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2016年11月20日日曜日

韓国「反・朴槿恵」狂騒 “犯罪者は晒し者に”の社会力学とは―【私の論評】大統領による統治システムは何度も同じ間違いを繰り返した、最早個人の倫理問題ではない(゚д゚)!

韓国「反・朴槿恵」狂騒 “犯罪者は晒し者に”の社会力学とは

朴槿恵大統領の辞任を求めるデモ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 無論、我が国でも政治家の不祥事など珍しい話ではない。とはいえ、疑惑の当事者をテレビカメラの前に吊し上げ、パワーショベルが検察庁に突っ込む狼藉ぶりを目にすると、彼の国「らしさ」を感じてしまうのは事実。これこそが李朝時代から続く「情治国家」のなせるワザなのだ。

検察庁にパショベルが突っ込んだことを伝える韓国のテレビの画面
***

 もっとも、日本人にはやり過ぎに見えても、

「以前よりだいぶマシになったと思いますよ」

 と、元時事通信ソウル特派員で『悪韓論』の著者・室谷克実氏は苦笑する。

「韓国では犯罪者を晒し者にするのは日常茶飯事。かつては殺人犯が検察に護送される時も無理やり記者会見を開かせていた。もし逃げ隠れするようなら、テレビの撮影スタッフが髪の毛を引っ掴んでカメラの前に顔を突き出したものです」

 一方、元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏によれば、

「先の大規模デモでは、デモ隊が許可されたコースを外れても警察は全く咎めなかった。それどころか、当の警察署長が“国を愛する皆さんの気持ちは十分に理解する。理性的な協力に感謝します”と、同情的な発言をして話題になりました」

 警察当局がデモ隊にエールを送るとは、さすがは「情」に厚いお国柄、と言いたいところだが、

 「韓国の情はエゴイズムと表裏一体です。子供がバスの指定席に座っていても、規定の料金を払っていない中年男性が割り込んでくる。“疲れている俺を座らせないなんて情がない”というわけです。デモにしても“俺は社会のために頑張っているのに邪魔をするのか”、と。警察や裁判所ですら、そうした“情”の世論を窺いながら動くので法治主義が根付かない」(同)

 実際、崔順実(チェスンシル)氏と同じように晒し者となった「セウォル号」の船長や「ナッツ姫」には想定外の重い罰が科せられている。

■「有銭無罪」

 さらに、韓国が法治国家になれない理由として、先の室谷氏は「有銭無罪、無銭有罪」を挙げる。

 「これは、金持ちは無罪で、貧乏人は有罪になるという司法の腐敗を嘆く言葉です。李氏朝鮮時代の貴族・両班(ヤンバン)は、庶民からカネを巻き上げても裁かれませんでした。その伝統はいまも続いている。朴大統領の要請で韓国企業が崔氏の財団に出資した疑惑も日本人が考える汚職とは異なります。何しろ、双方の利害が一致するわけではなく、単に権力者がカネを強奪しただけ。両班のやり口と変わらない」

 こうした不公平が身に染みているがゆえに、権力者の不祥事が表沙汰になると民衆の怒りは一気に燃え盛る。そして、法で裁き切れない悪人を、情で裁くというワケだ。

 「ただ、韓国ではもはや大統領のスキャンダルは5年に1度の恒例行事になっている。国民もメディアも感情に流されて政権叩きに奔走するばかりなので新政権も同じ過ちを犯す」(同)

 今回の狂騒ぶりも、“情”の国ならではの情況なのだ。

【私の論評】大統領による統治システムは何度も同じ間違いを繰り返した、最早個人の倫理問題ではない(゚д゚)!

私はこのブログに今日まで、今回の朴槿恵大統領のスキャンダルを掲載したのは一回だけです。なぜかといえば、ブログ冒頭の記事にもあるように、韓国では大統領のスキャンダルは5年に一度の恒例行事になっていたからです。

朴槿恵大統領ももちろんその例外ではなく、2018年までの任期ですから、いずれ任期が近づけは必ず何らかのスキャンダルが出てくるだろうと確信していました。ただし、2017年くらいからではないかと考えていたので、若干それよりは早いということですが、それにしてもさほど驚きはしませんでした。

ここで、過去の大統領についてふりかえっておきます。

一人目は建国の父・李承晩。12年間独裁者として君臨しましたが不正選挙で民衆の怒りを買い、ハワイへ亡命。建国した国から追われるという皮肉な結末となりました。

不正選挙を糾弾するデモ(四月革命) 
三人目は現職の朴槿恵大統領の父・朴正煕氏。側近に射殺され、妻も暗殺されるといった「裏切り」により人生の幕を閉じることとなりました。

朴正煕氏
五人目の全斗煥は光州事件の責任や不正蓄財で無期懲役の判決を受け、続く盧泰愚も懲役17年の判決を受けました。


 その後七人目の金泳三、八人目の金大中は共に親族が収賄により逮捕されています。

金泳三(左)と、金大中(右)
さらには九人目の盧武鉉。退任後、兄が収賄で逮捕され、自らにも捜査が及ぶと崖から飛び降り自殺。悲劇的な結末を迎えました。

盧武鉉氏の葬儀
竹島に上陸したことで物議を醸した十人目の李明博大統領は親族が収賄で逮捕されています。

李明博
過去10人の大統領のうち、8人の大統領がこの有様なのですから、これは異常というよりほかありません。

経営学の大家ドラッカー氏は以下のように語っています。
同じような間違いが何度も起こる場合、それは最早個人の問題でなく、システムの問題である。
ビジネスは個人的能力も大切だが、それよりもシステムを重視しなければならない。会社とは、平凡な個人に非凡な仕事をさせるシステムなのだ。
(ピーター・ドラッカー)


韓国の大統領による統治システムは、以上のように過去に同じような間違いが発生し、さらに現職の朴槿恵大統領にも間違いが発生しています。

こうなると、最早韓国の大統領による統治システムに問題があるのであって、個人の問題ではないと思われます。今後、このシステムを変えずに、朴槿恵大統領を辞任に追い込んだところで、システムが変わらない以上同じことがまた繰り返し起こることになります。

韓国の現状をみると、大統領による統治システムを変えるべきであるという声は聞いたこがありません。ただただ「朴槿恵辞任」の声が大きく聞こえるばかりです。まるで、問題は朴槿恵大統領の個人的な倫理観や資質にだけあるとでも思っているようです。

大統領による統治システムが上記でも掲載したように、過去数十年にわたり繰り返し同じような間違いを起こしているのです。これは、もう個人の問題というよりは、システムの問題も点検すべきです。そのことには、韓国人は気づいてないようです。

この問題を解消するためには、朴槿恵氏を単に辞任に追い込むだけではなく、朴槿恵氏を含め、韓国政府の人々にも今回の事態を証言させ、現在の大統領による統治システムの問題を明らかにすべきです。個人の追求などは、後回しで良いのです。

そうして、大統領制の制度そのものを変えるか、変えられなくても議院内閣制を取り入れるなどの方法も検討すべきです。

いずれにせよ、本来は、統治システムを根本的に変えるべきです。それを変えずに、朴槿恵氏の倫理観のせいにばかりしていては、何も解決しません。

しかし、韓国では今回の一連の問題を結局朴槿恵氏の個人の倫理観のせいにしてそれでおしまいにするのでしょうか、であれば、また次の大統領でも同じような問題が再び発生するだけになります。

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