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2019年3月26日火曜日

トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」―【私の論評】本当の中止の理由は情報漏えいか(゚д゚)!

トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」

岡崎研究所

 米国防総省は3月2日、二つの大規模な米韓合同軍事演習の中止を発表した。一つは「Foal Eagle(フォール・イーグル)」で、40年間毎年空軍と海軍の参加も得て通常兵器による陸上での紛争を模擬実験してきた。2017年には韓国駐留の2万8000人に加え、3600人が参加した。二つ目は「Key Resolve(キー・リソルブ)」で、これは北朝鮮の攻撃後に不可欠な司令部を作るためのコンピュータ・シュミレーションを行うものである。これらは、規模を大幅に縮小した演習により代替されることになる。

2017年米韓合同演習に参加した米、韓国両国の将兵

 トランプは米韓合同軍事演習の中止を二つの理由で正当化している。一つは費用が掛かりすぎる、お金の無駄遣いであるということであり、今ひとつは金正恩と交渉中であるので、彼に善意のジェスチャーを見せる必要があることである。演習の中止に伴う米韓軍の即応能力の低下、米韓同盟に与える影響は大したことではないとの判断であると思われる。

 まず第1に費用が掛かりすぎるとの点については、トランプは「1億ドルかかっている」と主張するが、どこからそういう数字をトランプが持ってきたのか、よくわからない。国防総省は、昨年の演習中止の節約額は1400万ドルだったと言っており、トランプの見積もりは高すぎる。その上、防衛はお金の問題も重要であるが、それだけで考えるべき問題ではない。同盟の維持、即応力の問題はお金の計算で割り切れるようなものではなく、そういう意味でトランプの主張は適切とは言えない。ウォールストリート・ジャーナル紙の3月6日付け社説‘Trump Gets Exercised Over Exercises’は「演習を調整することは軍事的即応力を直ちに損ずるわけではない。しかし、小規模演習による代替は能力を損ずるというのではないが、戦争のストレスの模擬実験する上では陸、海、空における大規模演習のように適切なものはない」と指摘している。その通りであろう。

 第2に、「金正恩と交渉中であるから善意のジェスチャーを」ということで、大規模軍事演習の中止を決めたとすれば、これも適切ではない。共産主義者やその亜流は、力関係を重視し、戦略を考えるのが普通であり、敵または交渉相手の善意を信じるということはほぼない。彼らは大変に現実的である。こういう相手との交渉では、善意で先に譲歩することは相手から弱さと評価されるか、あるいは下手な交渉と評価されるかである。交渉の材料、いわば譲歩は見返りを得てこそするのが良く、一方的な譲歩は極力避けるのが良いと思われる。北朝鮮はこのトランプの譲歩を善意のジェスチャーとは看做さず、その見返りに態度を変えることは見込まれない。対北圧力手段の一つを放棄させた戦利品として、見返り無しに固定化していくことを狙うであろう。非核化交渉に今一つの問題を上乗せした結果になりかねない。このことはプーチンとの交渉にも当てはまるように思われる。

 米朝交渉はハノイ会談の後、どう進展するのかよくわからない。米朝の対立点が明確になったことから、次の会談前に双方が交渉姿勢を見直すことはありうる。米側からは圧力強化が、北からはそれに対する反発が出てくるとみておくのが当面の常識的判断であろう。第3回目の首脳会談については、失敗は許されないと思われ、事前の調整が事務レベルや閣僚レベルで行われることになるだろう。「出たとこ勝負」の首脳会談ではなく、よく準備された、成功がほぼ約束された首脳会談が米朝双方の狙いになろう。非核化がすんなりいくとは思えないが、中身がどうなるかを予測するのは時期尚早である。

【私の論評】中止の本当の理由は情報漏えいか(゚д゚)!

