治の世界も同じことです。

官僚の仕事は、本来は政治家が行う仕事を補佐するようなものです。それは、企業においては、トップマネジメントが事務や、営業活動を直接行わず、従業員にやらせ、自らは、上記のようなことを行なうのと同じことです。

まともな会社であれば、経営者と、従業員が対立するのではなく、互いに一つ目的に沿って協調するのが当たり前であって、どちらかがいらないなどというものでありません。経営者が存在しなくても、大変なことになりますし、従業員が存在しなければ、経営者も何もできません。

政治家と、役人の関係も同じことです。要するに、民主党は、会社でいえば、人を使えない、経営者ということになると思います。というより、彼らの行動をみていれば、人を使えない管理者にも成りきれていないようです。

しかし、国のあり方として、政治主導は当たり前のことであり、それが、現実に実現されているのか、そこなわれているのかは別にして、本来であれば、わざわざ最初から政治主導とか、脱官僚などという愚かなことは言うべきではなかったはずです。今回の菅さんの発言は、先の愚かな発言に対して、さらに恥の上塗りをしたにすぎません。

菅さんまた、失言してしまいましたね。わざわざ、「脱・脱官僚宣言」などすべきではなかったです。黙って、上記の経営者と従業員のような関係を官僚との間につくるべきだったと思います。いつものように、軽く口でいってしまい、後悔することもなく、おそらく、財務官僚たちを大喜びさせたと思います。

このような幼稚な判断しかできない、菅さん、それに民主党自体ももう、先はありませんね。次の選挙では間違いなく、敗北です。それに、このまま財政再建にのみ地道をあげれば、与謝野氏の著書『民主党が日本経済を破壊する』を実現することになり、多くの国民が離反することになります。このまま、生き恥を晒すくらいであれば、さっさと、衆院を解散して選挙をして自らの去就を国民に問うべきです。

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