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2018年9月21日金曜日

北方領土問題は今度こそ動くのか 「2島返還論」のタブーを解禁するとき―【私の論評】GDPが東京都より若干小さい小国ロシアを文字通り小国にすれば、北方領土はすぐ返還される(゚д゚)!

「2島返還論」のタブーを解禁するとき

北方領土の国後島を訪問したロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領
(当時、2010年11月1日撮影、資料写真)

 自民党総裁選挙で、安倍首相が3選された。3期目に積み残した課題は多いが、その1つは北方領土問題だ。9月12日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領は、突然「前提条件なしで年末までに平和条約を結ぼう」と提案したが、安倍首相はその場では答えなかった。

 これについて総裁選挙では、石破茂氏が「領土交渉が振り出しに戻った」と批判したのに対して、安倍首相は「ロシアはいろんな変化球を投げてくるが、ただ恐れていてはだめだ」と否定的ではなかった。1956年の日ソ共同宣言から動かなかった北方領土問題は、今度は動くのだろうか。

北方領土は「日本固有の領土」か

 多くの日本人は「歯舞・色丹・国後・択捉の北方4島は日本固有の領土だ」という政府見解を信じているだろうが、問題はそれほど自明ではない。歴史的には、この4島に日本人が住んでいたことは事実だが、国境線は動いた。

 外務省ホームページによると、1855年、日魯通好条約で、択捉島とウルップ島の間の国境が確認された。1875年の樺太千島交換条約では、千島列島をロシアから譲り受ける代わりに樺太全島を放棄したが、1905年のポーツマス条約では日本が南樺太を譲り受けた。

 1945年2月のヤルタ会談で南樺太と千島列島をソ連の領土にするという密約が結ばれたが、これには法的根拠がない。1945年7月のポツダム宣言では、日本の主権が「本州、北海道、九州及び四国並びに連合国の決定する諸島」に限定されると規定したが、この宣言にソ連は署名していない。

 日ソ中立条約に違反して1945年8月に参戦したソ連は、北方4島を武力で占領したが、その後も日本とは平和条約を結んでいない。1951年のサンフランシスコ平和条約で日本は「千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄」したが、この条約にソ連は参加していない。

 1956年の日ソ交渉では、領土問題について日ソ間で意見が一致する見通しが立たないため、戦争状態の終了と外交関係の回復を定めた日ソ共同宣言を締結した。このとき「歯舞群島及び色丹島は平和条約の締結後、日本に引き渡す」と明記されたが、国後・択捉については何も決まっていない。いつまでも日ロ関係を混乱させている北方領土問題とは、この2島の問題に過ぎないのだ。

2島返還論という「変化球」

 プーチン大統領の提案は「平和条約を結んでから領土問題を話し合おう」というものだが、2島を「平和条約の締結後、日本に引き渡す」という約束を実行するなら検討に値する。彼は「いま思いついた」と言ったが、このように重要な問題について思いつきで発言するとは考えにくい。おそらく日ロの事務レベルでは合意できなかったので、彼の独断で提案したのだろう。

 その真意は分からないが、最近のロシア経済の苦境から推定すると、平和条約を結んで経済を回復しようということかもしれない。ロシアはずっと「クリル諸島(千島列島)はすべてロシアの領土だ」と主張しており、クリル諸島には北方4島がすべて含まれているので、歯舞・色丹を返還するだけでも彼らにとっては譲歩だ。

 だが日本政府の定義では、4島は千島列島に含まれないので、2島だけ返還すると「固有の領土」である国後・択捉を放棄することになる。2島返還論は外務省がずっと否定してきたもので、自民党も反対してきた。ところが今回、自民党でも右派と見られていた安倍首相が、これに前向きともとれる態度を取ったのは意外だ。

 日本政府が4島返還の原則を変えない限り平和条約は締結できないが、国後・択捉を返還されても日本人が移住することは困難で、経済的メリットはほとんどない。割り切って考えると、安全保障と2島の領有権のどっちが重要かというバランスの問題だろう。

「4島か2島か」より大事な問題

 2島返還論は、この62年間タブーだった。「それは戦後のドサクサにまぎれてソ連が不法占拠した主権侵害を事後承認するものだ」という主張は、筋論としては正しいが、それが日本政府の一貫した方針だったわけではない。

 サンフランシスコ条約で「千島列島」の領有権を放棄したとき、国会で吉田茂首相は南千島(国後・択捉)は千島列島に含まれると答弁した。日本も一時は、2島返還で平和条約を結ぼうとしたという説もある。

 2016年の日ロ首脳会談のときプーチン大統領は、1956年の日ソ交渉のとき、アメリカのダレス国務長官が重光外相に「もし日本がアメリカの利益を損なうようなこと(2島返還)をすれば、沖縄は完全にアメリカの一部となる」と述べたと記者会見で語った。つまりアメリカは2島返還で平和条約を結ばないよう、日本に圧力をかけたというのだ。