上の記事では、指摘されていませんが、トラン不政権が米韓合同演習を中止した最大の理由は情報漏えいを恐れてのことだと思います。最近の文在寅の親北ぶりは異常なもので、トランプ政権としては、文大統領の次の大統領がまともな大統領だった場合、演習を再開するのではないか思います。

米国は韓国をまったく信用していません。例えば、米韓両軍が合同軍事演習で採用してきた最高機密『5015作戦計画』があります。特殊部隊による『正恩氏排除=斬首作戦』を含むものですが、これが韓国から北朝鮮に全部もれたとされています。あり得ないことです。

2017年10月14日、朝鮮半島情勢が緊迫化する中、韓国軍の機密文書が北朝鮮とみられるハッカーによって大量に盗まれていたことが発覚しました。米軍から提供された情報も漏れた可能性がありました。北の指導部を狙った「斬首作戦」に関する情報も流出したとされ、韓国紙は「北で起これば全員死刑」と批判していました。

韓国メディアによると、昨年9月、北朝鮮からと推定されるハッカーが韓国軍のデータベース(DB)センターに相当する国防統合データセンター(DIDC)をハッキングして盗み出した文書は235ギガバイトに登りました。A4サイズの紙で1500万枚に相当する量です。韓国軍は流出したデータの総量自体は確認しましたが、どんな資料が流出したかは全体の22.5%に当たる53ギガバイト分(約1万700件)しか把握できていないといいます。

地上から撮影されたされるKH12の写真

朝鮮日報は国会国防委員会で与党「共に民主党」の幹事を務める李哲熙議員の話として「流出資料には、米軍が独自に収集して韓国軍に提供した写真ファイルが多数含まれていた」と報道しまし。代表例として「キーホール」(鍵穴)という別名で呼ばれるKH12偵察衛星が収集した情報などを挙げました。

KH12は、北朝鮮の300~500キロ上空を1日に3、4回通過して内部の動向をつかみます。韓国の安全保障専門家は「この情報が韓国側のミスで北朝鮮のハッカーに渡ったのだとしたら、今後米軍が情報共有を避ける口実にされかねない」と危惧していました。

さらに流出した情報には、金正恩・朝鮮労働党委員長らを殺害する「斬首作戦」ともいわれる「作戦計画5015」などの軍事機密が数多く含まれていたとされます。これは、以前も北朝鮮に漏洩したとされていましたが、さらに詳細が漏洩した模様です。

斬首作戦は有事の際、米国の増援部隊が韓半島(朝鮮半島)に到着する前に特殊部隊やミサイルなどを使い、朝鮮人民軍の司令部を攻撃するものですが、その細かい内容が北朝鮮の手に渡ってしまった可能性が捨てきれないのです。

さらに、文政権は昨年は、中国やロシアと連携して、国連安保理決議で決めた「対北制裁」を、是が非でも緩和させようと画策していました。これで米国の同盟国といえるのでしょうか。

平城を訪問した文在寅

ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は昨年5月29日来日し、安倍晋三首相や小野寺五典防衛相(当時)らと会談しました。次の4点で日米は固く一致しました。

 (1)北朝鮮の核兵器と大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルについて「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」を目標とする。

 (2)北朝鮮に対し、具体的な非核化の行動を早くとるよう迫る。

 (3)国連安保理で決めた経済制裁を堅持する。

 (4)米国は、(安倍首相が全面解決に執念を燃やす)日本人拉致問題を重視する。

一方、文大統領は前日28日、訪韓したマティス氏との会談をドタキャンしました。理由は「風邪だ」と発表されました。

米国防長官との会談は、同盟国のトップにとって最重要会談の1つです。風邪でドタキャンなど、考えられません。当時は重病説もながれましたが、その後ピンピンしていることから、やはり仮病だったと思われます。

マティス氏に、正恩氏の言い成り状態を怒られるから逃げたのかもしれません。トランプ大統領の文氏嫌いは有名で、『韓国は裏切り者だ。懲らしめろ』という敵視論まで噴き出ています。

さらに、韓国統一省当局者は昨年12月28日、韓国に居住する北朝鮮脱出住民(脱北者)の支援に当たる機関がハッキングを受け、997人分の氏名や生年月日、住所などの個人情報が流出したと明らかにしました。

当局者によると、大部分は南東部慶尚北道に住む脱北者。脱北者の定着支援を担う「ハナセンター」の職員が外部から届いたメールを開いたところ、パソコンが悪性プログラムに感染し、保存されていたファイルから個人情報が流出しました。

脱北者らが何らかの被害に遭ったとの報告はないが、身辺保護強化が必要と判断される場合は転居なども含め対応を検討します。情報が漏れた脱北者には個別に通知しているといいます。

