トランプ大統領 |
トランプ氏はロサンゼルスで記者団に対して「多くの選択肢がある。究極の選択肢があるほか、それ以下の選択肢もある。様子をみる」と述べ、「究極の選択肢は、戦争を始めるということだ」と説明した。
これより先にトランプ氏はツイッターに、財務省に対してイランに対する制裁を強化するよう指示したと投稿していた。
米国は、先週末のサウジアラビアの石油施設に対する攻撃にイランが関与したという立場を示しており、米イラン間の緊張が一段と高まっている。
石油施設攻撃を巡る対応を協議するためサウジアラビアを訪れたポンペオ米国務長官は18日、石油施設への攻撃は「戦争行為だ」と主張。来週の国連総会での主要議題になるとの見方を示した。
ポンペオ氏は「先例のない規模の攻撃」と指摘し、「攻撃はサウジの領土内で発生し、サウジに対する直接的な戦争行為だ」と言明した。
サウジアラビア国防省は18日、サウジアラムコの石油施設の攻撃に使用された無人機(ドローン)と巡航ミサイルの残骸を公表した。サウジは双方ともイランのものとしており、こうした残骸は同国の関与を示す「否定できない」証拠だとした。
サウジ国防省のマルキ報道官は記者会見で、14日の攻撃では合計25の無人機と巡航ミサイルが使用されたとし、無人機はイランの「デルタ・ウイング無人航空機(UAV)」、巡航ミサイルはイラン革命防衛隊が使用している「ヤ・アリ」と識別されたと明らかにした。「攻撃は北方から行われており、イランが背後にいたことに疑いがない」とし、無人機とミサイルの残骸が証拠となり、こうした疑いは「否定できない」と述べた。
この攻撃を巡っては、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が無人機で攻撃したと犯行声明を発表しており、イランは関与を否定している。
イランのロウハニ大統領は18日、中東地域での紛争は望んでいないと表明するとともに、イエメン内戦を引き起こしたのは米国とサウジアラビアが主導する軍事連合だと主張した。イランの国内メディアが報道した。
ロウハニ大統領は「われわれは、この地域での紛争を望んでいない。誰が紛争を引き起こしたか。イエメンの人々ではない。この地域で戦争を始めたのは、サウジアラビア、アラブ首長国、米国、一部の欧州諸国、(ユダヤ教の)シオニストだ」と述べた。
【私の論評】反対者のいない世界に安住すると敗者になる。トランプ氏は?
今回のサウジアラビア攻撃の背後には、間違いなくイランがいるものと考えられます。このサウジアラビア攻撃は、ボルトン辞任直後におきました。そのため、ボルトンの読みはあたっていたとする人も多いようです。
もし、ボルトンが今も辞任しないでいたとしたら、どうなっていたのでしょうか。
ところが今回のボルトン氏解任(本人は「自分から辞意を申し出た」と主張)はそれとは逆で、さすがのトランプ氏もボルトン氏のあまりのタカ派ぶりに愛想をつかしてクビにしたのです。
来年の大統領選を前に、北朝鮮との非核化交渉などで成果を演出したいトランプ大統領には邪魔者だったようです。
トランプ大統領は解任を発表後、「私はこれまで彼の多くの提案には、他の政権幹部と同様に強く反対してきた」と述べました。
以前からトランプ氏は側近に、「もしジョン(ボルトン)の言う通りにしていたら、今ごろ米国は4つの戦争を抱えていたところだ」と漏らしたといいます。
ジエームス・マティス氏 |
2019年1月1日に辞職した前国防長官ジェームズ・マティス海兵大将は、ボルトン氏を「悪魔の化身」と評したこともあります。歴戦の智将にとっては、戦争を知らない超タカ派の外交官は腹立たしい限りだったかもしれません。
ボルトン氏を切り捨てたことは、トランプ政権が北朝鮮、イランに対する先制攻撃を行わず、ベネズエラへの介入を避け、アフガニスタンの和平交渉を進展させる方向にかじを切りつつある兆候と考えられます。
今後それらの交渉や和解がうまくいくか否かは予断を許さないですが、戦争の危険が若干なりとも減じたとはいえるでしょう。
ポンペオ氏はトランプ大統領に徹底的に忠誠で、トランプ氏が「私はポンペオ氏以外とは誰とも争った」と言ったほどのイエスマンです。
大統領が対話、和解に目を向け、更迭したマクマスター前補佐官の意見も徴していると知れば、それに向かって努力するかもしれません。
ボルトン氏更迭の翌日、9月11日の記者会見で、菅義偉官房長官は「ボルトン氏は日米同盟の強化や北朝鮮問題の対応を含むインド・太平洋地域と国際社会の平和と安定に尽力した。これまでの貢献に感謝したい」と述べました。
トランプ大統領は、北朝鮮が米国本土に届くICBMの配備さえしなければ、「米国に対する北朝鮮の核の脅威を除去した」と米国民に実績を誇ることができます。
