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2017年10月27日金曜日

【習独裁の幕開け】「ポスト習近平」は習氏…抱く“世界の覇者”への野望 次世代のホープはチャイナセブン“選外”―【私の論評】習近平による新冷戦が始まった(゚д゚)!

【習独裁の幕開け】「ポスト習近平」は習氏…抱く“世界の覇者”への野望 次世代のホープはチャイナセブン“選外”

習近平総書記(中央)ら新しい政治局常務委員(チャイナセブン)=25日、北京の人民大会堂
 第19回中国共産党大会は、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という表現で、党規約に指導思想が明記されることが決議され、24日に閉幕した。

 この表現をより具体化すると、「習近平新時代=脱江沢民の新時代」「中国の(習独裁を軸とする)特色ある社会主義=縁故資本主義体制」が船出することになる。

 そして、中国共産党は25日午前、党大会最終日に選出された第19期中央委員会による第1回総会(1中総会)を開き、新たな指導部が発足した。

 中央政治局常務委員(通称、チャイナセブン)の布陣は、留任の習氏(64)と李克強首相(62)以外に、栗戦書・党中央弁公庁主任(67)、汪洋・副首相(62)、王滬寧・党中央政策研究室主任(62)、趙楽際・党中央組織部長(60)、韓正・上海市党委員会書記(63)の7人となった。

 栗氏はこの数年、習氏の特使として、ロシアのプーチン大統領と度々、面会をしてきた人物で、中露関係のキーパーソンになりそうだ。汪氏は、4月の訪米では、レックス・ティラーソン国務長官の対面に座り、米国との関係も深い。王氏は、江沢民時代、胡錦涛前国家主席、習一次政権まで3代のトップに仕えてきた人物である。

 世界のチャイナウオッチャーにとって意外だったのは、胡前主席が目をかけ、次世代のホープの1人とされてきた胡春華・広東省党委書記(54)が選から漏れたことだ。そして、もう1人も漏れた。

 この数カ月、にわかに注目度をあげ、2段階のロケット出世の噂も噴出していた陳敏爾・重慶市党委書記(57)である。

 出世街道を驀進(ばくしん)する、習氏の地方指導者時代の部下たちについて、一部からは「鶏犬昇天」(=出世した人のおこぼれで、親族や取り巻きなど周りまでが出世する、の意味)と揶揄(やゆ)されていたが、その筆頭格でもあった。

 ただ、歴代の最高指導部はさまざまな地方で経験を積み、外遊もし、海外人脈も構築していくなかで、北京へ上がっていく。ところが、50歳過ぎまで故郷、浙江省内に留まっていた陳氏は超ドメスティック(内向き)な人材だ。学歴についても見劣りする。習氏の“腰巾着”にすぎない、とみなされたのか。

 序列8位から25位までの中央政治局委員にも、習氏が福建、浙江両省での22年間の在任中に培った人材が続々と昇格した。共産主義青年団出身(=最近は『胡錦涛派』とも呼ぶ)もいるが、習独裁体制といえる。

 つまり、「ポスト習近平」も習氏なのだ。2000年にロシア大統領に就任して以来、長期にわたり世界でも影響力を発揮し続けるプーチン氏に憧れる習氏。毛沢東主席を凌駕する“中国の皇帝”を目指すのみならず、“世界の覇者”となる野望を抱いているはずだ。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

【私の論評】習近平による新冷戦が始まった(゚д゚)!

第19回党大会にて政治報告をする習近平総書記=
18日午前9時6分、北京の人民大会堂、
日本国内では、最近選挙があったので、第19回中国共産党大会についてはその本質が十分に報道されていません。結論からいうと、今回習近平が演説で語ったことは、「新たな冷戦」宣言です。

通常、中国の国家主席の任期は2期10年であるため、2期目に入ると後継者を抜擢するのが普通です。しかし、ブログ冒頭の記事にもあるように、今回の人事では、政権3期を狙うとされる習近平の続投の意志が表れる人事となりました。

全体会議に先立ち、24日の中国共産党大会では、習氏が3時間20分も演説も行い、各紙に大きく取り上げられました。( http://news.livedoor.com/article/detail/13791532/)

この演説はあまりに冗長で、空疎な内容も多く要旨を読むだけでも大変なので、、このブログではその中でも習氏の「野望」が強く表れている発言のみをピックアップすることにします。そのほうが、今回の習の演説の本質が十分に理解できると思います。

習は、いわゆる「中国の夢」について、「新時代の中国の特色ある社会主義の偉大なる勝利」と「中華民族の偉大なる復興」だとし、自身の功績を称えた上で、次のように述べました。