脱北者の個人情報を含む文書は暗号をかけたり、インターネットにつながっていないパソコンに保存したりするよう指針で定められているが、守られていなかったそうです。

このような情報の取扱の杜撰さや、親北政権による人為的な漏洩などを米国は警戒しているのだと思います。

米側としては本当は米韓軍事演習を中止などしたくないはずです。

第一には、一度中止した軍事演習をまた復活したという苦い経験があるからです。今から27年前の1992年に米国は北朝鮮との間で「バーター取引」をしたことがありました。米韓両国は1992年に恒例の米韓合同軍事演習(当時はチームスピリット)を実施することで合意していたが、1992年1月7日、北朝鮮がIAEA(国際原子力機構)との核査察協定に調印することを条件に14年間続いていた合同軍事演習の中止に踏み切りました。

中止が発表されると同時に北朝鮮外務省はIEAEの査察受け入れを表明し、1月30日に査察協定に正式調印した。翌2月には南北初の総理会談で「和解・不可侵と交流協力合意書」と「非核化共同宣言」が発表されました。

しかし、北朝鮮が申告した内容とIAEAの査察結果に重大な差があることが判明し、IAEAは北朝鮮に対して特別査察の受け入れを迫り、北朝鮮がこれを拒否したことで1993年にチームスピリットが復活することとなりました。

第二は、合同軍事演習が北朝鮮の戦争遂行能力を削ぐことにあるからです。

米韓合同軍事演習は北朝鮮を降伏させるための「5015作戦」に従って実施されているが、この作戦は2002年にブッシュ政権下で作成された「5030作戦」も取り入れています。

当時、ラムズウェルド国防長官を頭にペンタゴンが作成した「5030作戦」はずばり、北朝鮮を干し挙げるための作戦計画です。軍事衝突発生前に北朝鮮政権を転覆させる多様な低感度の作戦で、統帥権者である大統領の承認なしで遂行できる作戦です。

例えば、「R-135」偵察機を北朝鮮の領海に近づけ、北朝鮮戦闘機のスクランブル発進を誘導させることで燃料を消費させるとか、戦略爆撃機「B-1B」や原子力空母、原子力潜水艦など戦略兵器を投入し、北朝鮮を緊張状態に置き、北朝鮮の戦争備蓄を消費させ、経済活動を麻痺させるという戦法が取り入れられています。制裁を掛けて、北朝鮮の金融システムを封鎖する作戦も含まれています。

上記の二点からしても、米軍が米韓合同演習を実施するのはかなり重要なことであったとご理解いただけるものと思います。

軍事境界線(DMZ)

最後に、朝鮮半島(韓国)は米軍にとって格好の演習場となっていたことがあります。

朝鮮半島は「アジアの火薬庫」と称されて久しいです。駐韓米軍と韓国軍は東西248kmに及ぶ軍事境界線(DMZ)を挟んで120万の兵力を有する敵(北朝鮮軍)と対峙しています。世界でも稀に見る緊張状態が続く地域では本番さながらの演習が可能です。

かつての、韓国は親米国家でした。また、保守、革新問わず、歴代大統領は親米でした。米軍撤退の声も、基地反対の声も起きてはいませんでした。米軍にとって演習の立地条件としてはこれほど好条件に恵まれているたのは他になかったのです。

国際的紛争の解決に向け在韓米軍を他の地域に投入する、あるいは紛争地域に派遣するうえでも韓国での演習は米軍にとって不可欠なものだったのです。

しかし、文在寅大統領になってからは状況が変わっています。文在寅大統領は、なし崩し的に北に接近するとともに、中国にも従属しようとしています。これは明らかに同盟国米国に対する敵対行為です。

米韓合同演習を続ければ、米軍の情報が漏洩する可能性は否定できません。トランプ政権としては、文政権は全く信用できないため、演習を続ければ金正恩に手の内を読まれてしまうことを否定しきれない現状では米韓合同演習を中止せざるを得ないのでしょう。ただし、これを公言すれば、米朝関係が弱体化したことを公言するようなものなので、費用が掛かりすぎなどとお茶を濁しているだけなのでしょう。

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