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2019年2月19日火曜日

バブル崩壊後の日本がマシに見える中国のこれから―【私の論評】中国のディストピアはさらに苛烈になり地獄をみることになる(゚д゚)!

バブル崩壊後の日本がマシに見える中国のこれから

政治体制はそのまま、悲惨なディストピア時代へ

2017年2月27日、中国の新疆ウイグル自治区ウルムチで
1万人以上の武装警官が大規模な軍事パレードを行った

崩壊すると言われながら長い間崩壊しなかった中国経済がついに崩壊し始めた。一時は、「中国崩壊説の崩壊」などと揶揄されていたが、やはり不自然なことはどこかで限界に突き当たる。

 バブル崩壊後の中国について考えてみたい。それには日本のバブル崩壊がよい教材になる。

 中国の経済発展と日本の発展はよく似ている。(1)官僚主導、(2)低賃金労働を武器にした輸出主導、(3)技術を盗んだと欧米から非難されたこと(中国は日本からも非難された)、(4)末期に不動産バブルや過剰融資、それに伴う金融不安が問題になったこと、(5)いずれ米国を抜いて世界最大の経済大国になると言われたことまで、そっくりである。

 そう考えれば、中国が今後どのような道を歩むかを考える上で、日本のバブル崩壊後の歴史が大いに参考になる。

ワンレンボディコンが踊り狂った日本のバブル

 中国経済成長は日本より25年から30年程度遅れている。中国の2019年は日本の1989年から94年に相当する。歴史に完全なコピーなどはないから、5年程度の誤差は仕方がない。

 現在の中国が日本の90年代前半と同じような段階にあると考えると、“爆買いから、こと消費”などと言われていることも合点がゆく。プラザ合意(85年)で円が強くなると、多くの日本人はヨーロッパに出かけて、ルイ・ヴィトンやグッチ、セリーヌなどブランド製品を買いあさった。しかし、90年代の中頃に入ると買い物には飽きて、秘境(たとえば電波少年と猿岩石、96年から)やヨーロッパの田舎を訪ねることがブームになった。

 日本のバブルを語る上で忘れてはならないのはディスコの「ジュリアナ東京」であろう。若者、特に女性がワンレンボディコンと呼ばれるバブルを象徴するファッションで「お立ち台」と呼ばれる舞台に登り、朝まで踊り狂った。

 ジュリアナ東京は91年に開店し94年に閉店している。経済的なバブル崩壊は90年なので、ジュリアナ東京が開店したのは厳密にはバブル崩壊後である。だが、多くの市民はバブルが崩壊しても、バブルは永遠に続くと思っていた。

コンサートとディスコを合体させたパーティーの「お立ち台」で、
思い思いの衣装を着て踊る女性たち =1994年8月29日、東京ドーム

 しかし、さすがに94年になると皆がこれはおかしいと思い始めた。日本人全員がバブル崩壊したと確信したのは山一証券などが倒産した97年であろう。

経済が変曲点を迎え、政治も官僚機構も変革した日本
 昨今、中国の電子工業界からの受注が急減したと言われるが、その一方で、日本製の高級化粧品の売り上げは伸びている。また、訪日客も増えている。この現象は、日本の1990年代初頭を思い浮かべれば、容易に説明がつく。

 あの時期、日本政府は景気を回復させようと躍起なって公共事業を行ったが、中国も同じことをやっている。だから、鉄鋼やセメントなどの需要は底堅い。

90年代の日本を語る上で最も重要なことは、政権が大きく揺れ動いたことだ。55年の保守合同以来、初めて非自民政権(細川政権、93年)が誕生した。94年には、現在の政治状況を昭和とは大きく異なるものにした衆議院の小選挙区制度が作られた。その後、自民党は政権を取り戻すために長年の政敵である社会党と連立を組み、首班が社会党の党首になるという驚愕の事態が出現した(94年)。

 高度経済成長を牽引したとして絶賛されてきた官僚機構が、新たな状況に対応できていないとして批判にさらされた。ノーパンしゃぶしゃぶ事件(98年)などによって、多くの官僚が処分され、官僚は地位も権力も失っていった。官僚の中の官僚と言われた大蔵省は特に強く攻撃された。金融部門を分離されて、名称も歴史と伝統を誇る大蔵省から財務省という一般的な名称に変更させられた(2001年)。もはや多くの官僚にとって、昭和の日本では当たり前だった「天下りで美味しい老後」など、夢のまた夢だろう。

