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2011年2月17日木曜日

太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男 観てきました―【私の論評】確かに物足りないところもあるが、戦争について今一度考え得る機会を与えてくれた?!

太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男 観てきました


太平洋戦争末期のサイパン島を舞台に、大場栄大尉(竹野内豊)率いる陸軍歩兵連隊と絶大な兵力を誇る米軍との熾烈な戦いを描く実話の映画化である。この知られざる玉砕戦の一部始終を日米双方の視点から描くという試みはあらかじめ、ややハードルが高過ぎたのではないだろうか。

英語が飛び交う米軍のパートはチェリン・グラック監督が担当し、日本人側のパートは平山秀幸監督が演出しているが、本来ならクリント・イーストウッドの「硫黄島」2部作のような截然(さいぜん)たる構成にしない限り、どうしても日米の描写のバランスをとることに腐心してしまいがちなのだ。




迫力ある戦闘シーンも含め、全体の色調を極力アンダーに抑え、亜熱帯の鬱蒼としたむせかえるような暑さではなく、どこか寒々とした印象を与えるのは効果的である。この沈んだ静謐さを強調したルックは「硫黄島」2部作のトーンを引き継いでいるようだ。

平山監督は、大場大尉を悲壮な皇軍精神に殉じる堅物ではなく、巧緻な戦略によって米軍の裏をかくしたたかな抵抗者として造型しているが、恐らく<小隊もの>の傑作「最前線物語」を参照したと思われる。気が触れてしまった兵士(柄本時生)や出産した赤ん坊に<希望>を託すエピソードに顕著だが、サミュエル・フラーが提唱した<戦争の栄光は生き残ること>というモラルが通奏低音となっているのだ。惜しむらくは、竹野内豊にリー・マービンのような強烈な父性と敗残の果ての屈折した傷つきやすさ、複雑な陰翳が感じられないことである。(映画.com)


【私の論評】確かに物足りないところもあるが、戦争について今一度考え得る機会を与えてくれた?!
この映画、見終わって、感じたのは何か物足りなさでした。上に書かれてあるように、確かに、硫黄島の二部作を見てしまって目からは、この映画は2時間という時間もあいまって、物足りなさを感じるのも仕方ないのかもしれません。せめて、3時間超の映画にして、日米両方の姿を描ききって欲しかったものです。

ただし、竹之内豊のキャストは、それなりに良かったと思います。リーマービンのような父性溢れて、年上の指揮官にしてしまえば、現実離れするような気がします。竹之内はより身近な感じがして、かえって良かったのではないかと思います。

サイパン島の戦いについては、wikipediaを参照してもらうものとして、そのなかから気になる記述をみつけましたので、以下にその部分を引用しておきます。
ただし、サイパンの戦いに従軍した田中徳祐(陸軍予備士官少尉・独立混成第47旅団)は以下のような米軍による残虐行為を目撃したと主張している。 
「米軍は虐待しません」の呼びかけを信じて洞窟から出てきた婦女子全員が素っ裸にされ、数台のトラックに積み込まれた。「殺して!」「殺して!」の絶叫を残してトラックは走り去った。 
滑走路に集った老人と子供の周りにガソリンがまかれ、火がつけられた。忽ち阿鼻叫喚の巷と化した滑走路。我慢ならず我兵が小銃射撃をしたが、米軍は全く無頓着に蛮行を続けた。 
火から逃れようとする老人や子供を、米兵はゲラゲラ笑いながら火の中へ蹴り飛ばしたり、銃で突き飛ばして火の中へ投げ入れた。二人の米兵は、草むらで泣いていた赤ん坊を見つけると、両足を持ってまっ二つに引き裂いて火中に投げ込んだ。「ギャッ!」といふ悲鳴を残して蛙のように股裂きにされた日本の赤ん坊とそれを見て笑う米兵士。 
こんなに優勢な戦闘にも拘らず、米軍は毒ガス弾(赤筒弾)攻撃まで仕掛けてきた。 
マッピ岬では、岩の間に一本の青竹を渡し、それに串さしにされた婦人を見た。 更に自分と同じ洞窟に居た兵士や住民が五体をバラバラに切り刻まれて倒れているのを眼前に見た。 
米軍の残忍非道から名誉と身を守るために「天皇陛下万歳」を奉唱してマッピ岬から太平洋に身を躍らせた老人、婦女子や、左腕に注射針を刺し、君が代と従軍歌「砲筒の響遠ざかる・・・」を斉唱しつつ自らの命を断った十余名の従軍看護婦達の最期を田中は見たという。 
但し、田中徳祐の証言は上述の自著の1983年版に記述されているもので1956年版には記述されていないとされている。また、自身の階級を大尉としているが、大場大尉が監修した「タッポーチョ」では大場栄大尉の指揮下で少尉となっており、「丸・別冊 太平洋戦争証言シリーズ(6)」では自身の階級を中尉と記している。
硫黄島からの手紙では、投降した抵抗もしない日本人の捕虜をアメリカ兵がさしたる理由もなく、殺してしまう残虐行為が描写されてしいましたが、この映画ではアメリカ兵によるものも、日本兵によるものも皆無でした。戦争は、特殊な状況なので、通常では起こりえないことなどが、起こってしまうようです。実際、現在ですら、イラク戦争のときの捕虜の虐待についても、報道されたことがあります。