 これが「ダレスの恫喝」といわれる話で、プーチン大統領がそれを引き合いに出したのは、「日本も本当は2島返還を考えていた」と言いたいのだろうが、そういうアメリカ政府の方針は外交文書で確認できない。そういう経緯があったとしても、2島返還を正当化する根拠にはならない。

 それより大事な問題は、もし歯舞・色丹が返還されたら、そこに自衛隊や米軍の基地を設置するのかということだ。これはロシアにとっては脅威になるが、日本にとっては2島返還でも基地を置くことができれば重要な意味がある。領土問題は国家主権の問題であるとともに、日米同盟の問題である。

 原則論としては、4島返還が正しい。ここで日本が妥協すると、今後ロシアとの外交交渉でなめられるという懸念もあるだろう。だが日本とロシアのような大国間で平和条約が締結されていない状況は異常であり、安全保障の上で問題がある。

 平和条約では領土を確定するので、そこに2島返還を書けばいい。かつて日ソ中立条約を破って参戦したロシア人だから約束を守らないかもしれないという不信感もあるが、そういうことを言い出したら外交交渉はできない。このへんは外交テクニックの問題だろう。むしろ障害は、これまで固く2島返還を拒否してきた外務省にある。

 北方領土は、プーチン大統領と信頼関係を築いた長期政権の安倍首相にしか解決できない厄介な問題だ。そろそろタブーは解禁し、2島返還論を議論してもいいのではないか。

【私の論評】GDPが東京都より若干小さい小国ロシアを文字通り小国にすれば、北方領土はすぐ返還される(゚д゚)!

上の記事を書かいた方、なぜロシアがあそこまで北方領土の返還を渋るのかその理由がわかっていないようです。それがわかり、それに対象する方法を実行すれば、意外と北方四島はすんなりと返ってくるかもしれません。

ロシアがかたくなに北方領土返還を拒む理由筆頭は、軍事的理由を挙げることができます。

ロシアの核戦略上、北方領土が接するオホーツク海が極めて重要な位置を占めているのだ。これが、北方領土返還を嫌がる隠された理由です。

オホーツク海に潜むロシア太平洋艦隊所属の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)は、米本土を核攻撃できます。ロシアにしてみれば、北方領土、とりわけ、オホーツク海に面する択捉島、国後島の2島を日本に返還することは、ロシアの戦略原潜の安全にとってマイナスになってしまうのです。これが北方領土問題をややこしくしているのです。
 
この問題は冷戦時代に遡ることらができます。SSBNは、潜水艦の特性から海面下に潜むことができ、核戦争の最後まで生き残りを図ることができます。

そのため、冷戦時には、米ソ戦の決をつけるべく両国は相手国が最終的な核攻撃を行うか、この残存を梃子に戦争終結交渉に持ち込むかするだろうとみていました。まさに、最終的な核攻撃の前に、SSBNは、最後の切り札の役割を担うと考えられていたのです。
 
ソ連の海軍戦略は、このSSBNの安全確保を最重要の柱として組み立てられました。この作戦構想は、その区域には何ものも入れない、いわゆる『聖域化(たとえばオホーツク海の聖域化)』であり、専門用語では『海洋要塞戦略』と呼ばれました。

極東においても『海洋要塞戦略』の登場により、オホーツク海およびその周辺海域が、核戦略上の中核地域となるに至ったのです。

地上戦に敗れるようなことがあっても、SSBNの安全が確保されるかぎり、第二次大戦のドイツや日本のように無条件降伏を押し付けられることはない。そのような要求には『相互自殺』の脅しをもって応えることができるからです。

ソ連のアメリカに対する核戦略上の「最後の切り札」が、オホーツク海に潜む戦略原潜(SSBN)だったのです。そして、ソ連が崩壊してロシアになった今でも、この構図は基本的に変わりません。だからこそ、ロシアは今でも北方領土を返還することを渋るのです。

このあたりを認識した上で、産経新聞の論説副委員長・榊原智が四島返還の決め手について現実的な提案をしています。その記事のリンクを以下に掲載します。
【風を読む】四島返還の決め手はこれだ 論説副委員長・榊原智
北海道・根室半島の納沙布岬(左下)沖に浮かぶ
北方領土の歯舞群島=2016年12月、北海道根室市

