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2008年12月21日日曜日

円高はデメリットか?-円高基調のうち大きな方向転換し大躍進を!!

円高に狼狽するなニッポン 1ドル80円台の日本経済 No11

金融恐慌前夜とも言われる不安いっぱいの国際金融情勢の中で、08年10月24日、ロ ンドン市場で円が急騰し90円台に突入した。対ユーロでも円は113円台を記録した。 アメリカ発の金融危機の中で、比較的傷が浅いとの評価のある円が独歩高の形だ。輸出主 導の日本経済への悪影響が懸念される中、鈴木淑夫氏に、今回の円高を、どのように考え るべきか、緊急インタビューをお願いした・・・。鈴木氏は、インタビューの中で、歴史 的に見て円高後には、日本経済は過去大きく発展してきたことを語り、内需型の日本経済 へ構造を転換する好機と語った。国民にとっても、この円高によって、物価は安定し、各 地で円高還元セールが行われるであろうことを示唆した。円高のデメリットばかりを強調 するマスコミにも日本は「円高・株安」であり、アメリカの「ドル安・株安」状況とは明 確に違うことを意識すべきだと語った。08年10月25日、杉並の鈴木淑夫氏の自宅に て(インタビュー 佐藤弘弥)

円高はデメリットか?
円高は輸出企業の採算を悪化させるため、これまでの輸出立国の考え方では、確かに環境は厳しいということになります。しかし、円高は基本的に、自国通貨の 価値が上がっているということです。日本にとって、プラスになることも多くあります。たとえば、円高で 「減益」 になる業種で働く人々と 「増益」 になる業種で働く人々と、どちらが多いでしょうか。

答えは 「減益」 = 2301万人 「増益」 = 3108万人。なんと増益業種で働く人のほうが、800万人も多いのです。

では、どんな産業が「増益」になるのか、下の表をご覧ください。

書籍からの直接コピーなので、少しみにくいですが、食品、パルプ・紙、石油、非鉄金属、電力などがメリットが大きいことがわかります。そうして、全体でも円高になったほうがわずか、0.02(メリット、デメリット合計)ですが、メリットのほうが上回ることがわかります。

株式市場でも、これを裏付けるような事象が起こっています。4日前場の業種別指数上昇率上位をみると、大型再編の材料が飛び出してきた「石油製品」をトッ プに、2位パルプ紙、3位鉱業と輸入関連の円高メリット業種がベスト3を占めました。上位は他にも、輸入系の電気ガスや、内需の小売、倉庫、建設といった 顔触れがみられました。足元の円高傾向に加えて、「一段と円高が進む」といった観測も背景となっている様子でした。

恐れ自体を恐れなければならない?
最近のマスコミなどでは、日本経済の先行きに関して悲観一色です。悪い材料があふれる今、派遣切など含めて悲観論の優勢は仕方ないと思いますが、そんなに暗いのでしようか。海外資金は円買いに集中しています。これは日本のマスコミや国民が日本の経済に対する見通しが暗いにもかかわらず、外国投資家が日本経済を他国より高く評価しているという証拠以外のなにものでもありません。円高への悲鳴は毎度の事であり、声の大きい輸出企業の発言がマスコミを通じて増幅して伝わつてきている反面、円高で利益を得る企業は口をつぐむしマスコミなどでもあまり取り上げないのだと思います。

株安の影で、原油価格は狂乱水準から戻り、ガソリン価格下落は急ピッチです。穀物ほか一次産品価格も急落しています。円高は輸入品価格を下げ、やがてじわりと国民生活に恩恵が及びます。強い円を使って、海外企業の買収も盛んになっています。未だかつて強い通貨が原因で滅んだ経済や経済はありません。輸出産業ですら、当面は雇用調整や、在庫調整が間に合わずに大変なことになっていますが、いずれ海外から輸入原材料が安くなるとか、部品などの外注化を進めるなどで、円高も克服できるようになるはずです。今は、急激に円高になっているため、調整が間に合わないだけです。あのローマ帝国も末期には、貨幣の価値が落ちました。今までの歴史の教科書が教えるところでは、国が滅びるときには長期わたって貨幣の価値が落ち続けました。

1985年の円急騰に狼狽した政府は景気上昇局面に財政支出の追い肥をしてバブル経済を生んだことは皆さんの記憶にも新しいと思います。大恐慌時の米ルーズベルト大統領は就任演説で「唯一恐れなければならないのは、恐れそれ自体である」と国民に呼びかけた。日本国中で恐れの大合唱をしていては事態は悪化するばかりです。

円安が国益という考え方には問題があるのでは?
つい今年の夏くらいまで日本ではマスコミも含めて、円安のピンチを訴えていたと思います。円安で潤うのは、一部の企業だけで。家計には大ピンチ!という考 え方が大勢を占めていたと思います。そうして、景気は減速はしていたものの、昨年までは成長を続けていて、一応日本の景気は良いということになっていてい ましたが、大方の人にとって景気の良さを実感することができず、「実感なき経済成長」と言われていました。

