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2018年12月11日火曜日

ルノー支配にこだわる仏政府 高失業率なのに緊縮路線強行…マクロン氏へ国民の怒り爆発! ―【私の論評】来年10%の消費税増税を実施すれば日本でも仏のような「黄巾の乱」が起こる(゚д゚)!

ルノー支配にこだわる仏政府 高失業率なのに緊縮路線強行…マクロン氏へ国民の怒り爆発! 

仏マクロン大統領

 日産自動車をめぐる事件でも話題のフランスのマクロン大統領だが、以前から仏政府は筆頭株主であるルノーへの支配を強めようとしていたことで知られている。最近では支持率の低下や閣僚の辞任、大規模な暴動などで逆風となっている。

 マクロ経済の重要な指標である失業率の推移をみると、フランスは2000年以降8%以上が継続している。07、08年には7%台だったが、リーマン・ショックを経て、09年9月には9・3%まで上がり、13、14年には10%台となった。今年10月時点でも8・9%と高止まりしている。

 このような動きは、欧州連合(EU)諸国ではイタリアでも見られるが、現時点でもリーマン・ショック後と同水準の失業率というのは情けない。EU全体の失業率をみても、リーマン・ショックの1年後の水準は9・3%だが、現状では6・7%まで下がっている。EU内のライバル国であるドイツは、リーマンの1年後が7・8%、現状が3・3%と、フランスとは段違いのパフォーマンスだ。

 ちなみに日本は、リーマン1年後の水準は5・5%だったが、現状は2・4%。米国はリーマン1年後が9・8%、現状は3・7%だ。

 他の先進国ではリーマン・ショック後に上昇した失業率が、金融緩和によって下がったにも関わらず、フランス経済は、失業率が高止まりしているのが最大の問題だ。ユーロ圏では金融政策は欧州中央銀行が行うのでフランスもドイツも同じ立場だ。それでも差が出るのは労働市場の構造問題があるからだ。フランスの労働市場は極めて硬直的であることはよく知られている。

 マクロン大統領は14年8月から16年8月までオランド政権で経済産業大臣を務めた。その当時、マクロン氏は、ルノーに対する政府の発言権を増やすような法律を立案している。

 ルノーは第二次世界大戦後に国有化されたが、1980年代後半から民営化に転じ、政府保有の株式を売却している。ただし、現時点でも、ルノー株の15%を保有する筆頭株主である。民間への介入という点では、中道でも左寄りだった。

 マクロン氏は17年5月の大統領就任直後、企業の解雇手続きの簡素化や解雇補償額の上限設定などの労働市場改革を行った。EUでの主導権を確保するため財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以下にするというEUの財政規律の達成を重視するあまり、予算の一律削減、国有鉄道改革で緊縮路線を実施している。

 また、法人税率の段階的な引き下げ、金融資産にかかわる富裕税の廃止なども行っている。中道左派のフランスの中では、これらの政策は右寄りだ。

 ただし、環境政策では左寄りで、今問題となっている燃料税増税をやろうしていたが、延期に追い込まれた。

 燃料税増税は、低所得層の燃料費の安いディーゼル車を直撃した。失業率の低下が不十分な中で、これまでの不人気政策への怒りが爆発したのだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】来年10%の消費税増税を実施すれば日本でも仏のような「黄巾の乱」が起こる(゚д゚)!

数年前、韓国の首都・ソウルで、朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の退任を求める市民団体による抗議デモが、土曜日ごとに発生。ロウソク片手に毎週、多いときでは主催者側発表で200万人を超える人々がデモに参加するという、不気味な現象が発生しました。

このデモの結果、韓国の国会は、いまから2年前の2016年12月9日(金)に、朴槿恵氏の弾劾訴追を可決しました。

韓国のろうそくデモ

いわば、市民団体の「ろうそくデモ」が、国政を動かした格好です。韓国国内では「平和的なデモによって政治を動かした!」、あるいは「これは無血革命に等しい!」など、謎の自画自賛が行われているようですが、「韓国の民主主義の未熟さを示す、本当に恥ずべき話だ」、という認識はないようです。

ちなみに、韓国国内では老舗メデイアである『中央日報』(日本語版)にも、以下のような社説が掲載されたほどです。
【社説】朴大統領弾劾以後…憲法と協治で乗り越えよう(2016年12月10日12時46分付 中央日報日本語版より)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中央日報は朴槿恵氏が民間人である崔順実(さい・じゅんじつ)氏に国政機密を漏洩していたことなどを「神聖な国家権力を民間人に譲り渡した」「決して許されない反憲法的犯罪」だったと決めつけ、朴槿恵氏が弾劾されたことを「霧に覆われた政治も1つの峠を越えた」と評しています。
どうして急にこんな古い話を持ち出したのかといえば、数日前から出ている、フランスで増税が延期されたという話題を目にしたからです。

すでに複数の内外メディアが大きく取り上げていますが、フランスの首都・パリを初めとする各地で、燃料税の引き上げなどに反発する抗議デモが発生。黄色いチョッキ(gilets jaunes)を着用した者たちが3週間以上にわたり、ときとして過激な暴力を振るうなどして社会問題化しています。この黄色いチョッキで破壊活動をするとは、まさに中国の「黄巾の乱」を彷彿とされます。

gilets jaunes

これを受けて、今週、フランス政府は燃料税の増税を表明。いわば、マクロン氏が暴力的なデモ隊に屈した格好となっています。

これは非常に情けない話であるとともに、極めて深刻な話です。というのも、民主主義国において、大統領としていったん有権者の信任を得ている以上、法の手続きなしに、暴力に屈することがあってはならないからです。