 経済が変曲点を迎えると、政治も官僚機構も変革を余儀なくされた。日本は21世紀の日本にふさわしい理念として「官から民へ」「規制緩和」「内需主導」などを選び、それに対応する体制が求められた。

中国のバブル崩壊が政治変革につながらない理由

 中国共産党による経済運営は、地方政府の財政赤字、無駄な公共事業、非効率な国営企業などによって立ち行かなくなっている。そのあり様は、見方によっては昭和の日本にそっくりである。そのために、その改革の方向は日本と同様に「官から民へ」が主要な課題になろう。

 ただし、中国の今後を考える上で重要なことは、体制の受益者が日本とは異なることだ。

 日本には曲がりなりにも民主主義が定着していた。政治の受益者は国民である。選挙がある以上、国民に不人気な政権は存続できない。だから、バブルが崩壊した時に国民から大きな変革を求められると、政治も官僚機構も変革せざるを得なかった。

 現時点において、我が国において改革が十分に進んだと思っている人はいないと思うが、それでも多くの制度は昭和とは異なったものになっている。現在を生きる日本人にとって「平成」は不本意な時代であったが、後世において、それほどの混乱なくして新たな体制を作り上げた偉大な時代と評価されるのかも知れない。

 一方、共産党独裁が行われている中国はここが大きく異なる。中国の政治体制の受益者は約9000万人とされる共産党員である。共産党員の中の有力者は、政府、地方政府、人民解放軍、武装警察、そして国営企業の幹部として美味しい思いをしている。その幹部は日本のサラリーマンが想像できないほどの所得を得ており(反汚職運動が喧伝されているが、それでも相変わらずグレーな収入が多い)、かつ各種の特権を謳歌している。そんな共産党幹部(全共産党員の5%と仮定しても450万人もいる)を支持基盤として習近平政権が成立している。

 選挙がない中国では、バブルが崩壊しても、それが政治変革につながることはない。経済が低迷すれば習近平のやり方に文句のある連中(非主流派である共青団や江沢民派)の発言権は増すことにはなろうが、彼らが政権を取ったところで、共産党員が享受している利権を台無しにするような改革はできない。習近平が国営企業を重視する所以もここにある。ゴルバチェフがソ連を改革できなかった理由もまたここにある。

民衆の不満を徹底弾圧、ディストピア化する中国

しかし、何もできずに手を拱いていると、共産党員でさえも共産党ではダメだと悟るようになる。そうなれば、旧ソ連のように共産党体制が崩壊することになろう。

 とはいえ、それには時間がかかる。それまでは習近平、あるいは次の独裁者が無理矢理にこれまでの体制で突っ走って行かざるを得ない。

 今後、不動産価格が下落し、企業倒産が増え、給料が上がらず、失業者が増えれば、多くの人々が政権に不満を抱くだろう。しかし、選挙はないから民衆は政権を変える手段を有さない。デモを行うことも、政治集会を行うことも許されていない。

 習近平は自分と自分の家族、そして共産党を守るために文句を言う人々に対して徹底的に強硬な手段に出る。中途半端では、かえって反発が強くなる。そして、一度、強硬な手段を取ると後戻りできない。ある中国人は、現在、新疆ウイグル自治区で行われている非人道的な政治は、実験であり、いずれ中国全土に波及することになろうと言っていた。

 今年の春節は700万人もの中国人が海外で過ごした。日本各地を呑気に観光してバブル末期の生活を謳歌していた中国人たちも、バブル崩壊に伴い所有する不動産価格が下落したり経営する会社が破綻したり、また失業する可能性がある。その際に、政権への不満をちっとでも漏らそうものなら、インターネットを監視して盗聴器を張り巡らしている当局によって拘束されて、学習施設(収容所)に連れて行かれることになろう。そこで習近平思想を徹底的に学ばされる。これから中国に、とんでもないディストピアが出現する。

 これは悪意に満ちた予想だと思われるかも知れない。しかし、独裁の欠点を知れば、それほど的外れな予測とは言えない。今後、中国で大きな悲劇が発生した時、我々はウインストン・チャーチルの名言「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば」という言葉を思い起こすことになろう。

【私の論評】中国のディストピアはさらに苛烈になり地獄をみることになる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、納得できる部分もありますが、納得できない部分もあります。納得できない部分は、上の記事ではこれから中国のディストピアが始まるということですが、中国は元々ディストピアだということです。

