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2017年8月13日日曜日

自民・二階幹事長の「財政出動10兆円構想」は実現可能か?―【私の論評】自民党は「補正予算10兆円」で支持率上昇、再度安定政権を目指す(゚д゚)!

自民・二階幹事長の「財政出動10兆円構想」は実現可能か?

もちろん財務省は黙っていないが…

 財政拡張は悪手ではない
都議選の大敗や稲田朋美防衛相の辞任などでやや失速気味の自民党。そんななか、党内ではアベノミクス路線を改めて強調する動きが強まっている。

自民党の二階俊博幹事長は自身の派閥の研修会で、「現状の日本経済はいまだにデフレから脱却できていない」と強調。そのうえで「10兆円程度の大型補正予算を編成する必要がある」などと宣言し、今後もアベノミクスを続行していくべきだとの姿勢を崩さなかった。

二階幹事長
2ケタ規模の補正予算ともなると気が気でないのは財務省で、なんとか食い止めようと働きかけてくることは想像に難くない。はたして二階幹事長のプランの可能性はいかほどなのか。

実は、この時期に改めて財政拡張を行うのは決して悪手ではない。そのことを裏付ける指標がある。GDPギャップと呼ばれるものがそれだ。

GDPギャップとは、その国の経済が持っている供給力(潜在GDP)と現実の需要との間にある乖離のことだ。潜在GDPは完全雇用などの状況を前提にして推計されるもので、このギャップがプラスのときは好景気または景気過熱、マイナスのときは不況と判断される。

内閣府は、このGDPギャップについて、'17年1-3月期ではプラス0.1%としている。つまり、日本はいま好景気に差し掛かろうとしてはいるのだが、実は「もう安心」と判断するのは早合点で、経済政策の観点からはまだまだ「不十分」なのである。

 財務省はどう動くか

内閣府の過去のデータを遡ってみると、'07年あたりはGDPギャップがプラス2%と高水準にあったが、当時も物価の面からはデフレ状態にあった。実際にインフレ率が上昇したのはその後の'08年半ば過ぎのこと。

この過去データから言えることは、内閣府が発表するGDPギャップがプラス2%程度になって、ようやくインフレ率が上がり出す、つまりは本格的に景気が上向いてくるということなのである。

アベノミクスでは金融政策と財政出動を組み合わせ、インフレ率の「2%上昇」を目標にしているが、消費増税の影響などもあり数値はなかなか上向きにならず、日銀は'19年に達成時期を延期すると発表している。

つまり、現状のGDPギャップから見ても、財政出動はまだまだ実施の余地があり、二階幹事長の「10兆円程度」という財政出動は、デフレから脱却するためには妥当な規模であるといえる。

もっとも、この動きに財務省は黙っていられないはずだ。

「増税ではなく国債発行で補正予算を組むのは、支持率回復のためだ。このままでは財政再建は厳しくなる一方だ」

こうマスコミに語り、財務省の人々は自民党を牽制するだろう。

7月、安倍首相はこれまで導入に否定的だった「教育国債」について「可能性から排除しない」姿勢を示した。もちろん財務省はこれらのことを快く思っていない。彼らは、この際、安倍政権が退陣して、財政再建派で財務省の言いなりになる政権ができないかと願っている。

反安倍政権に財政再建派が多いことを考えると、秋の補正予算で二階構想が実現するかどうかは、安倍政権を倒閣する動きとも絡んでくるので見物だ。

【私の論評】自民党は「補正予算10兆円」で支持率上昇、再度安定政権を目指す(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の、二階幹事長の「10兆円程度の大型補正予算を編成する必要がある」という発言が気になりました。

この数字には妥当性があるのかどうかというところが非常に気になりました。上の記事では、GDPギャップについても記載があり、そこから妥当な規模であるとの論評があります。

しかし、この指摘は間違いだと思います。下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係です。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっています。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係があります。

◆図表1:GDPギャップ率とインフレ率(半年後)
ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度です。

それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になります。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度です。

財政乗数とは、財政支出乗数のことです。これは、「財政支出を1単位増加させたとき、国民所得がどれだけ増加するか」の値す。

政府支出乗数( government expenditure multiplier)とは、限界消費性向をc,限界租税性向をtとすると,政府支出が1だけ増加するとき,総需要の増加分は,政府支出の増加分だけでなく、それに加えて政府支出の増加分が生み出す家計消費支出の増加を含むので、均衡国民所得は 1/(1-c(1-t))だけ増加します。この比率1/(1-c(1-t))が政府支出乗数、あるいは財政支出乗数といいます。

いずれにせよ、現状の日本がデフレから完璧に脱却するために必要な財政出動は、20兆円程度ということです。

10兆円は、この半分ですから、とてもじゃないですが、デフレから完璧に脱却できるような規模ではないです。

では、二階幹事長の言う「10兆円」と一体どこから出てきた数字なのか、いろいろ調べて見ましたが、いずれを調べてみても、その根拠らしいものは見つかりませんでした。

そこで、ここから私の憶測ですが、本来は20兆円であることは、二階氏も誰から経済に明るい人に聴いて十分理解しているのかもしれませんが、いきなり20兆というと、財務省はかなり難色を示すので、まずは10兆としたのだと思います。