特に年配の方を中心に、「円安こそ国益」と主張される方が多いです。だから、円高が進ん で1ドル80円台に突入した際、世間は大騒ぎです。しかし、この方は一方的すぎるのではないかと思います。

も ちろん、「日本は貿易黒字国である」であり、日本の輸入額と輸出額を比べると、輸出のほうが多いので、円安になれば、輸出分の円の受け取りが輸入の支出分より多くなるため、黒字額が増えます。確かにこのロジックは20年ぐらい前までは、非常に的を射たものでした。

しかし、現状では日本の貿易黒字額はどんどん縮小しています。さらに、「一国経済で見れば、円安のほうが望ましい」という論理が成立するとしても、このメリットを享受できるのは輸出関連企業のみです。

今年の夏くらいまで円安時に潤っていた輸出関連企業がボーナスを大盤振る舞いしたのかというと、そんなことはなく、業績が良くても、従業員への還元率は 一般に低かった言わざるを得ません。円安で潤うのは家計ではなく、輸出関連企業でした。最近とみに話題になっている、派遣社員切も、今年夏あたりから、問 題になっていました。特にパナソニック等では、偽装請負が問題になっていました。このように輸出産業は業績が良くても、従業員に還元することはあませんでした。

特に年夏までの物価上昇時に は、円安は家計に大打撃を与えつつありました。原油、小麦などの穀物相場、魚や野菜、果物…。日本は食卓ばかりか生活の大半を“輸入モノ”に依存しています。新興国の需要増など で食料価格が上がっているところに、円安になれば大変なことになっていたはずです。

ここで今年の夏までの、ガソリン高の要因について考えてみましょう。もちろん最大の理由は 原油高ですが、円安に振れた際の影響も見逃さないでいただきたいと思います。暫定税率復活と同じロジックです。ガソリン高の背景を細かく見れば、原油高だけではな く、暫定税率復活や一時期より円安になった要因も大きかったと思います。

今年の夏には、ガソリンが1リットル180円台に突入したと大騒ぎしていま した。まあ、実際にはそうならないですみ、さらには、金融危機になってしまいました。しかし、皆さんの脳裏には、ガソリン価格があがれば、それだけではすまないということが焼き付けられたのではないかと思います。

円安になったとしても、良いことはないことは、お分かりになったと思います。円安になったからといって、輸出産業が潤うだけです。さらに、輸出関連企業が非常に傲慢で、強欲であるがために、利益などを従業員に還元しなかったのかというと、必ずしもそうではないと思います。現在は、輸出関連企業も、 少し前まで圧倒的な技術力の差異で、利益幅も大きくそれが、貿易黒字が大きいことの主な原因となっていました。しかし、今では、新興国もかなり技術水準を 高めてきたので、日本は圧倒的な技術力の差異やマーケティングで率の高い商売もできなくなってきています。非常に利幅の少ない旨みのない商売になっているがため、貿易黒字幅も減少してきているのです。

円高基調のうちに大きな方向転換をし大躍進を!!

今のままであれば、この傾向は益々続き、円安になってもほとんどメリットがなくなる時代に突入するでしょう。今は、何とか違法労働でもやらせてなんとかしている輸出関連企業も、このような事が続けば、いずれは生産拠点を海外に大量に移転する時代がくるでしょう。そうなると日本国内には輸出産業に関わる派遣労働も、請負労働もなくなるかもしれません。なぜなら、今のままで何もせず、なすがままに任せていたら、結局は日本の輸出関連企業も、結局はアメリカのビッグスリーのような限界的な存在になってしまうからです。

では、そうならないためにはどうしたら良いのでしょうか。それを実行するのは大変なことですし、実際に具体的な計画を立てたり、スケジューリングすることは難しいでしょうが、実は言葉にしてしまうと簡単なことです。

ご存知のない方も多いかもしれませんが、現在の輸出産業のほとんどが、エリザベス朝時代のイギリスにすべて原型がありました。機械類は言うに及ばず、コンピュータの起源、携帯電話の起源もありました。コンピュータを作るのに必要だった二進法の原理や、その他の理論はすべてエリザベス朝のイギリスに存在していました。ただし、いくつかに分かれて理論が存在したり、残念ながらコンピュータをつくるための素材などがなかったり、つくれなかったりして実現できなかったものばかりです。現在の重化学工業の原点もすでにありました。

今のアメリカや日本の輸出産業などは、こうしたエリザベス朝のものから決別しなければなりません。それは、たとえばバイオであったり、ナノテクノロジーなどです。さらに、新たな知識・技術・ノウハウを開発していく必要があります。輸出産業の技術レベルを飛躍的に高めることです。通常の自動車などの大部分は、中国などの新興国に譲るべきです。特種な車両に特化するとか、vhicle(乗り物、輸送手段)という観点から、乗り物を用いた社会的変革を起すとか、輸送手段の抜本的改革とか宇宙産業などに参入するなどです。