この記事比較的短いので全文以下に引用します。
 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が22回目の会談をしたが、北方領土問題の進展はなかった。それどころかプーチン氏は、領土問題棚上げの平和条約締結という身勝手な提案をする始末である。 
 中立条約を破って侵攻し、不法占拠を続ける旧ソ連・ロシアが悪いに決まっているが、憤っているだけでは始まらない。そこで北方四島返還につながる秘策の一端を披露してみたい。 
 戦後日本の対露交渉上の問題点を、安倍政権も抱え込んでいる。ロシアにとっての北方領土の軍事的価値を十分に意識せず、その価値を突き崩す努力をしてこなかったという点だ。 
 ロシア人は日本人の想像以上に軍事を重視する。北方四島の広さの93%を占める択捉、国後両島はオホーツク海に面しており、この海にはロシアの核ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN、戦略原潜)が潜んでいる。北欧のバレンツ海に配備された戦略原潜と並ぶ、対米核攻撃用の虎の子だ。 
 米国がロシアに先制核攻撃をしても戦略原潜は生き残って米本土に報復核攻撃を行う。この死活的に重要な戦略原潜があればこそ、ロシアは米国の核攻撃を抑止でき、最悪でも無条件降伏を免れると考え、自国を米中両国と並ぶ「大国」と見なすこともできる。 
 択捉、国後両島の返還が実現すれば自衛隊や米軍がオホーツク海で潜水艦狩りをしやすくなる。日本がそれはしない、北方領土に基地も置かないという約束を持ちかけても、自国の国防の根幹と世界的地位に関わるためロシアは決して同意することはないだろう。 
 では、日本はどうすべきか。防衛省自衛隊の知見を対露外交に取り込むべきだ。知恵を絞って先端の科学技術で自衛隊の能力を高め、有事には北方領土を利用せずともオホーツク海に潜むロシアの戦略原潜とそこから発射される核ミサイルを迅速に無力化できる態勢を黙って整えればいい。これは専守防衛に反しない。共同経済活動よりも有効な返還促進策であり、対露交渉が進むこと請け合いだ。
これは、かなり現実的です。 確かに、有事には北方領土を利用せずともオホーツク海に潜むロシアの戦略原潜とそこから発射される核ミサイルを迅速に無力化できる態勢を整えれば、ロシアが北方領土にこだわる理由はないし、これと北欧のバレンツ海に配備された戦略原潜も無効化できようになれば、ロシアは名実ともに小国になり果てるからです。

ロシアが小国というと、怪訝に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、現在のロシアは経済的にみても、科学技術や国の体制や人口をみてもとても大国とはいえません。小国と呼ぶのがふさわしいです。

なぜなら、まずはGDPは日本の東京都よりも若干小さいです。韓国と東京都はだいたい同じくらいのGDPです。現在のロシアのGDPはなんと韓国よりも若干小さなくらいの規模なのです。

そうして、産業構造は過渡に石油や天然ガスに頼る状況であり、その他は軍事技術は別にして、さしたる技術などありません。その意味ではまさしく発展途上国と言っても良いくらいです。

さらに、人口は1億4千万人であり、日本の1億2千万人より若干多いくらいです。あの広大な領土にこの人口です。これは、中国には遠く及ばないですし、インドにも及びませんし、米国にも及びません。

これでは、とてもロシアを大国などとよぶわけにはいきませんが、ただし上の記事にもあように、米国がロシアに先制核攻撃をしても戦略原潜は生き残って米本土に報復核攻撃を行います。この死活的に重要な戦略原潜があればこそ、ロシアは米国の核攻撃を抑止でき、最悪でも無条件降伏を免れると考え、自国を米中両国と並ぶ「大国」と見なすことができているのです。

このことだけが、かろうじて現在にのロシアが「大国」扱いされるわけですが、それを除けば、ロシアの実体は小国と呼ぶにふさわしいです。

ロシアの戦略原潜

そうして、ロシアの原潜の潜むバレンツ海とオホーツク海の聖域を完璧に無効化してしまえば、ロシアは名実ともに小国になるわけです。そうなれば、経済大国日本が交渉すれば、ロシアは4島返還にも応ずることでしょう。

そのような状況になれば、なんといっても一番の脅威は中国です。ロシアは世界でもっとも長く中国と国境を接している国でもあります。中国もロシアのように一人あたりのGDPでは米国はおろか日本にも及ばないですが、それでも人口が13億79百万人と桁違いに多いです。

さらに、最近では経済力を伸ばし軍事力も伸ばしています。現在のロシアにとって、最大の軍事的な脅威は、中国です。

今のところは、ロシアは「大国」扱いで、中国がロシアの領土等に対して野心を抱いたにしても、かなり簡単に屈服させることができます。しかし、将来はどうなるかはわかりません。現状でも、ロシアと中国の国境があいまいになり、多数の中国人がロシア領に越境して、様々な活動や事業を実施しています。この状況は国境溶解として、このブログでも以前紹介したことがあります。

日日中国の脅威が増しつつあるロシアでは、いずれ中ロ関係を大事にするより、日米英同盟に接近することも十分考えらます。

さて、ロシアのオホーツク海の戦略原潜の聖域無効化する方法ですが、これについては榊原智氏も明らかにはしていません。

まず最初に考えられるのが、潜水艦です。南シナ化では、すでに日米の潜水艦がチョークポイントに潜み、中国の原潜等の監視にあたるほか、訓練なども行い、中国の喉元にあいくちを突きつけたような状況にあることこのブロクでも解説しました。

このように、日米がオホーツク海に多数の潜水艦艦を配置するというやり方もあると思います。ただし、中国は未だに南シナ海を中国の戦略原潜の聖域には未だしていません、というか出来ない状態にあります。