「中国の特色ある社会主義は新時代に入った。(中略)科学的な社会主義は21世紀の中国の強大な活力を生み、中国の特色ある社会主義の偉大な御旗を世界に高く掲げたのだ。人類の問題を解決するため、中国の知恵と中国の方針で貢献したのだ。この新時代は、中国の特色ある社会主義の偉大な勝利の時代である。全国の各民族人民が団結して、中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現に向けて奮闘するのだ。わが国は、日に日に世界の舞台の中央に近付いている」

習氏は、演説を通して139回にわたり「社会主義」という言葉を使用し、中国が資本主義体制の西側諸国と一線を画していることを強調しています。また、「中国の特色ある社会主義は新時代に入った」という発言からは、中国がかつてのソ連を超えた「社会主義国」であるという主張がうかがえます。

「今世紀中ごろまでに人民の軍隊を世界一流の軍隊にする」

こうした「中国の夢」を現実のものとするのが、習氏の具体的な目標設定です。

これまで中国共産党が掲げていた目標は、2021年までに国内総生産と個人所得を安定させ(小康社会)、2049年までに豊かな社会主義国家を建設するというものでした。これに対して習氏は、2021年までの目標だった「小康社会」は達成したとして、さらに中長期ビジョンを打ち出しています。

「20~35年」と「35年~今世紀半ば」の二段階に目標を細分化。35年までに、経済力、科学技術力を大幅に向上させ、「社会主義近代化の実現」を果たした後、今世紀半ばまでに、総合的な国力と国際的影響力でトップクラスの国家になると目標を定めました。

人民解放軍が昨年新たに創設した「火箭軍(ロケット軍)」
「トップクラス」を目指す習近平の野望は、軍事面でも明確に現れています。習氏は、軍事戦略についてこのように明言しました。

「2020年までに軍の機械化を基本的に実現し、情報化建設で重大な進展を得て、戦略能力を大幅にアップさせる。そして2035年までに、国防と軍隊の現代化を基本的に実現し、今世紀中ごろまでに人民の軍隊を世界一流の軍隊にする」「軍隊というものは、常に戦争を準備しておくものだ。すべての活動は、必ず戦闘力のレベルを堅持することに充て、戦争ができて戦争に勝てることに照準を定めねばならない」

世界一流の軍隊を有し、いつでも戦争に勝てる状態にしておくという発言は、自由主義に基づく軍事大国・アメリカへの宣戦布告とも言えるものです。

さらに習氏は、「人類運命共同体」という言葉を用い、「責任ある大国としての役割を発揮」すると述べていますが、党規約に現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の推進が盛り込まれていることを考えますと、発展途上国を支援するという名目で、中国社会主義圏に取り組むという方針でしょう。

一方習は、「中国の発展は、いかなる国の脅威にもならない。中国の発展がどこまで進もうが、永遠に覇権を唱えず、永遠に拡張を求めない」としていますが、南シナ海に軍事基地を造り、日本を含むアジア諸国の領海を脅かしている中国の行動を見れば、空虚なお題目にすぎないことが分かります。

習氏の演説が描くのは、ソ連に成り代わった中国が、再び自由主義諸国に冷戦を仕掛ける未来そのものです。

習氏が2026年まで3期続行し、独裁政権の強い指導力の下、着実に強国化を進めれば、2050年時点で中国が西洋諸国を凌ぐことは十分考えられます。その時には、現在強いリーダーシップをとっているドナルド・トランプ米大統領の任期も終了しています。

現在、日本では北朝鮮問題ばかりがクローズアップされますが、確かに北の脅威は大きなものではありますが、これから顕在化する中国による新たな冷戦のほうが、はるかに深刻な問題です。

中国の新冷戦は、冷戦でソ連が敗北し米国の勝利に終わったように、いずれ中国の敗北により終焉すると私は見ています。中国の夢の実現は、かなりの無理があります。かつてのソ連のように中国も軍拡で、経済がズタズタになり冷戦体制を維持することは困難になるでしょう。しかし、終焉するまでの間に及ぼす悪影響がどの程度の水準になるのか、計り知れないところがあります。

北朝鮮問題は、大きな枠組みからみれば、新冷戦への前哨戦になることでしょう。いずれ近いうちに、北朝鮮の体制は崩れます。それを念頭におき、その後の北朝鮮をどうするかという、話し合いがAPECなどで行われるでしょう。

これらの会談は、いわば北朝鮮版「ヤルタ会談」のようなものです。この会談にて、日米が、いかに中国の要求を押さえ込めるかが、新冷戦の趨勢をうかがう試金石になると思います。

アジアにおけるアメリカの影響力が低下する可能性を視野に入れて、日本は「自分の国を自分で守る国」に舵を切らなければならないです。そうして、自国のみのことを考えるだけではなく、世界の安全と平和に寄与すべきです。

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