これらの報道によると、マクロン氏は前任のオランド政権が残した富裕税などの負の遺産を撤廃するとともに、労働者に対する手当てを削減し、燃料税を引き上げるなど、「強者に配慮する一方、弱者に厳しい政策」を遂行したことが、今回のデモを招いたとされています。

ただし、フランスもユーロの欠陥の犠牲者であることを忘れてはならない思います。

ユーロには深刻な欠点がいくつもあります。通常、産業競争力が強い国(たとえばドイツやルクセンブルクなど)では、貿易黒字を積み上げれば自国通貨の価値が上昇し、輸出競争力が低下することで、自動的に産業競争力が強くなり過ぎないような調整が働きます。

しかし、ユーロ圏に加盟している国どうしでは、為替レートの調整が働かないため、産業競争力が強い国は強いまま、永遠に貿易黒字を積み上げ続け、産業競争力が弱い南欧諸国などは、無限に貿易赤字を垂れ流し続けることになるのです。

それだけではありません。ユーロ圏加盟国では、各国の中央銀行にユーロを発行する権限がありません。このため、国債を中央銀行に引き受けさせるということができませんし、自国がデフレ状況にあったとしても、自国内で金融緩和を行うこともできないのです。

フランスは国連常任理事国であるとともに核武装国であり、農業大国であり、原発大国でもあります。ユーロ発足前のフランスの通貨・フランは、ドイツ・マルクとともに、「G10通貨」の一角を占めていたほどです。

ところが、欧州通貨統合の結果、マーストリヒト条約により国債発行残高はGDPの6割に抑えることが義務付けられてしまい、財政出動の手段を奪われてしまいました。ちなみにこの「GDP債務比率6割」には、経済学的な根拠はいっさいありません。

フランス経済が破壊されている要因は、ユーロという通貨自体の欠陥以外にも、移民政策の失敗や社会構造改革の失敗など、さまざまなものもあるのですが、経済がうまくいっていないことは確かです。

マリーヌ・ルペン氏が率いる国民連合(Rassemblement National、旧党名は「国民戦線」Front National)のような右翼正当といわれる政党が台頭しているのも、フランス経済がうまく機能していない証左であると考えられます。

マリーヌ・ルペン氏

この10年間、ドイツなどの経済強国と、南欧を中心とする周辺国での格差が無限に開き続けるというユーロ圏独特の問題は、根治されていません。それは、国債の発行主体である各国が通貨を発行する権限を持っていない、という問題です。

これを改善するための処方箋は以下のようなものしかありません。
1.ユーロ圏を解体し、ユーロ採用国19ヵ国はそれぞれの通貨を復活させる
2.ユーロ圏の財政を統合し、「ユーロ国債」を発行する
このいずれかです。

諸悪の根源はユーロという通貨の欠陥にありますし、この根治がされない限り、ユーロ圏危機は何度も再燃することと違いない、と思っていました。それがこんな形で噴出するとは、予想どおりとはいえ、忸怩たる思いがします。

ユーロ圏の話はともかくとして、フランスを「近代民主主義発祥の国」と呼ぶ人もいるようですが、民主主義のプロセスにより成立した政府が実行しようとしている政策を、民主主義の手続きによらずに阻止するのは、民主主義国ではありません。フランスの民主主義は危機的な状況にあると言わざるを得ないです。それも、先に述べたように韓国並みの危機にあるといえます。

日本でも、大規模な国会デモなどがありますが、それでも一向に政権交代に結びつきそうにもありません。

その理由は非常に簡単で、現在の日本の経済政策が、それなりに成果を挙げているからです。

もちろん、私自身は安倍政権の経済政策が100%、うまくいっているとは言いません。2013年4月以降の大規模金融緩和はそれなりに日本経済に恩恵をもたらしていますが、2014年4月の消費増税や、財務省の緊縮財政主義は、日本経済の立ち直りを遅らせています。

こうした財務省の抵抗により、日本経済の浮揚が遅れていることは事実ですが、ただ、それと同時に失業率は史上最低水準、有効求人倍率は史上最高水準にありますし、雇用が確保されれば国民生活が徐々に安定していくことは自明の理でもあります。

したがって、いくら日本共産党や極左メディアなどが焚き付けても、日本では韓国やフランスのような暴力的でもは発生しないのです。

ただし、現在の日本経済も、必ずしも盤石ではありません。

とくに、来年10月に消費税等の税率が引き上げられれば、国民が消費行動をするたびに巻き上げられる税額が上昇することになりますし、消費活動が委縮することは避けられません。そして、それによって経済成長が鈍化すれば、デフレ脱却が遅れ、さらには雇用が損なわれる懸念もあります。

民主主義も民度も未熟な韓国でおかしげなデモや市民運動が発生するのは仕方がない話ですが、「民主主義が成熟している」等といわれているフランスでも、経済が悪化すれば、「黄色いベストを着たデモ隊による破壊活動」、といったおかしげな運動が生じてしまうのです。

それを防ぐためには、民主主義とは非常に脆弱な仕組みであることを、まずはきちんと認識する必要があります。

民主主義が機能するためには、国民の知的水準が高いことと、国民の生活が安定していることの、2つの条件が必要です。日本はもともと国民の知的水準が高い国ですが、不況などによって国民生活が苦境におちいれば、容易に変な政権が誕生してしまいかねません。

2009年8月の悪夢を、私たちはよもや忘れてはなりません。

来年10%の消費税増税を許してしまえば、日本でもフランスのように「黄巾の乱」が起こってしまうかもしれないのです。

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