未だ中国が聖域化していない海域に、日米が潜水艦を配置したとしても、軍事的な対立は起こりにくいですが、すでにロシアが聖域化しているところに日米が潜水艦隊を常駐させるようなことをすれば、軍事的な緊張が極度に高まることになります。ただし、ロシアの対潜哨戒能力は日米と比較してかなり低いですし、ロシアの経済規模からすれば、これに対応することは限られています。実際に潜水艦を配置されてしまうと、ロシアは太刀打ちできなく亡くなるのは事実です。

これに変わる方法はないかと考えてみましたが、あります。それについては、以前もこのブログで紹介したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
潜水艦の時代は終わる? 英国議会報告書が警告―【私の論評】水中ドローンが海戦を根底から覆す(゚д゚)!
海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」

 これまでの「対潜水艦戦」(以下、ASW)は、少数の艦艇および有人機によって実行されていた。これらの仕事は、広大な荒野で逃亡者を探す少人数の警察のようなものだった。最も可能性の高い逃走ルートや隠れ家に戦力を集中させて、幸運を祈るだけであった。
 
 しかし、安価な無人機の登場によって、逃亡者の逃走は不可能になる。一人ひとりの探知能力は低いものの何千人もの応援が警察の側につき、隅から隅まで全域を探索するようになるからだ。 
 小型偵察ドローンが米軍を中心に増加している。精密攻撃が可能な小型無人機もイスラエルなどで登場してきている。
 しかも最近の米国防総省は、大量の小型ドローンを「群れ」として使う研究を進めている。例えば、米海軍は「コヨーテ小型偵察無人機」というASW対応の小型無人機を開発した。コヨーテ小型偵察無人機は哨戒機から投下されるや飛行形態に変形し、熱センサーで水温を測定し、風速・圧力などの様々なデータを収集可能する。 
 そもそも偵察機を飛ばす必要はなくなるかもしれない。米海軍が開発した小型水上無人機「フリマ―」は、今までASWの主力であったソノブイ(対潜水艦用音響捜索機器)の代替になる可能性がある。
 また、やはり米海軍が開発した「セイル・ア・プレーン」は、飛行機であると同時に偵察時は水上で帆を使って帆走し、太陽発電と波力発電で充電できる偵察機である。
 水中グライダー式の小型無人機もある(水中グライダーは推進機を持たず、浮力を調整することで水中を上下しながら移動する)。大阪大学の有馬正和教授が開発した「ALEX」は低コストの水中グライダーである。有馬教授は、1000ものALEXのような無人機の群れで構成される巨大な共同ネットワークで海洋研究調査を行うことを提唱している。
このような空中、海上、水中のドローンを開発して、 自衛隊の能力を高め、有事には北方領土を利用せずともオホーツク海に潜むロシアの戦略原潜とそこから発射される核ミサイルを迅速に無力化できる態勢を整えるのです。

分解したシーグライダー(水中ドローンの一種) ワシントン大学応用物理研究室が、
地球温暖化による氷河の変化を観察するため開発したもの  軍事転用もすすみつつある

無論最初は潜水艦等とドローンの混成であっても良いと思います。聖域から比較的離れたところに日米潜水艦隊が潜み、多数のドローンが隠密裏に聖域を常時監視し、何かあればすぐにドローンが潜水艦に連絡し、潜水艦や艦艇、航空機がすぐに攻撃をするという方式でも良いと思います。

ただし、将来は監視から攻撃までドローンがすべて行うという方式が望ましいと思います。これによって、ロシアの潜水艦は誰から攻撃されているかも、いつ攻撃されたのかもわからないうちに、海の藻屑と消えているような方式が望ましいと思います。

監視型、攻撃型のドローンを数百から数千もオホーツク海のロシアの戦略原潜の聖域に常時設置して、普段から哨戒任務にあたらせ、もしものことがあればすぐに原潜とミサイルを攻撃して無力化できるようにするのです。

そうして、実際にオホーツク海で多数のドローンを用いた演習をして、ロシア側にみせつけるのです。

これは、「はやぶさ」で惑星探査ができる技術力を持つ日本ならば、短期間のうちにできるはずです。

これにより、ロシアを文字通り小国化することができます。小国化したロシアは、日米と対立するよりは、日米に接近し、中国の脅威を払拭したいと考えるに違いありません。そのときに、日本がロシアと北方領土交渉すれば、かなり有利に交渉できるのは間違いありませんし、おそらく北方四島は日本に返還されるでしょう。

しかし、こうしたことをしないで、返還交渉をしたとしても、二島返還ですら相当難しいと思います。今こそ、発想の転換が必要です。

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2016年9月8日木曜日

北方領土問題がプーチン来日で動く可能性は十分にある―【私の論評】ロシア経済の脆弱性は変わらず!今こそ交渉の進め時だ(゚д゚)!

