まとめ
- オールドメディアは「ナフサがー」と不安を煽るが、市場はその先を見ていた。日経平均6万円は、危機そのものより「危機にどう対応する政権か」を評価した結果である。
- ホルムズ危機は深刻だが、完全遮断ではない。日本関連タンカーの通過、米国の逆封鎖、イランの限界を市場は読み、短期の緊張緩和まで織り込み始めている。
- 市場が買ったのは高市政権の人気ではない。供給力強化、成長投資、経済安全保障へ危機を変える国家の方向性であり、そこに「強くなる日本」の可能性を見たのである。
オールドメディアは、また同じ癖を出した。ホルムズ海峡危機となれば、ナフサが上がる。電気代が上がる。物価が上がる。家計が苦しくなる。もちろん、それは一面の真実である。ナフサは石油化学製品の基礎原料であり、原油価格や輸送リスクが上がれば、包装材、樹脂、自動車部材、化学繊維など広い分野に波及する。電気代や燃料費にも時間差で影響が出る。
だが、そこだけを見ていると現実を見誤る。4月27日、日経平均株価は60,537円36銭で引け、終値で初めて6万円を上回った。危機があるのに、株価は上がったのである。
では、市場は何を見ていたのか。市場は、ホルムズ危機を甘く見たのではない。むしろ、オールドメディアよりはるかに冷静に、危機の持続時間、米国の逆封鎖、イランの限界、米中首脳会談、そして日本の政権リスクを読んでいた可能性がある。
1️⃣市場はホルムズ危機より「石破政権」の方をリスクと見た
市場は本来、危機を嫌う。原油高も、海上輸送の不安も、ナフサ価格の上昇も、企業収益には悪材料である。それでも株価は上がった。なぜか。市場は、危機そのものだけでなく、危機に対する政権の反応を見るからである。
石破政権下の日経平均は、2025年8月18日に終値で43,714円31銭まで上昇した。これは当時の過去最高値であった。だが、高市政権下では5万円を突破し、さらに6万円台に乗せた。ここに明確な差がある。
もちろん、「石破政権でも時間が経てば株価は上がっていたかもしれない」という反論はあり得る。だが、その反論は弱い。なぜなら、高市政権はまだ発足から半年ほどしか経っていないからである。わずか半年ほどで、日経平均は5万円を超え、さらに6万円台に乗せた。この速度と幅は、単なる時間経過だけでは説明しにくい。
市場は、政権の看板だけを見ているのではない。財政運営、成長投資、経済安全保障、エネルギー政策、産業政策の方向を見ている。石破政権でも株価が上がった可能性はゼロではない。しかし、実際にこれほど短期間で大きな差が出た以上、市場には高市政権の方がはるかに魅力的に映っていると見るのが自然である。
石破政権下で見えていたのは、成長期待というより、縮小均衡の政治であった。財政規律、負担の分かち合い、増税余地、家計支援、節約、我慢。これでは市場は未来を買えない。
危機の時代に必要なのは、「国民にどれだけ我慢させるか」ではない。どの産業を伸ばすのか。どの供給網を守るのか。どの電力インフラを増強するのか。どこに国家資本を集中するのか。そこなのである。
ここに、マスコミ報道の無理がある。彼らはお決まりの政府批判の一環として、「ナフサガー」「電気代ガー」「物価上昇ガー」と叫んでいるのだろう。だが、この筋立てにはかなり無理がある。なぜなら市場はすでに、ホルムズ危機を単純な物価高材料としてだけ見ていないからである。
ナフサ高は確かに問題である。
だが、それを高市政権批判の道具にするには、材料が粗すぎる。あまりにお粗末だ。
市場は、悲鳴ではなく構造を見ているのである。
2️⃣市場は「供給混乱」の先に、逆封鎖と5月停戦シナリオを読んだ
株式は典型的な先行指標である。株価は、今日の生活実感を映すものではない。半年先、1年先、さらにその先の企業収益、政策、金利、為替、投資環境を織り込む。だから、オールドメディアが「ナフサガー」と叫んでいるとき、市場は別の情報を読んでいる。
ここで読者が驚くべき数字がある。IEAは、世界の石油供給が日量1,000万バレル規模で減少したと分析している。これは単なる不安心理ではない。現実に、史上最大級の供給混乱が起きたということである。
つまり市場は、危機が小さいから株を買ったのではない。これほどの供給ショックを見た上で、それでも「長期化しない可能性」を買ったのである。
なぜか。原油高は、いつまでも原油高を生むわけではないからだ。高すぎる原油は需要を壊す。需要が壊れれば、価格はやがて調整される。市場は、供給ショックだけでなく、需要破壊まで見ている。
そして、昨日以降の動きは、この市場の読みをさらに補強している。日本関連タンカー「Idemitsu Maru」は、サウジ原油200万バレルを積んでホルムズ海峡を実際に通過した。米イラン衝突開始後、日本関連の原油タンカーとしては初の通過である。船舶通行は依然として戦前の1日125〜140隻から大幅に減り、直近では7隻程度にとどまっているが、ゼロではない。危機は深刻である。だが、完全遮断ではない。(Reuters)
さらに、積み荷のあるLNGタンカーもホルムズ海峡を出た可能性が報じられている。これはエネルギー輸送が完全停止ではなく、細いながらも動き始めていることを示す。市場が見ているのはここである。危機は本物だ。しかし、供給線は完全には切れていない。(ニューヨークポスト)