そうして、本予算も大きめにして、実際に走ってみてみれば、10兆円規模であれば、数兆円の補正予算よりははるかにましで、デフレから完全脱却はできないものの、それなりに効果があり、その効果によってある程度税収が増えることが期待できます。

デフレ・ギャップが20兆円もあるにもかかわらず、過去には、5兆円規模の補正予算が組まれ実行されたこともありましたが、これでは焼け石に水でほとんど効果がありませんでした。

しかし、デフレ脱却には不十分といいながら、さすがに10兆円規模ともなれば、それなりに効果はあり、少なくと統計値上には何らかの効果が現れてくるはずです。

その時に統計数値を根拠にして、また追加補正をするなどのことが考えられます。

本来は8%増税をして、個人消費が低迷してしまい、未だデフレから脱却できないのですから、最も良い手は、減税して消費税を5%にすることです。

しかし、ここ日本ではそれをしたくても、財務省の力が強くなかなかできないというのが実情なのです。本来財務省など政府の下部機関であり、政府の財政目標は政府が決めて、財務省はそれに従うべきです。

なぜなら、政府は国民の選挙により信託を受けた人々によって運営され、経済運営に失敗すれば、次の選挙では、有権者が気にいらなければ当選しないかもしれません。

しかし、財務省などの官僚はそうではありません。だから、本来は財政政策の目標は政府が定めて、財務省は専門家的な立場から、それを実行するというのが正しいあり方です。

ところが、現実には日本の財務省はまるで、これが一つの政治グループであるかのように、振る舞い、様々な同調圧力を用いて、結果としてこの国を支配しています。

テレビ番組で財務省の悪事を説明する高橋洋一氏
多くの人は財務省の言いなりで、まともな経済理論からするとおかしくて噴飯物の議論が、平気で公共の電波を通じて撒き散らされています。無知な政治家ならともかく、いわゆる主流派といわれる経済学者や評論家、アナリストまでそうなのですから、財務省の「同調圧力」は凄まじいものがあります。この日本という国はどこまで「財務省支配」がいきわたっているのか、本当に末恐ろしいです。

このような財務省支配がいきわたっている日本においては、政府ですら財務省に一定の配慮をしなければならないのです。

そのため、自民党は次善の策として、10兆円の財政出動を念頭に置いているのではないかと思います。

ブログ冒頭の記事では、「反安倍政権に財政再建派が多いことを考えると、秋の補正予算で二階構想が実現するかどうかは、安倍政権を倒閣する動きとも絡んでくるので見物だ」としています。

実際、この10兆円が実現すれば、先にあげたように次の展開も考えられますが、実現しなければ、安倍政権は終焉を迎える可能性がかなり高いです。

財務省の期待される役割は調整役だか、実体は調整でなくて同調圧力になっている
しかし、総理は改憲も長期政権も諦めていません。内閣支持率の低下を受け、安倍政権があたかも「崩壊前夜」のような印象を振りまくメディアもありますが、これは政治の根本を見ない希望的観測にすぎません。

細田派、麻生派、額賀派、岸田派、二階派の主要5派閥は安倍政権を支え続けると明言しています。実際、次の総裁選で安倍総理が負けて誰であれ他の人が総理になった場合、まだ安倍総理のように安定した政権を維持できるかはかなり疑問符がつきます。

それくらいであれば、ここしばらくは安倍政権を支え、再度支持率をあげ安定政権を目指すほうが得策です。

いずれにせよ、今般の内閣改造ではっきりしたのは、当分の間、日本政治の主役は安倍総理であり続けるということです。このあたりは、三浦瑠麗氏の以下の記事を読んでいただくと、良くご理解いただけるものと思います。
内閣改造 総理は改憲も長期政権も諦めていない 三浦瑠麗氏
そうなると、たとえ財務省が自民党を内部分裂させようとして、様々な同調圧力を加えてきたにしても、それに与する派閥は存在しないでしょう。さらに、野党に対して同調圧力をかけて何かしようとしても、民進党も支持率を落とし、蓮舫代表も退いている状況であり、自民党の派閥に何か働きかけるなどいうことはできません。

日本ファーストの会も未だ実体はなく、当面国政に影響を及ぼすことなどあり得ません。

そうなると、自民党は挙党一致で、内閣支持率をあげて再度安定政権を目指し「10兆円補正予算」に突っ走ることになります。

これには、さすがに財務省も「同調圧力」だけでは、対処できないでしょう。かといって、財務省は実力行使はできません。もしそれをすれば、法律違反になります。さすがに、財務省もここまではしないでしょう。

だとすれば、「10兆円補正予算」の実行と、その後の対処もうまくいくのではないでしょうか。しかし、これはあくまで自民党が挙党一致でこれに邁進した場合の想定です。そうでなければ、安倍政権終焉という結果を招くでしょう。

自民党が派閥抗争に傾けば、そうなります。これからどうなっていくか、動静を見守り、またレポートさせていただきます。

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