中国は、建国以来毎年平均2万件もの暴動が発生したと言われています。2007年くらいからは、10万件以上ともいわれていますが、あまりの多さに政府は暴動の発生件数の統計をこのあたりから公表しなくなりました。最近では20万件ともいわれています。

中国の人口は13億、日本の人口は1億2千万人ですから、中国の人口は日本の約10倍です。毎年2万件といえば、日本に置き換えると毎年2千件の暴動が起きていたという計算になります。365日で割ってみると、毎日どこかで5件暴動が起こったということになります。

中国で10万件なら、日本では1万件ということになます。1万件を365日で割ってみると、1日27件暴動が起こったことになります。

これは、半端な数ではありません。もし、日本がこのような状況になれば、最早暴動ではなく内乱状態といっても良いくらいです。これは、最早ディストピアと呼んでも良い状況です。

ちなみに、澁谷 司(しぶや つかさ)氏によれば中国の暴動発生件数は以下のようなものです。
1993年が   約8700件   (一日あたり約24件)
1994年が  約10000件
1999年には 3万2000件
2004年には 7万4000件
2005年には 8万7000件
2006年には 9万件を超えた。
 それ以降、共産党は件数を公表しなくなりましたが、内部情報によると2011年には、約18万件の集団的騒乱が発生したそうです。

数値の信憑性はともかく、とにかく、とてつもないほどの件数の暴動が中国では発生しているということです。日本での状況を考えると、これはもうディストピアと呼ぶに十分です。

2012年10月27日 中国の遼寧で起こった数千人規模のデモ

それと、日本経済についてですが、ブログ冒頭の記事には何も出てきませんが、日本の平成年間では、ほとんどの期間において、マクロ経済政策が間違えていました。積極財政をすべきときに、緊縮財政を行い、金融緩和すべきときに、金融緩和を行うというとんでもないことをしてきました。

平成の終わり頃に、安倍政権が登場して、金融緩和はまともになり雇用は大幅に改善されましたが、財政に関しては相変わらず緊縮財政で、2014年には8%の消費税増税を実施して、大失敗しました。

これほどまでに、長期間マクロ経済政策を間違えた事例は、古今東西どこにもありません。日本だけがこのような愚かなことをしてしまったのです。そのため、日本の潜在的に成長能力はまだまだあると考えられます。

ここが、中国とは全く異なるところです。それにしても、中国の官僚ですら、マクロ経済政策をある程度まともにやってきたというのに、日本の財務省の官僚は一体どうなっているのでしょう。このあたりは、このブログではよく扱っていますので、詳細を知りたいかたは、ぜひそちらを読んでください。

さて、ブログ冒頭のような「中国経済大失速」のニュースが、世界を騒がせています。今後、さまざまなひずみが、一気に噴出してくることでしょう。

中国政府が2019年の経済運営方針を打ち出した、昨年12月開催の「中央経済工作会議」の内容が、意外に率直な自己分析であり、しかも中国経済の「患部」に比較的バランスよく触れています。



中国経済の理解や頭の整理に役立つと思うので、一部をご紹介しようと思います。

第一に、同会議では冒頭、正直に"弱音"が語られています。
今年、経済で結果を出すのは難しかった。同時に、経済運営が変化して不安定化し、外部環境は複雑で深刻であり、経済は下押し圧力に直面している。
「外部環境は、複雑で深刻」とは、もちろん「米中貿易戦争」のことを指しています。「稼ぎ頭」である輸出を干されているのですから、大ダメージです。

「下押し圧力」になっているのは、それだけではありません。

中国共産党は「アフリカ豚コレラ」の蔓延に頭を悩ませています。何百万頭、何千万頭もの豚が殺処分され、一時、豚肉の値段が急騰。現在ではそれにつられて、羊肉と牛肉も高騰しています。

こうした内憂外患により、景気が大きく落ち込もうとしています。

第二に、同会議では、その打開策として「マクロ政策は、積極的な財政政策と健全な金融政策を継続して実施する」と表明されました。

しかし、その実現性の低さが、また、中国経済の危うさをあぶり出しています。

前者の「積極的な財政政策」とは、「減税等による消費喚起」「輸出補助金(輸出還付金)で輸出を伸ばす」などを指すと思われます。しかし政府の借金は、地方政府と国有企業の負債を合わせれば、国内総生産(GDP)の300%以上もあります。カネは国庫にほとんどないのです。