「完全な非核化」の目標に対し満点ではないが90点は取れる形ですから、北朝鮮が射程300キロ級の短射程弾道ミサイルの発射をしても不問に付す姿勢です。日本に届く中射程のIRBMにも関心は薄い様子です。
日本では「米国がICBM廃棄だけで北朝鮮と和解すれば最悪の事態」との声が強いです。
もちろん北朝鮮の核の完全廃棄が望ましいですから、「オール・オア・ナッシング」を唱え、「核の完全廃棄まで経済制裁の手を緩めるな」と主張するボルトン氏を日本政府が頼りにしたのは自然なことではあります。
しかし、真の「最悪の事態」は、核戦争です。
滅亡の淵に追い込まれた北朝鮮が自暴自棄になり、「死なばもろとも」の心境から、核ミサイルを日本の米軍基地(横須賀、佐世保、三沢、横田、岩国、嘉手納など)に発射し、さらに東京、大阪などが狙われれば、日本が滅びかねない大惨事になりかねません。
核攻撃に対して報復能力を示し、攻撃を諦めさせる核抑止戦略は、相手の理性的判断を前提とし、自暴自棄の相手には効果がありません。
「自爆テロの犯人は死刑に処す」と言っても効き目がないのと同じです。
同盟の強化もあまり効果はないです。
通常兵器による戦争なら同盟国軍と協力し、侵攻して来る敵軍を陸でも空でも撃退することが可能ですが、核ミサイルは戦線を飛び越え、直接こちらの心臓部に落下して来ます。
相手が弾道ミサイルを発射する前に、航空機などによる先制攻撃で敵ミサイルをすべて破壊できればよいのですが、北朝鮮の弾道ミサイルは移動発射機に載せて、山岳地帯のトンネルに隠され、いざとなればトンネルから出てミサイルを直立させて発射します。
旧式の「ノドン」では発射まで約1時間、燃料を充填したまま待機する新型だと数分で発射できます。しかもその詳細な位置を事前に知ることは困難です。
ダミーのトンネルもあるでしょう。また山腹のトンネルを上空からの爆撃でつぶすことも容易ではありません。
偵察衛星が常時敵地の上空にいてトンネルなどから出てきたミサイルを発見できるように思う人も少なくないですが、偵察衛星は時速2万数千キロの速力で周回し、1日に約1回各地の上空を通過します。
カメラの首振り機能やレーダーの能力を生かしても、1日に1分程度しか撮影はできないです。
静止衛星は高度3万6000キロの赤道上空を周回し、地球の自転と釣り合うから静止しているように見えます。ところがこの高度からではミサイルは見えず、発射の際に出る赤外線を感知できるだけです。
しかも先制攻撃をするなら、すべての目標をほぼ同時に破壊する必要があります。そうでないと相手は残ったミサイルを発射してきます。
飛来する弾道ミサイルを迎撃するのも容易ではありません。日本の弾道ミサイル防衛に当たるのは、イージス艦6隻(他に2隻進水、艤装中)と航空自衛隊の弾道防衛用ミサイル「PAC3」34両です。
イージス艦は各種のミサイルを垂直発射機に最大90発ないし96発を積めますが、弾道ミサイル防衛用の「SM3」ミサイルは各艦8発しか搭載していません。今後増やす予定てすが「SM3」の新型は1発40億円もしますから、そう多くは買えません。
「PAC3」は射程20キロ程度ですから、地点防衛にしか役に立たず、発射機1両に16発積めますが4発しか積んでいません。日本のミサイル防衛は政府が言う「万全の備え」どころか、気休めにすぎないのです。
日本の安全保障を考えたとき、残念ながら北朝鮮を追い詰め、自暴自棄にしないことが安全保障の良策と考えざるを得ないところがあります。
トランプ政権が、北朝鮮に対して、米国に届くICBMさえ配備しなれば、経済制裁を徐々に緩める政策を選ぶとすれば、日本にとっては腹立たしいです。
ところが北朝鮮にICBMがなければ、米国は、もし北朝鮮が日本や韓国に対して核攻撃をした場合、自国が核攻撃を受ける心配をせずに報復攻撃を行うことができます。
米国が核兵器を極東に持ち込まなくても、アラスカ沖で常に待機している弾道ミサイル原潜から核ミサイルを発射できますから、北朝鮮が自暴自棄になっていなければ、十分に抑止力を保てます。
そう考えれば、日本の官房長官がボルトン氏に「感謝」する必要はないのかもしれません。
むしろ彼の更迭は米国が無謀な戦争に向かう危険をいささかなりとも減じ、日本の安全にも寄与する、と内心歓迎すべきではなのかもしれません。
反対者のいない世界に安住すると敗者になる |
ただし、ボルトン辞任には私自身は両手をあげて賛成することはできません。ボルトンなら、日本を守るためには、日本が自前で、中短距離核ミサイルを配備すべきとか、在日米軍が配備すべきと主張するかもしれません。まともな人なら、こういった意見にも耳を傾けなぜそう思うのかを聴くべきなのです。