北方領土問題がプーチン来日で動く可能性は十分にある

高橋洋一 [嘉悦大学教授]

G20の前にウラジオストクで行った日ロ首脳会談で、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった
 北方領土問題の解決に
    決意を見せる安倍首相


あまり報道されていないが、安倍首相が北方領土問題の解決に向けて並々ならぬ決意を見せている。

ここ1週間の外交ウィークで、G20の前に、日ロ首脳会談を2日にウラジオストクで行った。大きな成果として、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった。それは安倍首相の地元山口で、である。これは、G20での日中首脳会談の前に対中国戦略としてかなり有効だった。

もともと、安倍首相の悲願は、憲法改正と北方領土返還だ。ともに、祖父である岸信介以来の悲願である。大きな目標であり、国のあり方の基本を問うという政治家らしいものだ。

憲法改正については、衆参ともに憲法改正勢力は一応3分の2以上になった。もっとも、憲法のどこを改正するかは今後の話であり、それが決まらない以上、国民投票もありえない。まだ道半ばであるが、少しずつ前に進んでいる。

憲法改正事項では、維新が提示した地方分権、教育無償化、憲法裁判所が面白い。民進党の代表戦が今行われているが、その3人の候補はそれらの項目に政策としては前向きだ。それが憲法改正項目に直結するかどうかはわからないが、項目として提示されたとき、憲法改正マターでないというのは言いにくい。

憲法は国の基本を定める。政権が変わっても行われるべき政策を定めるものであり、政府に義務を課すものだ。例えば、教育無償化を憲法で定めたならば、たとえ財政事情が苦しくとも教育無償化を無視することはできなくなる。要するに、教育無償化を最優先させるような制度的な裏付けが憲法なのだ。

 60年間ほとんど進展してない北方領土問題
    ロシアと続いていた「異常な状態」


一方、北方領土はここ60年間、ほとんど進展してない。北方領土は、戦後のどさくさから、ソ連に違法占拠されたままだ。今から60年前の1956年日ソ共同宣言で法的な戦争状態を一応終結したが、まだ平和条約は締結できていない。これは、誰が考えても「異常な状態」だ。

その異常な状態は、北方領土問題があるからだ。領土問題は、いつでも解決困難であり、極論すれば戦争でしか解決しないのが世界の常識だ。その意味で、沖縄返還は世界史から見ても画期的な話だった。そのほかの例としては、戦争以外というと、英国による99年間の香港租借後の中国への返還、アメリカによるロシアからのアラスカ購入が有名な例だ。

北方領土も平和的な解決は困難な問題であるが、それを避けようとしないのは安倍首相の政治家としての信念であろう。現時点で、安倍首相以外にこうしたスケールが大きくタイムスパンが長い政治課題を掲げる政治家はいない。この点、自民党総裁の任期延長問題が今議論されているが、長期的な日本の課題を扱う政治家が安倍首相以外に存在しないことは、安倍首相の任期延長に有利に働くだろう。

 日本側が示した8項目の「協力プラン」に
 対応したロシア


今回の日ロ首脳会談の成果をまとめておこう。外務省のホームページを見れば詳細が掲載されている。こうした情報は、新聞などの2次情報ではなく公式な1次情報を見るようにしたい。

簡単にいえば、ソチでの首脳会談において提示した8項目の「協力プラン」を具体的に日本から示したということだ。8項目とは、(1)健康寿命の伸長,(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り,(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大,(4)エネルギー,(5)ロシアの産業多様化・生産性向上,(6)極東の産業振興・輸出基地化,(7)先端技術協力,(8)人的交流の抜本的拡大 である。

ロシア側としては、日本に投げたタマが返されたわけなので、話に乗っていかざるを得なくなったのだ。

この日本側の動きは、外務省ではなく、経産省主導になっている。過去、貿易摩擦が華やかだったころは、外交について、外務省と経産省で主導権争いをしていた。最近ではそうした動きはなくなり、第三者から見ると外務省主導で派手な立ち回りがなくつまらなかったが、国内で外務省と経産省が競うと、結果として国益にかなう結果が多くなるように感じる。筆者はいい意味で競争した方がいいと思っており、その観点から、今回の日ロ首脳会談は経産省が主導しているのは問題ない。

今回、「協力プラン」の責任者として、経産大臣でもある世耕氏が、ロシア経済分野協力担当大臣を兼任し、同大臣の下に全ての関係省庁を総理官邸が直轄する体制としたことも、経産主導を体制としてもはっきりさせている。

これに対してロシアがどう出てくるかは、今の段階では未知数である。外交交渉とはそういうものであるので、今後の交渉次第ともいえる。そこで、北方領土が返ってくるかといえば、60年間も進展のないものがそう簡単に動き出すはずはない。しかし、何とか一歩でも進めたいというのが安倍首相の信念である。

 ロシアの国内事情からいえば
    北方領土と経済協力はまったく別物

日本固有の領土である、国後、択捉、色丹、歯舞群島
図、写真はブログ管理人挿入、以下同じ。
 ロシアの国内事情からいえば、北方領土と経済協力はまったく別物だ。8項目の協力プランは、日本の優れた技術を各分野で提供しており中身はいいが、ロシアは北方領土と切り離して考えている。