テレビ、パソコンなどの大部分は、他の新興国に譲り、複雑な医療総合システム産業に移行するとか、テレビをパソコンを用いつつも、全く新たな社会基盤やシステムを構築するとかなどです。

それとともに、というより、経済よりももっと重要な安定した社会を目指すために、このブログでも過去に何回か主張してきた20世紀末からすっかり変わってしまった社会(Next Society)に対応する新たな社会基盤とシステムの革新が必要です。

日本の社会には、人口動態の変化(少子高齢化)、第一次産業・第二次産業の相対的地位の低下、IT革新による変化、雇用形態の多様化、知識社会への対応など、まだまだ、不十分な点がたくさんあります。これらへの対応し新たに基盤整備をしたり、システム構築することにより、かなりの内需の拡大が期待できます。単純に誰も使わないような道路をつくるよりは、はるかに良い効果をもたらします。同じ道路を一本作るのにも、社会変革のために必要だからつくるということであれば、全く考え方も違ってきます。それに、社会変革を担う事業主体も新たなに構築すべきです。それは、強力なNPOを構築することです。これに関しては、過去に述べてきたので詳細は以前のブログを読んでいただきたいです。(この文書の下に関係記事のURLを掲載します)。

金融危機の前までは、すべての人の頭の中が「金融・経済」一辺倒でした。これが、実体経済を悪くしたり、たとえ経済が良かったとしても「実感なき経済成長」の原因ともなってきたと思います。おそらく、先に述べたような輸出産業の革新だけでは、たとえ景気が良くなったとしても、「実感なき経済成長」になってしまうと思います。本当に景気の良いときは、輸出産業も従業員に還元することになるでしょうから、そのときだけは良いかもしれません。しかし、それはあくまで一時のことにすぎません。やはり、社会を良くしなければなりません。良くなるだけではなく、新興諸国と比較して高次元の社会に入っていく必要があります。

高次元の社会には、高次元の製品やサービスが必要になります。そうしたニーズに応えてこそ、新たなイノベーションが生まれます。これは、新興国にはなかなか真似できません。それまでとは、全く違った発想が生まれます。産業革命にあった、エリザベス朝のイギリスではまさにそのような状況になって好循環があったのだと思います。だからこそ、小さな島国であった大英帝国はあそこまで繁栄したのだと思います。振りえかって現在も、今までの社会と同じ社会のままであっては、新興国の製品開発やマーケティングを凌駕するような発想は生まれきません。同じ土俵の上で、新興国と同じ技量で勝負することになります。実は、これが現在の金融危機下における先進国の輸出型産業の現状です。

日本がここしばらく、円高基調にあるうちに、こうした転換を積極的に進めていくべきです。EUやアメリカなど他の国のことも考えてみてください、金融危機の影響は、株価の低迷だけではありません。自国の貨幣の価値が大きく落ちているのです。円高であれば、海外から安い原材料を調達できます、海外の本当に優秀な人を雇うこともできます。日本の優秀な人材を海外に学ばせに出すことが容易になります。

日本にとってより良いことが多くあります。この良さを最大限に生かしつつ大きな方向転換を図るべきです。このようなことを積極的に行えば、日本の金融・経済も立ち直り必ず大躍進します。このような転換を行わないうちに、本格的な円安の波が日本を襲った場合、日本は二度と立ち上がることができないくらいのダメージをこうむることになるでしよう。来年9月くらいから良い兆候が見え出し、年末には確かなものになり、再来年は好景気になり、場合によっては大躍進するでしょう。いまから、2~3年が企業にとっても、政府にとっても、そうして個人や、日本では未だ弱小なNPOも本当の勝負時になると思います。そうして、このような大きな潜在可能性を持っている国は世界の中でも今は日本だけです。

そうして、この好景気の時期に多くの企業や非営利企業が大転換をはかるべきです。ソニー、パナソニック、キャノンなどの輸出産業の花形だった企業も、この時期に転換を図らなければ、次に円安の時期がきても、躍進はできません。景気の良さから具合がよくなるだけで、何らの発展もなく、没落していき、円高になれば、また大規模な派遣社員切などを行わなければならないどころか、現在のビッグスリーのようになり没落していきます。

この時期に大転換をしたり、新たな時代の要請に応えた新たな事業・産業を生み出した企業は、大躍進を遂げることでしょう。21世紀の花形になることは間違いありません。もし、日本がこのような企業(営利・非営利問わず、というより、ここで有能な非営利企業を多数輩出する必要があります)を大量に輩出することができたら、世界の特にアメリカなどの大方の期待を裏切り、日本は21世紀中もアジアのリーダーとしての地位を保つどころか、向上させることができるでしょう。

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