マネジメントの大家である、ドラッカー氏は意思決定において意見の不一致こそが問題への理解を促すとしています。私もそう思うからです。
「成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)
ドラッカー氏は、意思決定の過程では意見の不一致が必要だといいます。理由は三つあります。
第一に、組織の囚人になることを防ぐためです。組織では、あらゆる者が、あらゆる決定から何かを得ようとします。特別のものを欲し、善意の下に、都合のよい決定を得ようとします。トランプ氏はまさに、選挙戦に都合の良い決定を得ようとしているのかもしれません。
しかし、そのようなことでは、小さな利害だけで決定が行なわれることになります。問題の理解抜きでのそのような決定の仕方は、きわめて危険です。
さらに、プーチンのように、クリミアを併合したことが、国民の賛同を得て、支持率をあげたという例もあります。無論米国と、ロシアはあまりに国情が違いすぎるので、単純に比較するわけにはいきませんが、米国とて、その時々によって必ずしも強硬的な手段が必ず国民から忌避されるとは限りません。
第二に、選択肢、つまり代案を得るためです。決定には、常に間違う危険が伴います。
最初から間違っていることもあれば、状況の変化によって間違うこともあります。決定のプロセスにおいて他の選択肢を考えてあれば、次に頼るべきものとして、十分に考えたもの、検討ずみのもの、理解ずみのものを持つことができます。
逆に、全員一致で決めていたのでは、その決められたものしか案がないことになります。
第三に、想像力を刺激するためです。理論づけられ、検討し尽くされ、かつ裏づけられている反対意見こそ、想像力にとって最も効果的な刺激剤となります。すばらしい案も生まれます。
明らかに間違った結論に達している者は、自分とは違う現実を見て、違う問題に気づいているに違いないと考えなければならないです。
もし、彼の意見が知的かつ合理的であるとするならば、彼はどのような現実を見ているのかを考えなければならないです。意見の不一致こそが宝の山なのです。意見の不一致が問題への理解をもたらしてくれるのです。
いかなる問題であろうとも、意見の不一致が皆無などということは、奇跡です。ましてや、四六時中奇跡を起こしているなどありえないと心得るべきです。それでは、会社ならば社長が一人いれば良いことになりますし、米国であれば大統領一人がいれば良いということになってしまいます。
企業等の意思決定についても、意見の不一致が必要なのです。ましてや、米国政府の意思決定ならば、意見の不一致がでるのは当たり前です。そうでなければ、異常です。特にリーダーは、自分と良く意見の不一致がある人を身近におき、そういう人の話こそ真摯に耳を傾けるべきなのです。
後で不祥事となった行動の多くが、ろくに議論もされずに決められていることは偶然ではないのです。
何も反対者の意見を必ず全部受け入れろといっているのではないです。問題の本質を見極めるために、反対者の意見が必要だと言っているのです。これが理解できない人は、いかなる組織のリーダーにはなるべきではないです。なれば、組織が腐るだけです。
特に日本の、リベラル・左翼の方々は、このあたりを全く理解していないようです。日本の核配備など、最初から聴く耳を持ちません。反対意見を聴いて、なぜそのように考えるのかということを最初から忌避しているようです。だから、最近ではリベラル・左翼は、弱体化しているだと思います。
「成果をあげる者は、何よりも問題の理解に関心をもつ」(『経営者の条件』)のです。
こうした観点からみれば、ボルトン氏のような人も必要なのです。優れた経営者や、為政者も、周りを追従者だけで固めたり、自分の考えだけでものごとを進めてはいけないのです。
トランプ氏はボルトン氏を辞任させましたが、それでも周りを賛成者だけで固めているということはないようです。しかし、韓国の文在寅はチョグク氏などをはじめとして、追従者ばかりで周りを固めているようです。敗者になるのは、どちらでしょうか。今のところ、文在寅氏が敗者になる確率が極めて高いようにみえます。
トランプ氏はボルトン氏を辞任させましたが、それでも周りを賛成者だけで固めているということはないようです。しかし、韓国の文在寅はチョグク氏などをはじめとして、追従者ばかりで周りを固めているようです。敗者になるのは、どちらでしょうか。今のところ、文在寅氏が敗者になる確率が極めて高いようにみえます。
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