あるロシア問題専門家によれば、ロシアにとって領土問題は解決済みであり、プーチン大統領は話し合う余地はあると匂わせているが、日本からの経済協力が欲しいので、日本を引っ張っているだけという。最終的には、北方領土を返さずに平和条約を締結して、経済協力だけを引き出すのがロシアの戦略という。なにしろ、ロシア国民の8割が北方領土返還に反対している。

領土問題は、過去の経緯が複雑でそれを丹念にたどると膨大な紙数を要する。それを省き、現状を簡単にいえば、以下の通りだ。

(1)日本は、4島一括返還が先で、その後平和条約を締結する。
(2)ロシアは、平和条約締結を先行させて、その後2島返還で決着させる。

ただし、日本側は1998年の橋本=エリツィンの川奈会談で、四島を日本領土と確定させれば、ロシアの施政権を認めるという譲歩もしている。

一方、ロシアは北方領土を実効支配し、現在1万8000人のロシア人が住んでいる。さらに、北方領土の軍事化も進めている。実効支配が長引けば長引くほど、領土返還は難しくなる。返還すれば、住民に対する莫大な補償問題にもなるという。つまり、年々、領土返還のハードルは高くなっているのだ。

 12月はアメリカ外交の空白時期
    北方領土問題が動く可能性は?


これらの状況から、北方領土返還は実際問題として難しいのは事実だが、プーチン大統領の訪日を12月に設定できたのは、今回の日ロ首脳会談の成果である。というのは、12月は次期アメリカ大統領の始動前で、アメリカ外交の空白時期でもあるのだ。このあたりはプーチン大統領も計算済みであり、あえて安倍首相の提案に乗ってきたわけだ。

この観点から、北方領土問題が今年12月に動く可能性は十分にある。ただし、ここで一気に解決というのではなく、日本は次の時代に向けた布石を打てるかどうかである。

領土問題は基本的には戦争でしか解決しない。ただし、各国とも政変の可能性は常にあり、そうした混乱時に戦争でなくても解決するかもしれない。

筆者は、かつてソ連崩壊時に北方領土解決のチャンスであると言ったことがある。そのとき、中国はロシアとの国境問題解決に動き出し、2004年に中露国境協定を結び領土問題を解決している。1998年の日本からの川奈提案もそうした動きに沿ったものだった。

12月のプーチン大統領の訪日で、解決(これは日本にとって完全解決ではなく一部解決)の可能性があるという根拠は、これまでプーチン大統領が中国、カザフスタン、アゼルバイジャンので領土問題を解決してきた実績があることだ。

ロシアは17ヵ国と国境を持っているので、領土問題の宝庫でもある。そのロシアのプーチン大統領の領土問題解決法は、「引き分け」である。プーチン大統領は柔道家でもあるので、「引き分け」と日本語でも言う。

 2島返還ならば可能性がある?
 プーチン大統領が狙う「引き分け」

確かに、プーチン大統領は、1956年日ソ共同宣言を踏襲するというので、2島返還に応じる可能性はある。

であれば、

(3)日ロ間で平和条約締結し2島返還+α(日ロ両国で満足するもの)

という「引き分け」はありえるところだ。

ただし、この「引き分け」はロシアの主張に近い。ロシアとしては、+αで経済協力があれば十分だろうが、日本としては+αで、ロシアからのエネルギー確保の他に、ロシアの体制や経済混乱などの場合に領土交渉できるような、将来への布石がないとまずいはずだ。

かつて、2001年イルクーツク首脳会談で、当時の森首相がプーチン大統領に2島先行返還で後の2島は継続協議という案を示したことがある。今回は、日本としてはエネルギー確保という長期メリットも加わっており、森提案でも、日本の国益はプラスというリアルな判断もあるのではないだろうか。何もせずに問題が固定化すると、将来の解決がますます困難になるので、少しでも前進させるというのは現実的な解決策だ。どう安倍首相が交渉するのか見物である。

【私の論評】ロシア経済の脆弱性は相変わらず!今こそ交渉の進め時だ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事では、珍しくロシア経済に関する論評がほとんどないので以下に、掲載することにします。

7月14日、IMF(国際通貨基金)はロシアの経済見通しを発表しました。

2016年のGDP(国内総生産)成長率は貸出条件の厳格化と実質所得の減少、さらに国内投資の低迷を背景にマイナス1.2%と依然マイナス成長ですが、前回見通しのマイナス1.5%からは上方修正されています。

さらに2017年については、金融緩和と国内需要の緩やかの回復を背景にプラス1.0%の成長を見込んでいます(図表1)。

しかも、この予測の前提となる原油価格(年平均)は2016年が42.2ドル、2017年が48.8ドルです。足許の原油価格の推移を見ると原油価格はこれらの予測値を上回って推移しており、GDP成長率もさらに上方修正される可能性もあります。