このへんも含めて、もっといろいろと描写して欲しかったものです。世の中では、アメリカ軍は正義の味方で、日本軍は、悪の権化のような考え方で描写するものが多いようですが、そのようなことはないと思います。これは、戦争に勝った国による、いわゆる勝てば官軍的なものの見方に過ぎないと思います。

それから、ここでは、詳細を書くつもりはないですが、当時の日本がアメリカに対して挑んだのは、無謀以外の何ものでもなく、愚かな戦争であったことばかりが強調されているようですが、そうとばかりとは限らないということも日本人として知っておく必要があると思います。

たとえば、ハル・ノートという有名な外交文書があります。これは、、太平洋戦争開戦直前の日米交渉において、1941年11月26日にアメリカ側から日本側に提示された交渉文書です。正式にはアメリカ合衆国と日本国の間の協定で提案された基礎の概要(Outline of Proposed Basis for Agreement Between the United States and Japan、日米協定基礎概要案)と称するものです。

日米交渉のアメリカ側の当事者であったコーデル・ハル国務長官の名前からこのように呼ばれていいます。ハル・ノートに関しては、「(事実上の)最後通牒であった」とする解釈と、「最後通牒ではない」とする解釈とがあります。

私自身は、このハル・ノートは事実上の最後通牒であり、最後通牒をつきつけられた後の真珠湾攻撃は決して、だまし討ちではないです。そうして、現実には、もう随分前に、公表されたアメリカの公文書で、当時のルーズベルト大統領は、真珠湾攻撃を予め知っていたことを明らかにしています。知っていて、放置したというのであれば、これは大きな犯罪と言わざるをえません。

また、日本がアメリカに戦争を挑んだ事自体を全く無謀なことと、受け止めている人も多いようですが、これも全く正しいかといえば、そうともいえないところがあります。これを主張するアメリカの学者が書籍を書いてそれを主張しています。

これに関しては、以前このブログにも掲載したことがあります。そのときにも掲載したのが下の動画です。


この動画を見ていると、大東亜戦争に関しては、決して無謀な戦ではなかったと思えてきます。それから、この、映画「太平洋の奇跡」のに関しては、戦争秘話などとされて、さもさも、今になって発見された話のような触れ込みで紹介されているようですが、そんなことは、ありません。戦争や戦記などの興味のある人には良く知られているいる話です。

実際、上のウィキペディアの引用した文章の中でも、『大場大尉が監修した「タッポーチョ」では大場栄大尉の指揮下で少尉となっており、「丸・別冊 太平洋戦争証言シリーズ(6)」では自身の階級を中尉と記している』などと記載されています。おそらく、かなりの人が知っている話なのではないかと思います。

しかし、マスコミで多く報道されていないから、多くの人に知られていないのだと思います。多くの日本人は、このような話は知らずに、日本軍や日本兵といえば、最初から大義もなく、無理で、無駄な戦争を行ない、すぐに切腹し、万歳突撃した愚かな軍隊のような考えが流布されているのだと思います。

しかし、この映画に出てくる日本兵を見てください。あるいは、硫黄島からの手紙の日本兵を見てください。いくら時代背景があるとはいえ、全く無駄で、大義も何もない戦争にあれほど、勇敢であったり、忍耐強く戦いを続けられるなどのことが考えられるでしょうか。

日本が戦争をしたときの、大義名分は、アジアの独立でした。その頃は、アジアの大部分は、ヨーロッパやアメリカ、ソビエトなどの列強の植民地でした。

日本が戦争をしたことにより、これら植民地の開放が早まったことは間違いありません。インドなどでは、日本が戦争をしたことによって、少なくともインドの独立が40年は早まったとする論調が大勢を占めています。とすれば、日本は確かに戦争には負けましたが、戦争をするための大義は、成就したといえるのではないでしょうか?

真珠湾攻撃に関しては、例外的に「トラ・トラ・トラ」のように両方から描いた映画もありますが、それ以外の映画では、日米両方のの視点から描かれたものは皆無といっても良かったと思います。しかし、硫黄島の二部作や、太平洋の奇跡に関しては、それまでとはうってかわって、日本側からも丁寧に描写される映画のつくりとなっています。もう、戦争が終わってから、70年です。そろそろ、あの戦争をもう一度、その時代背景も含めて、客観的に見つめる時代が着ているのではないかと思います。

特に、日本人は、第二次世界大戦中のみを切って捨てるようなことはできません。明治時代の日本が、第二次世界大戦の時代も含めて、今の時代に続いていることは否定できません。

そういった意味で、今のこの時期にこの映画、大変意義深いものだったと思います。

最後に、この映画の終わりのほうで、大場栄大尉が、日本兵を率いて、アメリカ軍に投降するため、山を降りて整然と行進していくシーンがあります。その時に、「歩兵の本領」という軍歌を歌いながら、行進していました。その歌を下の動画に歌詞付きで掲載します。


この唄、なかなか良い唄と思います。万朶の桜の万朶は、垂れさがるという意味です。「花は吉野に嵐吹く」の吉野は無論、桜の名所の奈良の吉野山のことでしょう。この出だし、とても軍歌とは思えません。無論、桜は、潔く散るという意味もありますから、それを想起させるものとして導入部につかわたのでしょうが、それにしても、日本人の自然を愛でる気持ちが現れた良い唄だと思います。

この唄、私の祖父は、良くをお酒を飲んで酔うと歌っていました。本人は、海軍だというのに、海軍の軍歌よりも、この唄が好きだとみえて、良くこの唄を歌っていました。

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