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2017年6月15日木曜日

なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!

なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?

政府・日銀の物価見通しは楽観的過ぎる

安達 誠司 


   消費税率引き上げの後遺症

 2017年1-3月期の実質GDP成長率は季調済前期比+0.3%(同年率換算+1.0%)となった。実質GDP成長率は、5四半期連続でプラス成長となったが、この5四半期の平均の実質成長率は+1.5%(年率換算)であり、全く盛り上がりを見せない。他の先進国と比較しても見劣りがする水準である。

 最近では、韓国経済の惨状を指摘する議論を耳にするが、韓国の実質成長率の平均は2%程度であるので、実質成長率という観点では、韓国に見劣りするのが現状だ。

この低迷の理由は明らかである。内需部門の不振が続いているためである。特に、2014年4月の消費税率引き上げ以降の個人消費が一向に回復の兆しをみせないことが大きい。さらにいえば、2015年以降の低迷が鮮明である。

例えば、これは、第3次産業活動指数の動きをみると明らかである(図表1)。


また、第3次産業活動指数の中でも対個人向けサービス業(小売や外食、遊興など)の低迷が著しい。対個人向けサービス業の活動指数の水準は、2015年以降、横ばいから若干低下気味に推移している。

  なかでも、2014年4月以降の「嗜好的個人サービス」の低迷が著しい(図表2)。


「嗜好的個人サービス」は、外食や、娯楽などの余暇的なサービス業を含むが、これは、比較的、生活に余裕が出てこないと増えてこないと推測される。この「嗜好的個人サービス」の低迷は、消費税率引き上げ以降、一般国民の生活に余裕がなくなっていることを示唆している、ととれなくもない。

さらには、「非選択的個人サービス」の活動指数もここ数ヵ月は低下気味である。

この「非選択的個人サービス」には、医療や介護、教育などが分類されると考えられるが、これらのサービスは、国民にとっては、「義務的支出」の一種なので、「消費」というよりも、「経費(コスト)」に近いものだろう。

「非選択的個人サービス」の活動水準の低下は、ここに来て、国民生活の余裕度がさらに低下してきていることを示唆している。そして、この状況は、「景気ウォッチャー調査」における景気の現状判断DI(特に、飲食関連、サービス関連)の動きとも整合的である。

   個人消費低迷の理由は何か

「景気ウォッチャー調査」では、景気判断の理由についてのコメントがあり、それなりに有用だが、個人消費低迷の理由については、このコメントでは必ずしも定かではない。コメントをまとめれば、単に「消費センチメントがなぜか盛り上がってこない」と言っているに過ぎないためだ。

一般的に言って、個人消費が低迷する一番の理由は、所得(可処分所得)の減少である。ところが、可処分所得の伸び率は、過去と比較するとまだましな部類である。また、最近の雇用環境の改善から、「雇用者数×一人当たり賃金」に近い統計である「雇用者報酬」の伸びは高まっている。

2016年度の雇用者報酬の伸び率は、名目では前年度比2%、実質では同2.2%で、これは、デフレ前の1995年度の伸び率とほぼ同じである。

それでは、消費低迷の理由は何か、ということだが、可能性として最も高いのは、「貯蓄性向(可処分所得にうち、どの程度の割合を貯蓄に回すか)」の高まりである。これは、裏を返せば、「消費性向の低下」ということに他ならない。

ちなみに、消費の低迷は、「消費水準が低い高齢者の割合が上昇したことによる」という説があるが、これは誤りである。高齢者の消費水準が仮に低いとしても、所得水準も年金収入が主だとすると低いはずなので、この場合には消費性向は低下せずにむしろ、上昇するはずである。

そこで、「家計調査」における勤労者世帯(2人以上)の消費性向の動きをみると(図表3)、2015年初めをピークに、その後、急低下していることがわかる。すなわち、2015年以降の家計は、雇用環境の改善により、そこそこ、所得は増えながらも、「節約志向」を高め、所得をより貯蓄に振り向けているということになる。