実際、7月初にロシア連邦統計局が発表した2016年第1四半期のGDP成長率は前年同期比マイナス1.2%と市場予想よりも下落率は小幅にとどまりました。


ロシア経済が「底打ち」した理由はまず第1に原油価格の反発です。

ブルームバーグによれば、ロシア産石油の今年の輸出量は過去最高となる勢いです。イランが欧州向け供給を増やす中、欧州市場をめぐる競争が激化しています。

ロシアエネルギー省のデータによると、1-6月の輸出量は前年同期比4.9%増の日量555万バレルとなりまし。6月単月では前年同月比1.14%増え日量1084万3000万バレル。2014年7月以来、毎月増加を続けています。

BMIリサーチの石油・ガス担当責任者、クリストファー・ヘインズ氏は、「生産が堅調に推移すれば、通年の輸出量は過去最高となる公算が大きい」とし、「これは競争が厳しくなることを意味します。とりわけイランが南欧諸国への石油輸出を増やしている」と説明しました。

石油輸出国機構(OPEC)はイランの参加が見込めないことなどを理由に、供給過剰の緩和に向けた措置を講じることができませんでした。これを受けてロシアは、4月に生産と供給の引き上げを示唆しました。1月の経済制裁解除後、イランは増産に素早く動き、欧州で顧客を再獲得しました。核開発問題でイランが2012年に欧州での原油販売を禁止された後、主に恩恵を受けたのはイラン産と性質が似るウラル原油を産出するロシアでした。

ノバク・エネルギー相は最近の見通しで、今年の石油輸出量が2億5200万トン(日量換算で505万バレル)になると見込んだのですが、現状はこれを超えるペースです。テクスレル第1次官は4月に最大2億5500万トンと予想しました。エネルギー省によると、これまでの最高は2007年に記録した2億5390万トン。さらにもう1つの理由を挙げるとすれば経済構造がルーブル安に適合し始めたことです。つまりルーブル安を有利に使い始めたことです。すなわち「輸入代替」の進展であり、この輸入代替の動きは農業と軽工業に顕著に見られます。

さらにロシア経済持ち直しまもう1つの理由を挙げるとすれば経済構造がルーブル安に適合し始めたことです。つまりルーブル安を有利に使い始めたことです。すなわち「輸入代替」の進展であり、この輸入代替の動きは農業と軽工業に顕著に見られます。

欧米による経済制裁の継続、ルーブル安、原油価格の下落を受けた非資源産業の育成ニーズを背景に、ロシア政府による工業分野での輸入代替政策が進展しています。公共調達分野における輸入と外国企業による役務・サービス提供を一部制限するとともに、「特別投資契約」という新たな投資促進措置を導入し、製造業の育成と生産振興に力を入れています。

これについては、詳細は、通商弘報をご覧になって下さい。

結局のところ、ロシア経済の持ち直しは、原油価格の反発と、「輸入代替」という名の輸入制限です。特定の物品の輸入を制限して、その代替のロシア製の物品を製造する企業などに投資をして、ロシア産品に変えるということです。

この「輸入代替」という手法は、我が国をはじめとする、自由主義経済圏の先進国では、やりたくてもなかなかできないことです。これは、政府のよる統制経済の一手法です。やはり、ロシアのような体制の国だからできることです。

しかし、このロシアの経済回復の中身をみてみると、決してまともな構造改革によるものではなく、一時しのぎに過ぎないことが良く理解できます。

もう一度、原油高に転ずれば、すべては帳消しになります。そうして、現在中国の経済がかなり低迷しかつ長期に続きそうなことから、当然のことながら、石油の需要量は減ります。やはり、このロシア経済の弱点は本来であれば、ロシアが何か国内で、別の産業を振興し、それを育成しなければ、いつまでも、いつ何時脅かされるかもしれない脆弱なものであることには変わりありません。

G20でのプーチン大統領
このような状況にあるにもかかわらず、プーチン大統領はG20で強気の発言をしています。

プーチン大統領は、中国・杭州での20カ国・地域(G20)首脳会議で、「ロシア経済は安定した」と述べ、また「財政赤字の削減に注力する」と表明しました。

また、石油・ガス輸出に対する依存の低減に取り組むと述べました。このほか、今後もロシアでの事業環境の改善を目指す方針を示しました。

原油価格の急落やウクライナをめぐる国際制裁を背景に、2015年のロシア国内総生産(GDP)は3.7%減となりました。

ロシア中央銀行のアナリストらは、第3・四半期と第4・四半期の経済成長率が前期比で低い伸びになるとの見通しを示している。

ロシア経済は、マイナス成長が予測され、金融政策も、現在のインフレ率(6.6%)
であることを考えると、金融緩和にも限界があり、あまり大規模な追加緩和をすると、ハイパーインフレになる可能性すらあります。

こんな時に、財政赤字の削減をするとはどういうことでしょうか。本来ならば、そもそも財政赤字などGDPの数%しかないのですから、本来ならもっと借金をしてでも、積極財政を実行して、経済を建てなおすべきです。

ロシアの経済の脆弱性はまだあります。それは、国家基金が底をつく危険です。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載います。
露の国家基金「2019年初めに底つく」 資源頼み、欧米制裁…プーチン政権さらに窮地―【私の論評】小国ロシアの底が見え始めた最近のプーチンが、軍事的存在感の増加に注力するわけ?