そこで北京は、輪転機で人民元を盛んに刷っています。これが後者の「金融政策」です。その裏付けとして、中央銀行は米国債などの外貨準備高が豊富にあるように見せています。

しかし元はどんどん安くなっています。「1ドル=7元」が、人々が元の先行きに不安を感じて、さらに元を手放す「心理的節目」と言われています。当局は、その水準を割らないよう、腐心しています。しかしどこかで限界は来るでしょう。

つまり、落ち込む景気を下支える余力が、当局にはあまりないのです。

第三に、同会議では、「サプライサイド構造改革は清算を加速するために過剰設備産業を促進する。より質の高い企業を育成する」としています。

大づかみに言えば、売れない鉄鋼などをつくっている工場はつぶし、稼ぐ力を失った企業には退出してもらう。代わりに、本当に競争力のある企業を増やしていく。

そのために習近平政権は元来、官から民へという"小さな政府"を目指す「サプライサイド経済(学)」を標榜してきました。

しかし実際の政策は国有企業を優先し、民間企業を圧迫しています。"真逆のこと"をしているので、構造改革による経済成長など望めないでしょう。

第四に、同会議では、2019年の重点政策として7項目が挙げられました。それらは抽象的なので、一部具体策を挙げてみましょう。当局も自覚している焦りを、裏表で表しています。
(1)「ゾンビ企業」の処理を速める
本来なら倒産すべきだが、銀行や政府機関の支援で生きながらえている「ゾンビ企業」が、中国には最低でも2000社存在すると言われています。

それらが中国経済の足を引っ張っています。

しかし、「ゾンビ企業」を倒産させることは決して容易なことではありません。仮に1社当たり、5万人が勤めているとします。「ゾンビ企業」を全部倒産させたら、たちまち1億人が失業します。さらに、1人の労働者につき家族が3人いるとすれば、3億人が路頭に迷うことになります。
(2) 5G(第5世代移動通信システム)の商業ペースを加速する
ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)が、中国の発展に欠かせないことが、改めて分かります。

翻って、米国の要請で、ファーウェイの孟晩舟副会長(CFO)がカナダで身柄を拘束されたり、同日、ファーウェイと関係が深い、天才物理学者、張首晟が自殺(他殺説も浮上)したりしたのが、北京にとっていかに痛手だったかも分かります。
(3) 大学卒業生、農民工、退役軍人や他のグループの雇用状況の解決に重点を置く
彼らの雇用状況を改善しなければ、北京政府にとって脅威となります。とりわけ、退役軍人の生活改善が急務です。

習政権は新しい産業を興し、雇用を増やさねばならないです。ところが、実際、これは容易ではないでしょう。経済的な苦境は、体制の不安定化にもつながってしまうのです。

これは、このブログでは過去に何度ものべてきたことですが、中国は他の先進国のように、民主化、政治と経済の分離、法治国家がされていません。

そもそも、このようなことが確立されていないからこそ、ディストピアになってしまうのです。

中国ではAIを駆使した監視システムも開発され、一部実用化されており、まさに
ジョージ・オーエルの小説「1984」の世界が中国で実現されることになる

ただし、中国が構造改革をして、これらを推進してしまえば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊し、中国の共産党一党独裁は終焉することになります。ただし、そうなれば中国はしばらくは混乱するかもしれませんが、その混乱の後に、構造改革が成功すれば、またかなり経済発展することも可能になります。

今日の先進国といわれる国々は、国民国家を設立し、はやい時期にこれらをすすめ、経済を発展させ、強国になっています。中国は、そうなる前に、海外から多くの資金が流れ込んだため、経済だけが発展して他はなおざりで、歪な社会構造になっています。

このようなことは、中国共産党はできません。しかし、米国はそれを迫り、制裁を課しています。中国が体制を変えないなら、米国は中国が経済的に弱体化し他国に影響を及ぼすことができなくなくなるまで、制裁を続けます。

中国はそれでも体制を変えないならば、かつてのソ連のようにいずれ経済は崩壊します。そうして、中国のディストピアはますます苛烈になり、いずれ地獄をみることになります。

中国では最新のAIを駆使した、監視システムも開発しつつあり、一部実用化もしています。経済的に疲弊しつつ、とてつもない監視社会にもなるわけで、まさにジョージ・オーエルの小説「1984」で予言された、ディストピアが中国で実現されるのです。

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