日本国民は、長期化するデフレの中で、ながらく消費支出を抑えてきたが、2012年終盤以降、現在の安倍政権発足と「アベノミクス」によるデフレ脱却の機運の高まりの中で、消費性向は急上昇した。

2014年4月の消費税率引き上げ直後も、その余勢(もしくは、長年のデフレによる「倹約疲れ」も影響してか)からか、消費性向はすぐには低下しなかったが、2014年の夏場以降、急速に低下し始めた。

この間、景気回復のモメンタムは失われたが、雇用環境の改善は続いたため、全体としての賃金(統計的には雇用者報酬)の増加は続いた。だが、賃金の回復局面にもかかわらず、消費性向の低下(及び、貯蓄率の上昇)はむしろ、加速度的に進行した。

そして、消費性向の低下の推移をみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であった。

思い起こすと、ちょうど2016年6月に、安倍首相は、2017年4月に予定していた消費税率再引き上げの先送りを発表した。この決定自体は、当時の経済状況を考えると「英断」であったことは間違いない。ただ、問題は、次の消費税率再引き上げを2019年10月に単に「先送り」しただけであったという点だと考える。

   政府・日銀は「脱デフレ」にコミットせよ

以前(5月25日)の当コラムで筆者が言及したように、2014年4月の消費税率引き上げは、2013年から始まったデフレ解消の動きを頓挫させた。すなわち、せっかく高まっていた「脱デフレ」の気運を完全に殺ぐことになった(「デフレ・レジーム」の復活)。

その直後から低迷している個人消費を再び拡大トレンドに乗せるためには、「デフレ・レジーム」を払拭するような措置をとる必要があったが、2016年6月の「消費税率引き上げ先送り」は、「デフレ・レジーム」の払拭には力不足であったと言わざるを得ない。

そのため、多くの国民は、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったと推測される。そして、この流れは現在も継続中ということなのだろう。

ここまでの個人消費の動きをみる限り、消費者の「デフレ予想」は払拭されていないため、インフレ率が上昇してこないのもある意味当然であろう。従って、夏場頃からインフレ率は徐々に上がりはじめるという政府・日銀の物価見通しは楽観的過ぎると考える。

その意味で、出口論に終始し始めた感のある金融政策の議論も時期尚早で、的外れといわざるを得ない。どちらかといえば、むしろ、消費を刺激するような財政的措置を講じるべきでないかと考える。

さらにいえば、将来の増税措置については、「脱デフレ」に明確にコミットする必要があるだろう。

これは、先日のシムズ教授が言及していたような、「2%のインフレ率が安定的に実現するまでは増税措置は行わない」とか、「(政府目標である)名目GDP600兆円を実現するまでは増税措置は行わない」というコミットメントを意味する。

「財政再建待ったなし」と考える識者にとっては、我慢できないことかもしれないが、国民生活を犠牲にしての財政再建は、財政再建すら危うくするということも明白になりつつあるのではなかろうか。どうしても財政再建が必要だということだとしても、「急がば回れ」だと思うのだが…。

【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!

現状では、8%増税に両手をあげて大賛成だった、人々は反省の弁を発表するなどのことはおろか、増税の失敗に関しては誰も何も言いません。言うのは、増税に反対していた人ばかりです。ほとんどマスコミは何もいわず、政治家も、識者も増税に反対していたほうが、少数派なので、多数派はほとんど何も言いません。

そのためでしょうか、国民の多くは実際は節約をしつつも、8%増税が大失敗であったという認識はあまりないのではないでしょうか。

そうして、増税に両手で賛成だった人々の一部は、増税による悪影響に関しては何も言わずに、アベノミックスは失敗だったという珍妙な主張をしはじめています。そもそも、8%増税の悪影響を予測できなかった人がこのようなことを主張するのが、全く理解できません。

特に、この人たちが増税が大失敗だったということをはきりとは認めないことが全く理解不能です。アベノミクスを安倍政権が実施する政策のことを指すというのなら、雇用は劇的に改善したため、金融緩和は成功、財政は増税で大失敗と素直に認めるべきです。