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部抜粋して掲載します。
2008年のリーマン・ショック時にロシア経済を下支えた、石油や天然ガスの税収を基盤とする露政府の基金が19年にも枯渇する見通しであることが明らかになった。財政赤字を補填(ほてん)するための基金からの支出に歯止めがかからないことが原因だが、資源収入頼みの経済政策の行き詰まりが背景にある。欧米の制裁で基金に要請が急増している企業支援も困難になる可能性があり、プーチン政権にも痛手となりそうだ。 
露政府は石油・ガスの採掘・輸出税収が潤沢な際にその一部を積み立てており、赤字補填に使う「予備基金」と、景気刺激策に利用する「国民福祉基金」の2つの国家基金を抱えている。ロシアはリーマン・ショックの直撃で09年には経済成長率がマイナス7.9%に落ち込んだが、その後政府が実施した巨額の景気対策の原資となったのが、これらの基金だ。 
しかし露中央銀行がこのほど発表したリポートによると、政府は15年1~10月に赤字の埋め合わせに予備基金から1兆5600億ルーブル(約2兆4400億円)を使い、16年にはさらに2兆1370億ルーブルを使うと予測。このペースで支出を続ければ、17年には国民福祉基金も赤字補填が必要となり、「19年初めには両者が底をつく」と指摘した。
無論この予測は、昨年のような経済状況がこれからも続けば、国家基金が19年で底をつくということなのでしょうが、それにしてもこれからも、原油安がまたぶり返せば、同じことで、やはりロシア経済は外的要因に左右される脆弱なものであり、今回たまたま息を吹かえしかけているというだけであり脆弱な基盤の上に立っていることは間違いありません。

この脆弱な基盤を抜本的に改めるには、やはりソチでの首脳会談において日本が提示した8項目の「協力プラン」のうち、"(5)ロシアの産業多様化・生産性向上"は、喫緊のが課題でしょう。やはり、ロシアは、資源一辺倒の産業構造から、日本などのように産業の多様化を目指さなければなりません。しかし、これは、長期的な課題です。短期的には、日本からのエネルギーの大量購入や、経済支援が重要な意味を持ちます。

ご存知のように、ロシアは米英から経済制裁を受けています。日本は、制裁をしているとはいいながら、G7の中では最も甘い制裁しかしていません。ロシアの経済援助に対応できるとすれば、現在は日本と中国くらないなものでしょうが、ロシアと中国は表面上とは異なり、実は犬猿の中です。

ロシアは、世界で一番中国と長く国境を接している国です。さらに、最近では国境を越境してロシア領内で商売をしたり、居住する中国人が増え、国境溶解などとも呼ばれいます。

今や、中国のほうがロシアよりも圧倒的にGDPは大きいですし、人口はロシアが一億四千万人(日本よ若干多い程度)、中国は13億人以上です。今のところ、軍事力においてロシアがかなり優っていますから、国境紛争などが起こったにしても、ロシアが圧倒的に強いですが、これからはどうなるかはわかりません。

ロシアにとって、中国は潜在的にも顕在的にも脅威なのです。しかし、日本がロシアにとって、脅威になるということは考えにくいです。それに、中国は現在では景気が低迷し、当面復活する見込みはありません。

7月26日夜、エネルギッシュな音楽とともに、10人ほどのロシア人美女たちが集まり、
南京でビキニパレードを行った。このパフォーマンスで水遊びで暑気払いをしていた
市民たちの気分を大いに盛り上げた。中国新聞網が伝えた。
そうなると、プーチンとしては、日本の経済援助などに頼りたくなるのも無理からぬ話です。というより、日本のGDPはロシアなどと比較すれば、桁違いに大きいですし、先日も示したように、日本の財政再建は今年中で終わりそうです。プーチンにとっては日本の援助は垂涎の的のはずです。このあたりを日本側は、良く理解すべきです。現在のロシアは、現状を維持できるか、あるいは一昔前のソ連のように経済が疲弊して、国民に途端の苦しみを強いて何とかやりすごすことしかできなくなるかのいずれかを選択するしか道はありません。

日本が、直近でロシアに短期的には経済援助や、エネルギーの輸入などをして、さらに長期的にロシア経済の構造転換に力貸すことを約束すれば、ロシア経済が立ち直る可能性は高まります。米国やEUは経済制裁を実施している最中なのでそのようなことはできません。

そうなると、日本がロシアの頼みの綱ということになるわけです。これを背景として、ロシアと北方領土の交渉をすれば、かなり有利にできます。

まさに、今が交渉の時です。安倍政権には、四島一括変換か、少なくとも将来に四島変換に含みを持たせた、2島変換に成功していただきたいものです。

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