USDA(米農務省)が、カリフォルニアにあるホールマーク/ウエストランド社が生産した牛肉を、2006年1月に遡ってリコールしました。その対象は1億4千万ポンドと、畜肉のリコールとしては過去最大級です。もっとも、大半はすでに消費済みとみられています。何と学校給食にも使われていたようです。
この発端となったビデオがYouTubeに上がってます。そのビデオが上のビデオです。
これは、米国の人権団体が告発したものです。この畜肉会社では、自力で立てなくなった"downer" cattleを、蹴りつけたり、フォークリフトで押したり、足に鎖をつけて引きずったりして無理やり屠殺場まで連れてゆき、畜肉にしていたというものです。
「Downer Cattle」は、日本でBSE問題が大きく取り上げられた時に話題になった、いわゆる「へたり牛」です。普通の病気以外に、BSE感染の疑いがあることから、食肉にすることは日本では禁止されています。もちろん、カリフォルニアでも「へたり牛」は、廃棄処分にすることに決まっているのですが、これを食肉にしていたというのはちょっとショッキングな事実です。ビデオでも紹介されていますが、USDAの食肉検査官は、毎日2回、決まった時間に来て牛を眺めるだけなのだそうで、これに見つからないよう、へたり牛の処理は隠れて行われていたようです。
「だから、アメリカの牛肉は危ない!──北米精肉産業、恐怖の実態」でも扱われたが、アメリカの「スローターハウス」は、劣悪な環境の元、効率だけが重視され、賃金の安い移民を使い、次々と生きて動く生物を食肉という商品に変えてゆく過酷な現場です。政府の規則よりも現場の命令が優先され、このような事が行われていても何も不思議ではありません。とにかく、動画で見ている限りでは、食べものを扱うという様子ではありません。まるで、工業用品を扱うという感じて、食べ物である牛に対する感謝の念など微塵も感じさせません。
ただ、疑問に思うのは、このリコールが「クラスII」という、大きな健康被害が想定されない種のものであり、メディアでの報道でも、BSE感染の問題というより、「E. Coli」すなわち、大腸菌による汚染などのほうが問題という論調で語られていることです。もちろん、このウエストランドの「へたり牛」については、BSE検査などされていません。日本人が狂牛病に対してあまりにもヒステリックなのかもしれないですが、欧州での対応に比しても、アメリカのそれにしろBSE問題への認識はあまりにも低い気がします。
そもそも、このビデオを紹介したのは、アメリカの人権団体で、問題が大きくなったのも、「病気の牛がひどい扱いをうけている」という、動物愛護の観点からの非難が主になっています。BSE問題は、最初からあまり焦点となっていません。動物愛護よりも何よりも食の安全という点からもう少し大騒ぎになっても良い気がします。BSEの牛が数頭でも混じっていて、子供たちに将来健康被害が生じたらどうするのでしょうか?
もっとも、今頃になって、実はアメリカにもBSE感染した牛がたくさんいました。「へたり牛」のほとんどは、学校給食やハンバーガーに加工されて、既に消費されてしまいました。などと発表しようものなら、大変な規模の訴訟などが発生して、恐ろしいことになるに違いないのですが。臭いものには蓋。そんな印象さえ感じるリコール問題です。
この問題日本でもあまり報道されないようですが、由々しき問題だと思います。まあ、今回リコールされた商品は日本には輸入されてはいないということもあるのでしょうが・・・。以前「反捕鯨の背景」にも書いたように、穀物や、牛肉はアメリカの戦略物資でもあります。これらの物資に少しでも傷がつかないようにとの配慮なのでしょうか?アメリカの畜産では、コーンや大豆などの穀物を牛に大量に与えるため、穀物の高騰を招き安いです、さらにはバイオエタノールの問題もあり、穀物相場は上がる一方です。しかし、アメリカにはアメリカ式畜産の信奉者が多いとみえて、疑問視する声はあまり聞こえてきません。
穀物相場が上がることは、アメリカの一部の勢力にとっては非常に都合の良いことなのかもしれません。だからこそ、こうした問題が起こっても、あまり大げさに騒ぎたてないのかもしれません。騒ぎたてれば、国益(一部の人の利益?)に反することが判っているからかもしれません。
でも、こうしたことにより健康被害や、食糧危機などが起こったらどうなるのでしょうか。こうした、危険極まりない事件に関してアメリカや、日本のマスコミでも、あまりさわぎたてないようです。本来であれば、朝から晩まで報道されても良いような事件だと思います。
ところが、アメリカでも日本でも、捕鯨問題や、他環境問題など騒ぎたてたり、穀物相場の高騰、ガソリン高騰などに関して大げさに騒ぎ立てます。そうして、お先真っ暗の将来像ばかり提示してみせています。まるで、将来には何もないかのような報道ぶりです。何か人為的なものを感じます。
人類には、実は最後のフロンティアが待っています。それは、まだほとんど手付かずの海洋資源です。その中には、当然鯨もふくまれます。西洋人でもそのように考えている人がいます。経営学の大家故ドラッカーは、海洋牧場による海洋資源開発が人類最後のフロンティアであることを著書の中で述べています。アーサー.C.クラークは、「海底牧場」というSF小説を書いています。その中では、21世紀中葉には、全世界の食料の10%が鯨を含む海洋資源を海底牧場でまかなっているという想定になっています。フランスの海洋学者のクストーの冒険などに興味を持って海洋資源関係の業務に就かれた方も多いのではないでしょうか。ところが、最近のマスコミなど、地球温暖化などで水位が上昇するようなインチキは報道しても、海洋開発に関しては、まるで報道しません。まるで、人類にとって海はなきがごとき最近の状況です。
上は、クストーの1970年代の写真。クストーの冒険などをテレビで見て、血沸き、肉踊る思いをした人も多いはずだ。
このような明るい未来を伏せて、穀物、穀物をもとに育てるアメリカ流工場式牧畜、さらには、バイオエタノール、もっと遡れば原油の高騰など、さらには、アル・ゴア氏のような災厄ばかりクローズアップする環境問題の指摘・・・・・。島が沈む、海水面が上がる、大勢の人が死ぬなどありとあらゆる、災厄の連続ばかり連綿と報道するマスコミ。あげればきりがないほどですが、これに関して皆さんはどう思われますか?やはり、以前反捕鯨の背景の中で述べた「巨万の富を生み出すシステム」そのものや、それを操る人々の影が見え隠れします。私たちは、このような操作に左右されてはいけないと思います。無論お金をもらって信条を捨てること、無意識に支配されることなどたくさんあると思いますが、自らの考えを持ち、自らの主人公になるべきだと思います。こうした人々が増えることにより、人類は明るい明日を迎えることができると信じます。
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