アベノミクス失敗論者のほとんどは、8%増税大失敗を認めない・・・・
いずれにせよ、8%増税は大失敗であったことは、動かしがたい事実です。これを認めない人は、経済を語る資格はありません。そうして、韓国の経済を批判して、韓国では金融緩和をするとキャピタルフライトがおこるなどという無理筋の屁理屈を言う人もいるのですが、そういう人は「実質GDP成長率」は韓国以下のままということを忘れているのではないでしょうか。

さて、ブログ冒頭の記事で、安達誠司氏は、以下のように述べています。
2016年6月の「消費税率引き上げ先送り」は、「デフレ・レジーム」の払拭には力不足であったと言わざるを得ない。 
そのため、多くの国民は、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったと推測される。そして、この流れは現在も継続中ということなのだろう。
確かに、「増税先送り」というのでは、「デフレ・レジーム」の払拭には力不足なのでしょう。では、これを払拭し「脱デフレ」に明確にコミットするにはどうしたら良いのでしょうか。

安達氏は、「2%のインフレ率が安定的に実現するまでは増税措置は行わない」とか、「(政府目標である)名目GDP600兆円を実現するまでは増税措置は行わない」というコミットメントを推奨していますが、私はこれでも手ぬるいと思います。

言葉でのコミットは、誰にでもできます。しかし、それはなかなか信用されないものです。過去に結局何度もデフレの最中に増税をしてきた政府が、いまさら、しばらく増税しないとコミットしたにしても、多くの国民はなかなか信用しないでしょう。

だから、言葉でコミットするのではなく、経済政策でコミットするべきなのです。その最も良いやり方は、単純なものです。「8%増税で失敗したから、減税して5%に戻す」と発表して、その通りに実行すれば良いのです。

それと、ここで忘れてならないのは、日本はまた緊縮財政を実施しているという事実も忘れるべきではありません。

上のグラフは一般会計の前年比の推移です。緊縮度は予算総額の前年比増減額から税収増減額を差し引いて算出したものです。税収が増えても、財政支出を通じて民間に還元しないと、民間の所得が奪われます。

安倍政権はアベノミクスを本格的に作動させた2013年度、緊縮度はゼロに近かったのですが、14年度には消費税増税と歳出削減の超大型緊縮財政に踏み切りました。15年度も緊縮を続け、16年度も当初予算でさらに緊縮を継続。すると消費は不振に陥ったままで、物価は下落し、デフレ局面に舞い戻りました。税収も減り始めました。そこで2、3次の補正予算を組んだ結果、拡張型に転じました。

ところが、17年度当初予算はトランプ効果による円安・株高の陰に隠れて目立たなかったのですが、補正後の16年度予算に比べてかなりの緊縮になっています。円高、株安に反転しようものなら、またもやあわてて補正という図式がみえみえです。これほどの経済大国でありながら、事なかれ主義の官僚の采配に国家予算が委ねられる先進国はほかにあるでしょうか。

そうして、今年度の消費の低迷は、この緊縮どの高い会計をも一役買っているのではないでしょうか。

現在の日本は、以前このブログでも掲載したように、デフレーターからみてもいつデフレに舞い戻ってもおかしくない状況です。

そのような経済状況では、実施すべき政策はさらなる量的緩和と、積極財政です。中でも、積極財政は減税だけではなく、会計上でも緊縮は行わず、積極財政に転じることです。

野党は、加計問題などはもうやめにして、8%増税の大失敗を追求すれば良いと思うのですが、そうはならないのが不思議です。もし、これを追求すれば、安倍総理も財務省と戦いやすくなります。

マスコミも、労働組合も、野党もこれを森友問題や加計問題を追求したときと同じくらいの情熱で、大追求すれば、安倍総理も動きやすくなって、5%減税を本気で実行するように動くことになるかもしれません。

そうして、それが実現すれば、これを言い出したマスコミや、野党に対しても国民が感謝して、新聞などの購読も増え、野党は支持率を増やせるかもしれません。

しかし、そのような空気は微塵もありません。やはり、新聞や野党も結局のところ、財務省には手を出すことができないということなのだと思います。

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