日本企業は、テレビの前で悲鳴を上げているだけではない。
実際に船を動かし、供給線を維持しようとしている。
市場はここを見ている。危機は本物だ。しかし、需要破壊、代替供給、日本企業の現実対応を合わせて見れば、「日本株を売り崩すだけの長期リスクではない」と判断する余地がある。
そして決定的なのが、米国の逆封鎖である。米国の圧力によって、イランは中国に原油を売りにくくなっている。ロイターは、米国の封鎖でイラン産原油を積んだ複数のタンカーが引き返されたと報じている。これは、イランの原油輸出、とりわけ中国向け輸出への圧力が実際に効いていることを示す。(Reuters)
イランにとって、これは痛い。原油は売れて初めて資金になる。積み上がるだけの原油は、国家財政を支えない。売れない原油は貯蔵を圧迫し、やがて生産そのものを止める圧力となる。ロイターは、イランが完全な原油輸出停止に耐えられるのは最大2か月程度で、その後は生産削減を迫られる可能性があるとするアナリストの見方を報じている。(Reuters)
さらに石油施設を破壊されれば、復旧には数年単位を要する可能性がある。つまり、イランは威勢よく戦争を続けたい側ではない。戦争を長引かせれば、自国の資金源と生産能力を失いかねないからである。
一方で、米国にも戦争を長引かせたくない動機がある。中期的には中間選挙がある。燃料価格の上昇と物流混乱は、政権にとって重い。短期的には米中首脳会談を控えている。この直前に中東戦争を激化させる合理性は低い。中国もまた、エネルギー安定を求めている。ロイターは、中国がイラン戦争終結に向けた外交を強め、同時にトランプ氏との首脳会談を円滑に進めようとしていると報じている。(Reuters)
ここから市場は一つのシナリオを読む。イランは続けられない。米国も長引かせたくない。中国も安定を求める。ならば、5月には少なくとも一時的な停戦や緊張緩和に向かう可能性がある。
もちろん、これは確定ではない。交渉は崩れることもある。原油価格が再び跳ねる局面もあり得る。実際、米イラン協議の停滞やホルムズ輸送の低迷はなお続いている。だが、株式市場は確定してから動く場所ではない。可能性を先に買う場所である。
ここが、オールドメディアとの決定的な違いである。
オールドメディアは、ナフサ、電気代、物価上昇を叫ぶ。
市場は、供給混乱、需要破壊、米国の逆封鎖、イランの資金繰り、米中首脳会談、5月停戦シナリオまで読む。
だから市場は、ホルムズ危機そのものよりも、危機を成長戦略に変えられない政権の方をリスクと見たのである。
3️⃣高市政権で市場が買ったのは「人気」ではなく「政策の方向」だ
高市政権下で、日経平均は5万円を突破し、さらに6万円台に乗せた。市場が買ったのは、単なる高市人気ではない。政策の方向である。
石破政権が市場に与えた印象は、縮小、規律、負担、抑制である。高市政権が市場に与えた印象は、成長、投資、供給力、経済安全保障である。この差は大きい。
危機の時代に、国家が何もしなければ、危機はただの値上げで終わる。だが、国家が方向を示せば、危機は産業再編の契機になる。ナフサが危ないなら、石油化学の原料調達をどう多角化するのか。電気代が上がるなら、原子力、火力、送電網、蓄電、LNG調達をどう再設計するのか。AIと半導体が伸びるなら、電力供給、工業用水、土地、港湾、物流、人材をどう用意するのか。地政学リスクが高まるなら、海上交通路、保険、備蓄、防衛、情報機関をどうつなぐのか。
これをやる国は買われる。これをやらずに「大変だ」と言うだけの国は売られる。高市政権で市場が見ているのは、危機を負担で終わらせない政治である。危機を、供給力強化、産業再編、経済安全保障、エネルギー防衛に変換する政治である。
市場は人気投票をしているのではない。
国家の方向を買っているのである。
結論 市場は悲鳴ではなく、国家の変化を買った
オールドメディアは、危機を生活不安に閉じ込める。ナフサが上がる。電気代が上がる。物価が上がる。家計が苦しい。それは一面の真実である。だが、それだけでは半分しか見ていない。
市場は、危機そのものではなく、危機への反応を見る。株式は先行指標である。市場は、今の悲鳴ではなく、先の収益と政策を織り込む。
市場は、ホルムズ海峡危機を甘く見たのではない。供給混乱を見た。需要破壊を見た。日本関連タンカー「Idemitsu Maru」がホルムズ海峡を実際に通過する可能性の高さを見た。積み荷のあるLNGタンカーも通過し、エネルギー輸送が細いながらも動き始めていることを見た。米国の逆封鎖がイランの中国向け原油輸出に効いていることを見た。イランが戦争を長期化させれば、自国の石油生産能力そのものを失いかねないことを見た。米国にも、中間選挙と米中首脳会談を前に、戦争を長引かせたくない動機があることを見た。
そして何より、市場は、危機を負担で終わらせる政権と、危機を投資に変える政権の違いを見た。
石破政権型の縮小均衡政治は、ホルムズ危機よりも危うい。なぜなら、危機は一時的でも、縮小均衡の政治は国を長く弱らせるからである。
危機を負担で終わらせるか。
それとも、供給力強化、産業再編、経済安全保障に変えるか。
市場は後者を買った。
だから日経平均は史上最高値6万円を突破したである。
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